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ニュージーランド Archive

チャタム島 その3 ~ITQが離島漁村の多神教文化を支えている


では、ITQの具体的な運用について説明しよう。まず、政府研究機関が、資源の持続性を考慮して、商業漁獲枠(TACC)を決定する。TACCと等しい年間漁獲枠(ACE: Annual Catch Entitlement)が、漁獲枠に比例して配分される。ACEは自分で漁獲をしても良いし、他の漁業者に販売しても良い。

チャタム島では、先住民自らが財団(日本の漁業組合みたいな組織)をつくり、自分たちの漁獲枠を運用している。NZの漁獲枠は図のような流れで配分される。協会は、チャタム島海域のアワビの漁獲枠の25%とロブスターの漁獲枠の50%を保持しているので、毎年、アワビとロブスターのTACCのそれぞれ25%および50%のACEが配分される。協会は、島に定住している漁業者に、市価よりも2割ほど安い価格で、ACEの優先販売を行っている。島の漁業者に漁獲枠を販売した後に残ったACEは、外部の漁業者に市価で販売する。財団が島での雇用確保に一躍買っているのである。財団は、漁獲枠の運用益で、病院を建てたり、小学校を新築したりとインフラ整備も行っている。漁獲の利益で、島の生活が成り立っているのである。「資源管理をしなければ漁業が無くなる。漁業が無くなれば、島に人が住めなくなる。」というのは、本当だろう。

ちなみに、NZの先住民は多神教であり、厳しい離島で、昔ながらの伝統を守って、助け合って生活をしている。その生活を支えているのが漁業であり、その漁業の生産性を支えているのがITQなのだ。ITQを導入すると、地域を守ろうとする多神教的な団結心が破壊されてしまうという須能委員の主張は、全く事実に反している。魚や漁業権利権の奪い合いで、地域の団結が崩れ、漁村が崩壊しているのは、むしろ日本の方である。国の有識者代表として、政策を議論する以上、もう少し勉強をして、現実を知った上で、議論をしてもらいたいものである。また、反対する以上は、何らかの現実的な対案を示すべきだ。

もちろん、ITQを導入したら、全てがバラ色になるわけではない。ITQというシステムは、部族で素朴な生活をしてきた先住民にはすぐには理解できなかった。新しいシステムを理解できずに、失敗する生活の糧である漁獲枠を二束三文で手放してしまった者もいた。ITQ導入当初、アワビの漁獲枠のすべてが、島の漁業者に配分された。漁獲枠の大部分は、島外の企業に売却されてしまい、現在も島に残っている漁獲枠はたったの25%だ。漁獲枠の流出は、地域の雇用の観点から望ましいことではない。また、新しい管理システムが導入された当初は、戸惑いと抵抗が合ったようである。ITQ導入当時の政府の漁業視察官は、とても苦労したという話である。

他国の成功から学ぶのと同様に、失敗から学ぶことも重要である。地方の雇用確保のためには、個人ではなく、コミュニティーに漁獲枠を与えるのが良いだろう。また、漁獲枠の流出を予防するために、コミュニティーが所有する漁獲枠の譲渡は禁止し、漁獲枠の利用は、その土地の漁業者を優先すべきである。最初から、今のチャタム島のような形態にしてしまうのだ。その上で、個別漁獲枠制度は、早獲りでは大型船に劣る沿岸漁業が持続的に漁業から利益を出すために必要な制度であることを周知徹底させるべきであろう。

今回のチャタム島の訪問は、驚きの連続であった。いずれは、チャタム島の漁業者と日本の漁業者が、直接対話をする機会を設けたいものである。国や言葉は違えども、同じ漁業者同士なら、伝わることも多いはずだ。NZの制度にも問題は多く残されている。チャタム島の漁業者の口から、NZの漁業制度の良い面、悪い面を教わった上で、日本に何を取り入れ、何を取り入れないかを議論すべきだろう。チャタム島の漁業者たちは、「呼んでくれたらいつでも日本に行って、俺たちの経験を紹介するよ」と言ってくれている。あとは、先立つものが必要なんだが、どこかに旅費がおちていないかなぁ

チャタム島 その2 ~魚価を上げるにはIQが一番


ITQが導入される以前は、チャタム島周辺の漁場は、外からくる大型船の草刈り場であった。もし、ITQが導入されなければ、大型船の沖獲りで、資源は枯渇していただろう。「ITQが無ければ、島の漁業は無くなっていた」というのが、島の漁業関係者の共通認識である。ロブスターは米国の大型船に大量に漁獲されていた。

根付き資源も衰退しつつあった。チャタム島はアワビ(Paua)の好漁場でもある。1970年代には、腕の良い潜水夫は一日に500kgのアワビを水揚げした。当時の価格は、1kg当たりNZ$0.5であり、一日の収入はNZ$250程度であった。当時はアワビの漁業に規制が無かった。自由参入の獲りたい放題。獲り残しても、後で自分が獲れる保障がなければ、漁業者は出来るだけ多く獲ることで、利益を得ようとする。結果として、魚価は上がらずに資源だけが減っていった。NZ政府は1982年にライセンス制度を導入したが、事態は変わらなかった。1985年に過去の漁獲実績に応じて、アワビの個別漁獲枠を割り当てた。自分の漁獲枠を持つことによって、漁業者の意識が変わり、捨て値で売るぐらいなら獲らなくなった。結果として、魚価は1984年にNZ$1.0であった魚価が1985年にはNZ$2へと跳ね上がった。そして、1986年にNZ政府がITQを導入すると、魚価は、5$, 8$, 10$と年々上昇し、現在は、NZ$100程度である。ITQ導入前は、ロブスターのキロ単価は5$(NZD)であった。ITQが導入されると、単価は40$に跳ね上がり、現在は100$まで上昇している。島の漁業者は、ITQには魚価を引き上げる効果があることを実感している。島の組合で聞いたところ、アワビ漁業者の93%、ロブスターの漁業者も数人を除いて全員が、ITQを支持しているとのことであった(チャタム島後半の動画を見てください)。

チャタム島には、今でも膝ぐらいの深さの所にアワビがうじゃうじゃいます。でもって、自家消費なら誰でも獲って良いみたい。漁業取締官のジョージの家で、アワビをごちそうになりました。美味かったですよ。中華風のピリ辛炒めが絶品でした。ソースにアワビの味がしみこんでいて、それと野菜が合うんですよ。あんなサイズのアワビを日本で買ったらいくらぐらいするんだろうね。NZの首都ウェリントンの近辺にも、昔はアワビが沢山いたそうです。しかし、一般市民のカジュアル密漁によって、壊滅的に減ってしまったとのこと。こういう事例を見ると、組合ベースで地域で管理をするという日本のシステムは合理的かもしれない。ただ、日本の組合は、漁場を守っている所もあれば、漁場を切り売りしているところもありで、玉石混淆ですね。後者を何とかしないと、前者も含めて一緒くたに非難されてしまうのではないかと心配です。

現在の日本の漁村の多くは、ITQが導入される前のチャタム島と同じような状況にある。大型船による沖獲りと、沿岸漁業者同士の早獲り競争により、資源は減少している。魚価は涙が出るほど安い。漁業者は、魚価が安いのは、流通や消費者が悪いと思っているようだが、根本的な原因は値段も考えずに取れるだけ獲ってくる、今の漁業のあり方である。買いたかれるような状況をわざわざつくっているのだから、買いたたかれても仕方がないだろう。個別漁獲枠を導入し、値段がつかない時には魚を水揚げしないように漁業者の意識を変えれば、魚価は必ず上がる。「魚価を上げたいなら、IQ制度の導入」というのは、世界の常識ですね。日本では、ビジョンのないブランド化のために、税金をばらまいているけれど効果は期待できません。供給が安定しなければ、知名度が上がるはずなど無いし、そもそも、ブランド名を決めてから、ブランドの売りを何にしようか相談しているようでは、ダメでしょう。

チャタム島 その1 ~ITQは地域文化を破壊するのか?


資源管理推進派は、早どり競争を抑制するために、漁獲枠を個別配分すべきであると主張してきた。一方、反対派は「ITQを入れると、大企業が資源を独占し、地域漁村文化が破壊される」と主張している。たとえば、水産庁の有識者会議の出席者は次のように述べている。

須能委員:
私は日本の漁業者の精神構造は、基本的には多神教である。一神教の外国人の価値観とは違っており、地域を守ろうとする団結心をこういうIQ・ITQなんかで精神構造を破壊するようなことは絶対にしてほしくない。譲り合って、助けていくという日本独特の文化として、あるいは漁業文化として、あるいは水産文化として是非維持してほしいと考えます。
http://www.jfa.maff.go.jp/j/suisin/s_yuusiki/pdf/giziroku_05.pdfのP18

本当にITQを導入すると、地域を守ろうとする多神教的な団結心が破壊されてしまうのだろうか。ITQが地域漁村コミュニティーにあたえる影響をこの目で見るべく、特派員はニュージーランドの離島を訪問した。

今回、訪問したチャタム島は、NZ本島のはるか東に浮かぶ孤島です。NZ本土から、40人載りの小型飛行機が週に2便でている。約2時間半のフライトであ る。島の住民は570人。この島の主な産業は漁業と畜産。国から島に出る補助金は全くない。ITQが小規模漁村コミュニティーにダメージを与えるなら、この島が最初に淘汰されただろう。しかし、事態は全く逆なのだ。ITQのおかげで、漁業が利益を生み、島の生活が成り立っているのである。

島に着いたら、まず、先住 民の部族に立ち寄ることになった。マオリよりも前から島に住んでいたモリオリ族が、遠方からの客人を歓迎したいというのだ。会場に着くと、部族の女性が出迎えてくれた。セレモニーは女性を先頭にして、訪問するのがルールとのこと。 戦争ではなく、平和を求めているという意思表示だそうだ。いざセレモニーになると、それぞれのグループのリー ダー(男)が儀式をする。ここでは女性は一歩下がった場所で、発言も許されていない。一通り、儀式的なやりとりが終わった後、鼻と鼻をくっつけて、 挨拶をして、セレモニーは終わり。手作りのケーキや、アワビなどで、ウェルカムパーティーをしてもらった。とてもアットホームでした。子供たちが元気で、とてもかわいかったです。

島には水産加工場が一つあります。ここも実にアットホームでした。音楽を聴きながら、まったりと作業をしています。日本の加工場では、熟練した作業員が一心不乱に作業をしているのですが、全く違う風景ですね。これぐらいのゆるさなら、俺でもつとまるかも。しかし、マッスィーンのごとく働く日本人よりも、NZ人の方が、労働時間が短く、賃金が高いのです。日本のデタラメな水産行政のツケは、すべて末端が背負っているのです。

あいにく、滞在期間中は、時化で漁がなかったのです。時化といっても少し風がある程度。「えっ、この程度で時化なの??」と驚きました。以前は、これぐらいの天気なら漁にでていたそうです。ITQになって、無理に獲る必要がなくなったので、天気が悪い日は休むようになったとのこと。

島 の主要な漁業は、アワビ(paua)、ロブスター(crayfish), Blue cod (アイナメ)、Kina(ウニ)である。アワビの漁業者の93%がITQを支持している。ロブスターの漁業者も数人の例外を除いて、ITQを支持してい る。島の加工場、漁業者組合、漁業者などに聞き取り調査をしたが、異口同音に「QMSが無かったら、漁業は無くなっていたよ」と語ってくれた。

太平洋 の真ん中の離島でも、伝統的なコミュニティーがしっかりと生き残っている。そのコミュニティーを支えているのは、補助金ではなく、漁業だ。コミュニティー は、NZ政府から経済的に独立している。コミュニティー内部では相互援助の精神で、たくましく生活をしている。彼らの生活を支えている漁業を支えているの が水産資源であり、水産資源を支えているのが、資源管理なのだ。チャタム島に関しては、いろいろ、書きたいことだらけですが、とりあえず、動画を見て欲しい。

動画のダウンロードはここから (150MB)

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「NZのITQは、資源管理としては機能していない」とか、誰か言ってなかったっけ??


そういえば、「NZのITQは経済政策としては成功したが、資源管理としては機能していない」とかいう、面白レポートがあったよね(http://katukawa.com/category/study/reform/nzreport)。あの検討会の議事録は、政府の公式文書として認めてもらえなかったという話を小耳に挟んだけど、内容が内容だけに、仕方がないだろう。

レポートでは、NZのITQが資源管理として機能していない根拠として、ホキ(白身魚)のTACが近年減少していることを挙げていた。実際には、NZの漁業者は過剰漁獲をしていたわけではない。卵の生き残りが悪くて、一時的にホキ資源が減少した。それを素早く回復させるために、NZ政府は予防的に漁獲枠を絞ったのだよ。いくらでも魚が捕れる段階で、漁獲枠を半減できたのだから、立派なもんだ。すぐに元の水準に戻るだろうと予想していた(http://katukawa.com/category/study/species/%E3%83%9B%E3%82%AD)が、予想以上に早く回復したみたいだね。

nzhoki
(みなと新聞6月9日より引用)

ノルウェーのカペリンでもわかるように、魚はちゃんと残せば、ちゃんと回復する。早めにブレーキを踏めば、それだけすぐに回復をする。自然変動が原因だろうと、何だろうと、魚が減ったら、漁獲圧をゆるめるのが世界の常識であり、資源が減ったら、漁獲圧が強まる日本のマイワシ漁業のような状態はあり得ないのである。獲りたい放題獲っておいて、「地球温暖化が悪い」とか居直っているから、漁業は衰退を続けるのだ。

もちろん、ノルウェーやNZの漁業だって完璧ではないし、直すべき問題点は山ほどある。しかし、これらの国の漁業が、資源を持続的に利用しながら、経済的にも成り立っているのは、紛れもない事実である。「日本とは状況が違うので、参考にはならない」と居直ったり、生半可な知識で揚げ足取りをしても、かえって自らの無知を晒すだけだ。それよりも、これらの漁業国の成功を謙虚に認めた上で、その長所を日本漁業にどのように取り込むかを議論すべきだ。お互いに、もっと有意義なことに時間をつかいたいものである。

Hoki Story その3


資源状態

東と西を合計した親漁量はこんな感じ。ここ20年程度、減少が続いているが、これは資源管理が機能していなかったからではない。この資源は、1970年代はほとんど利用されていなかった。NZ政府は、未開発時の資源量を100%とした場合の40-50%の水準をMSY水準と定義している。NZ政府は、図中に赤で示したMSY水準まで徐々に資源を減らした後に、その水準を維持するつもりだったのだ。アンラッキーなことに、資源がMSY水準に近づいた1995年以降、卵の生き残りが悪い年が続き、予想以上に資源が減少してしまった。

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新規加入量の時系列はこんな感じ。1995年から2000年まで、新規加入が低調であった。資源量がMSY水準に近づいてきたので、そろそろブレーキをかけようとしたら、資源の生産力が減少し、MSY水準を下回ってしまったのだ。

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漁獲量

漁獲量(緑線)とTACC(*)の時系列はこんな感じになる。1985から2000まで、15年かけて、じわじわとMSY水準まで、資源を減少させた。MSY水準に達した後は、すぐにTACCを削減し漁獲にブレーキをかけている。ただ、残念なことに1995-2000の間の加入の失敗により、漁獲枠を削減した後も資源は減ってしまった。そこで、よりきつくブレーキを踏んだのである。現在は資源が回復に向かっていることから、漁獲枠を徐々に増やしていくフェーズに入っている。政府は13万トンまで増やそうとしたのだが、業界は猛反発。MSY水準に回復するまでは、漁獲枠を控えめにすべきであると、漁業者が主張をしたのだ。結局、政府は当初の予定よりも1万トン少ない12万トンの漁獲枠にした。最新の情報では、今年度は資源の更なる回復が確認されたことから、政府は1万トンの増枠を提案し、業界もこれを受け入れる見通しとのこと。

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トロール調査

チャタムライズでは、調査船によるトロール調査が行われ、Hoki, Warehou, Ling, Black oreoなどの底魚の資源量を調査している。

ステーションはこんなかんじ。海区を水深や底質の生態特性で層別化した上で、全体図を把握できるようにデザインされている。

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トロール調査によって推定されたHoki(+3)の資源量はこんな感じ。低めで安定はしているが、NZとしてはもう一段階回復させたいようだ。

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トロール調査で得られたHokiの分布の時系列はこんな感じ。再近年は、底は脱したが、90年代と比較すると低水準である。

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音響調査

NZ政府は、精力的に音響調査を行い、資源の把握に努めている。毎年、Hokiの産卵期には、短期間のうちに複数回のスナップショットを獲っている。
計量魚探を使って、定線を走るとこんな絵が描ける。

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魚探の反応の中から、Hokiと思われるものを抜き出し、Hokiの反射強度(ターゲットストレングス)をつかって、資源量を推定する。この作業を全ての定線で行うと、1枚のスナップショットができる。NZ政府は、産卵期をすべてカバーできるように、毎年5~7枚のスナップショットを作成している。たとえば、2006年はこんなかんじ。

The 2006 acoustic survey of spawning hoki abundance in Cook Strait was carried out on Kaharoa from 19 July to 29 August 2006. Seven snapshots were completed, with good coverage of the spawning season.

この時期のクック海峡はいつでも大荒れで、「300トンの船が、木の葉のように波に翻弄される」とのこと。そういう状況で、1ヶ月半に7回のスナッ プショットをとるのは、立派である。

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複数のスナップショットを組み合わせて、産卵場に来遊した親魚の量をブートストラップで推定をするとこんな感じになる。

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重要資源であり、資源的にも注意が必要なHokiに対しては、出し惜しみをせずに精力的に調査をしている。NZの漁業省の予算は非常に限られている。また、業界の負担が重いだけに、無駄な出費は厳しく批判される。調査計画も(良い意味で)流動的であり、必要な場所に、重点的に投資をしていることがわかる。

で、本当のところはどうなのか?

「漁獲枠は下げておくにこしたことはないのだが、あわてて漁獲枠を半減するような状態なのかなぁ」というのが、俺の率直な感想。資源が本当に減っているのかに関しては、NZ国内でも議論が分かれている。たとえば、西の産卵群を狙った漁業では、過去最高の漁獲を記録したことから、「Hokiは減っていない」としゅちょうする漁業関係者もいる。産卵群は資源量が少なくなるとそれだけ中央に密集する傾向がある。産卵群狙いの漁業で過去最高のCPUEが記録されたとしても、資源が多いとは限らない。漁業とは独立したトロール調査と、魚探調査によって、産卵場も生育上をしっかりとおさえているので、NZの資源評価の信頼度は高い。

NZの漁業関係者の一部には、Hokiの漁獲枠をもっと増やすべきだという意見もある。しかし、政府と業界の「我慢をして、MSY水準まで素早く回復させよう」という声が勝ったのである。NZの業界は、俺よりも持続性に対する意識が高いと言うことだね。「ある指標を見れば資源は減っていないように見えるが、別の指標で見ると資源が減っているように見える」、というのはよくあること。というか、ほとんどの 資源評価はこういう感じになる。自信をもって高水準と言い切れるのは、80年代のマイワシや、現在のサンマのような、超高水準資源のみだ。逆に、スケトウ ダラ日本海北部系群のように、どこから見ても駄目になったら、資源としては手遅れな場合が多い。資源を持続的に利用するには、玉虫色の状態で、漁獲にブ レーキを踏む必要がある。NZ政府と業界は、悲観的なシナリオを想定しても資源が回復するような漁獲枠を設定した。これはとてもすばらしいことである。

Hokiの漁獲枠の削減は、資源の減少を漁獲枠が追従しているのではない。資源を良好な状態に保つために、政策的に漁獲にブレーキをかけているのである。 網をひけば、いくらでも獲れる状態で、最重要魚種の漁獲枠を厳しく削減するというのは、なかなかできることではない。この漁獲枠の減少こそ、NZの資源管理システムQMSが機能している証に他ならないのだ。ここまで迅速に思い切った行動をとれる国は、そう無いだろう。俺が思うに、NZとノルウェーぐらいではないだろうか。Hokiの漁獲枠が削減されたことをもって、「NZのQMSは資 源管理として機能していない」など主張をする、日本の有識者の不見識にはあきれてしまう。彼らは管理された漁業というものを知らないのだ。まともな漁獲規制がない日本では、漁獲量の減少は資源の減少を意味する。日本で漁獲枠が削減されるのは、資源が減少して、がんばっても獲れなくなってからである。日本の常識に照らし合わせて、「Hokiの漁獲枠の削減→NZの資源管理は機能していない」と考えたのだろうが、あまりに浅はかである。データを見ればわかるように、Hokiは獲り尽くされたのではない。NZは壊滅的な減少を回避するために予防的に漁獲枠を半減させているのである。日本の漁業関係者には、魚がまだ捕れる状態で漁獲枠を減らす国があるなど想像もつかないの だ。

結論

Hokiの情報をまとめてみるとこんな感じ。

  1. 網を引けばいくらでも魚が捕れる
  2. 獲れば獲るだけ、高く売れる
  3. いくつかの指標では、資源が減っていないようにみえる
  4. 資源量としては、MSY水準をわずかに下回った状態

NZ政府の対応はこんな感じ

  1. MSY水準に達した2年後には漁獲枠を削減
  2. その削減では不十分と見るや、すぐに漁獲枠を半減
  3. 資源の回復を確認しながら、徐々に漁獲枠を増枠中

NZの業界の反応

  1. もっと獲っても良いという意見もあるが、慎重派が主流
  2. MSY水準への回復が確認できるまで、漁獲枠を控えめにすべきという意見
  3. 政府の増枠に難色を示し、低めの漁獲枠を採択させる

Hoki Story その2


まずは、Hokiの生態について、簡単に説明しよう。俺の手元には、NZのホキレポートがある。280ページで、凄い分量だ。漁獲の情報、漁獲の体長・年齢組成、CPUE、トロール調査、ぎょたん調査と、内容もてんこ盛り。ネットにもそれに近い情報があるので、関心があるひとは目を通してほしい。
http://fpcs.fish.govt.nz/science/documents/%5C2008%20FARs%5C08_62_FAR.pdf

この資料は基データに近い情報も多く含まれており、一般人には理解できない部分もあるだろうが、かなりしっかりとした評価をしているのは理解できるとおもう。

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Hoki Story その1


まずはNZの漁業の大まかな動向を抑えておこう。NZでは、漁業は輸出産業である。輸出金額の推移を見れば、国内の漁業生産を把握できる。

輸出金額は、2000年の1400m$から、2007年の1200m$に減少をしたが、その減少はHokiの減少と一致する。NZの輸出金額は、Hokiをのぞけばほぼ横ばい。2000年には、Hokiがダントツで1位であったのが、2007年には3位まで落ち込んでいる。Hokiは、NZの漁業生産金額に影響を与えるような重要な資源なのだ。

img09040820
http://www.fish.govt.nz/en-nz/SOF/ExportEarning.htm?DataDomain=SpeciesGroup&DataCount=10&ChartStyle=Line&text=short

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水産庁のNZレポートを徹底検証する その10


NZの資源管理システムとて、完璧ではない。今回はMSY水準を下回った25%の資源の内容をみてみよう。

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水産庁のNZレポートを徹底検証する その9


NZでは、資源が悪化しているものが多い

水産庁は、NZでは資源が悪化しているものが多いと指摘しているが、これは事実に反している。NZの資源評価の結果は下の表のようになる。NZでは、資源がMSY水準よりも上かどうかで、資源状態を判断している。いくつかのカテゴリーがあるのだが、MSY以上とMSY未満で、ざっくり分けてみよう。

状態 Condition 数(176)
不明 Unknown 98
OK Yes1 21
ほとんど利用されず Yes2 7
たぶんOK Probably 16
OKだとおもう Possibly 14
たぶんNO Probablynot 4
NO No 16

資源評価が行われている資源に関しては、MSY水準以上が58系群に対して、MSY水準未満が20系群という結果であった。資源評価している系群の 75%はMSY水準以上が維持できている。75%という数字は、世界的に見ても立派なものだ。「資源評価が行われている主要魚種についても資源が悪化しているものが多い」という水産庁レポートは事実誤認である。

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水産庁のNZレポートを徹底検証する その8


レポートの右半分にもツッコミをいれてみよう。

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NZでは、ほとんどの魚種で資源評価が行われていない?

ほとんどの魚種で資源評価が行われていないということだが、資源評価の結果は、ここにある。そのままだと全体像がわかりづらいので表にまとめてみた。94魚種、176系群の記載があるが、そのうち、資源状態が不明な者は98資源。約半数が不明であった。約半数は資源評価をしているのに、「ほとんど資源評価がおこなわれていない」というのは、不適切だろう。

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