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水産庁のNZレポート Archive

水産庁のNZレポートを徹底検証する その1


これがどれだけデタラメかを見ていこう。
ちゃんとデータをつかって、検証的にね。

ITQは小さな政府を実現するための行政改革の一環として導入

これは本当。
NZ政府は財政破綻をしていたから、そうせざるを得なかったのだ。不要な政府組織を縮小させながら、漁業を発展させるという当初の目的はかなりの部分実現できたと言えるだろう。財政赤字、非効率的な水産庁、漁業の衰退という構図を持つ日本にとって、参考になる事例だろう。

基本的に全ての魚種にITQを導入する予定

これも正しい。
ただ、最初からITQの全面導入が決まっていたわけではない。歴史を振り返ると、段階的にITQを拡大していったことがわかる。83年に業界の反発の少ない遠洋漁業から導入し、効果を確認した上で86年に商業漁業に全面導入。96年の漁業法改正以降は、混獲魚種にも範囲を広めている。現在のNZ政府の方針は、基本的に全ての魚種にITQを導入することであるが、それは20年以上の歴史の中でITQの効果が認められた結果なのだ。

導入に当たっては、漁業者の85%以上の合意が必要

これは全くの嘘。
NZの漁業関係者の誰に聞いても「そんなわけ無いだろう!」とあきれられるぐらい非常識。
この1行からも、水産庁のNZレポートが、全く裏をとっていないことがよくわかる。

NZ政府は漁業者の反対を押し切って、ITQを導入した。
また、漁業者の意向にかかわらず、新しい魚種をITQに加えることができる。

来年からはタコが加わることが決まっているのだが、これも政府の決定。

NZで漁業改革を担当したClothersさんから、
ITQ導入当時の状況を詳しく教えてもらったんだけど、大変だったようだ。
ITQの導入当初は、漁業者は、新しい制度に強い拒否反応を示した。
漁業者への説明会では、つるし上げられたり、トマトを投げられたり・・・
また、NZの漁業省の内部にも反対者が多く足並みがそろわなかったらしい。
行革前の漁業省は、ぬるま湯の中で補助金行政をしてきた。
新しいシステムを導入するリスクよりもじり貧を選ぶ役人も少なくなかったという。

漁業者も反対、漁業省も消極的ななかで、行革を進める原動力は国民の声だった。
漁業による海洋環境の破壊が、大きな社会問題になっていた(日本と比べれば、かわいい乱獲だけどね)。
国民の85%が、実効性のある資源管理の導入を求めたのである。
この世論を背景に、与党も、野党も、環境調和型の漁業管理の導入を公約に選挙を戦った。
与党と野党が、ばらまきの金額を競っている日本とは雲泥の差である。

また、政府内部では、財務省が行革を後押しした。
ITQ導入以前の漁業は、補助金を消費するだけのお荷物産業であった。
厳しい国家財政の中で、このようなお荷物を支える余裕はない。
行革によって、漁業を利益の出る産業に変えて、
今までとは逆に税金を納めてもらう必要があったのだ。

国民の声を背景にITQを導入してから、NZの漁業はめざましい発展を遂げた。
導入10年を経ずして、漁獲量は2倍、生産金額は2.5倍に跳ね上がった。
漁業は、お荷物産業から、稼ぎ頭へと変貌したのである。
NZの漁業改革の目的は、十分に達成されたと言えるだろう。

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NZのITQは資源管理として機能していない? その2


1b)  and give fishermen the right to catch as many fish as they want?

No, that would be a disaster.  But our system where too often the catch limits simply follow the decline of fish stocks, rather than controlling it, is just not adequate.  Further, our system gives no incentive for fishers to find less damaging ways of fishing.

From an economic point of view, the problem remains for long lived, low productivity species that the rate of growth of the biomass and its value continues to be less than the interest rate or available return from mining the resource and investing the proceeds in other industries.  This is a discount rate v net rate of increase in the capital value of the resource problem.

A problem with the NZ system is that the industry now has so much clout, so many unrecovered resource rents, that they bully officials, use money and other techniques to pressure politicians ( and possibly others) and so the setting of catch limits is influenced heavily their way.

1b) 漁業者に自由に魚を捕る権利を与えるべきでしょうか?

絶対に反対です。破滅が待っているでしょう。しかし、NZの漁獲枠は、資源の減少に追従して減少する場合が多く、資源をコントロールしているとはいえず、現状では不十分です。さらに、NZの資源管理システムは、漁業者が環境への負荷の少ない漁法を開発する動機付けがありません。

経済的な観点から言うと、寿命が長く、生産力が低い種、すなわち、バイオマスの増加率が割引率よりも低い種では問題があります。魚を獲れるだけ獲って、その利益を他の産業に投資した方が、経済的になるでしょう。これは、割引率と資源の固定資本の成長率の問題です。

業界の発言力が資源使用料が大きくなったため、金やその他の方法で政治家(おそらくそれ以外も)に圧力を与えています。業界の意向によって漁獲枠が大きく影響されるというのがNZの資源管理システムの問題です。

NZはサブプライムまで経済成長率が7%程度あったので、割引率を考慮する必要はあるでしょうね。オレンジラフィーのような深海性の種では特に問題だと思われます。

“unrecovered resource rents”の訳はすこし迷いました。NZでは資源利用代金(resource rent)のことをCost Recovery(資源回復コスト)という名目で徴収している。Cathさんは、資源が回復していないことから、unrecovered resource rents (全然回復しない利用料)と揶揄したものと考えました。

日本語訳はオマケです。丁寧に訳している暇などないので、あしからず。
英語がわかる人は原文を読んで下さい。
訳について問題があればコメント欄で指摘してください。

NZのITQは資源管理として機能していない? その1


ITQをやりたくない水産庁は、NZの資源管理の悪い点だけを抜き出したレポートをつくり、
資源管理をやらない口実の一つとして利用した。
img08121601.png

このPDFの8ページ

ノルウェー、NZ、アイスランドは、資源管理の成功例として取り上げられることが多く、
完璧ではないが、他よりは、うまくいっているというのが一般的な認識であり、
どこからも相手にされていない日本のTAC制度よりは100倍マシだろう。

NZのことを「資源管理としては機能していない」と言い切る根拠は何なのかと質問したところ、
「CathさんというNZ人がそういってたよ」という回答を得た。

こういう時は本人に聞くのがてっとり早くて、確実なので、
水産庁のレポートを英訳したものを送りつけて、いろいろと質問をしてみました。

Cathさんは、環境への意識が高い人のようで、「今のNZのやり方では生ぬるい。
もっと環境のことも考えて、しっかりと規制をすべきである」という意見のようです。

本人の了解をいただいたので、私の質問(太字)とそれに対するCathさんの回答を公開します。

1a) Do you think NZ government should stop QMS.
It needs significant design, and there are some strong lessons on what not to do from the New Zealand experience. 
Provision of “property rights” has strengthened the say of fishing companies in the public debate and has diminished the standing of public interest voices.  As larger fishing companies have gobbled up the smaller operators, we now have a few hugely powerful and wealthy fishing companies that provide a lot of money to political parties to get their way and use their financial and hence legal might to oppose any Ministers who try to institute controls over the catch limits or other sustainability measures.  The politics of control have become much harder now that the private property rights are well specified but the public entitlements to sustainability remain less well specified.
One vital element is to carefully specify the rights of the community to a healthy environment, to provide incentives to consider the impacts of fishing, to internalise the externalities and to strengthen the say of communities over the decision making processes for setting catches and other sustainability measures.  An ecosystem based management regime and recognition of the non-harvest values of fish in the ecosystem is required.


質問1a)NZ政府はQMSを止めるべきだと思いますか?

やり方を大幅に変える必要はあるでしょう。また、反面教師として学ぶべき点も多いです。

ITQによって所有権を与えたことで、公的な議論での漁業会社の発言力が強まり、一般人の声が弱まっています。より大きな漁業会社が、小さな経営体を統合し、いくつかの巨大な漁業会社が誕生しました。彼らは大量の資金を支持政党に与えています。財力、すなわち政治力を行使して、漁獲枠や他の持続的な手法をコントロールしようとする大臣に反対してきました。漁獲枠の所有権が確立されたことによって、政治的な介入は難しくなりました。その一方で、公共の持続性に対する権利は、未だに確立されていません。

健全な環境への、コミュニティー(一般国民)の権利をきめ細かく定め、現在は考慮されていない外部負荷をしっかりと考慮し、漁獲枠の決定などの持続性に関わる意志決定へのコミュニティーの発言力を強化すべきです。生態系ベースの管理システムの確立と、取り残した魚の価値の認識が必要でしょう。

まだまだ続く

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