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資源管理の成功例:ノルウェー(2)

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North Sea herringの復活に成功した背景には、国の政策の大転換があった。
特定の漁業だけ頑張ったわけではなく、国の漁業全体を方向転換させたのだ。

ノルウェー政府の基本政策
1.資源の保護を最優先した漁獲量の規制を徹底する
2、漁業ライセンスの発行を控えて、漁業者を減らす
3.補助金を減らして、水産業の自立を促す

これら3つの古典的な管理手法が、如何に効果的であったかは歴史が証明している。

資源量
資源量はコンスタントに上昇を続けて、浮魚・底魚共に、85年から倍以上に回復した。

  浮魚のSSBの合計値
 norway05.png
(http://www.fiskeridir.no/fiskeridir/content/download/7568/61949/file/tabeller2005_1.xlsのFigur 1Aより引用)

  底魚のSSBの合計値
 norway06.png
 (http://www.fiskeridir.no/fiskeridir/content/download/7568/61949/file/tabeller2005_1.xlsのFigur 2Aより引用)


漁業者の数
漁業者の数は、どんどん減っている。資源が高水準にあっても、漁業者の数を絞るための努力が続けられている。
 norway07.png
ノルウェー漁業白書のp5より引用


漁獲量
一時的に漁獲量が減らし、資源を回復させた。
そして、資源回復後も、漁獲量を増やし過ぎないように努力をしている。
norway08.png
  http://www.fiskeridir.no/fiskeridir/content/download/5459/43391/file/rapport2004.pdfのP40より作図


漁獲高
漁獲高(million Nok)は、上昇の一途を辿っている。
世界中で魚の需要が高まり、魚の単価が上昇しているので、漁獲量が横ばいでも収益は増えている。
豊富な資源から、需要があるサイズを安定的に供給できるので、
日本のように獲れるものをその都度獲りきる漁業よりも、価格の面で有利である。
ゆとりある資源利用によって、経済効率を高めているのだ。
「漁獲量を減らし、収益を増やす」というのが、ノルウェーの政策目標である。
norway09.png
http://www.fiskeridir.no/fiskeridir/content/download/5459/43391/file/rapport2004.pdfのP40より作図

補助金について
70年代の補助金依存体質からの脱却には15年かかった。
この図は80年代からのデータだが、実は70年代よりも80年代の方が補助金は増えている。
過剰努力量が自然淘汰されるのを待っていては資源が持たないので、税金を使って淘汰したのだ。
ピークの81年には200億円ぐらいだった補助金が、現在は殆どゼロまで削減されている。
漁業の採算を自立させる方向に誘致したので、補助金を打ち切ってからも生産性は向上している。
不適切な補助金を出さないことが、漁業の競争力を高めて、漁業者の経営を安定させるという実例だ。 
norway10.png 
(http://www.fiskeridir.no/fiskeridir/content/download/7568/61949/file/tabeller2005_1.xlsのFigur 13より引用)


日本とノルウェーの漁業構造の比較

日本  ノルウェー
漁業従事者 21万人 1.9万人
漁獲量 550万トン 280万トン
漁業者あたり漁獲量 26トン 147トン
資源状態 低位減少 高位横ばい
補助金 1800億円+α ほぼゼロ 
貿易(重量) 輸入一位 輸出一位

ノルウェーの漁業者あたり漁獲量は、日本の5倍以上。
この表面的な数字以上に、日本の漁業の方が効率が悪い。
ノルウェーは資源量を高めに維持しつつ、経済的に価値が高いサイズを計画的に漁獲している。
一方、日本では値段がつけば何でも獲る漁業が主流であり、
こんなことまでしている。
http://www.hokkoku.co.jp/_today/H20061002001.htm
これは、ぼちぼちやっている魚屋さんのBBSで仕入れたネタなのだが、
サゴシで豊漁貧乏とは酷すぎる。1年待てば高級魚なのに・・・
こういう漁獲をしていたら、日本の市場が輸入品に席巻されても仕方がないだろう。
負けるべくして負けているのだ。

補助金漬けの日本漁業に国際競争力がないのは当然だ。
国内の漁業関係者は、10年後には漁業者が10万人に減るとか心配しているようだが、
10年後には資源も半減しているだろうから、それでもまだまだ漁業者が多すぎる。

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