漁業改革 Archive
アルゼンチンも2010年からITQを導入
FIS – Worldnews – Individual catch quota law regulated.
common hake, hoki, Patagonian toothfish, southern bluewhitingの4魚種にITQが導入されるようですね。ITQ導入に向けて、12年間も準備をしてきたのか。南米もITQが主流になっている。現地の情報がなかなか得づらいのだけれど、どういう議論を経て、どのような制度を入れたのか、一度調べてみる必要がありそうだ。いつになったら、時間がとれるのか全く不明。
アルゼンチンですらITQを導入できるのに、水産庁は「お金が無いから、IQすらできません」と言っている。2800億円も予算があって、恥ずかしくないのだろうか?
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チャタム島 その3 ~ITQが離島漁村の多神教文化を支えている
では、ITQの具体的な運用について説明しよう。まず、政府研究機関が、資源の持続性を考慮して、商業漁獲枠(TACC)を決定する。TACCと等しい年間漁獲枠(ACE: Annual Catch Entitlement)が、漁獲枠に比例して配分される。ACEは自分で漁獲をしても良いし、他の漁業者に販売しても良い。

チャタム島では、先住民自らが財団(日本の漁業組合みたいな組織)をつくり、自分たちの漁獲枠を運用している。NZの漁獲枠は図のような流れで配分される。協会は、チャタム島海域のアワビの漁獲枠の25%とロブスターの漁獲枠の50%を保持しているので、毎年、アワビとロブスターのTACCのそれぞれ25%および50%のACEが配分される。協会は、島に定住している漁業者に、市価よりも2割ほど安い価格で、ACEの優先販売を行っている。島の漁業者に漁獲枠を販売した後に残ったACEは、外部の漁業者に市価で販売する。財団が島での雇用確保に一躍買っているのである。財団は、漁獲枠の運用益で、病院を建てたり、小学校を新築したりとインフラ整備も行っている。漁獲の利益で、島の生活が成り立っているのである。「資源管理をしなければ漁業が無くなる。漁業が無くなれば、島に人が住めなくなる。」というのは、本当だろう。
ちなみに、NZの先住民は多神教であり、厳しい離島で、昔ながらの伝統を守って、助け合って生活をしている。その生活を支えているのが漁業であり、その漁業の生産性を支えているのがITQなのだ。ITQを導入すると、地域を守ろうとする多神教的な団結心が破壊されてしまうという須能委員の主張は、全く事実に反している。魚や漁業権利権の奪い合いで、地域の団結が崩れ、漁村が崩壊しているのは、むしろ日本の方である。国の有識者代表として、政策を議論する以上、もう少し勉強をして、現実を知った上で、議論をしてもらいたいものである。また、反対する以上は、何らかの現実的な対案を示すべきだ。
もちろん、ITQを導入したら、全てがバラ色になるわけではない。ITQというシステムは、部族で素朴な生活をしてきた先住民にはすぐには理解できなかった。新しいシステムを理解できずに、失敗する生活の糧である漁獲枠を二束三文で手放してしまった者もいた。ITQ導入当初、アワビの漁獲枠のすべてが、島の漁業者に配分された。漁獲枠の大部分は、島外の企業に売却されてしまい、現在も島に残っている漁獲枠はたったの25%だ。漁獲枠の流出は、地域の雇用の観点から望ましいことではない。また、新しい管理システムが導入された当初は、戸惑いと抵抗が合ったようである。ITQ導入当時の政府の漁業視察官は、とても苦労したという話である。
他国の成功から学ぶのと同様に、失敗から学ぶことも重要である。地方の雇用確保のためには、個人ではなく、コミュニティーに漁獲枠を与えるのが良いだろう。また、漁獲枠の流出を予防するために、コミュニティーが所有する漁獲枠の譲渡は禁止し、漁獲枠の利用は、その土地の漁業者を優先すべきである。最初から、今のチャタム島のような形態にしてしまうのだ。その上で、個別漁獲枠制度は、早獲りでは大型船に劣る沿岸漁業が持続的に漁業から利益を出すために必要な制度であることを周知徹底させるべきであろう。
今回のチャタム島の訪問は、驚きの連続であった。いずれは、チャタム島の漁業者と日本の漁業者が、直接対話をする機会を設けたいものである。国や言葉は違えども、同じ漁業者同士なら、伝わることも多いはずだ。NZの制度にも問題は多く残されている。チャタム島の漁業者の口から、NZの漁業制度の良い面、悪い面を教わった上で、日本に何を取り入れ、何を取り入れないかを議論すべきだろう。チャタム島の漁業者たちは、「呼んでくれたらいつでも日本に行って、俺たちの経験を紹介するよ」と言ってくれている。あとは、先立つものが必要なんだが、どこかに旅費がおちていないかなぁ。
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アイスランド漁業の歴史に関するメモ
アイスランドの資源管理の年表
| 1976より前 | 禁漁、禁漁区、禁漁期、漁具規制など、様々な規制の併用 |
| 1976 | ニシン漁業に船別漁獲枠を導入(IQs) |
| 1979 | ニシンの船別漁獲枠が譲渡可能に(ITQs) |
| 1980 | カペリン(カラフトシシャモ)漁業に船別漁獲枠を導入(IQs) |
| 1984 | 底魚漁業にITQが導入される。小型船(<6brl)は、ITQの適用除外。 |
| 1985 | 底魚漁業に努力量クオータ(effort quota option)が導入される |
| 1986 | カペリンの船別漁獲枠が譲渡可能に(ITQs) |
| 1991 | 漁業全体が単一のITQシステムで統一される。小型船への適用除外は継続 |
| 1991-04 | 小型船への厳格な努力量規制が導入される |
| 2004 | 小型船向けの独自のITQ制度が導入される |
1976年より前は、今の日本と同じような状態であった。まず、大型船の主要漁業からIQを導入。それを譲渡可能にした。最初から、譲渡の自由度は極めて高かった。1984年に、全ての底魚にITQが導入された。底魚は、アイスランドの漁業生産の2/3を占めている。これによって、アイスランドの主要な漁業は網羅されたことになる。1991年には全ての大規模漁業の制度を統一した。
小型船へはITQの適用除外を行ってきたが、結果として小型船の漁獲能力が急増した。91-04年の間、非常に厳格な努力量規制を行ったが、過剰漁獲を抑えきれず、04年に小型船にもITQが導入された。
資源状態は良好で、漁業は利益を生んでいる。アイスランド人は、日本人以上に水産物を消費するのだが、水産物の自給率2500%である。
アイスランドの漁業制度についてしばしば批判されるのは、寡占化の問題である。これは、ほぼ無規制の売買を認めた結果である。社会的公平性の観点から、現在もITQを続けるかどうかについては議論が続いている。アイスランドの公平性の議論は、日本には当てはまらない。日本では漁業組合が沿岸の排他的独裁権を有しており、そもそも社会的な公平性が存在しないのである。
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アイスランドの漁業者はなぜ減ったのか?
資源管理反対派は、「資源管理を導入すると、弱小漁業者が淘汰されてしまう」として、ITQ制度の導入に反対している。では、資源管理をしなければ、弱小漁業者は安泰なのかというと、そんなことはない。日本の漁業はベテラン漁師が食っていくのが精一杯であり、とても若者が参入できるような状況ではない。新規加入が途絶え、消滅は時間の問題だろう。
世界に先駆けて、ITQを導入したのはアイスランドとニュージーランドであった。ともに、生活水準の高い、先進国である。ニュージーランドについては、ITQの導入によって、魚を獲る人は減ったが、加工する人が増えいる。ITQ導入後、漁業全体の雇用は増加しているのはデータからも明らかである。また、NZではITQによって、離島の小規模漁業者が生存しているという現実もある。本人たちが言うんだから、間違いない。
アイスランドの漁業就業者の人口をまとめると次のようになる。ITQ導入から、現在までをカバーする統計が見つからなかったので、2種類の異なるデータをまとめて表示した。数値自体は近いのである程度のトレンドはこれで追えるだろう。アイスランドの漁業者は、2000年までほぼ横ばいで、その後激減している。ITQを導入したのは80年代のことであり、ITQが原因であれば、もっと早く漁業者が減ってしかるべきだろう。2000年から近年まで、アイスランドは金融バブルにわいていた。漁業者の減少は、より利益が期待できる金融関係のサービス業に労働力が移動した結果である。
ITQ制度では、自らの漁獲枠を売却して、それを元手に事業を始めることが出来るから、労働力の移転のハードルを下げる効果はあるだろう。本人が望んで漁業を離れたのであり、それによって、過剰な漁獲能力が削減でき、社会の生産性が上がる。社会にとっても、漁業者にとっても、悪くない選択だ。日本の漁業者は、船の借金を抱えながら、生産性の低い漁業に縛り付けられて、最後は夜逃げや首つりを余儀なくされる。政府は、過剰な漁業者を維持するために、現金をばらまくようだが、そんな余力は日本の財政にあるんですか。そんな税金の使い方をして、納税者にいったい何のメリットがあるのかさっぱりわからない。
ITQの方が、漁業者にも納税者にも優しい、合理的な社会システムであると思う。
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