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日本のサバが安いのは低品質&補助金によるダンピング

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日本のサバは、市場価値が出る前に取り尽くされ、世界一安い値段で途上国にたたき売られている。まさに不合理漁獲の極みである。このことを指して、「日本の漁業の価格競争力は世界一」という意見も一般論としてあるようだが、これは全くの誤りである。そのことを少し整理してみよう。

製造コストが低く、品物をより安価に供給できことを価格競争力と言う。例えば、人件費が高くて製造コストが高くなるJ国と、人件費がただ同然で製造コストが安いC国があったとする。同じクオリティーの製品を製造した場合、1個当たりの利益が大きくなるのはC国になる。 C国がシェア拡大のために価格をAからBへと下げたとする。この場合、J国は赤字になるのでBまで価格で追従できない。C国はシェアを拡大し、薄利多売で利益を増やすことができる。値下げ競争をした場合に、製造コストが安い(=価格競争力がある)方が勝つのである。

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1)ノルウェーのサバと日本の小サバは競争関係にはない
もし、日本がノルウェーが輸出しているような500gの脂ののったサバを、今の単価で製造できるなら、価格競争量が高いと言えるだろう。しかし、日本が輸出しているのは200gの小サバである。ノルウェーが輸出しているサバと日本が輸出しているサバは別物であり、サイズ・価格・用途など、全く重なっていないのだ。ノルウェー漁業は日本で高級鮮魚として消費できるようなサバのみを漁獲・輸出している。一方、日本漁業は日本市場で価値が出る前のサイズで獲り尽くし、中国・アフリカに輸出している。日本が小サバを幾らたたき売ろうと、ノルウェーのサバの値段には影響を与えない。そもそも、市場も用途も違うのだから、当たり前だ。サバを輸出している国で、日本のように未成魚を輸出している国は他に無い。日本の小サバ輸出にはライバルは存在しないのである。価格競争で安くなっているのではなく、その値段でしか買い手がいないから安いのである。

2)日本のサバの安い値段は補助金によるダンピング
 世界一安い値段で小サバを輸出している大中巻き漁業は、軒並み赤字。太平洋系群を獲っている北部巻き網組合は、10年以上赤字続きで、補助金で支えられている状態だ。自国よりも購買力が格段に落ちる国に雑魚を輸出しても、船の維持費にもならない。それでも収入が全く無いよりはマシと言うことで、まとめて獲って捨て値で売る。こうして、サバ資源の回復の芽を摘み続けているのだ。

日本の小サバの安い値段は、企業の価格競争力ではなく、税金によって支えられているのである。小サバを中国に売り込むためのプロモーションまで、税金でやっているんだから、至れり尽くせりだ。政府の補助金によって不当に安い価格で輸出をすることを「ダンピング」と言う。ダンピングは、市場の健全な競争を妨害し、最終的には消費者の利益を害するので、独占禁止法などで禁止されている。WTOでも「ダンピングを相殺し又は防止するため、ダンピングされた産品に対し、その産品に関するダンピングの限度をこえない金額のダンピング防止税を課することができる」となっている。 ただ、日本の小サバ輸出をダンピングとして提訴する国はいないだろう。なぜなら、貴重な水産資源であるサバを、日本みたいに価値が上がる前にたたき売る国など他にないからだ。ノルウェーなどのサバ輸出国だって、日本の小サバ輸出に反対をするはずがない。日本の漁業者が未成魚を乱獲するおかげで、世界一美味しい日本のサバ市場が手にはいるのだから、棚からぼた餅だ。

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日本のサバが世界一安いのは、日本の漁業者に知恵が無く、日本の水産行政に何のビジョンもないからである。日本から輸出されるサバの安い価格は、企業努力ではなく補助金によるものである。日本の漁業者はダンピングをしても誰からも苦情が出ないぐらい酷い獲り方をして、サバ資源の回復の芽を摘み続けている。こういった不合理漁獲を税金で支えているのが日本のお役所なのだ。このデタラメな水産政策によって、損をするのは日本の納税者・消費者である。

Comments:2

県職員 08-02-13 (水) 13:07

漠然とした反対意見に対して個別具体的に相手に意見を聞くと,何も反論できなかったりする。人はイメージだけでしゃべっていることが多いですよね。
 あるいは,具体的に反論するとますます自己矛盾に気づかされるから,訳のわからない一言を口走って,皆を煙に巻き,その場を切り抜けようとするケースもあります。小○元総理が良い例です。
価格競争力,,,,嘆かわしい。

 それと,近頃の温暖化に関する報道の姿勢は問題です。温暖化だけの要因で,魚が減ったり増えたりする訳ではないのに,とかくマスコミは単純化し「これは温暖化の原因なのでしょうか」なんて大雑把にくくってしまおうとする。 その報道を見た漁業者は,自らの漁獲の影響を棚に上げて,漁獲の減少を海洋環境のせいにしてしまおうとする。取材を受ける時は注意しないといけませんね。
 ビジネスコーチングのなかで「変えられることに焦点を当てる」というものがあります。
 温暖化も長い目で見れば解決できるのでしょうが,当面は無理。となると,漁業者(行政を含めて)は,自分たちの手で変えられる漁業のやり方を,工夫しないといけませ。

勝川 08-02-19 (火) 12:16

温暖化については、ご指摘の通りだと思います。

まずは、現状で持続的な漁業にしたうえで、
変化に対応できるよう準備をする必要があります。
現状が続いてもダメな獲り方を続けながら、
地球温暖化を資源減少の言い訳としてつかうのは感心しません。

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