全国資源評価会議の争点

今回の会議の争点は、マサバの07年級ぐらいかな。
北巻業界は「07年級は、04年並の卓越年級群として計算しろ」と要求する。
07年級も、0歳から巻く気満々である。
それに対して水研側は「情報が不十分な段階で楽観的な数字は出せない」という判断だ。

自分たちが、「未成魚獲りきり漁法」で資源回復の芽を摘んでおきながら、
とても高圧的で、ビックリする。これが「北巻クオリティー」。
TACすら守ってないくせに、良く言いえるものだ。
「最近、TACとABCの乖離が某新聞の連載やNHKのテレビ番組などで批判にされられているが、
それは水研が保守的なABCを出すせいだ。
保守的なABCを出す担当者は、今後名指しで批判をするぞ」などと
恫喝をする漁業関係者まで出てくる始末。

俺はサバの資源評価とは無関係なので、傍観をするつもりだったのだが、
北巻業界があんまりに勝手なことばかり抜かしているので、次のように言ってきた。

「現在、マサバ太平洋系群は、04年級と07年級しか居ない。
04年級はもっても来年までなんだから、
その次の卓越が出るまで07年級群を大切にしないといけない。
この状況で、07年級に楽観的な予測をしないのは当たり前である。
捕った魚は戻せないけど、捕らなかった魚を後で捕ることはできるし、
そのほうがサバ漁業全体としては、儲かるんだから。
そもそも今の段階で0歳の年級群豊度を議論すること自体がナンセンス。

例えば、ノルウェーのサバは2002年が卓越年級群だった。
この年級を今年から獲り始めるということで、徐々にTACが増えていく見通しである。
5年も猶予があれば、取り始める頃には年級群の大きさはわかっているから、
精度が良くTACを設定できる。
ノルウェーのように適正な大きさになってから取り始めれば、
資源評価の精度は格段に上がる。
大きくしてから獲った方が儲かるんだから、
水産庁もそういう方向で指導をして欲しい。

本来サバは0歳魚の資源評価なんてやらなくてもよい魚種であって、
こんな無駄な議論をしていること自体がばかげている。
サバの資源評価精度が上がらないのは、研究者の責任ではなく、
考え無しに0歳から獲りまくる業界の責任である。」

質疑応答の時間の関係で俺の発言が最後になったんだけど、
まあ、質疑が続いたところで、まともな反論は出来ないだろうね。

ゴマサバの時に、静岡の漁業者から、
「自分たちは、99%はゴマサバを獲っているが、
サバ類としてTACがまとめて設定されているために6月以降は漁業が出来なかった。
これは理不尽なのでなんとかして欲しい」という意見があった。
これは、早急になんと対応すべき課題だと思う。
今は、マサバが少なくてゴマサバは多い。
ゴマサバを主体に獲っているなら、漁獲規制は本来必要ない。
現在は、ゴマサバとマサバをまとめて、サバ類としてTACを設定している。
北巻が小サバを巻きまくった結果として、
漁獲を続けても問題がないはずの漁業者にしわ寄せが行っている。
ゴマサバとマサバは全く別の種なんだから、別々にTACを設定するのが筋である。
一刻も早くゴマサバとマサバのTACを分離すべきであろう。

サバは面白くなってきましたよ!
ということで、15日のサイエンスゼロをお見逃し無く。
http://www.nhk.or.jp/zero/schedule/index.html

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全国資源評価会議の争点 への4件のフィードバック

  1. 業界紙速報 のコメント:

    本日付水経は全国資源評価会議が一面トップ、マサバ太平洋系群「資源量めぐり議論白熱」とリード。みなとは、系群別に説明した研究者のフルネーム・所属を書いているのに、水経はなぜか「担当の研究者」となっています。
    ちなみに、水経の記事中、「参加した別の研究者からは『たとえ19年級群が卓越であったとしても、過去2年の加入水準は低く、特に18年は過去最低水準となっている。19年級群はまだ0歳魚であるし、実質16年級群と19年級群のみという状況では、慎重になるのは当然』という意見も出た。」と伝えています。

  2. 勝川 のコメント:

    なるほど、新聞によって微妙に差があるのですね。

    その研究者は私です。
    こういう意見もあったということをちゃんと書いてくれて良かった。
    みなと新聞も書いてくれれば良かったのに。

  3. 業界紙速報 のコメント:

    本日付水経の第一面に小さいながら、小田巻実漁場資源課長が全国資源評価会議の結果について会見したという記事があります。マサバ太平洋系群については「資源を安全に回復させるため、過小評価につながった」と話した、とのこと。
    水経の記事はそっけなく、みなとには見えないですが、水産通信の第二面に多少くわしい記述がありました。それによると、資源課長曰く、「漁業者としては資源が増加傾向にあるなら獲りたいという思いがあるが、まだ低位の水準であり、我々としては十分回復してから獲るようにして欲しい」「今後も加入を的確に見積もれる評価ができるよう検討していく。ただし資源が低位にあり、若齢で獲る魚種は加入のブレが大きく難しい。漁業者への説明についても、もう少し違う表現の仕方ができないか研究者と相談したい」。そして、漁業者から出された07年の加入については04年級群並の加入があるのではないかとの異論に対して、同庁としては「07年級群の加入は、今後の漁獲動向などを踏まえ年明け後の調査で把握できる」としており、必要があれば再評価し期中見直しを行う予定、とも。
    十分回復してから獲れ、といったり、期中見直しの含みを残したり、なんとも首尾一貫しない説明振りに見えますが、どうなんでしょうか。9月25日に資源評価対象の52魚種すべてについての資源評価結果を農林水産省のHPに公表する由。

  4. 勝川 のコメント:

    「沢山いるとわかったら修正するから、
    とりあえず控えめな0歳の推定値で納得してください」
    ということでしょうね。

    漁獲枠が一杯になったから増やすとか、
    サバを我慢したからマイワシの漁獲枠を増やすとかいうのは言語道断ですが、
    不確実性に対応するための期中改定はそれほど悪いことだとは思いません。
    むしろ、不確実なうちは保守的な漁獲枠を設定しておいて、
    不確実性が減るに従って、漁獲枠をゆるめていくというのは、
    とてもまっとうな行為だと思います。

    ただ、マサバの場合は、0歳魚を獲る必要はないのです。
    そもそも0歳魚の漁獲が非合理的であることに議論の余地がありません。
    0歳魚の資源評価を頑張るよりも、0歳魚を獲らないような資源管理を徹底すべきであり、
    完全に努力の方法を間違えています。

    また、年明けになったら、0歳の量がわかるというのは眉唾です。
    今よりは精度は上がると思いますが、それでもラフな推定値の域をでないでしょう。
    比較の対象となる1歳魚も2歳魚もほとんどいないんだから、
    0歳魚の資源量の推定はとても難しいのです。

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