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乱獲を抑制する漁業システム

  • 2006-11-05 (日) 4:24
  • 研究
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乱獲状態の解消には、社会的・経済的に莫大なコストがかかる。
だから、資源管理のポイントは、予防にある。
防火に勝る消火なし、というワケだ。
乱獲状態を放置すれば必ず悪化するので、
対策が遅れれば、そのぶんだけ社会・経済的なコストは増えてしまう。
ボヤのうちに消しておくことが重要なのだ。

乱獲を回避するための基本戦略は次の3点

1)過剰な設備投資を抑制する(控えめで充分)
資源を持続的に有効利用するためには、
「努力量は控えめに、資源量は高めに」が基本となる。
この状態は、設備投資をすれば短期的には利益が出る水準でもある。
つまり、何らかの規制がなければ、良い状態は保てないのだ。

2)資源に減少の兆しがあれば、漁獲を弱める
水産資源の生産力はコンスタントではない。
多くの資源の加入率は産卵場の水温と相関があることが知られている。
環境要因によって、一時的に生産力が落ちてしまうことは良くあるのだ。
ぎりぎりまで努力量を拡張していた場合、一時的な生産力の低下によって、
資源を大幅に減少させてしまう。
こうなると、資源はもはや漁業を支えられなくなってしまい、
乱獲スパイラルへと突入する。
資源の生産力の一時的な低下が、乱獲の引き金となるケースは非常に多い。
「自然環境のせいだ」と漁業者も行政も言うが、これは管理の失敗なのだ。
資源の生産力が変動するというのは常識であり、
生産力が一時的に低下するのは、当然のこととして対応しなくてはいけない。
生産力が回復したと見なされるまで、漁獲を弱めれば数年で回復するのだから。

3)資源の減少が明らかになれば、素早く回復処置をとる
日本のように、わざわざ政策で誘導するのは論外として、
乱獲を予防する対策を練っていたとしても、
乱獲状態を100%回避できるわけではない。
気がついたら、資源が減っていたというのは、良くある話だ。
漁獲努力量が資源の生産力を超過した状態を放置すれば、
手のつけられない乱獲まで確実に進行する。
この場合には、素早く、回復措置を講じる必要がある。
もちろん、経済的な混乱は不可避である。
そもそも、この状態になってしまう時点で戦線は悪化しており、
急ブレーキか、事故かという選択肢しかない。
どちらが良いかは言うまでもないだろう。
一時的な混乱を避けて、産業をつぶすという選択は馬鹿げている。

ノルウェーの場合は、断固たる漁獲量削減をしたのが功を奏した。
徹底した措置を素早く導入したからこそ、10年程度の漁獲減で済んだのだ。
中途半端な削減措置を逐次的に導入しても漁獲の低迷が長期化するだけだろう。
極端な漁獲量削減が成功したのは、失業しても食べていける福祉国家だからというのもある。
そのための道筋をつけない限り、こういった極端な方向転換は出来るはずがない。
日本漁業は、そのためのコストを払ってでも方向転換をすべきかを問う段階に来ているだろう。
いくら方向転換をしても、元の補助金付けの政策に戻ってしまえば、
資源が再び減少するのは時間の問題なのだ。
ノルウェーの場合は、基本的な政策を変更して、努力量の抑制を行っている。
補助金も削減しているので、以前のような過剰漁獲にはならないだろう。

大きさが変わるツボがあるとしよう。
常にツボのぎりぎりまで水を入れ続ければ、
ツボが小さくなったときに水は溢れるだろう。
水をこぼさないためには、
ツボが小さくなった時を基準に水を入れること。
また、水面がツボの入り口に近づいたら、水を抜くことだ。

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