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ハタハタの不漁は海洋環境が原因という説を検証

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秋田県沿岸のハタハタが不漁です。「ハタハタは豊富にいるけれども、海洋環境の影響でたまたま沿岸に来なかった」ということになっているようです。「沖では獲れているので資源は豊富であり、漁獲枠を増やすべきだ」という声が漁業関係者から上がっています。本当にそうでしょうか。

季節ハタハタ漁、男鹿中心に低調 「本隊接岸の実感ない」
秋田県の今季の季節ハタハタ漁が低調だ。県水産振興センターによると、13日時点の漁獲量は約240トンで漁獲枠480トンのほぼ半分。漁は既に終盤だが、男鹿市沿岸を中心に水揚げが振るわず、市内の漁業関係者は「大きな群れが来ないまま終わってしまうのか」と困惑している。
http://www.sakigake.jp/news/article/20161219AK0005/

ハタハタ資源が豊富な時代は、秋田県でも1万トンを超える水揚げが安定してありました。また、年による凸凹はあるにしても、漁獲量が比較的安定していました。資源が豊富だった時代と比べて、現状の資源状態が悪いことに疑問の余地はありません。

確かに、獲りやすい場所に、魚の群れの密度がまとまるかどうかで、毎年の漁獲量は変動します。問題は、近年は変動のベースとなる水準があまりに低いことです。また、魚の量が減ると、分布が狭まり、年による当たり外れが大きくなります。環境条件がかみ合わないと漁獲量が激減すること自体が、魚が少ないことの証なのです。ハタハタ資源は依然として低水準であり、漁獲枠を期中改定して増やすような状況ではないと考えます。

(http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1226650318985/files/hatasuii.pdfより引用)%e3%82%ad%e3%83%a3%e3%83%97%e3%83%81%e3%83%a3

 

沖合トロールで水揚げがあるからといって、資源が豊富とは限りません。研究によって、群れを作って回遊する魚は、資源量が減ると群れの大きさを維持したまま、群れの数が減ることがわかっています。巻き網、トロールのように、魚探やソナーで魚群をピンポイントで一網打尽にできる漁業は、資源が減ってもその影響をあまり受けません。とくに県をまたいで広範囲の漁場を利用できる沖合トロールの場合は、船頭の腕が良ければ、本当に魚がいなくなるまで、水揚げをすることが出来ます。一方、漁場が限定された沿岸漁業は、資源が減った影響はまともに被ることになります。沿岸漁業者は、漁獲規制を恐れて「今年はたまたまとれなかっただけで魚はいる」と主張し、規制に反対するケースがほとんどです。規制が導入されない結果として、大規模漁業が魚を獲り尽くすのをアシストし、自分たちの獲り分を減らしているのです。

資源の持続性を考えると、最低でも初期資源の20%程度の水準は維持したいところです。本来であれば、秋田県でも3-5千トンぐらいは安定してとれる水準までは、資源の回復を優先すべきです。予想より魚が多いのであれば、今すぐに獲ってしまうのでは無く、資源回復に回すべきです。トロールでまとまった水揚げがあるたびに漁獲枠を増やしていたら、いつまで経っても資源は回復しません。

漁業者からの増枠の要求があったにもかかわらず、秋田県水産振興センターは、資源回復のために漁獲枠を増やさないという判断をしました。妥当な判断だと私は思います。とはいうものの、他県や沖合トロールが水揚げをしているのに、秋田の漁業者だけが我慢をするのは難しいことも、同時に理解できます。秋田県水産振興センターは調整に大変なご苦労をされただろうし、それを受け入れた漁業関係者にしても苦渋の決断であったでしょう。最大の漁獲県として、率先して規制をするという姿勢には頭が下がります。

本来であれば、日本海のハタハタの資源回復は、資源を利用している全都道府県の漁業者が、共通の枠組みで行うべきです。県をまたぐ回遊資源の規制は国(水産庁)の役目です。国が音頭を取って、長期的な回復計画を策定し、一時的な減収補償をしつつ、スピード感と強制力をもって漁獲規制をすべきと考えます。

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