世界の漁業 Archive
ウエカツ水産さまへのコメント
ウエカツ水産:
to:勝川さま
各国の事例を紹介いただき,ありがとうございます。そしてノルウエーの事例を知り,驚きました。というより,まさにそれが,私どものここ4年間で歩んできた道であったらからです(おそらく)。乗るウエー行政の,当面の場当たり的な妥協ではない,将来を見据えた調整能力を感じます。
私には、世界の漁業は一つの方向に向かっているように見えます。境港も試行錯誤の末、同じ方向に行き着いたというのは実に興味深い事例です。
過日この場をお借りして境港ベニズワイ漁業が各船個別割り当てに至った経緯を紹介させていただきましたが,それに対する勝川さんのご指摘には,今後の取り組みに向けて多くを学ばせていただきました。
そして今回のエントリーで,あらためて,過去も現在も含め,日本の多くの資源管理施策が“青い果実”であることを,はっきり認識いたしました(むしろ前浜が村有・郷有であった時代の共産的資源管理の方に結果として合理性があったように思います)。
小規模な閉じた社会であれば、「前浜が村有・郷有であった時代の共産的資源管理」でも良いと思いますが、当時の漁業と今の漁業ではずいぶんと違います。大規模化・効率化した現在の漁業に適した管理システムを模索しないといけないのですが、日本ではその取り組みが遅れています。
ひとつでも多くの地域,ないし漁業が,このようなイメージをきっかけに,自分たち,ひいては国民にとっての糧を子々孫々持続的に資源を利用できる方法を,“日常の中で”考えるようになれば,そう悪いことにはならん感じがいたします。少なからず希望が湧いてきました。
日本国内で個別漁獲枠というのは、貴重な事例ですので、いろいろ教えていただき、感謝しております。今後も当事者の観点から、いろいろとご教授ください。ちゃんと資源管理をすれば、日本漁業は必ず復活します。
ところで,
『日本以外の先進漁業国はおおむね条件を満たしている。
先進国では、乱獲を放置していたら、国民が許さないから、
行政もしかりとした対応をとらざるを得ない。
科学的なアセスメントをしっかりやって、その結果に従うことで、
資源の持続的利用への説明責任を果たしている。』
とのことですが,先進国(?)で乱獲が行われていることを,どこがどのように国民に伝えているのでしょうか。教えていただけませんでしょうか。
このような国民視野に立った事実の報道や行政としての対応というものは公務として当然のことであり不可欠と思うものの,実質あまり伝わっていないと思うので。
欧米では、環境保護団体の政治力が強いです。環境への関心の高さ故に、漁業は常に強い圧力と非難にさらされています。環境への関心の高さの副作用として、センセーショナルに悲観的な研究がもてはやされたりもします。たとえば、Wormの「2048年漁業消滅説」は内容にかなり無理がありますが、世界中で話題になりました。資源管理が機能している事例もたくさんあるのに、ちょっと悲観的すぎるようにおもいます。
この状況を打開する鍵は、漁業者以外への説明責任を果たすことでしょう。ノルウェーの漁業者ミーティングには、環境保護団体の代表も参加します。有権者の関心も高いので、漁業者の都合のみで乱獲などできません。ノルウェーの行政官は、「社会的な関心が無くなれば、漁業は良くない方向に必ず向かう」と言って、情報公開の重要性を強調していました。国民全体への説明責任を心がけているからこそ、第三者から見ても、合理的な資源管理システムになるのでしょう。
また加えて,我が国では「資源評価」なるものを「科学的に」といって算出しておりますが(水産研究所が独立法人化したこともあってか)魚種によっては無理矢理はじきだしている感もあり,結果として,現場の我々がサカナを獲りつつもヤセ我慢すればなんとかやれそうだと感じていても,一方で調整不能な(つまりそれに忠実に従って資源管理を実行すればその漁業自体が死滅するような)数値が出されているように感じておりますが,あれが「科学的アセスメント」と言うものなのでしょうか。これでは仮に行政や研究者が説明責任を果たしたところで,何の意味があるのかと思う次第です。
「魚種によっては無理矢理はじきだしている」というのは、その通りだし、自覚もあります。本来、ABCの数字を出せない資源に対して、無理矢理数字を出しても、信用を失うだけです。科学的なアセスメントの限界に対する説明責任を果たすべきでしょう。
たとえば、私が関わっている北海道では、ロシアに分布の中心があり、日本沿岸への来遊量で日本の漁獲量が決まる資源があります。ロシア側の情報が無いのだから、ABCなど計算できるはずがありません。でもABCは計算しないといけない。困り果てた水研の担当者が「この資源は、ABCが推定不可能と書きたい」と提案したところ、水産庁サイドから「委託事業だから数字は出してください」という話がありました
「ABCが計算不可能な資源に関しては、管理のあり方を見直す必要がある」というのは、何年も前からある話なのです。ただ、なかなかそこまで手が回らないのが正直なところでしょう。今回のTAC制度の見直しで、ぜひ議論をしてもらいたいものです。私としては、スケトウダラのオホーツクや根室海峡はABCの計算対象から外すべきだと思います。もちろん、分布の中心がロシアにあるからといって、何をしても良いと言うことにはなりません。未成魚はとらないような工夫をしつつ、来遊したものを有効利用すればよいでしょう。
- Comments: 0
- Trackbacks: 0
書評「築地 魚河岸三代目」
料理漫画といえば、お○しんぼが有名だが、もうぐだぐだみたいだね。美味しんぼに関してはここのレビューが秀逸。100冊まとめて振り返るとという、そのエネルギーに脱帽だ。
初期を「山岡アウトロー編」、その次を、栗田との恋愛関係を描いた「恋の鞘当て編」そして「東西新聞の危機編」最後に「もうただなんか食ってるだけ編」といった感じ。
この分析も実にわかりやすい。アウトロー編は楽しかったんだけどなぁ。
それはそうと、料理漫画といえば、これですよ、「築地 魚河岸三代目」。映画化されるみたいだから、人気があるのでしょう。
この漫画の特徴は、しっかりと一次情報に取材をしたうえで、事実をふまえてストーリーを組み立てていることろだろう。たとえば、21巻のハンスさんは実在するし、22巻の海和商店は亀和商店のことだろう。フィクションというよりは、ドキュメンタリーのような感じだ。取材をしないことで有名な某長寿漫画とはえらい違いだな。いろいろと勉強になることは多いんだけど、特に今日紹介する21巻と22巻は絶対に読んでおくべき。
21巻のみどころは、ノルウェー編です。三代目がノルウェーにいって、現地の漁業&サーモンの養殖を見学します。 ノルウェーの漁業を見た後の隠居(二代目)と三代目の会話が実に良い。
隠居 「近代的な捕鯨や遠洋漁業などの水産業は主にノルウェーから学んだのだよ。俺はノルウェーに来て日本の水産業はもう一度、ノルウェーを見習う必要があると思ったんだ。」
隠居 「ノルウェーの水産業がすばらしいのは、官・学・民の協力体制によって行われていることだ。」
隠居 「それは、官も学も民も同じ目的意識を持っているからだと思う。」
三代目 『同じ目的意識・・・』
隠居 「ああ・・・絶対にコモンズの悲劇を起こしてはならないという、強い共通の意志だ。」
俺もノルウェーに行って、ご隠居と同じことを思った。
22巻は「海を守るロゴマーク」の話が良い。MSCの生い立ちや現状がわかりやすく書かれている。俺がこれまで目にしたMSC関連の文章の中で、この漫画が一番わかりやすい。漫画には、漁業の現状を憂える千満四代目(小学生)が登場する。この四代目のストレートな発言が実ににすがすがしい。
四代目「ばかじゃないの?魚を獲るのが仕事なんでしょ!
魚を根こそぎ捕ったら絶滅しちゃうじゃん!
魚のすみかやえさ場まで破壊したりしたら、次からとれなくなっちゃうじゃん。
なんでそんなことがわからないんだよ!!」
四代目「やっぱり僕は無駄だと思うよ。
・・・
生産者側の意識が高くても消費者側の意識が低ければ話にならないんじゃないの?
・・・
そんな日本でMSCが広まると思う方がどうかしているよ・・・・」
まあ、実際その通りなのですが、それをどう変えるかを真剣に考えていかないとね。
- Comments: 0
- Trackbacks: 0
ノルウェーの漁業協同組合
ノルウェーの漁業協同組合について紹介しよう。ノルウェーの浮魚販売組合のサイトを見て欲しい。
http://www.sildelaget.no/default.aspx
この組合は、ニシン、サバ、シシャモなどの浮魚の販売を行っている。組合は、漁業収益の0.65%で運営されている。日本と違って、公的資金など1円も入っていない。漁業の利益があることが、ノルウェーの組合の死活問題であり、そのために必死の努力をしている。結果として、漁業者の経済活動をがっちりと組合が支えている。これが本来の組合のあり方なんだよね。補助金にあぐらをかいて、漁業部門で赤字を垂れ流す、某国の漁連とはえらい違いである。
ノルウェーでも、漁獲した魚は競りにかけられるのだが、日本とはシステムが違う。魚を捕ったら、漁師は船上で魚の量と体重組成を組合に報告する。組合はウェブ上でオークションを行う。オークションではもっとも高値をつけた業者が落札者となる。落札者は水揚げする港を指定するので、船はそこに向かう。と、まあ、そういうシステムだ。この販売組合は、オークションの全てを取り仕切っている。
トップページには、現在、漁業が行われている魚種、漁獲枠の消化割合や、過去1週間の平均落札額などを見ることができる。今はオフシーズンだから、情報があまり無いけど、これから徐々に賑やかになっていくことでしょう。
右下のCATCH AREAをクリックするとノルウェー近海の地図が表示される。
色がついたマス目が過去24時間に漁獲があった場所だ。色がついたマスをクリックすると詳しい情報をみることができる。
左から、水揚げの時間、船の名前、漁獲量(トン)、CTとMNはなんだか忘れた、%1から%4は魚体の大きさ。%1は一番大型で、この場合は、全て大型が100%ということになる。Averageは平均体重。Bid. areaとETAはオークションのなんかだ。でもって、Buyerが落札者で、Plantが落札者が指定した水揚げ場所だ。とまあこんな感じで、リアルタイムで漁業の状態を見ることができる。
このオークションに参加するには組合に登録する必要がある。登録しているのはノルウェーの業者ばかりではない。たとえば、スコットランドの業者が落札し、そのままスコットランドに水揚げをするというような例もあるらしい。事後処理が良い船の魚は、オークションで良い値がつくらしい。
- Comments: 0
- Trackbacks: 0
ノルウェー漁業の大まかな流れ
ノルウェーの漁業の全体図について説明をしよう。
魚を獲った漁師は、その場で、漁獲重量と体重組成を計測する。オークションシステムでは、正確な情報が流れることが重要なポイントである。 平均体重や組成の測定方法は、1トンにつき何尾計測するとか、細かいことまで決められている。測定がいい加減な船は、信用を失うために、オークションでの落札額が低くなる。漁業者の申告と水揚げ内容が違うというクレームがあれば、組合の職員が必ずチェックを行う。不正確な報告をした漁業者にはしっかりと技術指導をする。
漁業者は携帯電話で、漁業組合に漁獲の内容を伝える。この部分を電子化するための取り組みも行っているようだ。
漁業者から漁獲の情報を受け取った漁業組合は、インターネットのオークションサイトに情報を掲載する。このオークションの様子は世界中に公開されている。ただし、入札をするには、組合から入札資格を得る必要がある。入札資格を得るには、ちゃんとした水揚げ場所をもっていることと、保証金が必要。
落札者が決定すると、落札者が指定した港に水揚げに行く。水揚げとその後の冷凍処理については、動画を参照して欲しい。
こうして冷凍されたものが、商社を経由して世界中に輸出されていく。
- Comments: 0
- Trackbacks: 0
ノルウェー漁業の情報公開
ノルウェーでは、ありとあらゆる情報が公開されていることに、大変な衝撃を受けた。
組合のページを見れば、どの船が、いつ、どこで、どの大きさのどの魚をどれだけ獲ったかが一目瞭然だ。
また、バイヤーとして登録すれば、落札額なども見ることができる。
その情報は、伝票システムで幾重にもチェックされているので非常に正確なのだ。
ノルウェーでは、魚が取引されるたびに伝票(sales note)が発生する。
伝票には、ありとあらゆる情報が記述されている。
売り手、買い手、漁業者、漁船、漁船所有者、魚種、重量、漁具、航海番号、漁場番号、漁獲枠の種類、etc
魚が漁業者→加工業者→輸出業者と流れていくたびに伝票が組合と管理当局に提出される。
伝票の整合性は細かくチェックされ、不正のにおいがする倉庫には抜き打ち検査が入る。
俺が見学に行った加工場でも、全ての箱に下の写真のような伝票が張ってあった。
この伝票から07年10月20日に漁獲された400-600gのサバが70kgあることがわかる。
伝票番号も記載されているので、漁獲されたときからこの場所までの経緯を、即座にたどることができる。
不正の疑いがある場合は、箱の中身と伝票が一致するかどうかをチェックする。
伝票と倉庫の中身をつきあわせることで、不正があれば確実にばれるだろう。
ノルウェーでは組合のオークションを通さない魚の売買は禁止されている。
オークションの情報がそのまま水揚げ統計になるのだ。
さらに、水揚げをするときに、再び正確な重量を量る。
そして、魚が移動するたびに、必ず伝票が組合に提出される。
また、倉庫に保管してある魚にもすべて伝票の写しが張ってある。
トレーサビリティーもばっちりだ。
もちろん、公開性を高めることは短期的にはデメリットもある。
毎日の落札金額が世界中に公開されているし、気が利いた人間なら輸出業者の在庫量まで逆算できるだろう。
こうなると、買い手はノルウェーの輸出業者の足下を見ることもできる。
また、アイスランドなど他の漁業国が、ノルウェーよりも安い値段を提供して商談をまとめる場合もあるようだ。
短期的に見ると、ライバルに出し抜かれ、ビジネスチャンスを失うこともあるだろう。
「こんなに公開しちゃって、漁業者は反対しないの?」という質問を組合の人にぶつけてみたところ、
「もちろん、公開には消極的な意見もあるが、全体的には透明性を高める方向の意見が多い。
現在の情報公開は、民主的な結果である。
社会的な合意を得ながら徐々に公開を進めて、現在の水準に時間をかけて到達した。
今後の情報公開の方向性に関しても、議論を通して決めていくことになる」という答えが返ってきた。
出し抜くことで勝てるのは一瞬だ。長い目で見れば信用がある方が勝つ。
信用を高めることが長期的に見れば利益につながるという確固たる信念がノルウェー漁業にはある。
そして、ノルウェー漁業の成功は、彼らの考えの正しさを裏付けている。
信用こそが、日本ブランドの最大の武器であったはずだ。
現在、日本社会では信用が急速に失われつつある。
信用の価値が世界で失われてしまったわけではない。
ノルウェー漁業は信用の価値を高めて、しっかりと利益をあげているのだ。
信用の価値が失われている日本と、信用の価値を高めているノルウェー漁業はどこが違うのだろう?
日本とノルウェーでは、「信用」の意味が本質的に違うのだと思う。
日本社会は「調べずに安心」を前提としているのに対して、ノルウェー漁業は「調べて安心」を徹底している。
特に輸出をしようというなら、今の日本の信用システムでは、ノルウェーとは勝負にならないだろう。
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2008/01/post_288.html
- Comments: 2
- Trackbacks: 0

