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水産基本計画(6) もしも神風が吹いたなら・・・

水産基本計画は、全く機能していないことは疑いの余地がない。
しかし、水産資源は予測がつかない動きをすることが多々ある。
80年代のマイワシバブルのようなことが起こらないとは限らない。
再び神風が吹いて、基本計画の数値目標を達成できる可能性はあるだろうか。
(神風に期待すること自体、計画としては破綻しているということだが・・・)

俺の試算では、平成24年の漁獲量は478万トンまで減少する。
基本計画の目標は669万トンだから、200万トン近い差が生じてしまう。
神風が吹いて、200万トン程度の漁獲量の底上げが可能かどうかがポイントになる

主要な多獲性資源の一覧

2002漁獲
過去最高
マージン
トレンド
増産可能性
まいわし 50313 4488411 4438098
低位減少
×
すけとうだら 213254 3035285 2822031
低位減少
×
さば類 279633 1625865 1346232
低位増加
するめいか 273567 668364 394797
高位減少
×
かれい類 63812 583323 519511
低位減少
×
まあじ 196044 551603 355559
中位横ばい
かたくちいわし 443158 484230 41072
高位横ばい
さんま 205282 483160 277878
高位横ばい
かつお 301915 446318 144403
中位横ばい

単位はトン

 

過去の漁獲量の最大値 - 最近の漁獲 = 神風マージン

と定義し、神風マージンを漁獲量増産のポテンシャルと考えてみよう。
神風マージンが200万トンを超えるのは、マイワシとスケトウダラのみ
どちらも資源状態が非常に厳しいので、単独での目標達成は無理だろう。

マイワシは超低水準だから、1度の加入の成功では資源はそれほど回復しない。
加入に成功したコホートを産卵まで保護して、
そこで再び加入が成功すればそれなりの水準まで行けるだろう。
まともな漁獲が出来るようになるには、5年では足りない。
1970年代にマイワシが増えた時は、殆どゼロだった漁獲量が最初の5年で50万トン、
次の5年で200万トンまで増えた。
抜群の瞬発力を誇るマイワシの神風が吹いたとしても、基本計画の目標達成は無理だろう。

スケトウダラに関しては、300万トン揚げていたときとは、漁場の広さが違う。
また、資源動向をみても、急増は無さそうだ。
また、寿命が長い資源なので、いきなり倍増とかいうことは無いだろう。

マサバは、最近、増加傾向にある。
成長が早く、マージンが135万トンもあるので、短期的な増加も可能である。
単独で200万トンは無理だが、漁獲量回復の軸になりうる存在である。
2004年生まれがとても多かったので、これを成熟まで残すことが重要。
2004年生まれが卵を産んでいる間にうまいこと卓越が発生すれば、
高水準まで一気に行けるかもしれない。
この資源の一番の不安要因は、太平洋の大中まきだろう。
実は1992年と1996年にマサバの卓越年級群が発生したけど、
成熟前に根こそぎ巻いてしまった前科があるのだ。
去年の評価表の詳細版をみればわかるように、0歳で9万トンも獲っている。
まさに、ザ・不合理漁獲という感じで、今回も増加の芽を摘んだかもしれない。
今年のダイジェスト版の将来予測をみると、
http://abchan.job.affrc.go.jp/18pbcom/fig/1805-6.png
これから減るという予測になっているのが、とても気がかり。
増える可能性がある資源だけに、回復計画を頑張って欲しい。

スルメイカは、すでに高水準なので、
減ることはあっても、大幅に増えることは無いでしょう。
マージンが多いのは、60年代に漁場が広かったからかな(未確認)。

かれいは、このまま減るでしょう。
加入が増えたとしても、成長が遅いので、5年間での漁獲量の回復はたかがしれています。

マアジは、資源状態が悪くないので、若干増やす余地はあり。
ただし、増えたとしても10万トンとかそのレベルだと思う。

カタクチとサンマは、資源的には漁獲量を増やしても問題ないのだが、需要が無い。
サンマはすでに値崩れぎりぎりのところなので、漁獲量増産は経済的に難しいのだ。
どちらも大幅に需要が伸びるとは考えづらいので、厳しいところ。
逆に言えば、需要があればこれらの資源も、今頃低水準だっただろう。

カツオも資源状態が良いので、もう少し増やす余地はあるかな。
でも、増えて10万とかそのレベルだろう。

水産基本計画目標達成へのシナリオ
まず、マサバに神風が吹くのが最低条件。
2004年級群に卵を産ませれば、資源はかなり増えるはずだ。
最低でも50万、あわよくば80万トンまで漁獲量を増やしたい。
マアジとカツオをそれぞれ10万トンずつ増やす。
これで100万トンの増産となる。
残りはカタクチとサンマで何とかするしかない。
国を挙げて、カタクチイワシとサンマを食べようキャンペーンを実施する。
安倍さんと中川大臣がサンマを食べるテレビCMを作成。
学校給食は毎週サンマとカタクチイワシ。
これだけやっても、目標の漁業生産には届かないだろうなぁ。

とりあえず、サンマをたくさん食べて、基本計画を援護射撃しよう。
まずは、そこからだ。

水産基本計画(7) その正体は水産庁基本計画

基本計画の内容を検証した結果、次のような問題点が明らかになった。

目標の設定根拠が不明
「自給率を10%上げようぜ」といって、
ゴールに向かって定規で線を引いただけというレベル。

目標が非現実的
日本の漁業生産を左右する魚種は限られている。
それらの魚種を個別に見ていくと、目標達成はかなり厳しいことがわかる。
昨日の記事は、ネットで数字を拾ってから文章をアップするまで数時間の作業だが、
水産庁では、このレベルの作業すらしていない可能性が高い。

目標をどう達成するかというビジョンがない
自給率を上げるとか、漁獲量を増産するとかいいつつも、
具体的な計画は無きに等しい
今までと同じことをしていて、V字回復はあり得ない。
目標を達成する気があるようには見えない。

目標を達成できなくても良いらしい
5年経って、増えるどころか漁獲は減っている。
にも関わらず、計画の中身が変わっていない。
目標を達成する気はないと判断しても良いだろう。

水産基本計画は、漁業政策としては、計画のレベルまで達していない。
どうやって目標を達成するかなんて考えていないし、
目標達成が難しくなっても何の緊張感がないことからも、
基本計画が自給率増加のための計画でないことは明らかです。

水産基本計画は、漁業者や国民のための計画ではなく、
水産庁による水産庁のための水産庁基本計画と考えるとつじつまが合います。

—-

水産基本計画は、財務省から予算をゲットするための文書なのです。
一応、自給率や漁業生産量の目標がありますが、アレは飾りです。

水産基本計画の正しい読み方
例として、水産基本計画の一文を抜き出してみました。

国内の漁業生産の増大を図ることを基本として水産物の安定供給を確保するためには、漁業生産が水産資源の持続的利用を確保しつつ消費者や実需者のニーズに適合した水産物を供給できるよう、漁業者その他の関係者が、水産資源の適切な保存及び管理増養殖の推進漁場環境の保全及び改善等を図るとともに安全性や鮮度等の面での水産物の品質の向上、流通の合理化等積極的に取り組む必要がある。

さらに、これら資源の持続的利用や国民の需要への対応の基礎条件として、生産コストの削減、付加価値の向上等により漁業経営基盤を強化するとともに、担い手の育成及び 確保、水産業の基盤の整備新技術の開発と実用化漁協の事業及び組織基盤の強化等の課題に取り組む必要がある。

まず最初に、当たり障りのないスローガンがきます。
「漁業生産の増大」、「水産物の安定供給」、「消費者のニーズ」などがキーワード。
これらのスローガンには、誰も反対はしないでしょうが、内容的には意味がありません。
コンビニ弁当の葉蘭(緑のギザギザのやつ)みたいなものです。
どうでも良い部分なので、灰色にしてしまいます。
スローガンの隙間に、各種の施策が盛り込まれています。
水産庁は縦割り組織ですから、どの仕事はどこの部署という区切りが明確です。
例えば、「水産資源の適切な保全及び管理」は資源管理部、
「増養殖の推進」は増殖推進部という風に、
それぞれの施策がどこの部のなわばりかを色分けできます。
詳しく知りたい人は、http://www.jfa.maff.go.jp/jfasosiki/index.htmlを見て、
自分で考えてください。

kihon8.png

これが現在の水産庁内の勢力地図になります。
個人的には赤組と青組を応援しているのですが、
やはり、緑組と黄色組が強いですね。
緑組が番長、黄色組が裏番という感じでしょうか。

水産基本計画(8) 計画と勢力図の違い

水産基本計画にも、自給率を65%まで上げるという目標があるように、
計画というものは、なんらかの目標を達成するために存在します。
計画の中身を決めるに当たっては、目的達成に寄与する政策をリストアップし、
それぞれの政策にプライオリティーをつける必要があります。
その上で、重要度が高いものから実行していくのが普通のやり方です。
予算が不十分なら、プライオリティーが低い施策から切っていき、
目標達成に必須な施策を残すことになる。
限られた予算で目的達成率を最大にしようと思ったら必ずこうなります。

kihon9.png

例えば、上図の例で行くと、
限られた予算で目的達成率を最大にするように、
予算が少なければ重要度が低い施策Eから切ります。
目的達成に必至な施策Aと施策Bはなんとしても死守します。
水産基本計画が、自給率を上げるためのプランであれば、
必ず、こういうスタイルになるはずなんです。

当ブログのコメント欄がきっかけで興味深い発言を見つけました。
http://www.jfa.maff.go.jp/sinseisaku/keikaku_19/minute/180629.htm
これは、水産政策審議会企画部会で、「具体策はないのか?」という質問への解答。

坂井企画課長 「先ほど委員長から話がありましたように、この審議会、秋以降もまた行っていく、これまで御議論をいただいている目的は水産基本計画、新たな計画を来年3月につくるということで、そういった意味では水産施策全体の基本的な方針を定める計画ですので、やはりある程度抽象的な面がございます。もちろん、具体化できるところはできる限り基本計画の中でも具体的に書いていくということが必要ですし、そういった方向で御議論いただいて努力をしたいと思いますけれども、他方、具体的な個別の施策ということになりますと、これは毎年の予算要求で行っている予算でしたら施策になりますので、それはまた現在ですと19年度の予算に向けて検討しておりますので、そこはそういった予算を基本計画に書くということではございませんので、そういった意味では方向性をどうやって示していくかという議論が中心になってくるということで考えていただきたいと思います。」

要するに「まだ来年の予算要求が通っていないから、
具体的な話はできないよ」ということなのです。
一般常識からすると、具体的な計画があって初めて、予算の見通しが立つはずです。
もし、基本計画が自給率改善のための計画であれば、
計画開始して5年目で、具体的な話ができないということはあり得ない。
この発言からも、自給率改善計画というより、
むしろ、庁内予算配分であることは明らかでしょう。

予算配分表を、自給率改善の計画書に変換するのは、大変な作業です。
そういう観点か見ると、「基本計画」は実に良く出来ています。
役人の文書作成能力の高さがうかがえます。
ただ、やはり自給率改善計画の皮をかぶった予算配分計画なので、
いろいろとボロが出ます。
最大の問題は具体的な話が出来ないことでしょう。
具体的なことを基本計画に記述すれば、
その施策には最低でもその分の予算を配らざるを得ない。
具体的な施策の話をするのは、予算につばをつける行為であり、
余所に先駆けて具体的な内容を発表するのはフライングなのです。

基本計画の目標が自給率になった理由はきわめて簡単です。
例えば、資源回復を目的にすると、特定の部の縄張りに業務が集中してしまい、
明らかに資源回復と関係のない事業の記述が難しくなる。
水産基本計画から、事業に関する記述が抜かれたら、
それは予算打ち切りを意味するわけで、死活問題です。
全ての既存事業を盛り込みやすいように自給率を目標にしたのでしょう。
これが、「玉虫色」という奴ですね。

基本計画が、縦割り組織の縄張り争いの産物である以上、
基本計画の内容は誰にも変えられないのです。
自分の縄張りの事業の作文を少し変えるぐらいがせいぜいでしょう。
変える権限など、誰にもないのだから、変わるはずがない。
漁業白書も、水産基本法も、水産基本計画も、
縄張り争いの結果の勢力地図としての側面があり、
同じような割合で、同じような施策が盛り込まれることになる。
水産庁の文章が、全部同じに見えるのは、そういう理由があるのです。

水産基本計画から事業に関する記述が抜かれたら、
それは予算打ち切りを意味するわけで、担当部局には死活問題です。
そういう部分には、水も漏らさぬ配慮がなされていることでしょう。
その一方で、数値目標が達成できるかどうかは、全く考慮されていない。
一応、自給率65%という目標を出したなら、
それにむけて努力をしているポーズぐらいはしてほしい。
ゴールがどんどん遠ざかるのは、まずいと思ってほしい。
少なくともまずいと思っているポーズぐらいしてほしい。
あまりにも危機感がないのです。

なぜ、危機感がないか?
誰もつっこみを入れないからでしょうね。
水産基本計画は、自給率向上計画としては破綻しています。
それは少し考えればわかるんです。
でも、だれもそのことにつっこみを入れない。
メディアも取り上げないし、漁業者はあめ玉的な政策を望むばかり。
こういう状況で「危機感を持て」という方が無理でしょう。

水産庁は風車であって、扇風機ではない

いろいろと水産行政の問題点を指摘してきた。
国内漁業は、大変に危機的状況にあることは間違いないだろう。
でも、こうなったのは水産庁の怠慢とは言い難い。
役所という組織は、何か新しい方向性を自分たちで打ち出していくのが苦手。
というか、そもそも、そういう組織ではないのだ。
水産庁は、風が吹かないと回らない風車のようなもの。
この風車を回す風は、世論などの外的圧力である。

さて、水産庁に対してどういう風が吹いているかというと、
一般人(納税者)は漁業に対して実に無関心。
漁業者は、長期的な産業の発展よりも、
むしろ、短期的なその場しのぎを求めている。
このような状況で、要求をしてくる漁業者の願いを叶える以外の選択肢は無い。
産庁は責務を立派に果たしてきたと言える。
現在の水産庁のなわばり分布だって、地方住民がそれを望んだから、
黄色組と緑組が勢力を伸ばしたという側面は否めない。
非常に民主的な組織運営の結果が、今の水産庁というわけだ。

国民は無関心で、漁業者は目先のその場しのぎを要求する。
こういう状況では、水産庁がリーダーシップを発揮して、
現在の水産業が抱える問題を解決することは不可能だ。
水産庁は扇風機ではないのだから。

ただ、水産庁は風車としては優秀なので、
充分な風を送れば、きちんと対応するはずだ。
例えば、水産庁は、国際資源では責任ある漁業を進めている。
国際漁場では、責任を問われるから、きちんと対応が出来るのだ。
一方、国内漁場では、責任ある漁業を進めようとはしない。
国内資源に対して、責任ある漁業を進めるような圧力がないから、
水産庁としても動きようがないだろう。

水産基本計画があれほどぐだぐだなのは、
風車であるところの水産庁が扇風機の真似事をしたからだ。
自給率を10%上げるという目標を上げたところで、
そこに風は吹いていない。
もちろん、自給率が上がること自体に反対の人はいないだろうが、
なんとしてでも自給率を上げるべきだと思っている人は少ない。
「まあ、自給率って高い方が良いよね」というノリだろう。
これでは、役所は力を発揮できない。
縦割りシステムのチームワークの悪さもあり、
水産基本計画は、破綻すべくして破綻したと言える。
漁業が先細りの中で、どこからも風は吹いてこない。
こういう状況では、水産庁も背伸びをせざるを得なかったのだろう。

漁業国益論 (1)

現在の水産業は税金に依存している。
例えば、18年度一般会計予算を見てみよう。
水産庁の予算は約1800億円で、漁業の生産額の12%を占める。
特別会計まで考慮すると、この数字はさらに膨らむことになる。
農林水産業以外の産業をサポートする経済産業省の予算は7828億円に過ぎない。
如何に漁業が優遇されているかがわかるだろう。

産業規模と比べると、べらぼうの税金が投入されているのだから、
国民の負担で漁業を支えていると言っても良いだろう。
納税者は、株式会社の株主の相当するのだ。
最大の違いは、株主は自分の意思で株を買うし、株で儲かることもある。
納税者は、一方的に、有無を言わさず、むしり取られるだけだ。
漁業(漁業者および水産庁)は、
株式会社が株主に対して果たす以上の責任を負うべきだろう。
税金で支えてもらっている以上、国益を果たす義務がある。
では、国益とはいったいなんだろうか?
日本の水産業の歴史を、国益という観点から振り返ってみよう。

戦後からオイルショックまでの国益は、食料の確保であった。
戦後の漁業生産の拡大は、主に漁場の拡大によるものだった。
とにかく、たくさん獲る。獲れなくなれば、もっと遠くに行けばよい。
そういう時代だった。
そして、水産庁は漁業者がより多く獲るためのサポートをした。
漁業者と水産庁の二人三脚で、とにかく多く獲る体制を作り上げた。
これは、国益にも適うものだった。
漁業者の関心と国益は食糧増産という点で一致しており、
水産庁はそのために協力をすれば良かった。

1970年代に入ると、日本の漁場は水産業の構造的な転換を迎えた。
世界中の漁場から徐々に閉め出され始めると同時に、
国内でも大きな変化が起こっていた。
1970年から、大規模チェーン店の外食産業が急速に広がっていた。
国民に一通り充分な量の食べ物が確保され、
食べるもの不足していた時代から、飽食の時代へと移行していたのだ。
食糧増産=国益とは言い切れない状況になったのだ。

消費者の高級志向に答えるために増殖事業を発展させることになる。
養殖の起こりは、瀬戸内海のクルマエビである。
どうみても、食糧確保と言うよりは、高級志向を満たすためだろう。
グルメ嗜好を満たすために、税金を使う必要があったかは疑問である。
旨いものを食べたいなら、その人が対価を払うべきだと俺は思う。

本来であれば、水産業と国のあり方をこの時点で問うべきだったと思う。
漁業から還元される税金で運営できる程度の小さな水産庁を目指すのか、
今まで同様に国民の税金を使って漁業をサポートし続けるか。
大きく分けて2つの方向性があったのだが、
何の議論もなく、後者が選ばれてしまった。

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