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オーストラリア Archive

豪州政府は燃油価格の高騰に対して、補助金ではなく、資源管理で対応するらしい

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燃油の価格が高騰しているのは、日本だけではありません。海外ではいったいどのようになっているのでしょうか?

オーストラリアは燃油高騰対策の補助金が不要だそうです。実際に業界からも要求がほとんど出てこないというから、驚きです。そして、その理由が資源管理をしているから、というので、またまたびっくり。

インタビューをしたのは、オーストラリアの資源管理機関AFMA(Australian Fisheries Management Authority )のExecutive ManagerのNick Rayns氏です。つまり、政府の漁業管理機関の責任者。このインタビューは実に興味深いです。

豪州では規模が大きい漁業からITQを導入している最中です。ITQを導入した漁業では、産業が変化に対して柔軟になるから、不満はでないそうです。豪州では、船ごとに獲れる漁獲量が決まっているので、漁師は毎日海に出る必要はありません。利益を出せない漁業者は、その年の漁獲の権利を他の漁業者に売って利益を得ることも可能です。
水揚げの効率化が進むことで、産業全体としては利益を確保できるので、魚を獲りに行く漁業者も、魚を獲らない漁業者も補助金が無くても問題はない。

ITQがまだ導入されておらず、網目規制や漁期規制のみで管理をしている漁業もあります。そういう漁業では、漁に出なければ収入はゼロです。みんなが漁に出ても、みんな赤字という状況になるので、漁業者からは不満の声が上がっているそうです。燃油価格が上がると採算がとれなくなる漁業に関しては、燃油の補助金を配るのではなく、ITQへの移行を進めるというのが、豪州政府の方針だそうです。

いやぁ、実に明快ではないですか。目から鱗でした。
詳しくは下のビデオを見てください。

成田より

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今から海外出張です。
行く先は、オーストラリアとニュージーランドです。
異動後、いきなりで申し訳ないですが、今しかタイミングが無いのです。

IQ, ITQについては、導入するかどうかの段階は終わり、
今後はどうやって導入するかを議論する段階に入ってきました。
ところが、日本国内にはIQ, ITQのノウハウが全くない。
国内で議論をしていても、未経験者が文書で得た知識を披露しあうだけで終わってしまう。
中学校男子の修学旅行の夜の会話(?)みたいな状態ですな。

これでは埒があかないので、豪州、NZに行って、ITQ経験者の話をたっぷりと聞いてきます。
理論的にITQが良いというのは明らかなんだけど、
実践はどうなっているのかを、しっかり見てきますよ。

  • そもそもどういう経緯でITQを導入しようと思ったのか?
  • 漁獲枠の初期配分はどうしたのか?
  • 導入当初の漁業者の反応は?
  • 今になって、振り返るとITQで良かったと思う?
  • 寡占化はどうなのか?
  • 現在の問題点は?

というような質問を向こうの行政官・漁業者にぶつけて来ます。

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なんだか、とてもワクワクするなぁ。

きっと、忘れられない旅になる

鯨食非難の原因は、食品に対する無知と想像力の欠如

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オーストラリアの「クジラ食べるのは野蛮な行為」という偏見の根底には、
人種差別と言うよりは、自分たちが食べているものに対する無知があると思う。
それは、豪州人のみならず、我々日本人にも当てはまる現代病である。

我々はスーパーマーケットでパックに詰められた加工済みの肉を買う。
その肉がどのようなプロセスで生産されたかを消費者は知らない。
だから、肉を食べるときに罪悪感を感じることはない。
それは、想像力の欠如である。
生産に関する情報は完全に遮断されている。
それは、罪悪感を感じたくない消費者と、
食べる側の罪悪感を払拭して売り上げを伸ばしたい生産者の双方にメリットがある。
消費社会において、食品生産の現場に関する想像力は退化する一方である。

そういった想像力が欠如した中で、
豪州では、クジラに関してのみ、生産現場のショッキングな情報が流された。
それが出来たのは、彼らの国に捕鯨産業が無いからである。
ショッキングな情報に対する豪州人のリアクションはリテラシーによって異なる。
脳髄反射的に野蛮な日本人を攻撃する人間もいれば、
その背後にある問題を捉えた上で「でも牛も豚もそうだよね」と考える人間も大勢いる。
前者がYoutube、後者が新聞とメディアを棲み分けているのも面白い。

豪州人の想像力の欠如に対して、とやかく言う資格は日本人にはない。
日本でも、食品生産の現場に関する想像力は欠如している。
例えば、トンカツ屋のメニューにかわいい豚のイラストが描いてあって、
「このかわいい動物を食べてるんだよな」とげんなりしたことがある。
「この店は無神経だ」と思う反面、「それが事実だと受け止めた上で、
豚に感謝をして食べないといけない」とも思った。
そのイラストを採用した店の側には、
かわいい豚のイラストと調理された豚肉をつなぐ想像力が無い。
俺にしても、その瞬間に少し嫌な気分になっただけで、
普段は何も考えずに、食べているだけだ。 

庭で飼っていた鶏を締めて食べるといった経験を、我々の多くはしていない。
手の中で必死にもがく生き物を殺した経験など、殆どの人が無いだろう。
一方、我々の食を支えるために、毎日、どれだけの動物がもがきながら殺されているか。
我々は自分の手で生き物を殺さないという特権を、金で買っている。
自分の手を汚す代わりに、金を払って、代わりに殺してもらっているだけである。
それによって、道義的な道義的な罪悪感を感じずに済んでいる。

想像力の欠如は、クジラに関しても同様だ。
たしかに、クジラに感謝する鯨塚のようなものはあるし、
昔の日本人は食べ物に対する感謝の感覚を持っていたのだろう。
その感覚を現代の日本人は失いつつある。
明治以前は殆どの日本人はクジラを口にしていなかった。
日本人の多くがクジラを口にしたのは食糧難の時代であり、
文化というよりは栄養的なものが背景にあった。
自分自身が給食でクジラ肉を食べるときにも、
その他の肉と同様にその生産過程には無関心であった。
現在は、クジラが希少価値ゆえに有り難がられているだけで、
スーパーに普通に並ぶようになったら、他の食材と同じように、
ただ、買ってきて食べるだけのものになるだろう。

Youtube 白豪主義オーストラリアと反捕鯨

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日本人が作った豪州の反捕鯨を非難するビデオが話題になっている。

http://www.youtube.com/watch?v=e8lvep0-Ii0

このビデオは、とても良くできている。
全体の構成も、素材の選び方も、間のとり方まで上手だ。
日本の職人は質が高いねぇ。
でもって、youtubeのコメント欄が2ch化してて笑った。

豪州の新聞もこのビデオのことを取り上げている。
http://www.news.com.au/story/0,23599,23014405-421,00.html
こちらのコメントの方が質が高い。

Has anyone seen how pigs, cows, chickens, etc are being slaughtered? Given that whales are not an endangered species, why is whaling any different from slaughtering of any other types of animals for food? Check out the youtube clip which shows how pigs are slaughtered. Maybe we should ban pork as well? And beef? And chicken? And lamb? http://www.youtube.com/watch?v=IJTBNz5UeTc

Posted by: Adrian of Sydney 2:23pm January 07, 2008
Comment 349 of 424

こういうコメントを見ると、このビデオが一定の効果をあげていることがわかる。
豪州人向けの反捕鯨プロパガンダに日本人がつっこみを入れる。
それを豪州人が見て、いろいろと議論をしている。
なかなか面白い時代になったものだ。
クジラは聖なる動物だから守れと言うコメントは少数派で、
「まあ、俺たちもチキンもポークも食べるしな」という意見が多い。
反捕鯨陣営のプロパガンダは過激だけど、ここのコメントを読む限り、
十分に落としどころを探っていけそうな雰囲気がある。

豪州が日本の調査捕鯨に厳しく反対するのは人種差別と言うよりは、
自分たちの庭(と彼らが思っている)の南氷洋で獲ってるからだろう。
ノルウェーと同じように自国の沿岸で獲るのなら、
ノルウェーの捕鯨と同じように生暖かい反応になるんじゃないか?

俺個人の意見としては、人種差別の部分は削って、
オーストラリアの動物殺害とクジラ資源の持続性に絞った方が良かったと思う。
たしかに、一部の反捕鯨運動の背後には人種差別意識はあると思う。
だからといって、そこを徹底的に突くのは戦術として上手くない。
人種差別意識というのは長い世代をかけて、徐々に溶かしていくべき部類の問題だろう。
クジラなんかとは比較にならないぐらい根深い問題だ。
より根深くて、解決に時間がかかりそうな問題と結びつけるのは下策だろう。

個人が作ったビデオが大きな影響力を持つ時代になった。
こういうのは、面白いのでどんどんやってもらいたいものだ。
お互いに接点が増えれば、徐々に雪解けに向かっていくのではないだろうか?

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from 18 Mar. 2009

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