資源管理の歴史 Archive
漁業資源と国境を守るために、日本は何をすべきなのか
1つ前の記事で、自国の乱獲を棚に上げて、中国を非難する日本のテレビ番組を批判しました。日本は過去に乱獲をしていたから、中国の乱獲を容認すべきという意図ではありません。「日本と中国のどちらが正しいか」という話ではなく、「どちらも正しくない」のです。日本の乱獲も、中国の乱獲も、出来るだけ早く止めるべきです。ただ、日本がまず取り組むべきは、国内問題である自国の資源管理であり、それをしない限り、中国との関係も変えられないと思うのです。
乱獲にはいくつか種類があって、それぞれ対処法や日本漁業への影響が異なっています。ざっくりと、以下の4つに分類して、それぞれの傾向と対策をまとめてみました。
1.日本の過去の乱獲
日本の過去の乱獲については、当時は乱獲を規制するルールがなかったし、1970年代までは、日本の動物性タンパク質の供給が足りていなかったのだから、当時としては仕方がなかった面もあるだろう。いまさら乱獲してきた過去を変えることはできない。乱獲によって多くの漁場を破壊してきたという事実を認めた上で、そこから学ぶことしかないのである。
2.日本が自国のEEZで現在も行っている乱獲
日本が排他的経済水域(EEZ)の水産資源の排他的利用権を得ているのは、国連海洋法条約のおかげです。日本は国連海洋法条約に批准することで、沿岸から中国船・韓国船を追い出して、自国のEEZで排他的に漁業を行っているのです。国連海洋法条約は、持続的管理の見返りとして、排他的利用権を認めています。「海洋資源は人類共有の財産なのだけど、管理人が必要なので、沿岸国が持続的に管理するなら、排他的に利用して良いよ」ということです。
日本は、EEZを排他的に利用しているにも関わらず、自国の乱獲は放置したままです。権利を享受しながら、義務を怠っているのです。日本政府は自国漁船の乱獲を取り締まる気などありません。「漁業経営に重要だから」とか、「安定供給も必要だ」とか、訳がわからない理由を並べて、乱獲を放置してきました。日本では、乱獲を規制する法律がほとんど機能していないので、乱獲をする日本の漁業者は違法ではないのですが、乱獲状態を放置し続けている日本政府の姿勢は、海の憲法と呼ばれる、国連海洋法条約の理念に反しています。
日本の漁業が衰退している要因は、乱獲で間違いないのですが、乱獲の主体は日本の漁業者です。北海道や本州太平洋側は、日本一国で占有している漁業資源が大半ですから、国内漁業を規制すれば、日本漁業の衰退はかなりの部分を食い止められるわけです。日本政府がきちんと漁業管理をして、乱獲を抑制すれば、日本の漁業は持続的かつ生産性な産業に生まれ変わります。
3. 中国が日中暫定水域で行っている乱獲
まずは、日中暫定水域について説明をします。1997年に締結された日中漁業協定において、日中の双方が領有権を主張している場所には、暫定措置水域が設置されています。暫定措置水域内の漁業には次のような取り決めがあります。
- 日中双方の漁船が相手国の許可を得ることなく操業できる
- 操業条件は、日中共同漁業委員会が決定する
- それぞれの国が、取り締まり権限を持つのは、自国の漁船のみ
- 相手国の違反を発見した場合には、漁船に注意喚起すると共に相手国に対して通報することができる
今、暫定水域で操業をしているのはほとんどが中国船です。日本船は数える程度しかいない。規制をしたところで、日本漁船には影響がほとんど無いのです。日本は、乱獲で資源を潰しておきながら、自国の漁船が撤退したら「規制を強化しよう」と提案しているわけです。欧米の捕鯨国と、何ら変わりがありません。
では中国が日本の提案を飲むかというと、飲むわけがない。中国にとって、撤退済みの日本と共同管理をするメリットは何もないのだから。日本国内でいくら中国を非難したところで、外交的に見れば、何の得にも成りません。はっきり言うと詰んでいるわけです。
4. 中国の日本のEEZ内での違法操業
これは問答無用の違法操業ですから、中国当局と連携して、きちっと取り締まらないといけない。 漁船の監視には、Vessel Monitoring Systemという機器の導入を義務づけるのが効果的です。これは1時間に1度ぐらいの頻度で漁船の位置情報を管理当局に強制的に報告する装置です。すでにほとんどの漁業先進国では導入が義務づけられています。ちなみに、ロシア領で操業をする日本漁船にはすべてVMSの導入が義務づけられています。日本近辺で操業する中国船にはVMSの導入を義務づけるべきです。
合法? | 対応可能性 | 日本漁業への悪影響 | 管理主体 | やるべきこと | |
1 日本の過去の乱獲 | ○ | × | ○ | 過去の失敗に学ぶ | |
2 日本が自国のEEZで現在も行っている乱獲 | × | ○ | ◎ | 日本政府 | 自国の資源管理 |
3 中国が日中暫定水域で行っている乱獲 | ○ | △ | △ | 地域漁業管理期間 | 公海での管理の枠組みをつくる |
4 中国の日本のEEZ内での違法操業 | × | ○ | △ | 日本政府と中国政府 | 中国政府と連携して取り締まりの強化 |
結局、日本は何をすべきなのか?
日本の国益(漁業資源と国境の維持)という観点から、未来志向で何をすべきかを整理してみよう。
優先順位が一番高いのは、日本のEEZの資源管理をすることです。日本の漁業が衰退している主要因は日本漁船による乱獲。たとえば、スケトウダラやハタハタの例を見ればわかるように、今のまま乱獲を放置し続ければ、中国漁船がいなくても、日本漁業の消滅は時間の問題です。自国の漁業管理は、完全に国内問題ですから、これが出来ていないのは政府の怠慢。日本は実に幸運なことに世界第六位の広大なEEZをもち、その中に世界屈指の好漁場がすっぽり含まれている。国内漁業の規制をするだけで、太平洋・北海道の漁業の生産性は改善できる。また、日本海側にしても、日本のEEZでほぼ完結する資源は多い。ちゃんと手入れをすれば、自分の庭から大きな利益が期待できるのである。こんなに恵まれた国はなかなかない。たとえば、ノルウェーは水産資源のほとんどをロシアとEUと共有している。苦労して国際交渉をしながら、資源管理をしている。ちなみにノルウェーがEUに加盟しない理由の一つが水産資源管理です。ノルウェーはEUの資源管理(共通漁業政策)よりも、かなり進んだ資源管理を行っています。自国の資源管理をEU水準に落として、漁業の生産性を下げたくないのです。
日本がやるべきことは、ノルウェーやニュージーランドのような資源管理先進国の成功から謙虚に学び、資源管理をすることです。つまり、産卵親魚の保護と、未成魚の漁獲規制をすると言うこと。こういった当たり前のことをしないで、国内の乱獲を補助金で支えているから、日本の漁業が衰退するのは当たり前です。政治家も官僚も、国内の漁業者から猛反発を受けるので、自国の乱獲という国内問題を避けてきました。「日本の漁業者は意識が高くて、自分たちで資源管理をしているから、公的機関は何もする必要が無い」という神話を作り出して、何もせずに今に至っています。日本の漁業が衰退しているのは、中国のせいではなくて、日本の責任です。
日本の国境を守るには、離島の漁業を守る必要がある
離島に日本人が住んでいる限り、その島が日本の領土であることは疑問の余地がない。しかし、無人島になってしまえば、そこを守るにはコストがかかるし、実効支配されたら打つ手がなくなってしまう。日本の領海を守るには、離島に日本人が住み続ける必要がある。そのために、欠かせないのが離島の雇用です。
離島の基幹産業は、バブル期までは建築業でした。離島に補助金をつけて、誰も通らないような道や誰も使わないような港や公園を作りまくったのである。島の人口の半分以上が建築業で、観光資源の自然を公共事業で破壊しているようなケースが多かった。バブル崩壊以降、公共事業が縮小された関係で、建設業の雇用が減っている。残された産業は漁業と観光ぐらいしかない島が多い。
日本海側の離島の漁業には、中国・韓国との競合が少なからぬ影響を与えているのは事実です。しかし、離島の漁民の悩みの種は、日本本土の大型船による乱獲です。日本の漁業従事者のほとんどは沿岸漁業者であり、9トン程度の小型船で日帰りで漁に出る。つまり、日本のEEZ内で操業をしているのです。かつて八丈島にはサバ棒受け網漁業が栄えたのですが、日本の巻き網船のサバ未成魚を乱獲によって、漁場が消滅し、漁業自体が消滅してしまいました。巻き網漁船の乱獲によって、日本海の一本釣り漁業は窮地に立たされています(参考:壱岐漁業者インタビュー)。
韓国との国境の島である対馬でも、漁業は厳しい状況の置かれているのです。先日、対馬市が島の漁業者を集めてワークショップを行ったのですが、日本本土の巻網船をなんとかしてほしいという声が大きかったです。対馬の周辺漁場に魚群がまとまると、長崎あたりから大型巻き網船が来て、根こそぎ魚を持って帰ってしまうのです。中国船・韓国船は暫定水域までしか入れないのですが、日本の大型船は、対馬の沿岸3マイルまで入って操業できるので、地元の小規模漁業に多大な影響を与えています。対馬では大型船の線引きをもう少し外にしてほしいと、陳情していますが、何十年も放置されたままです。島の基幹産業である漁業がこのまま衰退していけば、対馬には韓国の観光地として生き残る以外の選択肢がないでしょう。国防の観点から、離島の漁業を守るのは、国益上重要ですが、そのためにまずやるべきことは、国内の資源管理なのです。
中国の膨張を止めるには・・・
中国漁船の規制は、相手があることだから、日本の思い通りには進みません。中国政府は、日本政府よりは、資源の重要性を理解しているので、近いうちに漁業管理を始めるはずですが、その際には、国内の規制として進める可能性が高い。共同水域の漁場をすでに実効支配している現状で、中国にとって、日本と共同管理をするメリットが無いからです。この海域の資源管理秩序を日本主導で打ち立てるには、日本が実効支配していた時期に、手を打っておく必要がありました。残念なことに、当時の日本政府は、自国の漁船に出来るだけ多くの魚を捕らせることしか考えていませんでした。まあ、今も似たようなものだけど・・・
日中漁業協定については、こちらのサイトが詳しいです。1975年の漁業協定はつぎのようなものでした。
中国沿岸部よりに6つの漁区が設けられ,そこでの底引き網・まき網漁業について船舶の隻数や網目に関して制限が設けられている。これは以前から懸念されていた日本側漁船の中国沿岸における乱獲,およびそれに伴う資源枯渇を意識したものであり,当時の日本漁業の中国漁業に対する圧倒的な優勢を前提としたものであった。
つまり、「中国の沿岸は手加減してやるけど、沖合は俺たち日本が好きなように獲るよ」という協定だったのです。この時期に「この海域の資源をしっかりと共同管理しよう」と日本が提案していれば、ほとんど操業実績が無い中国は、一も二もなく賛成をしたでしょう。その当時に、「過去の漁獲実績ベースで、漁獲量を厳しく規制する」というような枠組みをつくっておけば、中国漁船はそう簡単に進出できなかったはずです。今となっては、後の祭りだけど。
歴史は繰り返すと言いますが、1960年代に日本が世界中でやっていたことを、今度は中国からやられているのです。ノーガードで打ち合っても、コストが高い日本漁船に勝ち目はありませんし、その前に資源が崩壊するでしょう。漁場を実効支配されている中国には、日本のために妥協をするメリットがないのだから、一筋縄ではいかない。中国の乱獲に対する日本国内の世論をいくら高めたところで、中国サイドから見れば「負け犬の遠吠え」です。
ただ、方法が全くないわけではありません。日本は自らの苦い歴史から学べば良いのです。中国の膨張を食い止めるには、欧米諸国が日本漁業を封じ込めるときにやったことをやればよい。つまり、資源の持続性や生態系保全という大義名分で、他の先進国と共同戦線を張って、規制を導入させるのです。これ以外に選択肢はないでしょう。残念なことに、日本の水産外交は全く逆のことをしています。ワシントン条約の締約国会議でも、中国と組んで、ありとあらゆる規制に反対をしています。日本漁船の国際競争力は低下しており、自由競争をして勝てる状況にないのに、すべての規制に反対をして、中国の膨張をアシストしているのです。追われる立場になっているのに、追う側と一緒になって、規制に反対しているのだから、つける薬がありません。
生態系保全の必要性を国際世論に訴えるには、自国の乱獲を止めるのが必要条件です。海外では、日本の乱獲はよく知られているので、今のままで問題提起をしても、「まず、おまえが乱獲を止めろ」と鼻で笑われるのがオチです。
結論
日本政府は、資源管理をして、自国の乱獲を止めさせること。それにつきます。自国の漁業を規制すれば、日本漁業が抱える問題の多くは解決します。逆に、自国の乱獲を放置したまま、中国を非難していても、国際世論の支持は得られないし、日本の漁業が衰退して、離島が浸食されていくのは時間の問題です。
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なぜ入口管理は機能しないのか? その2
- 2009-12-15 (火)
- 資源管理の歴史
なぜ入口管理は機能しないのか? その1の続きです
入口管理の失敗の歴史を振り返ってみよう。入り口管理は、一般的に、ライセンス制度→エフォートコントロール→テクニカル・コントロールの順番に進んでいく。そして、結局は思ったような効果が得られず、出口規制が導入されることになるのである。
1)ライセンス制度の導入(Limited Entry)
1960年代ぐらいから、漁業国の多くは、自由参入による過剰な漁獲圧を防ぐことを目的に、ライセンス制度の導入を始めた。ライセンスを持たない人間は、漁業から排除された。ライセンス制度によって、漁業者の数を制限することが可能になった。しかし、そもそも、漁業者が多すぎた上に、個々の漁業者が漁獲能力を増強させたために、ライセンス制度のみでは、何の抑制効果も得られなかった。
2)エフォート・コントロール
次のステップとして、出漁日数等のエフォート・コントロールが導入された。しかし、これらの取り組みはほとんど機能しなかった。絶え間ない技術革新によって、漁船の能力が飛躍的に向上したからである。出漁時間・日数が限られると、漁業者は短期間により多くの魚を漁獲をするために、設備投資を行う。早どり競争が激化し、結果として、漁獲能力がさらに押し上げられる。
漁船の性能は日進月歩である。出漁隻数や、出漁日数を制限したところで、個々の漁船の能力が急激に進化すれば、元の黙阿弥である。漁船の能力は、船の大き さ、エンジンの馬力、漁具の種類、魚群探知機などの電子機器、漁労長の能力など様々な要因に左右される。新しい漁具漁法の開発によって、漁船の漁獲能力は 年々向上している。これをTechnology Creepと呼ぶ。豪州で漁船の漁獲能力の増加を定量化したところ、年間3~5%程度であった。最近はソナーの登場によって、漁獲能力が一気に跳ね上がっ た。
例えば、マグロの一本釣りで有名な大間では、マグロの漁獲量は安定しているのだが、ソナーをつけた船が釣果を伸ばす一方で、ソナーが無い船はほとんど 釣ることが出来ない状態が続いている。大間に来遊するマグロの群れは年々減少しているのだが、低水準資源を効率的に漁獲するテクノロジーの進化によって、 漁獲量を維持しているのである。
3)テクニカル・コントロール
そこで、漁船のサイズ、エンジン、漁具、漁法、など漁獲努力量に影響を与える要因を細かく規制するテクニカル・コントロールが導入することになった。しかし、これも十分な効果を上げることが出来なかった。漁業者はルールの下で、漁獲を増やすように工夫をするからである。
以前は、漁船を見ればその国の規制がわかると言われていた。欧州は船の長さを制限したので、コロコロと丸い船体になった(写真)。一方、日本はトン数を制限したので、居住空間を極限まで切り詰めている。結果として、日本の漁船は、船室の屋根が、腰の高さまでしか無い場合も多い。漁業者は常に規制の影響を最小にするように工夫をする。その結果、規制は当初考えられていたような効果を得ることが出来ない。また、規制に適応するために無駄なコストがかかる。船体を丸くすれば燃費が悪くなるし、住居スペースが狭くなれば、労働環境が悪くなる。思ったような効果が得られないばかりか、漁業の生産性を損なうことになる。
テクニカル・コントロールは、効果がない割に、規制を守らせるのが難しいという問題もある。日本では、漁船のエンジンの馬力や、集魚灯の光量に規制を設けているが、あまり遵守されていないのが実情である。漁船の検査が終われば、エンジンを載せ替えたり、不正はいくらでも出来る。入り口規制で、漁獲圧をコントロールしようという試みは、終わることのないイタチごっこであった。
テクニカルコントロールは、徒競走を障害物競走にしたようなものであった。障害物の数を増やしたところで、漁業は障害に対して適応し、漁獲を増やしていく。漁業者に余計なコストを課すだけで資源は守れなかったのである。
1960年代、1970年代は、世界の漁業管理の中心は、入口規制であった。しかし、入口規制は、漁業者のより多く獲りたいという欲求の前には無力であった。食材をローファットに変えたところで、食べる量が増えていけば、ダイエットには成らないのである。量を規制するしかないというのが、世界の共通認識となっている。出口規制で総量をコントロールした上で、混獲を減らすためにテクニカルコントロールを併用するというのが、今日では一般的なアプローチである。
もちろん、全てのものには例外がある。欧州では、出漁日数を漁船べつに割り振るIEQ(Individual Effort Quota)が成功を収めている例もある。ただ、この方法が機能するのは、EUがITQを選んだ理由でも書いたように、努力量と漁獲量が強い相関を持つ場合、すなわち、船や漁具の規格化が可能な小規模な漁業に限定されるでしょう。また、そういう漁業でも、ソナーのような道具が入ると、努力量当たりの漁獲量が跳ね上がることはあり得る話なので、漁獲量のモニターは必要でしょうね。
つぎは、出口管理のことを書きます(つづく)
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なぜ入口管理は機能しないのか? その1
読者のI. Sakaguchiさんから、次のようなコメントをいただいた。
これは重要な問題だと思うので、少しまとめてみよう。
議論の前提として、用語の整理をしておこう。漁獲圧を規制する方法としては、入口規制と出口規制の2つのアプローチがある。
1)入口規制
出漁する船の数、出漁時間、曳網回数などに上限を設けるアプローチで。出漁時間など漁獲努力量を制御するエフォートコントロールと漁具や漁法の規制をテクニカル・コントロールが含まれる。2)出口規制
港に水揚げされる漁獲物の量を規制するアプローチ。全体の漁獲枠を早い者勝ちで奪い合うオリンピック方式と、漁獲枠を予め個々の経営体に配分する個別漁獲枠方式がある。
沿岸国による一般的な漁業管理は、以下のような順序で進化した。
1)ライセンス制度
↓
2)テクニカルコントロール
↓
3)漁獲枠(オリンピック)
↓
4)個別漁獲枠
こういう順序になるのは、理由がある。1)から4)の順に、導入のハードルが高くなるのだ。どの国も、入れやすい制度から順次導入していったが、効果が無かったので、徐々に管理のハードルを上げていき、結果として個別漁獲枠に到達したのである。
ここで、注意しておくべきことは、それぞれの方法はAlternativeではなく、併用される点である。ほとんどの漁業は、ライセンス制度を導入した上で、テクニカルコントロールも行い、漁獲枠を設定した上で個別配分している。国内の有識者は「入口規制と出口規制のどちらが優れているか」というような議論を延々としているのだが、そういう議論をすること自体が無知の証である。
「入口規制のみでは、水産資源の持続的利用は無理」というのが、世界の漁業国の結論である。水産庁は、かたくなに出口規制を拒んでいるのだが、日本の漁業がなすすべもなく衰退していることからも、入口管理では不十分なことは明らかであろう。
(つづく)
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