世界の漁業 Archive
日本漁業「責任」時代へ 35
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アイスランドの漁業者はなぜ減ったのか?
資源管理反対派は、「資源管理を導入すると、弱小漁業者が淘汰されてしまう」として、ITQ制度の導入に反対している。では、資源管理をしなければ、弱小漁業者は安泰なのかというと、そんなことはない。日本の漁業はベテラン漁師が食っていくのが精一杯であり、とても若者が参入できるような状況ではない。新規加入が途絶え、消滅は時間の問題だろう。
世界に先駆けて、ITQを導入したのはアイスランドとニュージーランドであった。ともに、生活水準の高い、先進国である。ニュージーランドについては、ITQの導入によって、魚を獲る人は減ったが、加工する人が増えいる。ITQ導入後、漁業全体の雇用は増加しているのはデータからも明らかである。また、NZではITQによって、離島の小規模漁業者が生存しているという現実もある。本人たちが言うんだから、間違いない。
アイスランドの漁業就業者の人口をまとめると次のようになる。ITQ導入から、現在までをカバーする統計が見つからなかったので、2種類の異なるデータをまとめて表示した。数値自体は近いのである程度のトレンドはこれで追えるだろう。アイスランドの漁業者は、2000年までほぼ横ばいで、その後激減している。ITQを導入したのは80年代のことであり、ITQが原因であれば、もっと早く漁業者が減ってしかるべきだろう。2000年から近年まで、アイスランドは金融バブルにわいていた。漁業者の減少は、より利益が期待できる金融関係のサービス業に労働力が移動した結果である。
ITQ制度では、自らの漁獲枠を売却して、それを元手に事業を始めることが出来るから、労働力の移転のハードルを下げる効果はあるだろう。本人が望んで漁業を離れたのであり、それによって、過剰な漁獲能力が削減でき、社会の生産性が上がる。社会にとっても、漁業者にとっても、悪くない選択だ。日本の漁業者は、船の借金を抱えながら、生産性の低い漁業に縛り付けられて、最後は夜逃げや首つりを余儀なくされる。政府は、過剰な漁業者を維持するために、現金をばらまくようだが、そんな余力は日本の財政にあるんですか。そんな税金の使い方をして、納税者にいったい何のメリットがあるのかさっぱりわからない。
ITQの方が、漁業者にも納税者にも優しい、合理的な社会システムであると思う。
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大西洋クロマグロは本当に減っているのか?
- 2010-03-19 (金)
- マグロ輸出規制
大西洋クロマグロは本当に減っているのか?
ワシントン条約でクロマグロを規制しようという動きは、1992年にさかのぼる。また、タイセイヨウクロマグロは、1996年からレッドリストに載っている。それから、すでに10年以上が経過している。乱獲を抑制するための時間は、十分にあったはずだ。にもかかわらず、地中海での乱獲は放置され、資源は悪化の一途をたどっている。次の図は国際管理機関ICCATのレポート(http://www.iccat.int/Documents/SCRS/ExecSum/BFT_EN.pdf)からの引用である。run6とrun7はそれぞれ、シミュレーションの設定が違うのだけど、どちらにしても減少トレンドに変わりはない。
地中海の産卵群は、現在も急速に減少している。欧州のWWFは、地中海諸国の畜養備蓄数を詳細に調べ上げて、現在の漁獲が続くと産卵群は2012年にはほぼ消滅するというレポートを発表した。このWWFのレポートは専門家・業界の間でも、かなり信頼されている。

専門家の間では、ワシントン条約での規制をすべきというコンセンサスが、すでにできあがっていた。FAOの専門委員会でも、規制に反対したのは、日本政府が派遣した研究者のみ。IWCでは、一貫して日本の捕鯨に好意的な態度をとっていた海外の研究者も、ワシントン条約の規制には賛成をした。それだけ、大西洋クロマグロの資源状態は悪いのである。「ジャパンバッシング」、「日本狙い撃ち」などと勘違いしている人も多いが、どうみても何らかの規制が必要な状況だろう。
管理機関ICCATに任せておけば安心なのか?
管理機関ICCATは、これまで科学者の提言をことごとく無視してきた。2006年の会合では、科学者が1万5000トンの漁獲枠を勧告したのに対して、ICCATが設定した漁獲枠は3万トン。実際の漁獲量は、漁獲枠を遙かに上回る5万~6万トンと推定されている。不正漁獲については、ICCAT自体が認めているのである。にもかかわらず、10年以上も何ら実効性のある手段を執ってこなかった。保全の必要性が叫ばれてから20年近く経過しても、資源状態は悪化する一方であった。こういった歴史を振り返れば、「ICCATの枠組みで管理は十分」という日本の主張に疑問の声が上がるのは当然だろう。
ICCATの管理能力の欠如に危機感を募らせた保護団体は、2008年からワシントン条約での規制を求める大規模なキャンペーンを開始した。国際世論が規制強化に傾くなかで、ICCATは去年の9月になって、ようやく科学者の勧告する水準まで漁獲枠を削減した。保護団体が、本気で拳を振り上げたのを見て、あわてて行動を起こしたのである。ICCATが設定した2010年の漁獲枠は13500トン。不正漁獲込みで6万トン程度といわれている現在の漁獲量を1/4に削減する必要がある。これまで、漁獲の削減に対して全く無力であったICCATがこのように厳しい規制をきちんと守らせることができるとは思えない。
こういう状況で、良く規制を阻止したものだと思う。本当に驚いた。今後は、その外交力を、地中海諸国に規制を守らせるような方向で発揮してもらいたいものである。
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モナコの敗因を分析する
敗因 その1 妥協を拒んだ結果、漁業国の反発を招いた
ワシントン条約の付属書Iは商取引全面禁止。付属書IIは書類があれば輸出可能となっている。モナコは、付属書Iでの規制を要求して、妥協を拒みつづけた。そのせいで、「保全は必要だけど、いきなり禁止はちょっと・・・」という漁業国が相次いで脱落した。
2009-09-25の記事ではこう書いた
フランスが「いきなり付属書Iはあれだから、付属書IIからでいいんじゃね?」という妥協案を出したのを、英独が「この軟弱者!」と切って捨てた時点で、 EUは分裂の可能性ありと見ていたが、否決されたようですね。
大西洋クロマグロは、西系群(メキシコ湾)と東系群(地中海)に別れている。付属書IIならまだしも、付属書Iが飛び火すると、自国の漁業がつぶれてしまうので、クロマグロ・ミナミマグロ漁業を抱えているカナダ、メキシコ、豪州も、今回のモナコ提案には、神経質になっていた。付属書IIでの合意を目指していれば、これらの国の賛同は得られただろう。また、付属書IIであれば、フランスの賛成は早期に得られていたはずで、EUは早い段階で一枚岩になり外向きに政治力を発揮できた。漁業国の国内事情への配慮が欠けたのが、大きな敗因である。
敗因 その2 漁業とは無関係な国の支持を得られなかった
漁業とは無関係の国を味方につけるノウハウを、日本はIWCを通じて持っている。今回はそのスキルが遺憾なく発揮された。IWCでは、欧米諸国も日本に負けじと激しく票とりをして、常に日本の動きを封じてきたのだが、今回は、欧州は内部分裂をして、その調整にエネルギーの大半を使うことになった。米国も、規制反対の商務省と規制賛成のNOAAが内部で激しく対立し、国として付属書Iの姿勢を打ち出したのが締約国会議の10日前。EUに至っては、付属書Iの合意を得られたのは締約国会議の3日前だ。欧米が内部調整に手間取る間に、日本は首尾一貫して外交工作を重ねてリードをした。
とはいえ、ここまで大きな差がつくことを事前に予想していた人間は、ほとんどいないだろう。水産庁自身も驚いているに違いない。これまでワシントン条約の締約国会議は、ほぼFAO専門委員会の決定通りになってきたという歴史がある。FAOの専門委員会は、大西洋クロマグロをワシントン条約で規制する必要性を認めたのだから、今回も普通に考えれば、規制になるはずだった。そう読んだからこそ、フランスもスペインも、自国の漁業者の反発を承知で、モナコ提案に同意したのである。減少は明らかだし、科学者(FAO)と当事者(EU)のコンセンサスも最終的には得られた。アラブ、アフリカなどの直接利害に絡まない国は、普通に考えれば規制に賛成するだろうと、多くの人間は思っていた。いくら日本がトロパーティーをやったところで、票の流れは限定的だと見られていた。ところが、そうではなかったんだね。アフリカの票を得るに当たって、中国の協力が大きかったと言われている。サメのリスティングを妨害したい中国と、マグロのリスティングを妨害したい日本の思惑が合致したと言うこと。マグロに関しては、畜養が地中海アフリカ側にも飛び火している。「おまえらが減らしておいて、勝手に取引停止にするな」というのが、アフリカサイドの言い分。これも、心情的には理解できる。
今回の結果は、科学的なコンセンサスを重視して、保全を優先するという風潮は、欧米の一部の国にとどまることを示した。大西洋クロマグロは、「今すぐ規制しなければ、いつ規制をするのか?」という感じなのだが、大差で規制は否決されてしまった。ワシントン条約という枠組みでは、高い経済価値をもつ、広域分布種の保全は難しいことを示したと言えるだろう。
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ワシントン条約の報道において、日本のメディアは国民に何を隠したか
日本メディアは、ドーハ締約国会議をどのように伝えたか
今回のクロマグロのワシントン条約に関して、日本の報道は、「欧米の資源囲い込みの陰謀から、日本の食文化を守らなくてはならない。水産庁がんばれ!!」という論調一色であった。とくに、読売の社説は、水産庁の主張をそのままコピペしたような感じだ。
「食文化守られた」 マグロ禁輸否決で市場関係者や消費者(中日新聞)
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2010031902000226.html
マグロを食べる日本の文化が守られた-。マグロの入手困難や、価格高騰を懸念していた東海地方の市場関係者や消費者からは安堵(あんど)の声が上がった。
クロマグロ規制 全面禁輸はあまりに強引だ(3月16日付・読売社説)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20100315-OYT1T01323.htm?from=y10
日々の食卓にのぼるマグロを、いきなりジュゴンやパンダと同じ絶滅危惧種にするのは強引すぎる。
日本は、禁輸採択の場合、受け入れを留保して漁を続ける方針だ。欧米の資源囲い込みを防ぐには、やむを得ない選択だろう。
日本のメディアは国民に何を伝えなかったか(隠したか?)
情緒的な論調で、消費への危機感を煽る一方で、欧米の世論を保全に向かわせた次の3つの事実を、日本のマスメディアは、国民に知らせなかった。
1.タイセイヨウクロマグロは激減しており、すでに、現在の漁獲を支えられる状態にない
2.ICCATの規制は守られておらず、漁獲枠よりも多い不正漁獲が存在する。ICCATもそのことを認めている
3.不正漁獲されたマグロのほとんどは日本で消費されており、以前から問題になっていた。
タイセイヨウクロマグロの資源状態については、ここにまとめた。資源は危機的に減少しているというのはICCATの研究者の一致した見解である。日本の報道は、インターネットで公開されているICCATの資源評価について一切ふれずに「絶滅危惧ではない」という日本の政府関係者のコメントを垂れ流すのみ。FAOの専門委員会では、日本政府が派遣した一人をのぞいて全員がワシントン条約で規制をするのに十分な証拠があると認めたのである。国民が公平な判断をするためには、こちらの声も紹介すべきである。南アフリカにはButterworthという研究者がいる。IWCでは一貫して、捕鯨の肩を持ち、英米からは「日本より」と批判されることが多かった人物である。彼ですら、マグロの規制には賛成したのである。
日本政府はICCATの有効性を声高に主張したのに対して、欧米はICCATの規制には懐疑的であった。ICCATのレポートを見れば、どちらが正しいかは明らかだ。漁獲を15000t以下にすべきという科学者の勧告を無視して、2007年に29500tのTACを設定。報告された漁獲枠は34514tだが、実際には61000tの漁獲があったとICCAT自身が認めているのである。
これらの黒いマグロの温床となっているのは畜養である。産卵群をまとめて漁獲して、いけすにいれて、太らせてから日本に出荷する畜養が、地中海で広まっている(実は日本のクロマグロの養殖もほとんどが畜養なのだが、メディアはそのこともふれない)。漁獲枠が3万トンに対して、地中海の畜養イケスのキャパシティーは、6万トンといわれている。そもそも、漁獲枠など守る気がないのである。不正漁獲はマフィアのビジネスになっている。EUでの規制強化を見越して、リビアに黒い畜養の拠点が移動しつつある。もちろん、リビアの畜養に投資をしているのは、先進国の資本である。EU内ではクロマグロの消費は厳しい社会的圧力にさらされており、レストランがテロの標的になりかねない勢いである。そこまでしても、リビアで作って、日本が買うという仕組みが出来たので、EUでの規制強化では対応できない。そこで、今回のワシントン条約と言うことになったのだが、リビアと日本が勝ってしまった。「先進国が減らしたものを、俺たちが我慢するのはおかしい。俺たちにも獲る権利がある」と主張するリビアがICCATの勧告に従うはずがない。ICCATで厳しい枠をつけても、リビア→日本という黒いホットラインがある限り、不正漁獲はなくならない。ICCATの枠組みで、資源管理が出来るという日本の主張は、明らかに無理がある
現在、畜養クロマグロは在庫が余っている。不況によって、値段を下げても、売れないのである。こういう状況で、冷凍の在庫が1年以上ある。絶滅の心配をされるほど減っている魚を、在庫が余るぐらい買いあさる必要があるのだろうか。すぐに食べないなら、海に泳がしておけばよい。そうすれば、勝手に成長して、卵を産んでくれるのに。日本商社の乱買が資源枯渇に拍車をかけているのだが、これだって、日本メディアにかかれば「しばらくは食卓への影響はあまりないので安心です」となるのだから、物は言い様である。
「ワシントン条約を妨害したから、日本の食文化が守られた」という、日本メディアの報道は事実に反している。タイセイヨウクロマグロは、持続性を考えれば、ほぼ禁漁に近い措置が必要になる水準まで減っている。ICCATがまともに規制をすれば、ほぼ禁漁になるし、今のままとり続ければ数年で魚は消えるだろう(絶滅ではなく、商業漁獲が成り立たなくなると言う意味)。どのみち、現在の水準で輸入はできない。大西洋のマグロを日本が大量消費をしている現状は、すでに破綻しているのである。今後、クロマグロの供給が減少するのは確実だが、その原因は、ワシントン条約でも、中国の消費でもなく、まともに漁獲規制ができないICCATと日本人による乱買と乱食である。
それにしても、危機感を煽るようなデタラメな表現が目立つ。読売新聞は「日々の食卓にのぼるマグロ」と表現しているが、タイセイヨウクロマグロは日々の食卓に上るような魚ではない。毎日、クロマグロを食べているのは、高給取りの読売新聞社の社員ぐらいだろう。また、「大西洋のマグロは減っていないのに、ヨーロッパが資源囲い込みのために騒いでいる」というなら、読売新聞はマグロが減っていないという証拠を出すべきである。ICCATの科学委員会もFAOもデタラメだというつもりだろうか。
いまだに大本営発表の日本メディアとそれに踊らされる国民
「資源はどうなのか」、「ICCATの管理体制はどうなのか」というのは、ワシントン条約での規制の妥当性を考える上で、必要な判断材料である。最初に、こういう情報を、正確に伝えるのが、本来のメディアの役割である。少し調べれば、幾らだって情報はでてくる。俺自身も、いくつかのメディアの取材に対して、「こういう資料があります。国民にとって重要な判断材 料になるので、紹介してください」と教えたにも関わらず、すべて無視された。海外メディア経由であれば、幾らでも情報は手に入った。知らなかったとは考えづらい。日本のメディアは、判断材料を国民に隠した上で、情緒的な表現で煽って、予め決められた結論へと誘導したのである。
日本の消費者は、地中海のマグロ漁業の現実を理解した上で、なおかつ、「ワシントン条約の規制は欧米の保護団体のジャパンバッシングであり、規制ができなくて良かっ た」と心の底から言えるだろうか。ほとんどの人は、そう思わないだろう。むしろ、「本当に規制は不要なのか?」とか、「日本のマグロ輸入はこれで良いの か?」という疑問を持つはずだ。これらの事実を報道すれば、「欧米の理不尽な仕打ちに対する日本が被害者」という、水産庁に都合の良いストーリーが成り立たな くなる。情緒的な報道を繰り返して、水産庁の望む政策を支持するように世論を誘導してきたのである。
日本にとって、都合が悪い情報をすべて隠蔽して、情緒的な表現で煽っている日本のメディアと、そのメディアに踊らされて、日本中が「鬼畜英米に、勝った」とお祭り騒ぎ。未だに、大本営発表で世論が簡単にコントロールできてしまう日本という国に、危機感を感じる。
追記(2010 3/27)
この記事は極めて舌足らずですので、次の記事も読んだうえで、この問題について考えていただけると幸いです。
もう一つ、知っていただきたいのは、日本のクロマグロ資源の現状です。日本近海のマグロ資源には漁獲枠がなく、地中海以上に無秩序な状態です。未成魚を捕りひかえれば、大西洋から輸入している分は補えます。地球の反対の減少したマグロを捕る権利を主張するまえに、自国の資源管理にきちんと取り組むべきではないでしょうか。
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