水産物消費 Archive
世界の水産物消費の動向 その1
- 2009-04-21 (火)
- 水産物消費
さいきん、こんな本を購入した。
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本書によると、魚は余っており、日本が輸入できなくなることはないらしい。筆者の主張を要約すると、こんな感じ。
1)日本の購買力は世界一で、買い負けは一般的な現象ではない。
2)マグロが中国に競り負けるのは、中国人が相場を知らないだけ
3)先進国の魚食ブームは、一過性のブームに過ぎない
4)魚は貧者のタンパク源であり、豊かになった国は、魚から、肉に切り替わる
5)現に、筆者の留学した英国では、魚の消費が右肩下がりである
うーん(苦笑
かなり事実誤認のある、問題の多い本だと思った。せっかくだから、新しいSofiaを使って、世界の水産物の消費動向を整理した上で、どこがどうおかしいかを検証してみよう。
世界的の水産物はどこからどこへ流れているか
Sofia2008(P66)から、水産物の輸入国のランキングを抜粋してみよう。

日本の最大のライバルは、年間6%という凄い勢いで輸入を増やしている米国だ。また、スペイン、フランス、イタリア、ドイツ、英国、デンマークなどのヨーロッパ勢の輸入も順調にのびている。近年、輸入を飛躍的伸ばしていた韓国は、ウォン安でしばらくは瀕死だろう。中国は輸入も多いけど、輸出はもっと多いから、水産物に関しては輸出国なんだよね。
世界の水産物生産量は、90年以降ほぼ一定なのに、貿易額は急速にのびている。水産物国際化は着実に進んでいるのだ。特に、欧州と北米の増加は驚異的である。輸入超過は、アジア(中国以外)、欧州、北米なのだが、アジアの輸入の大半は日本と韓国の2国で占められている。そして、輸出超過は、アフリカ、中国、南米、オセアニアである。途上国の魚を先進国が奪い合っているという構図が浮かんでくる。

輸入超過:日本、韓国、欧州、米国
輸出超過:アジア(日本、韓国以外)、南米、アフリカ、オセアニア
輸出国の生産は今度どうなる?
現在輸出をしている地域の生産トレンドをおおざっぱに予測してみよう。
アフリカ:
欧州漁業の草刈り場となっており、かなり乱獲が進行しているようである。しかし、情報がない!中国:
内陸の淡水養殖が主なんだけど、この増加率を維持できるとは思えないし、環境負荷も心配だ。正直、予測は難しいです。南米:
玉石混淆かな。ペルーやチリは、変動が大きな浮魚主体ではあるが、しっかりとした管理をしているので、安定した生産が期待できる。オセアニア:
豪州、NZを軸に安定した生産が期待できる反面、管理が厳密なので、漁獲量が劇的に増える可能性は低い。
これらの状況を考慮すると、輸入できる魚は、非常に限られているということはわかると思う。輸出国の中で、資源管理をしていない漁業が廃れるのは時間の問題である、一方、資源管理をしている漁業では、劇的に生産量がふえることはない。全体として、減少傾向か、よくても現状維持が精一杯だろう。
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世界の水産物消費の動向 その2
SOFIAもすばらしいのだが、それだけではわからない点も多い。グラフの元データを数値で見たいときとか、別の視点からデータを整理したいときもある。そんなときには、FAOStatという面白愉快なサイトから生データに直接アクセスできる。
世界の水産物消費量は急増している
FAOStatで世界の水産物消費量(t)を大陸別にまとめてみた。アジアは、日本と中国は別枠にした。
世界の水産物消費は、右肩上がりで、すでに生産力ぎりぎりまで利用されている。中国の増加が著しいのだが、これは自国の淡水養殖の消費がメイン。中国は日本とは食用魚のニッチがあまり重なっていない。ただ、中国の影響がないかというと、そういうわけでもない。かつては養殖の餌にしかならなかった小魚が、中国に食用として大量に輸出されている。中国の安価な魚への需要はとても強く、養殖魚の餌の価格の高騰の一因となっている。アフリカ、南米は量としても、成長率としても多寡がしれている。日本の食卓への影響が大きいのは、日本と同じプレミアマーケット志向の北米と欧州だ。
世界の水産市場に占める日本のシェアの低下
15年前まで、日本以外の先進国での、水産物の評価は低く、日本のような値段で魚を買う市場は存在しなかった。日本の商社は、世界中から、よりどりみどりで、水産物を集めてくることができた。水産物のプレミア市場は日本の独壇場であり、バブル期には、金額ベースで国際市場の3割以上を日本の輸入が占めていた。当時の日本は絶対的なプライスリーダーであり、水産物輸出国はいかにして日本に売るかを模索していた。完全に日本の買い手市場であった。
近年、購買力のある欧米先進国が、水産物のプレミア市場に参加したことにより、高級魚の争奪戦が勃発した。バブル以降の日本の購買力の低下も重なり、国際市場における日本のシェアは半減した。日本はすでに水産物のプライスリーダーではない。日本の輸入が今の水準をかろうじて維持できているのは、昔ながらの取引先の存在が大きい。しかし、完全に売り手市場の水産物輸出国の生産者の鼻息はあらい。「これまでの縁もあるから、今は日本に売ってあげているけど、日本が金を出せないなら、よそに売るだけだよ」というトーンである。今の値段しかつけられないなら、日本のシェアは今後も低下するだろう。
水産物の行く末は、円のレート次第ということになる。円がユーロや米ドルに対して優位が保てなければ、一気に魚を買えなくなるだろう。サブプライムで、欧州、米国が自滅をしたことにより、結果として円高になって、水産物の輸入減は一休みというところだが、今後の展開は極めて不透明である。
高級魚は、飛行機で運ばれる場合がおおい。プレミア魚の最大の入り口である成田空港における水産物輸入取扱額は、平成6年の1414億円から、平成19年の634億円へと半減した。国産魚の減少を輸入魚で補うという、今までのやり方は、見直す必要があるだろう。
「買い負け」という傲慢
かつての水産物のプレミア市場は、日本の独占であり、日本の商社間の争いしかなかった。日本が海外に負けると言うことが無かったのである。ここに欧米が参入することで、日本の独占状態が終わったのである。日本が好きなだけ、言い値で、魚を買いあさってこれた幸福な時代は、過ぎ去ってしまい、二度と戻ってこない。だからといって、悲観する必要は無い。
そもそも勝負の世界というのは、勝ったり負けたりするのが当たり前なのである。ちょっと負けたら大騒ぎするというのは、高級魚は日本が独占して当たり前という傲慢さの裏返しである。世界の貴重な水産物を日本一国が独占的に利用していた今までの方が、そもそも異常だったのだ。水産物のすばらしさを、世界の人々と共有できるのは、すばらしいことである(先進国しか供給できないという南北問題があるにせよ)。負けた、負けたと大騒ぎするのではなく、世界の水産物需要が今後も高まることを前提に、日本が必要な水産物を確保するための戦略を持つことが重要である。
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世界の水産物消費の動向 その3
世界の水産物の個人消費のトレンド
世界の水産物消費量(年間、一人当たり、Kg)は次のようになる。南米と、アフリカが横ばい、それ以外が増加傾向を示している。最近は、欧州が伸びていることがわかる。
で、この図に日本をいれてみると、こうなるわけだ。実に非常識な水準ではないだろうか。
1960年以前の日本の統計は、純食料(可食部のみ)のデータしか手元にない。FAOの統計は供給量ベース(可食部+非食部)なので、そのままでは比較できない。仕方がないので、1961年の純食料:供給量の比である1.61をつかって、1961年以前を引き延ばした。
2005年の世界の水産物消費
最新の統計をつかって、主要な地域の水産物消費量を比較してみよう。日本(2005)は食料需給表から、日本の昔の値は食料需要に関する基礎統計から、それ以外はSOFIA2008より引用。
経済力と消費量が高い相関関係にあることがわかる。先進工業国が29.3kgの消費に対して、LIFDCs(低所得食料不足国, Low-Income Food-Deficit Countries)は、8.3kgとなっている。LIFDCsのリストはここを参照。先進国の中でも、日本の消費量が群を抜いているのだが、このような大量消費は、高度経済成長期以降である。明治時代の日本の消費量は、今日のLIFDCsよりも少ない6.0kgであった。その前は、もっと低いだろう。日本人はそれほど魚を食べていなかったのである。日本人に魚食文化が存在したのは事実だが、一般的庶民は毎日魚を食べていたわけではなかったのだ。
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日本のサバ漁業は、価格破壊ではなく、価値破壊
魚の消費形態にもいろいろなグレードがある。
- 寿司屋、料亭などの高級食材
- スーパーや魚屋の一般鮮魚
- スーパーの特売用の鮮魚
- 缶詰、削り節などの加工品
- 養殖のえさ・中国アフリカ輸出
グレードが上の方ほど、値段が高いが、必要な量は少ない。数年前に、80年代に安い大衆魚であったマイワシが資源減少とともに高騰し、1尾1000円になったという報道がでた。マイワシの漁獲減によって、寿司屋や料亭で魚の奪い合いになった結果、こんな値段になったのであり、この値段でスーパーに並んでも誰も買わないだろう。また、寿司屋や料亭にしても個の値段では客に提供しない。寿司屋では、ネタの欠品は客足が減る原因になるので、採算割れを覚悟で、不足しそうなネタを仕入れるのである。
魚が水揚げされると、上の方のグレードから埋まっていく。高級鮮魚市場が満たされると、次に魚は一般鮮魚市場へと向かう。大中捲きが、調子に乗って千トンも水揚げをすると、鮮魚市場もいっぱいになり、鮮魚相場はガタガタになる。鮮魚市場からあぶれた魚が冷凍・加工に向かうことになる。このときに、冷凍設備や加工場がない港の余った魚は文字通り生ゴミになる。
80年代にマイワシが豊漁の時代は、漁獲が全ての食用市場を見たし、質がよいマイワシが大量に養殖のえさになった。現在はサンマが食用需要を超える水揚げが続き、値崩れを起こしている。こういう魚は、養殖の餌や輸出を考えるべきなのだ。しかし、サンマ業界の足並みがとれず、身動きがとれていない。そうこうしているうちにサンマも減ってしまうだろう。チャンスの女神には前髪しかないのである。
90年代以降のサバ漁業は80年代のマイワシとは根本的に違う。食用のサバが不足した状態で、ほとんどのサバが最低グレードで浪費されているのだ。サバの行き先は、水揚げコンディションと大きさで決まる。
- 寿司屋、料亭などの高級食材→600g以上→枯渇
- スーパーや魚屋の一般鮮魚→450g以上→ノルウェー
- スーパーの特売用の鮮魚→350g以上→ゴマサバ
- 缶詰、削り節などの加工品→250g以上→ゴマサバ
- 養殖のえさ・中国アフリカ輸出→250g以下→マサバ
一番下のグレードにしかならない0歳1歳でサバを獲り尽くして、中国に輸出しているのだ。頭が痛くなるぐらい、バカな獲り方だ。
下の図は、2001年のサバの用途別漁獲量である。みんながみんなそういう獲り方をしているわけではないんだけどね。

(↑詳しくは、http://katukawa.com/2007/07/post_160.html)
80年代のマイワシ漁業は、良質のマイワシを安価で豊富に供給していた。消費者にメリットのある価格破壊である。一方、現在の日本のサバ漁業は、価値が出る前に魚を獲り尽くし、まともな魚を供給できていない。これは、価格破壊ではなく、価値破壊である。
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タイトルは、くだけているが
動的な価格の分析も欲しかったです!
「食糧危機」なんてこない方が気が楽だけど・・・






