Home > マグロ輸出規制 > マグロについて、語ってみる その1

マグロについて、語ってみる その1

[`evernote` not found]

CITESとは?

CITESというのは国際条約であり、日本ではワシントン条約として広く知られている。CITESでは、絶滅のおそれのある希少生物の取引を制限できる。CITESでは2~3年に1度、締約国会議というのを開いて、規制対象について議論をすることになっている。2010年にドーハで、締約国会議が開かれるのだが、その会議で大西洋クロマグロの取引を規制しようという動きがある。

実は、CITESでマグロの取引を取り締まろうという動きには、長い歴史がある。17年前から、いろいろな議論を繰り返して、今に至っている。何があったかをざっと振り返ってみよう。

1992年 CITES締約国会議で大西洋クロマグロの掲載が提案される
(米国が事前に提案→撤回、スウェーデンが提案→撤回)
1994年 IUCNレッドリストの基準の改訂
1996年 CITES締約国会議でクロマグロとミナミマグロの掲載提案(ケニアが提案→撤回)
IUCNで海洋生物に対する基準の議論
IUCNレッドリストに、マグロが条件付きで掲載される
現在 IUCNレッドリストに、マグロが条件付きで掲載される
大西洋クロマグロをCITESに記載する機運が高まっている。
モナコ提案→付属書Iに記載(スペイン、イタリアの反対で否決)
米国→パブコメを募集中
2010年 15回会議締約国会議(ドーハ)

まず、1992年に、米国が大西洋クロマグロの取引停止を提案する姿勢を示したが、事前に撤回。本会議では、スウェーデンが同様の提案をした。しかし、参加国の賛同が得られず、撤回。この時点から、マグロが標的になっていたが、国際世論から相手にされていなかった。潮目が変わったのが1994年のIUCNのレッドリスト基準の改定である。

IUCNとは?

IUCNは、レッドリストを作っている団体であり、CITESの基準にも大きな影響力を持っている。

IUCN-国際自然保護連合は、1948年に設立されました。84の国々から、111の政府機関、874の非政府機関、35の団体が会員となり(2008 年4月現在)、181ヶ国からの約10,000人の科学者、専門家が、独特の世界規模での協力関係を築いている世界最大の自然保護機関です。IUCNは、 地球的・地域的・国家的プログラムの枠組みの中で、国際条約等の会議の支援を通じて、持続可能な社会を実現し、自然保護および生物多様性に関する国レベル の戦略を準備し、実行するため、75以上の国々を手助けしてきました。IUCNの約1,000人のスタッフは、62の国々に滞在する多文化、多言語の機関 です。本部は、スイスのグランにあります。
日本支部はこちら(http://www.iucn.jp/iucn/index.html)

IUCNでは、1992年より前は、専門家の委員会の総意として、どの種を絶滅危惧かを考慮していた。「それってあまりにも恣意的じゃね?」という批判もあった。そこで、1994年にレッドリストの基準を作成し、より客観的な指標に基づいて、機械的にリストを作れるようにした。たとえば、絶滅危機(Endangered)については次のように定義されている。

絶滅危機「Endangered(EN)」
下記の基準(A~E)に定義されているように、絶滅寸前ではないものの、近い将来、野生絶滅のリスクが高い場合には、その分類群は「絶滅危機」です。

(A)以下のいずれかの形態で、個体群が縮小している

(1) 以下のいずれかの基準に基づいて、過去10年間、若しくは3世代のうち、どちらか長い方の期間で、少なくとも50%の縮小が観察、推定、推論され、あるいは疑われる。

(a)直接の観察
(b)分類群にとって適切な個体数レベルの指標
(c)生息地の面積、分布域の大きさ、あるいは生息地の質の減少
(d)実際のあるいは潜在的な捕獲のレベル
(e)外来種、雑種形成、病原体、汚染物質、競争種、寄生種の影響

(2) 上記の(b),(c),(d),(e)のうち、いずれかに基づいて、次の10年間若しくは3世代、どちらか長い方の期間に、少なくとも50%の縮小が予測あるいは想定される

(B)分布域の大きさが、5000km2 未満、あるいは生息地の面積が500km2 未満と推定され、以下の2つのうちのいずれかに該当する。

(1)強度の分断がある、若しくは知られている生息地が5ヶ所以下の場合。
(2)以下のいずれかにおいて、連続的減少が観察、推論、予期された場合。

(a)分布域の大きさ
(b)生息地の面積
(c)生息地の面積、大きさ、質
(d)地点あるいは下位個体群の数
(e)成熟個体の数

(3) 以下のいずれかにおける、極端な変動

(a)分布域の大きさ
(b)生息地の面積
(c)地点あるいは下位個体群の数
(d)成熟個体の数

(C)成熟個体数が少なくとも2500未満と推定され、かつ、下記に該当する。

(1) 過去5年間若しくは2世代、どちらか長い方の期間に少なくとも20%の連続的
減少が推定される。
(2) 以下のいずれかにおいて、成熟個体数や、個体群の構造において、連続的減少が
観察、良き、推論される。
(a)強度の分断(どの下位個体群も250以上の成熟個体を含まない)
(b)全ての個体群が単一の下位個体群にある

(D)成熟個体数が250未満と推定される。

(E)野生絶滅の可能性を示す定量的分析が、20年間若しくは3世代、どちらか長い方で、少なくとも20%である。

IUCNは、A-Eまでの5つの基準のうちどれか一つでも該当したら、機械的にレッドリストに載せることにした。

(つづく)


Comments:0

Comment Form
Remember personal info

Trackbacks:0

Trackback URL for this entry
http://katukawa.com/wp-trackback.php?p=2299
Listed below are links to weblogs that reference
マグロについて、語ってみる その1 from 勝川俊雄公式サイト

Home > マグロ輸出規制 > マグロについて、語ってみる その1

Search
Feeds
Meta
Twitter
アクセス
  • オンライン: 5
  • 今日: 1251(ユニーク: 528)
  • 昨日: 1080
  • トータル: 9378368

from 18 Mar. 2009

Return to page top