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ブリ
未成魚の漁獲による損失は、売り上げの4倍
- 2009-11-11 (水)
- 日記
さて、未成熟のブリ(イナダ、ツバス、ハマチ)の乱獲が漁業にどのような損害を与えているかを試算してみよう。
ブリの資源評価はここにある。
http://abchan.job.affrc.go.jp/digests20/details/2041.pdf
情報が少ないね。平成16年までは年齢別の漁獲量の数値が記載されていたんだけど、平成17年以降は表記が無くなった。年齢別の漁獲データは、外部の人間が内容を検証するのに必須な情報である。1ページあれば事足りるのだから、掲載してほしい物です。
図から数字を出すのは面倒なので、文中の数値つかって、わかる範囲で計算をしよう。
基本的な計算をするには、年齢別の体重、単価、生残率が必要になる。
年齢別の体重は評価票から、10月の体重を引用する。自然死亡係数M=0.3なので、漁獲がなければ、個体数は1年間に、exp(-0.3)=0.74倍に減少する。単価は市場統計から、だいたいの値を計算する。2~3Kgのイナダが250-300円という記述がある。ブリは単価が750円程度。で、これらを表にまとめると次のようになる。
重量 | 単価 | 生残率 | RPR | 1尾損失 | |
0 | 743 | 150 | 1 | 111 | -2912 |
1 | 2890 | 275 | 0.740818 | 589 | -2435 |
2 | 5354 | 500 | 0.548812 | 1469 | -1555 |
3 | 10625 | 700 | 0.40657 | 3024 | 0 |
今、0歳で漁獲可能な魚がいるとする。この魚を何歳で獲るべきかを考えてみよう。
0歳魚で今すぐ獲ると、0.743*150=111円の利益になる。
1年待って、1歳で獲ると、単価は、2.89*275円なる。自然死亡が26%あるので、1歳まで生き残る確率が74%になる。1歳まで待ってとると、0.74*2.89*275=589円の利益が期待できる。
同じように計算をすると2歳でとると1469円、3歳で獲ると3024円の利益が期待できる。ブリは成長による価値の上昇が、自然死亡率を上回るので、3歳まで待って獲った方が得になるのである。
「豊漁だ!! 豊漁だ!!」といって、1歳魚を獲りまくっている。1歳魚を獲れば589円の目先の収益がもたらされるが、漁業全体の長期的利益は2435円減るという計算だ。
20年度の太平洋の年齢別漁獲尾数は、それぞれ917, 452, 97, 37万尾となる。年齢別の長期的な損失は次のようになる。
漁獲(万尾) | 漁業損失(万円) | |
0 | 917 | -2670682 |
1 | 452 | -1100664 |
2 | 97 | -150805 |
3 | 37 | 0 |
漁獲(万尾) | 漁業損失(万円) | |
0 | 917 | ######## |
1 | 452 | ######## |
2 | 97 | -150805 |
3 | 37 | 0 |
漁獲尾数に単価をかけて計算した生産金額は、100億円。それに対して損失は400億円近い金額になる。1歳魚の漁獲が今年は4倍ということは、長期的な損失も4倍ということだ。また、1歳で獲れば卵は埋めないけど、3歳で獲れば、卵が埋めるわけだから、大きくしてから獲る方が資源の再生産の観点からも良い。
これは、豊漁ではなく、乱獲なんだよ。こんなのをグッドニュースとして報道するメディアも、未成魚を買いたたいて喜んでいる消費者も、意識が低すぎ。あと、こんな獲り方をしていたら、漁業は儲からなくて当たり前の話。こういう乱獲を公的資金で支えてきたんだら、日本の水産政策は愚の骨頂だよ。
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