魚価が安いのは消費者のためか?

日本の水産資源には、大変高い価値がある。にもかかわらず、日本の漁業は利益を出せない。漁業者は、魚の値段が安すぎると愚痴をこぼしている。確かに、日本の魚の浜値は涙が出るほど安い。サバの場合、ノルウェーから輸入するとキロ単価が260円、銚子の平均単価は50円~70円だ。では、このような安い浜値は、消費者の利益になっているのだろうか。俺は、全くそうは思わない。

魚の値段が安い理由は、次の2つが考えられる。

1)質が高い魚を、安く売っている
2)質が低くなるようなとりかたして、値段相応で売っている

銚子の漁業者が、260円の価値がある魚を50円で売っているなら、消費者にとって、ありがたい話である。でも、もしそうなら、日本の商社がノルウェーから260円のサバを買ってくるはずがない。日本の漁業者が水揚げする、小サバには50円の価値しか無いのである。大きくしてから、旬に獲れば、日本のサバはノルウェーのサバに勝るとも劣らない。ちゃんと獲れば、260円以上の価値がある魚を、90年代は40円の養殖の餌にしていた。最近は、中国に輸出して、80円(送料を引いて50円)になったといって、喜んでいるのである。

現在、銚子の大型巻き網船が水揚げしているのは、0歳1歳の小型魚である。養殖の餌か途上国に輸出するかの二択である。乱獲によって、価値が出る前に獲り尽くしているのである。食用の日本のマサバを必要としていて、かつ、高い値段を支払う日本人は食べるサバがない。一方で、安ければ何でも良い養殖魚や、中国人にサバをたたき売っているのである。日本のサバは、世界最低の値段しかつかないような、世界最低の漁業なんだけど、それをあろうことに、水産庁の人間が「日本のサバ漁業の価格競争力は世界一でございます」と開き直る。これは全くの詭弁である。価値のある魚を安く提供しているのではなく、価値が無くなるようなとりかたをして、限りある資源を無駄にしているのだ。

もちろん、養殖の餌も必要だろうが、低水準のマサバ資源を使う必要は無い。北巻の連中は、90年代には「養殖の餌も食糧供給に需要だから、小さいサバも必要だ」とか言ってたくせに、最近は「中国のほうが10円も高く買うのだから、輸出は、全く理にかなった経済的行為でございます」とか、コロッと言うことが変えるから、呆れてしまうね。目先の利益のみを追求し、後付けで、屁理屈をこねて正当化しているだけだ。そもそも、養殖の餌になるようなサイズのサバを獲ること自体が、経済的に合理的じゃないだろうに。

もちろん、価値がある魚を安く提供している良心的な生産者も存在する。子供たちに美味しい魚を食べてほしいから、採算度外視で、安く給食に魚をおろしている生産者もいるが、例外的な存在である。ほとんどの場合、質が高い魚を安く提供しているのではなく、安くしか売れないような無駄な漁業をしているのである。そして、魚価が安すぎると消費者に逆ギレをするのだから、どうしようもない。税金を食いつぶしながら、限りある自然の生産力を破壊する無秩序漁業で得をする人間などいない。価値がある魚を安定供給して利益を出す漁業の方が、消費者にはよほど利益がある。

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魚価が安いのは消費者のためか? への0件のフィードバック

  1. 沿岸漁業の一漁師 のコメント:

    >2)質が低くなるようなとりかたして、値段相応で売っている

    実態はこれですねw。

    そしてビジネスモデルを確立した業者(Aとします)が出てくると『Aと同じ品質管理で3割安い』『Aと同じ海域で半額』というようなスタイルを展開w。

    大陸と変わらんw。

  2. さかなやオヤジ のコメント:

    職業柄、某通信社の水揚速報を購読しておりますが、
    例えば今朝のアジ、サバの情報のうち
    日本海側某漁港マアジ豆主体数十トン、九州某漁港マアジマメ・ゼンゴ数百箱
    三陸某漁港サバジャミ数十トンなんて、見てるのも疲れてきますわ。

  3. 海豚親父 のコメント:

    お邪魔します。私がワッチしている漁業でも、枠を1日で取りきるばかな操業を未だにしています。値が下がるだけだから止めなさい、というのですが、やはり親のカタキ。需要もないのに安いのを仲買のせいに・・・空しさを禁じえません。漁師が減るのはいいことだと思います。

  4. 勝川 のコメント:

    沿岸漁業の一漁師 さん

    >そしてビジネスモデルを確立した業者(Aとします)が出てくると『Aと同じ品質管理で3割安い』
    >『Aと同じ海域で半額』というようなスタイルを展開w。

    関サバもそうでしたね。
    巻き網が瀬まで巻いて、関モノと称して出荷する。
    小売りがそれを関サバと称して、高く売ったわけです。
    酷い話ですよ。

    さかなやオヤジ さん

    >日本海側某漁港マアジ豆主体数十トン、九州某漁港マアジマメ・ゼンゴ数百箱
    >三陸某漁港サバジャミ数十トンなんて、見てるのも疲れてきますわ。

    小さいのを一切獲るなとは言いませんが、
    小さいのしかいないのがわかっていて、根こそぎ獲るのは愚の骨頂です。
    本当に、情けなくなりますね。

    海豚親父 さん

    >私がワッチしている漁業でも、枠を1日で取りきるばかな操業を未だにしています。
    >値が下がるだけだから止めなさい、というのですが、やはり親のカタキ。
    >需要もないのに安いのを仲買のせいに・・

    どこも、そんな感じだと思います。
    魚がいたら、根こそぎ獲って値崩れ。ほとんどの日は、捕る魚がいない。
    こんな頭の悪いとりかたで、利益が出たらそちらの方が不思議です。
    需要を理解した上で、適量を漁獲すれば利益がでるのに、もったいない話です。

  5. 沿岸漁業の一漁師 のコメント:

    >巻き網が瀬まで巻いて、関モノと称して出荷する。

    漁業調整が機能しないのでしょうね・・・・・・・・・・・・・。

    >小売りがそれを関サバと称して、高く売ったわけです。

    購入側は『海域が同じ→同じ商品』と考えがちですしねw。

    >酷い話ですよ。

    こんなものといえばこんなものですよ。
    ブランド運動の問題とくれば分野が変わりますが『比内地鶏事件』が象徴的ですねw。

  6. same のコメント:

    この間もあきれてしまったことがありました。
    連休前に、氷手当てもなにもしていない魚を10トン。
    捌いてみたら案の定半分以上投げ物。漁師さん、流通を考えてくださいな。

    卸:入札もなんにもしないで帳合手数料10~30%。
    市場の魅力はなんにもない。独立できる力を早く持たねば。

  7. 勝川 のコメント:

    沿岸漁業の一漁師さん

    >購入側は『海域が同じ→同じ商品』と考えがちですしねw。

    消費者にそこまでの判断を求めるのは難しいですね。

    小売り・流通が、価値がある魚と価値がない魚を、
    一般消費者に区別できるようにな売りかたをしないと、
    一般消費者は、魚にお金を払わなくなくなります。

    小売りは、旋網のサバを関サバを称して、区別がつかない消費者に
    高値で売って、得をしたぐらいに思っていたであろうことは、容易に想像できます。

    そういえば、去年の今頃、境港で、産卵期の身がスカスカの、
    ちびクロマグロを山のように巻いていたのです。
    築地で値がつかず、相対の安値で裁かれていきました。
    その一部が「近海物の本マグロ」として、近所のスーパーで特売されていました。
    買ってみたけど、案の定、おいしくなかったです。
    冬の一本釣りの近海本マグロとは全く別物ですね。
    そういう背景を知らない消費者が、安さに釣られて買ったら、どう思うか。
    「近海の本マグロって、大して美味しくないね。
    わざわざ、大金を払って買う価値はないな」と思うでしょう。

    低級品を高級品と勘違いするような売り方をして、目先の利益を得る代わりに、
    高級品を買おうというモチベーションを失わせているのです。
    乱獲をする漁師と同じで、自分で自分のクビを閉めているのですよ。

    sameさん

    >この間もあきれてしまったことがありました。
    >連休前に、氷手当てもなにもしていない魚を10トン。
    >捌いてみたら案の定半分以上投げ物。漁師さん、流通を考えてくださいな。

    おやおや、ですね。
    市場に並べて終わりではなく、
    もっと先まで考えられると良いのですが・・・
    漁師のためにも、流通のためにも、
    消費者のためにもなるでしょう。

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