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さーて、いよいよマサバ太平洋系群ですよ!

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ある水産関係者様からコメント欄で教えていただいたとおり、
ちゃっかり期中改定していたみたいですね。

サバ類TACは、58.8万トンから65.5万トンへ、6.8万トン増量
このうち、大臣承認の大中まき漁業は、29.6万トンから33.2万トンへ3.6万トン増量
ただし、大中まきの漁獲量は、水増し後のTACも超過しているので引きつづき休漁中。
というような情勢です。

「サバは豊漁だから、獲っても良い」という意見もあるが、とんでもない。
今のマサバ資源は低水準であり、漁獲はできるだけ控えるべきです。
saba01.png

上の図はマサバ太平洋系群の資源量のトレンドだ。
1980年代から資源が減少し、90年代以降低水準で推移している。
この資源は高水準期には、400万トン程度の資源量があったわけだ。
60万トン程度で「豊漁だからいくら獲っても良い」とはならない。

「マサバ豊漁」というニュースをしばしば見かけるが、
それは近年の超低水準にあっては、例外的にまとまった漁獲があったということに過ぎない。
要するに、あまりに獲れないから、少し獲れるとニュースになるだけで、
本当に豊漁であった70年代と比べると雀の涙なのだ。

そして、注目して欲しいのは親魚の量だ。
近年、バイオマスはでこぼこと変動するが、親の量は安定して超低水準だ。
なぜかというと、まとまった加入があると成熟する前に根こそぎ獲ってしまうからだ。

saba02.png

上の図は年齢別漁獲重量(1000トン)である。
マサバは2歳で一部が成熟。3歳でほぼ全ての個体が成熟する。
90年代以降は、漁獲の大部分を0歳、1歳の未成熟個体が占めることがわかる。

マサバは90年代に2回まとまった加入があった。
92年と96年に親が殆ど居なかったにもかかわらず、大量の新規加入があったのだ。
しかし、「豊漁だ、豊漁だ」といって、0歳と1歳でほぼ獲りつくしてしまった。
マサバは近年増加傾向にあることは間違いない。
しかし、増えだしたらすぐにモグラ叩きように獲り尽くすから、増えようがない。
この漁業を続ける限り、マサバは永久に低水準のままだろう。

Comments:6

ある水産関係者 07-06-01 (金) 20:34

「サバが豊漁」とか「サバの資源が回復」という見出しも、業界紙や一般紙で昨年来何回目にしたか分かりません。これもマスコミが如何に自分の頭を使って情報の真相を吟味せず読者に垂れ流しているか、を象徴している事例の一つです。私も、このようなマスコミの報道姿勢には、危機感を感じています。それは、太平洋戦争の戦時中に大本営発表がそのまま報道された経験や、開戦前に「鬼畜米英」の一方的に偏った情報だけを流して反米一辺倒に世論を誘導していった経験が想起されるからです。
 同じような事例が、残念ながらIWCを巡る報道にも見られます。捕鯨推進が善で、反捕鯨を一方的に悪と決めつける日本政府の宣伝を、マスコミ各社は、ほとんど意見をはさむことなく報道しています。
 そもそも、捕鯨問題については、日本国内で反捕鯨を非国民のように決めつけた情報操作が堂々とまかり通り、マスコミもそれに追従してきたというのが実態です。このような政府・マスコミが一体化した情報操作が続くようであれば、国民の判断を誤らせ、国を間違った方向に誘導する事態になりかねません。私は、今回日本政府がコメントしたIWC脱退や新機関の設立といった選択肢は絶対にあり得ないと確信しています。その理由は、仮に、日本がそのような行動をとろうとしても、米国等の国際世論(その場合はロシアも含まれる)が確実に様々な制裁行動に出ると予想するからです(極端に言えば、石油の禁輸とか、日ロ漁業関係にも?)。現代の日本国民が、たかが捕鯨を巡ってこのような国際関係の悪化を望む訳もありません。今回日本が仕掛けたケンカは、現実には既に決着済みで、日本の発言は、反捕鯨国には白々しいブラフとして一笑に付されるほか、国内でも深入りすれば国民の信頼を失う結果を招くだけでしょう。
 「漁業が純粋な経済活動である」についてですが、そもそも全ての産業が一定のルールの下で活動(利益を追求)するのと同様、漁業も一定のルール(資源管理等々)のもとで活動(利益を追求)しなければならず、利益を追求するために何でも自由に振る舞って良いという訳ではありません。また、営利活動である以上、魚が値上がりしたからと言って漁業者が採算度外視で消費者に魚を売ってくれることもありませんから、漁業を聖域化するのはどうかと思います(採算が採れなければ、資源管理はそっちのけで小型サバをとって輸出するくらいですから)。
 何かサバの話から脱線してスミマセン。
 

勝川 07-06-04 (月) 12:17

>「サバが豊漁」とか「サバの資源が回復」という見出しも、
>業界紙や一般紙で昨年来何回目にしたか分かりません。

「へー、サバは増えてるんだ」という印象は確実に残ります。
業界の諦めムードと、一般人の危機感の無さは好対照です。
スーパーには輸入品が並んでいるし、メディアは「豊漁!豊漁!」では、
消費者にはわかりようがないですね。

メディアは情報を右から左へと送っているだけの側面もありますが、
一方で、水産資源の問題に関する需要は高いです。
水産庁以外の情報発信源が限られているので、
大本営の受け売りになってしまうのはしかたがないかもしれません。
記者の勉強不足というよりも、
専門家がメッセージを発してこなかったのが根本要因かと思います。
自分にできることを、地道にやっていくしかないですね。

あるメディア関係者 07-08-26 (日) 1:56

ご指摘の通り、日本での漁業問題やIWCに関する一般メディアの記事は、恐ろしいほど、水産庁の言うがままになっています。主に記事を書く人間が農林水産省の記者クラブの人間である上、水産というのは農政やWTO問題などに比べて、マイナーなニュースであるために、記者も真面目に勉強しない、海外の状況になど目を向けようともしない、というのが現実です。
 普段は役人の言うことなど信じられない、と言っているメディアの人間が、ことIWCの問題となると、水産庁の情報を垂れ流すだけ、という状況が長く続いています。
 「ミンククジラは76万頭」「鯨が魚を食べているから魚が減った」「ザトウクジラは数年間で二倍にも増えた」などなど、本当にひどいものです。
 一方で、日本の水産研究の基礎となるデータの多くは「水産庁の息のかかった」研究者が握っており、オープンな議論もできなければ、自由に物も言えない、という状況が長く続いて来ました。
 水産庁は、世間の目にさらされないのをいいことに、インサイダーだけで物事を決め、いいかげんな情報を平気で流してきました。その恩恵を受けた漁業者も少なくなかったはずです。水産庁は、時代遅れの霞が関の中でも、最も遅れた役所だというのが私の認識です。
 もちろんメディアにも大きな責任があるのですが、事はもっと構造的なものです。
 といっても、そろそろウソも続かなくなり、隠し事もできないところまで、事態が悪化してきたように思います。
 勝川さんのような研究者もいます。漁業者にも変化の兆しがあります。日かつ連はご存じの通りです。
 メディアの中にも、ちょっとはまじめに水産問題に目を向け始め、海外と日本とのギャップを指摘する報道なども増えてきました。
 これまでほとんど日本には存在しなかった漁業問題に取り組む市民団体などもみかけるようになりました。
 これらのうねりがどんどん大きく広がっていけば、今のような状態はそう長くは続かないと思います。

 

勝川 07-08-29 (水) 17:34

あるメディア関係者さん、こんにちは。
メディアへの対応をはじめてから、水産関係の情報の需要の高さに驚いています。
マスコミは、漁業にあまり関心がないのかと思っていましたが、
実はそうではないということがわかりました。

研究者が政治的発言をしたがらない理由の一つは、データの問題です。
「漁業者の協力で集めたデータを、
漁業者の不利になるようなことにつかってはならない」ということです。
そのデータをつかう以上は、データ提供者を批判できない。
要するに、データがひも付きだった訳です。

日本人の食い意地は、相当なものがあります。
漁業の現状が伝われば、世論は動くと思います。
ただ、資源状態は着実に悪くなっているので、のんびりとしてはいられません。
自分でできることを、一つずつ、着実にやるしかないですね。

鯖好き 08-11-12 (水) 16:33

金融ブログを運営している者ですが、仲間に鯖の問題を認識してもらおうと勝手にリンク張らせて頂きました。先日小浜で鯖を食べた時にノルウェー産と聞き、少しばかりショックでした。いつも読ませて頂いております。

勝川 08-11-21 (金) 13:58

鯖好きさん、こんにちは。
皆さんの生活に関係のあることなので、ぜひ、布教してください。
サバ寿司は日本のしまったサバの方が良いですが、
大きな国産のサバは安定供給できませんから、
業者としても苦渋の選択でしょう。

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