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水産庁のNZレポート Archive

「NZのITQは、資源管理としては機能していない」とか、誰か言ってなかったっけ??


そういえば、「NZのITQは経済政策としては成功したが、資源管理としては機能していない」とかいう、面白レポートがあったよね(http://katukawa.com/category/study/reform/nzreport)。あの検討会の議事録は、政府の公式文書として認めてもらえなかったという話を小耳に挟んだけど、内容が内容だけに、仕方がないだろう。

レポートでは、NZのITQが資源管理として機能していない根拠として、ホキ(白身魚)のTACが近年減少していることを挙げていた。実際には、NZの漁業者は過剰漁獲をしていたわけではない。卵の生き残りが悪くて、一時的にホキ資源が減少した。それを素早く回復させるために、NZ政府は予防的に漁獲枠を絞ったのだよ。いくらでも魚が捕れる段階で、漁獲枠を半減できたのだから、立派なもんだ。すぐに元の水準に戻るだろうと予想していた(http://katukawa.com/category/study/species/%E3%83%9B%E3%82%AD)が、予想以上に早く回復したみたいだね。

nzhoki
(みなと新聞6月9日より引用)

ノルウェーのカペリンでもわかるように、魚はちゃんと残せば、ちゃんと回復する。早めにブレーキを踏めば、それだけすぐに回復をする。自然変動が原因だろうと、何だろうと、魚が減ったら、漁獲圧をゆるめるのが世界の常識であり、資源が減ったら、漁獲圧が強まる日本のマイワシ漁業のような状態はあり得ないのである。獲りたい放題獲っておいて、「地球温暖化が悪い」とか居直っているから、漁業は衰退を続けるのだ。

もちろん、ノルウェーやNZの漁業だって完璧ではないし、直すべき問題点は山ほどある。しかし、これらの国の漁業が、資源を持続的に利用しながら、経済的にも成り立っているのは、紛れもない事実である。「日本とは状況が違うので、参考にはならない」と居直ったり、生半可な知識で揚げ足取りをしても、かえって自らの無知を晒すだけだ。それよりも、これらの漁業国の成功を謙虚に認めた上で、その長所を日本漁業にどのように取り込むかを議論すべきだ。お互いに、もっと有意義なことに時間をつかいたいものである。

Hoki Story その3


資源状態

東と西を合計した親漁量はこんな感じ。ここ20年程度、減少が続いているが、これは資源管理が機能していなかったからではない。この資源は、1970年代はほとんど利用されていなかった。NZ政府は、未開発時の資源量を100%とした場合の40-50%の水準をMSY水準と定義している。NZ政府は、図中に赤で示したMSY水準まで徐々に資源を減らした後に、その水準を維持するつもりだったのだ。アンラッキーなことに、資源がMSY水準に近づいた1995年以降、卵の生き残りが悪い年が続き、予想以上に資源が減少してしまった。

image0904101

新規加入量の時系列はこんな感じ。1995年から2000年まで、新規加入が低調であった。資源量がMSY水準に近づいてきたので、そろそろブレーキをかけようとしたら、資源の生産力が減少し、MSY水準を下回ってしまったのだ。

img09040802


漁獲量

漁獲量(緑線)とTACC(*)の時系列はこんな感じになる。1985から2000まで、15年かけて、じわじわとMSY水準まで、資源を減少させた。MSY水準に達した後は、すぐにTACCを削減し漁獲にブレーキをかけている。ただ、残念なことに1995-2000の間の加入の失敗により、漁獲枠を削減した後も資源は減ってしまった。そこで、よりきつくブレーキを踏んだのである。現在は資源が回復に向かっていることから、漁獲枠を徐々に増やしていくフェーズに入っている。政府は13万トンまで増やそうとしたのだが、業界は猛反発。MSY水準に回復するまでは、漁獲枠を控えめにすべきであると、漁業者が主張をしたのだ。結局、政府は当初の予定よりも1万トン少ない12万トンの漁獲枠にした。最新の情報では、今年度は資源の更なる回復が確認されたことから、政府は1万トンの増枠を提案し、業界もこれを受け入れる見通しとのこと。

image0904094

トロール調査

チャタムライズでは、調査船によるトロール調査が行われ、Hoki, Warehou, Ling, Black oreoなどの底魚の資源量を調査している。

ステーションはこんなかんじ。海区を水深や底質の生態特性で層別化した上で、全体図を把握できるようにデザインされている。

image0904109

トロール調査によって推定されたHoki(+3)の資源量はこんな感じ。低めで安定はしているが、NZとしてはもう一段階回復させたいようだ。

image09041010

トロール調査で得られたHokiの分布の時系列はこんな感じ。再近年は、底は脱したが、90年代と比較すると低水準である。

image09041014

image09041013

image09041012

image09041011

音響調査

NZ政府は、精力的に音響調査を行い、資源の把握に努めている。毎年、Hokiの産卵期には、短期間のうちに複数回のスナップショットを獲っている。
計量魚探を使って、定線を走るとこんな絵が描ける。

image0904102

魚探の反応の中から、Hokiと思われるものを抜き出し、Hokiの反射強度(ターゲットストレングス)をつかって、資源量を推定する。この作業を全ての定線で行うと、1枚のスナップショットができる。NZ政府は、産卵期をすべてカバーできるように、毎年5~7枚のスナップショットを作成している。たとえば、2006年はこんなかんじ。

The 2006 acoustic survey of spawning hoki abundance in Cook Strait was carried out on Kaharoa from 19 July to 29 August 2006. Seven snapshots were completed, with good coverage of the spawning season.

この時期のクック海峡はいつでも大荒れで、「300トンの船が、木の葉のように波に翻弄される」とのこと。そういう状況で、1ヶ月半に7回のスナッ プショットをとるのは、立派である。

image0904104

複数のスナップショットを組み合わせて、産卵場に来遊した親魚の量をブートストラップで推定をするとこんな感じになる。

image0904106

重要資源であり、資源的にも注意が必要なHokiに対しては、出し惜しみをせずに精力的に調査をしている。NZの漁業省の予算は非常に限られている。また、業界の負担が重いだけに、無駄な出費は厳しく批判される。調査計画も(良い意味で)流動的であり、必要な場所に、重点的に投資をしていることがわかる。

で、本当のところはどうなのか?

「漁獲枠は下げておくにこしたことはないのだが、あわてて漁獲枠を半減するような状態なのかなぁ」というのが、俺の率直な感想。資源が本当に減っているのかに関しては、NZ国内でも議論が分かれている。たとえば、西の産卵群を狙った漁業では、過去最高の漁獲を記録したことから、「Hokiは減っていない」としゅちょうする漁業関係者もいる。産卵群は資源量が少なくなるとそれだけ中央に密集する傾向がある。産卵群狙いの漁業で過去最高のCPUEが記録されたとしても、資源が多いとは限らない。漁業とは独立したトロール調査と、魚探調査によって、産卵場も生育上をしっかりとおさえているので、NZの資源評価の信頼度は高い。

NZの漁業関係者の一部には、Hokiの漁獲枠をもっと増やすべきだという意見もある。しかし、政府と業界の「我慢をして、MSY水準まで素早く回復させよう」という声が勝ったのである。NZの業界は、俺よりも持続性に対する意識が高いと言うことだね。「ある指標を見れば資源は減っていないように見えるが、別の指標で見ると資源が減っているように見える」、というのはよくあること。というか、ほとんどの 資源評価はこういう感じになる。自信をもって高水準と言い切れるのは、80年代のマイワシや、現在のサンマのような、超高水準資源のみだ。逆に、スケトウ ダラ日本海北部系群のように、どこから見ても駄目になったら、資源としては手遅れな場合が多い。資源を持続的に利用するには、玉虫色の状態で、漁獲にブ レーキを踏む必要がある。NZ政府と業界は、悲観的なシナリオを想定しても資源が回復するような漁獲枠を設定した。これはとてもすばらしいことである。

Hokiの漁獲枠の削減は、資源の減少を漁獲枠が追従しているのではない。資源を良好な状態に保つために、政策的に漁獲にブレーキをかけているのである。 網をひけば、いくらでも獲れる状態で、最重要魚種の漁獲枠を厳しく削減するというのは、なかなかできることではない。この漁獲枠の減少こそ、NZの資源管理システムQMSが機能している証に他ならないのだ。ここまで迅速に思い切った行動をとれる国は、そう無いだろう。俺が思うに、NZとノルウェーぐらいではないだろうか。Hokiの漁獲枠が削減されたことをもって、「NZのQMSは資 源管理として機能していない」など主張をする、日本の有識者の不見識にはあきれてしまう。彼らは管理された漁業というものを知らないのだ。まともな漁獲規制がない日本では、漁獲量の減少は資源の減少を意味する。日本で漁獲枠が削減されるのは、資源が減少して、がんばっても獲れなくなってからである。日本の常識に照らし合わせて、「Hokiの漁獲枠の削減→NZの資源管理は機能していない」と考えたのだろうが、あまりに浅はかである。データを見ればわかるように、Hokiは獲り尽くされたのではない。NZは壊滅的な減少を回避するために予防的に漁獲枠を半減させているのである。日本の漁業関係者には、魚がまだ捕れる状態で漁獲枠を減らす国があるなど想像もつかないの だ。

結論

Hokiの情報をまとめてみるとこんな感じ。

  1. 網を引けばいくらでも魚が捕れる
  2. 獲れば獲るだけ、高く売れる
  3. いくつかの指標では、資源が減っていないようにみえる
  4. 資源量としては、MSY水準をわずかに下回った状態

NZ政府の対応はこんな感じ

  1. MSY水準に達した2年後には漁獲枠を削減
  2. その削減では不十分と見るや、すぐに漁獲枠を半減
  3. 資源の回復を確認しながら、徐々に漁獲枠を増枠中

NZの業界の反応

  1. もっと獲っても良いという意見もあるが、慎重派が主流
  2. MSY水準への回復が確認できるまで、漁獲枠を控えめにすべきという意見
  3. 政府の増枠に難色を示し、低めの漁獲枠を採択させる

Hoki Story その2


まずは、Hokiの生態について、簡単に説明しよう。俺の手元には、NZのホキレポートがある。280ページで、凄い分量だ。漁獲の情報、漁獲の体長・年齢組成、CPUE、トロール調査、ぎょたん調査と、内容もてんこ盛り。ネットにもそれに近い情報があるので、関心があるひとは目を通してほしい。
http://fpcs.fish.govt.nz/science/documents/%5C2008%20FARs%5C08_62_FAR.pdf

この資料は基データに近い情報も多く含まれており、一般人には理解できない部分もあるだろうが、かなりしっかりとした評価をしているのは理解できるとおもう。

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水産庁のNZレポートを徹底検証する その9


NZでは、資源が悪化しているものが多い

水産庁は、NZでは資源が悪化しているものが多いと指摘しているが、これは事実に反している。NZの資源評価の結果は下の表のようになる。NZでは、資源がMSY水準よりも上かどうかで、資源状態を判断している。いくつかのカテゴリーがあるのだが、MSY以上とMSY未満で、ざっくり分けてみよう。

状態 Condition 数(176)
不明 Unknown 98
OK Yes1 21
ほとんど利用されず Yes2 7
たぶんOK Probably 16
OKだとおもう Possibly 14
たぶんNO Probablynot 4
NO No 16

資源評価が行われている資源に関しては、MSY水準以上が58系群に対して、MSY水準未満が20系群という結果であった。資源評価している系群の 75%はMSY水準以上が維持できている。75%という数字は、世界的に見ても立派なものだ。「資源評価が行われている主要魚種についても資源が悪化しているものが多い」という水産庁レポートは事実誤認である。

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水産庁のNZレポートを徹底検証する その8


レポートの右半分にもツッコミをいれてみよう。

img09040201


NZでは、ほとんどの魚種で資源評価が行われていない?

ほとんどの魚種で資源評価が行われていないということだが、資源評価の結果は、ここにある。そのままだと全体像がわかりづらいので表にまとめてみた。94魚種、176系群の記載があるが、そのうち、資源状態が不明な者は98資源。約半数が不明であった。約半数は資源評価をしているのに、「ほとんど資源評価がおこなわれていない」というのは、不適切だろう。

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水産庁のNZレポートを徹底検証する その7


http://www.jfa.maff.go.jp/suisin/yuusiki/dai5kai/siryo_18.pdfのP8

img09032001

なんか、まともに読めないんですけど・・・

○TACの推定値は毎年変わるがTACを変更しようとすると苦情や訴訟が提起されるため、基本的にTACが変更されることは少ない

これはITQ導入当初(86-89年)の話だね。ここにも書いたように、NZは最初は絶対量で漁獲枠を配分していた。TACを減らすときは、漁獲枠を漁業者から買い取るつもりだったんだけど、漁業が儲かることがわかった漁業者は政府に漁獲枠を売らなくなってしまった。困ったNZ政府は強引に漁獲枠を下げようとして訴訟になって負けたのだ。1990年にNZ政府は法改正を行い、漁獲枠をTACCに対する比率で設定することにした。90年以降は、政府の裁量で自由にTACCを変化させるようになった。で、実際に必要な場合には漁獲枠をちゃんと削減している。今年もHOKIやOrange RoughlhyのTACCが削減したが、NZ政府関係者に確認したところ、訴訟は起きていないという話だ。

訴訟によって、漁獲枠が変えられなかったのは過去の話であり、この問題はすでに解決済みなのだ。

○ITQは、経済政策としては成功したが、資源管理としては機能していない。

NZは混獲種も含めてITQを導入しているので、資源評価ができていない(していない)種も多い。情報が少ない非漁業対象種にも予防原則から、漁獲枠を設定しているのである。漁業対象種以外に漁獲枠がないほとんどの国に比べれば、非常に進歩的だ。資源評価ができている種については、85%がMSY水準以上という評価が得られている。ほとんどの資源は持続的に有効利用できる水準に維持されているのである。NZは、もっとも厳格な資源管理としている国の一つです。一方、日本は何もしていないに等しいレベル。NZの資源管理も100%ではないが、少なくとも日本とは比較にならないぐらいちゃんとしている。

NZは環境保護団体が強いから、世界最高水準の保護をしていても、国内では漁業省は厳しい非難にさらされている。こういう外圧があるから、高いスタンダードを維持できるという側面もあるだろう。日本のNGOも頑張ってほしいものだ。

○漁獲量が割当量を超過した場合に賦課される罰金は、浜値等よりも低くなることがあり、結果として過剰漁獲を誘発。

これも解決済みの問題。漁獲量が割当量を超過した場合にはDeemed Valueという罰金を払うことになる。いくつかの魚種でDeemed Valueが浜値よりも安く設定されており、モラルの低い漁業者が漁獲枠を無視して水揚げをして利益を上げた。ただ、これはDeemde Valueが導入された初年度のみであり、翌年にはこの穴はふさがれた。NZ政府は、Deemed Valueの設定には細心の注意を払っており、現在もDeemed Valueが乱獲を誘発するようなレベルに設定されている魚種はない。

解決済みの問題をあたかも現在進行中のように見せかけている。情報が古いのか、故意の印象操作なのかは不明だが、もうちょっとまともな資料を使ってほしいと思う。また、このレベルの資料にはツッコミを入れられるような有識者でなければ、集めて議論をさせる意味がないだろう。

我々、日本人は、NZの漁業関係者が、これらの問題を解決していったプロセスに着目し、そこから自己改革の重要性を学ぶべきだろう。

水産庁のNZレポートを徹底検証する その5


漁船の減少

ITQの導入以降、NZの漁船数は4割減少した。
減少の大半は10m未満の小型船である。
一方、40m以上の中型船・大型船の数は倍増していいるので、漁業者の減少は1割であった。
漁船の総トン数は、むしろ増えているかもしれない。

日本の漁船数は3割減少である。
特に大型の漁船ほど、減少率が大きいことがわかる。

NZ
 

<10m
10~40m
40-70m
70m>
total
1988 2137 1060 123 88 3408
2001 940 880 190 166 2176
日本
 

<5t
5-200t
200-500t
500t>
total
1988 131948 28822 1378 57 162205
2001 94976 25037 807 12 120832

NZの漁船数の減少は、漁業の衰退ではなく、大型化・効率化という産業構造の変化である。
ITQ導入当時は、沿岸資源が乱獲により疲弊していたので、
小型漁船の減少はITQが理由とはいえないだろう。
何もしなければ小型船はもっと減っていたはずだ。

一方、日本の漁船は全てのサイズクラスで減少しているが、
特に、大型船ほど減少率が激しい。
日本の漁船の減少は、産業の衰退、弱体化の表れである。
また、日本の小型漁船の減少率が低いのは、
年金生活の60歳以上の人間が漁業にとどまっているからである。
企業だったらとっくに倒産しているような状態である。

漁民であるか否かにかかわらず、経済活動の一環として割当てに対する投資が行われており、割当ての集中が継続

割り当ての集中があるのは事実。また、外部からの投資もある。

トップ10企業による漁獲枠の保持率
 1987:   67%
 1999:   82%

そもそも、ニュージーランドは、政策的にこの方向を目指していたのだ。
ニュージーランドをはじめとする多くの漁業国は、大企業かを国策として進めている。
世界の水産市場で勝負するためには、効率的な経営戦略が要求されるからだ。
大企業化のスケールメリットと、漁獲枠取引の自由化による外部資金調達によって、
国際競争力を高めようという戦略なのだ。

NZの割り当ての集中や、外部からの投資は、制度設計によるものである。
日本はこれらを望まないのであれば、そうならないITQの制度設計をすればよい。
漁獲枠保有の上限を下げるだとか、地域(漁協)に譲渡不可能な枠を一定量を配分しするとか、
いくらでもやり方はあるはずだ。

水産庁のNZレポートを徹底検証する その4


漁業者数、漁船数ともに減少

水産庁&御用学者は、「ITQをやると漁業者が激減する」と脅しをかけている。
でも、ITQで実際にどの程度漁業者が減ったという具体的なデータは示さない。
「漁業者の数はかなり減少したということでございます」とあたかも資源管理によって漁業者が減ったかのように説明しているが、
実際にITQの導入でNZの漁業者がどれぐらい減ったのかを見てみよう。

下の図は、NZがITQを導入した1986年から2000までの漁業者数を比較すると、
日本が4割減少でNZは1割減少。ITQを導入していない日本の方が明らかに減っているんですが・・・
Image0903012.png

もう一つ、おもしろいデータを示しておこう。
漁業に携わっているのは漁業者だけではない。
加工もまた、漁業による雇用である。
NZの漁業者と加工業者の合計はこんな感じ。
加工も含めれば、NZ漁業の雇用は増えているのだ。

Image0903011.png

人間の漁獲能力が自然の生産力を遙かに超えている現状では、
魚を捕る人間はそれほど必要ではない。
過剰な漁業者は、資源を持続的に利用していく際のリスクでしかないのだ。
漁業を成長させる鍵は、自然の生産力をいかに高く売るかである。
上の図からわかるように、NZの漁業は全体の雇用を増やすと同時に、
過剰な漁獲分野から、必要な加工分野へと労働者が移動することで、
「多く獲る漁業」から、「高く売る漁業」へと、産業構造が変化した。
資源管理は、単に魚を守るというレベルの話ではない。
ITQは漁業者のインセンティブ(動機付け)を変え、
持続的な産業構造への自己改変を可能にするのだ。

乱獲を放置している日本では、漁業生産は下り坂だから、
加工・流通も、漁業者と同じかそれ以上に減少している。
何もしなければ、10年後には流通業者は半分以下になりそうな勢いである。

日本の漁業者は60歳以上が大半で、50代が「若手」という浜もある。
沖合い漁船の乗組員は、インドネシア研修生に置き換わっている。
沿岸も沖合も、新規加入が途絶えて、縮小再生産にすらなっていないのである。
ITQを入れようが何をしようが今後も確実に漁業者は減る。
このまま何もしなければ、あっという間に半分以下になるだろう。

資源管理をしなければ、漁業は産業として成り立たず、雇用が減少する。
漁業者を減らすためにもっとも有効な手段は、資源管理をしないことだ。
逆に、漁業者の減少を食い止めるために必要なことは、
適切な資源管理による漁業生産額の安定である。
そのためにITQが有効な手段であると言うことはNZの事例からも明らかである。

「漁業者の数はかなり減少したということでございます」などと印象操作をせずに、
日本漁業の危機的状況を認めた上で、漁業の雇用を増加させたNZから謙虚に学ぶべきである。

水産庁のNZレポートを徹底検証する その3


木島資源管理推進室長
まず、一つ目に、漁獲量を迅速かつ正確に測るためにはたくさんのコストがかかりますよということでございます。これについては、右下の枠を見ていただきたいのですが、仮にまずは水揚げ港に人を張り付けましょうということを考えてた場合に、2種漁港、3種漁港の約600港に人を張り付ける、さらにニュージーランド、オーストラリアがしているような漁船に人を乗せましょうとのことを考えた場合には、今、ミナミマグロでやっているように清水と同じようなことをやった場合には、港の張り付け分が約140億円、それから船に人を乗せるといった場合には、約300億円と合計で少なくとも約440億円もの費用がかかりますよと。
http://www.jfa.maff.go.jp/suisin/yuusiki/dai5kai/giziroku_05.pdf のP11

このように、水産庁サイドはIQを入れると金がかかるぞと脅しているわけだが、
300億円というのは全くのデタラメだ。
少なくともニュージーランドと同じことをやったらこんな金額にはならないですよと。

このときに示していた資料は、
http://www.jfa.maff.go.jp/suisin/yuusiki/dai5kai/siryo_18.pdf のP15だろう。

右下にTAC漁業の漁船数の一覧表がある。

Image0903018.png

大臣許可漁業の漁船では、小型のイカつり船が3100隻と群を抜いている。
これらの大半は10トン以下の小型船であり、監視員が乗船するスペースは無い。
これらの小型イカ釣り漁船をのぞけば、大臣許可漁船は700隻に過ぎない。
NZと同じ運用をするなら、監視員は全体の10%で70隻となる。
下の水産庁試算の3808隻の部分が70隻に減るので、
全体の額は546000千円(=29702400/3808*70)となる。

Image0903017.png

NZと同じように監視員を乗船させると300億円かかるというのは、全くの嘘だ。
NZとおなじ運用をするなら、乗船監視員の経費は5億円程度である、
また、この費用はNZでは業界の自己負担である。

ITQをやりたくないから、法外な予算をふっかけたのだろうが、
その前提があまりにもお粗末である。
こんなでたらめが、通るはず無いだろうに・・・

水産庁のNZレポートを徹底検証する その2


水産庁のレポートはことごとくデタラメなんだが、どこがデタラメかを具体的に見てみよう。

漁業省400人のうち約180人が監視員で、大型の漁船には1人ずつ監視員が同乗。

NZに監視員が多いのは確かなんだが、大型漁船には一人ずつ監視員が乗船というのは嘘。現在のNZには70m以上が170隻、10-70mが1070隻存在するので、大型漁船に一人ずつ監視員を常駐するのは、そもそも不可能だ。NZ漁業省に問い合わせたところ、遠洋漁業の大型船の監視員のカバー率は20%程度であり、大型船全体でも10%程度とのこと。 監視員は、必要な漁業に優先的に配置される。過去に違法があった船、投棄の疑いがある船(同じような操業をしている船と比べて、 漁獲組成が大きく異なる船)、海鳥・海獣の混獲のリスクがある漁業が対象になる。問題がありそうな船、将来問題になりそうな漁業に、重点配置をしているのだ。

NZでは、監視員の費用は業界が負担しているのが重要な点だろう。NZでは、「漁業者が、操業を遵守していることを証明する義務を負う」という考え方だ。日本の水産庁は、4000隻の漁船(大半が10トン未満の小型イカつり船)すべてに税金で監視員を配備するとか寝言を言っているが、非常識すぎて頭が痛くなってくる。 監視員は教育・維持に金がかかるから、まずは、コスト対効果の高いVMS(衛星による漁船監視システム)の導入をすべきである。 VMSは機材がUS$1000-US$5800で、ランニングコストも1日US$1-US$5しかからない。まずはVMSを導入し、それでも不十分な場合には、業界自己負担で漁業者負担で監視員を乗船させるというのが、ものの順序だろう。主な漁業国はVMSをすでに導入済みであり、未だに何もしていないのは日本ぐらいじゃないかな。VMSのVの字も出てこないことからも、水産庁の監視員4000人計画の目的は、漁業の監視ではなく、予算のつり上げであることがよくわかる。

現在、指定港以外の水揚げ防止等をはかるため、VMSや監視カメラの船上設置を検討

NZでは、1994年からVMSを導入していますが? すでに28mよりも大型の船には100%VMSが導入されている。小型の船にも搭載可能な安価なVMSの導入が進められており、 近い将来、全ての船に導入することになっている。VMS以外にも、軍の早期警戒管制機(AWACS機)による漁船の監視なども行われている。AWACSのデータを見せてもらったが、漁船の位置が手に取るようにわかるのはびっくり。軍事機密と言うことで、資料は貰えなかったけど、すごいものですよ。 NZでは、VMSの導入も受益者負担が徹底されている。NZ政府が漁業者から金を集めて、VMSのシステムを開発し、 28m以上の船には有無を言わさずにVMSを購入させた。「政府は、俺たちの金で開発したシステムを、高い値段で売りつけるんだ」と、一部の漁業者は腹を立てているようだ。

虚偽報告や投棄が存在

どこの国にでも、虚偽報告や投棄は多かれ少なかれ存在するだろう。NZでも虚偽報告や投棄はゼロではないだろうが、日本と比較にならないぐらい少ない。 NZでは、漁獲物の海上投棄を一切認めていない。たとえ、商業価値がない魚でも網にかかった以上は持ち帰るのがルールである。 漁業が非対象種に与える影響を評価するためである。NZでは、全ての投棄は違法であり、投棄は非常に厳しいペナルティーの対象となる。軽微な違反で$5000(25万円)、普通の違反で500万円、最大で1250万円の罰金、および、魚、漁船、漁獲枠の没収、刑務所行きまである。

NZでは、漁獲枠保持者が漁船を雇って操業をさせる場合も多い。雇われ漁船が違法操業をすると、漁獲枠保持者にも漁獲枠の没収を含むペナルティーがある。漁業会社は、漁船を雇うときには、その漁船がルールを遵守するかどうかを厳しくチェックする。スポンサーの目が光っていれば、雇われ漁船もうかつなことはできない。 組織的に投棄をしていたら、明らかに漁獲組成が他の漁船とは違ってくるはずだ。

投棄の疑いがある船には、監視員が乗船し、操業を確認する。NZ政府は、監視員がいる場合と、いない場合の漁獲組成の差に着目する。いてもいなくても、同じように獲れていれば、投棄はないものと判断される。監視員がいるときには、小さい魚も大量に捕れるのに、監視員がいない場合には大きな魚しか獲れないといった明瞭な差がある場合は、監視員の乗船頻度をふやして、原因を徹底的に調査する。

NZの不法投棄への対策は、世界でもっとも厳しい部類に入る。一方、日本はどうだろうか。投棄自体を禁止していないので、海に捨て放題だ。まともな規制がないので、「不法投棄」はないだろう。そもそも、国として管理責任を放棄しているのだから、「無法地帯に違法は存在しない」のである。自らの無為を棚に上げて、NZ漁業のことを「虚偽報告や投棄が存在」などと、わざわざ指摘する面の皮の厚さは賞賛に値する。

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