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非生産的なセクションを、政治力で温存するから、高齢化が進む


日本の社会では、非効率なセクションを整理・縮小することに、根強い反対がある。もちろん、非効率なセクションも残しつつ、全体が維持できればそれに越したことはない。しかし、多くの場合、それは無理な相談だ。再三度外視で、非生産的なセクションを温存しつづけるとどうなるかという答えが、今の日本漁業である。

沿岸漁村(漁協)は、大きく3つに分類できる。

1)漁業で、利益を出している
2)漁業外収入で、利益を出している
3)まったく利益をだしていない

1)漁業で利益を出している漁村

こういう漁村は、後継者もいるし、コミュニティーにも活気がある。残念なことに、こういう漁業は、きわめて少ないのが現実である。日本漁業における若齢層の少なさからも、再生産できている漁業が例外であることがわかるだろう。地元で漁業希望の若者が順番待ちをしている場合も多く、よそ者はまず入れません。

2)漁業外収入で、利益を出している漁村

沿岸環境を切り売りし、補償金などで莫大な利益を得ている漁村も存在する。しかし、その数は、あまり多くない。漁業権が打ち出の小槌になるかどうかは、地理的な要因が大きい。漁業者につかみ金を払ってでも沿岸をいじりたい人間がいなければ、漁場を占有したところで、金にならない。
漁業権利権でウハウハな漁協は、新規加入をまず認めない。漁業以外の収入は、漁業者を増やしても、増えない。むしろ、一人一人の分け前は、減るからである。また、この手の組合は、ドル箱を占有したいので、何があっても合併に反対する。

3)利益を出していない漁村

実はこれが大多数を占めている。補助金については、某シンポジウムでもいじめられたんだが、農業と比べれば規模は格段に小さい。もともと漁業は輸出産業だったので、伝統的に少ないのです。まああの手この手でいろいろやっているみたいだけど、ほとんどの場合お小遣い程度だ。
これらの浜の漁師も、少ない魚を大勢で分け合うのは基本的に反対だ。また、新規加入者だって、生活が成り立ってないようなところにわざわざ入りたくない。子供は漁業以外の職につかせて、「捕れるだけ獲って、漁業は自分の代で終わり」という漁師が多いだろう。日本のほとんどの沿岸漁村では、順調に高齢化と少人数化が進行している。縮小再生産すらできずに、一直線に絶滅に向かっている、「限界漁村」は多数存在する。

漁業就職フェアは税金の無駄遣い

漁協が成り立つには最小の人数がある。この定員に達していない漁協がかなりあると見られている。すでにリタイアしているお年寄りの幽霊会員でなんとか定数を保っているところもある。生産性の低さは、漁業権による政治力でのりきれる。しかし、政治力の源泉である漁業権が維持できるかどうかは死活問題だ。そこで、頭数をそろえるために、外から人を呼ぼうと言うことになる。しかし、漁師の子供ですら逃げ出すような生産性の低い浜に、素人がノコノコと転職したところで、経営が成り立つわけがない。漁業者就職の補助金のたぐいはあるが、指導という名目で既存の漁業者に吸い取られる。既得権者は、漁協が維持できて、補助金もゲットできて、一挙両得だ。一方、新規加入者は、自己資金を食いつぶし、新規雇用の補助金がつきたところで、賞味期限切れでサヨウナラだろう。
不況で、一次産業への転職を考えている人も多いようだが、くれぐれも、計画的に、下調べをした上での転職をおすすめします。儲かっている漁業は基本的によそ者お断りだし、誰でも良いから(自己資金をもって)きてくださいという漁業は、産業として成り立っていない可能性が高い。漁業就職フェアのたぐいは山のようにあるが、新規参入は、実質的に閉ざされたままであり、漁業は着実に自滅の道を歩んでいる。

漁業関係者に言わせると、高齢化は一次産業をいやがる若者が悪いらしいのだが、俺にはそうは思えない。生産性が低くて、生活が成り立たないから、漁業に就職できないのである。非生産的なセクションを政治力で温存した結果、高齢化が進み、ますます入り口が狭まっている。この構図を変えるには、(3)の利益を出していない浜の非生産性を改善し、(1)を増やすしかない。日本の漁業政策は、公的資金をばらまいて、非生産的な漁業を非生産的なまま温存しようとしているから、どこまでも衰退が続くのである。

Comments:4

沿岸漁業の一漁師 09-05-13 (水) 21:50

>農業と比べれば規模は格段に小さい。もともと漁業は輸出産業だったので、伝統的に少ないのです。

農業並に出ていると勘違いされている方が非常に多いですよねw。
その少ない補助金をめぐって漁業者が集団化して汲々とした行動をとっていますねw。

>一次産業への転職を考えている人も多いようだが、くれぐれも、計画的に、下調べをした上での転職をおすすめします。

あと、『自治体職員の質』は必ずリサーチすべきですね。
酷いところは北朝鮮やミャンマー軍政状態w。
ヤクザがバックについていないと舐めてかかってきたりとかですねw。

>日本の漁業政策は、公的資金をばらまいて、非生産的な漁業を非生産的なまま温存しようとしているから、どこまでも衰退が続くのである。

上から下まで『儲ける事はケシカラン』、『一人勝ちは許さん』という気風がありますからね。
共産化が著しく、低所得を強いられ、実質的に『一国二制度』状態ですねw。

元漁師 09-05-16 (土) 10:18

>漁業関係者に言わせると、高齢化は一次産業をいやがる若者が悪いらしいのだが、俺にはそうは思えない。生産性が低くて、生活が成り立たないから、漁業に就職できないのである。

これには、うなづくばかりですね。
私の場合、20代の時にすでに資源が枯渇状態の時に沿岸漁業に参入しました。
漁業に憧れもあったし、実際にやってみると、これは天職だ!と思うくらい大好きな仕事でした。

そして参入して最初にやることといえば、魚が少ない海の現状を棚に上げておいて
まずはその少ない魚を獲ることです。

なぜなら、組合員になるために一定の漁獲高をあげないといけないから。

ここに日本の漁業の根本的に間違った優先順位があると思います。

組合員の資格を得るために、少ない魚を獲りました。
(こんなに少ないのに…獲るより、増やすほうが先だろう)と思いながら。

魚が目に見えて減りました。結局一年で食えなくなりました。

なんだか順序が逆なんですよね。

途方にくれて漁師とこの先の漁業について話し合ったりしましたが、(資源が減っても、漁師が減れば俺の取り分が増えるから、漁師なんかどんどん減ってしまえばいい)と言ってる若い漁師もいましたね。

その後、漁師を辞め、海の環境を良くするというNPO法人などと色々やりましたが、そのNPO法人も理論だけ金儲けだけで中身がありませんでした。
結局、「持続可能な漁業で食っていきたい」という思いをもった漁師(私)は「持続可能な漁業は日本ではあと3.40年はムリ」という結論に達しました。
今はサラリーマンをしています(笑)

のもんあじ 09-05-16 (土) 23:44

私の思っている事がわかりやすく表現されています

漁業フェアは犯罪です

1年程前に  ”今、最も熱いブログはコレだ”  と紹介して頂いています

勝川 09-06-14 (日) 5:52

沿岸漁業の一漁師さん

>あと、『自治体職員の質』は必ずリサーチすべきですね。
>酷いところは北朝鮮やミャンマー軍政状態w。
>ヤクザがバックについていないと舐めてかかってきたりとかですねw。

そういう場所もあるんですね。
個人的に面識がある自治体の人は、
漁業の将来をまじめに考えている人が多いので、意外に思いました。
ただ、私はやる気がある自治体職員としか、
そもそも接点を持ちようがないので、
そうでない人が実際には大多数なのかもしれませんね。

元漁師さん

貴重な体験談をありがとうございます。

日本の漁業界には、「多く獲ることが良いことだ」という誤った考えが浸透していますね。実際には、「ちゃんと残さないこと」が諸悪の根源なのですが・・・

終戦直後の食糧難の時代とは違うんだから、漁業のあり方も変えていかないといけません。

>結局、「持続可能な漁業で食っていきたい」という思いをもった
>漁師(私)は「持続可能な漁業は日本ではあと3.40年はムリ」という
>結論に達しました。

今のままだと、いつまで経っても無理でしょうね。
それを少しでも変えていくのが専門家の社会的責任です。

のもんあじさん

ブログはとても刺激になりました。
お互い、体には気をつけて、末永く戦っていきましょう。

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