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水産物の輸出が伸びる背景

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水政審の議事録から、水産物の輸出に関する議論を追ってみよう。
http://www.jfa.maff.go.jp/sinseisaku/keikaku_19/minute/180413.htm

○浅川加工流通課長 
漁獲自体は小型が多いということで、産地価格は低いんですが、消費地では中型、大型サイズが求められているということで、高値で推移するということで、こちらも需給のミスマッチが生じています。このようなものを打開するために、サバについては、小型のものについて国内では需要がないということで輸出をするという新たな方向が出てきております

○浅川加工流通課長 
 まず、農林水産省全体の取り組みとして、現在、農林水産物または食品の輸出が平成16年は3000億円あるんですが、5年後に倍増しようという目標のもとに、輸出に取り組む方たちを支援しているところでございます。中でも輸出実績自体、右の方なんですけれども、平成16年から17年に12%近く増えているわけですが、うち水産物は2割近く増えているということで、輸出の品目としてはメインの部類に入るかと考えております。
 次のページですけれども、水産物の輸出の取り組みとして、外国での日本産品の普及ですとか販路開拓といった取り組みに対して農林水産省で支援しております。水産物につきましては、右に書いておりますとおり、H団体というのは北海道の団体なんですけれども、ホタテとかアワビ、サケを出荷したり、下の方は九州の団体になりますけれども、サバの小魚を出荷したり、輸出したりという取り組みが始まっているところです。
 輸出の現状が次のページになります。全体的には、輸出という状況はここに書いてあるとおりなんですが、かつては香港とかアメリカといったところが輸出のメインだったわけですけれども、最近は韓国とか中国というお隣の国への輸出がふえているということ。また、かつては真珠とか貝柱、ホタテといったものがかなり中心だったんですが、最近の動きとして、サケ、マスですとか、サバといったものが少しずつ増えてきているといった動きにございます。
 このような動きは、国内で価格が上がらない場合に外国へ出すことで新しい需要が増えるといったこと、また国内のダブついた市場を少し引き締めるといった効果もございますし、漁業の活性化といった、いい効果もあると考えております。
 次のページが取り組み事例でございます。輸出先にさまざまなニーズがございます。ここに書いてあるとおり、いろいろな魚種によってニーズがございますので、それに応じて輸出をしているという取り組みの事例を書いてありますのが、このページでございます。
 最後に、ただ輸出するときに必要なことということで、これも第2回のときに少し触りを御説明いたしましたけれども、EUとかアメリカといったところが衛生面での管理をきちんとやってくださいということを諸外国に求めておりますので、輸出する業者は、それぞれの輸出先の基準に合致した衛生水準のものを出す必要がある。こういうものに今後、対応していくことが課題となっております。
 以上でございます。

○原田委員 輸出について、現状、日本に入ってくる輸入水産物、輸出されている国々の戦略と、日本が輸出に打って出ようという戦略を比べると、大きな開きがあります。ノルウェー、チリのサケですとか、インドネシア、東南アジアからのエビですとか、どういった魚種をどこに売るかというところまで国がターゲットを決めてつくっているようなところがあります。
 そういう意味で、輸出を増やすということは結構だと思うんですけれども、先ほどからも意見あったような余ったものを出しましょう、輸入が入ったので、はじかれたものを何とか付加価値をつけてって、これでは本当の輸出対策の戦略ではないと感じます。
 国として、輸出を5年後に倍増であれば、もうちょっと明確な戦略を立てて、日本の漁業が活性化するような戦略でもってやっていただけたらというふうに思います。 

日本の水産物の輸出には構造的な問題があることがわかる。
漁業者の早どり競争の結果、消費者の需要が低いような小型の魚が多獲されている。
その結果、需要が高い中型大型の供給が減少し、高値で推移することになる。
ここに輸入魚が殺到するのは自明の理だろう。

需給のミスマッチは、小型乱獲の結果である。
小型のものは国内で価値がないから、輸出します、というのはおかしい。
それを大きくしてから国内で売るという選択肢もあるはずだし、
それこそが需給のミスマッチを解消し、食糧自給率を上げる道だろう。
また、輸出についても、かつては水産物を高く買う香港やアメリカがメインだったのだが、
最近は韓国、中国と言った、水産物の値段が安い国にしか相手にしてもらえなくなっている。
世界の水産物の値段が上がる中で、日本の輸出単価が減少している。
日本の水産物が先進国から相手にされない理由はいくつかある。

1) 衛生管理基準
EUや米国は独自の衛生基準をもっているが、日本の水産物のほとんどはその基準をクリアしていない。
今のままでは門前払いをされてしまうので、衛生基準を国際水準まで引き上げる努力が必要である。

2) 品質の問題
輸出をするには良い状態の冷凍品が必要になる。
日本で魚と言えばまず生鮮であり、余ったものが冷凍になるという頭がある。
港で余った魚を冷凍させても、既に品質の劣化は進んでいる。
水産物の輸出を振興している国は、獲ってすぐの新鮮な状態で冷凍できるように、
船上冷凍設備が充実している。
今の日本の冷凍技術では、漁業先進国とは戦えない。 

3) 資源の持続性の問題
日本の漁業は資源の持続性の配慮がまるでない。 
水産資源は軒並み低水準であり、ある資源が増え出すと、
「豊漁だ!豊漁だ!」といって、すぐに増加の芽を摘んでしまう。
その結果、漁獲のサイズも量も安定しない。
安定供給が出来なければ、大口の小売りからは相手にされない。
また、EUや米国では、「持続的でない漁業で獲られた魚」は高く売れない。
たとえば、ウォールマートやマクドナルドは持続的に獲られた魚しか店頭に並べない。
そうしないと消費者からそっぽを向かれるからである。
国際的な基準では日本の殆どの漁業は管理されていないと見なされる。
これでは、意識が高い消費者からは相手にされないのである。

今のままでは、日本の水産物は途上国に買いたたかれるしか無いのである。
原田委員の発言にあるように、今の日本の水産物の輸出には戦略も糞もない。
乱獲によって市場価値が無いような小魚しか供給できない。
国内では相手にされないから、二束三文でも買ってくれるところに輸出するしかない。
最近の輸出の伸びは、乱獲のつじつま合わせであり、日本漁業の断末魔なのだ。
現在の水産物の輸出は、海の幸を切り売りしているのであり、国が進めるようなものではない。
このような末期的な状態を避けるための政策が必要なのだ。

代替案としては、次の2つがある。
1)国内で消費する
2)欧米など水産物を高く買う国に輸出する

要求される品質のハードルは、
欧米>>日本>途上国
となっており、現在の日本漁業はいきなり欧米の市場をねらえる状態にはない。
まずは国内市場を狙うべきである。

輸出が全て悪いとは思わない。
次のような条件を満たしていれば、輸出を促進すべきだと思う。
1)国内市場へ充分に供給できている
2)資源状態が良い
たとえば、サンマのように豊漁貧乏で国内市場が飽和している資源は、積極的に輸出をすべきだ。
そのためには、衛生基準をクリアできるようにすると同時に、船上冷凍設備への投資も必要になる。
国は、こういう漁業の輸出を補助すべきである。
サンマが輸出できるようになれば、豊漁貧乏で泣いているサンマ漁業はかなり救われるだろう。
原田委員が指摘するように、もうちょっと明確な戦略を立てて、
日本漁業が活性化するような方向で輸出促進をすべきである。

Comments:6

kato 07-06-20 (水) 10:44

原田委員は公募で選ばれたニッスイの方ですよね。確かチリのサーモン養殖を立ち上げた方だったような…。ところで話は違うのですが、高木委員会の構成メンバーというのは非公開になっているのでしょうか。探してみたのですが見つからなかったもので。

勝川 07-06-20 (水) 12:30

的確な指摘だと思ったら、企業の方でしたか。
なるほど、納得です。

確かに、高木委員会の構成メンバーについては、情報が無いですね。
私も話の準備をする段階でメンバーを知りたいと思って、
調べたのですが出てきませんでした。
構成メンバーの公開性に関して、中の人に聞いてみますね。

業界の一拗ね者 07-06-20 (水) 13:21

ある漁業者さんから、餌料原料としての原魚は価格が下落傾向にあると聞いたことがあります。この伝でいけば、二束三文のサバは価格が急落、売り先を探していたところ中国でなら小型のものでも丸のまま売れる、農産物の輸出を振興している小泉政権以来の農水省に煽られて輸出してみたところ望外の結果を得た、という側面もあるのではないでしょうか。
この話の嫌なところは、国内では二束三文でも売れないサバの販売先があったことと、冷凍するだけで丸のまま売れるということだと思っています。すなわち、付加価値を上げようという意欲・戦略がまったくなくてもいいということです。
また、資源の問題についていえば、高木委員会の資料のなかにマサバのものがあって、2004年の漁獲は0歳が殆ど、2005年は1歳魚、2006年は2歳魚が大半であり、同じ年に生まれた魚を漁獲している、というものがあります。サバ類水揚げの数字になりますが、2004年は338、05年は620、06年は629千トンとなっていますが、そのうち獲れなくなるということになるのでしょうか?

県職員 07-06-20 (水) 17:35

広域回遊魚に関しても,体長制限は必要だと思います。
資源評価表では小型魚への漁獲圧を下げるなどの提言は一応ありますが,それを具体的施策には反映させていませんね。
とはいえ色々な漁業が輻輳して一つの資源を獲っていますから,とりあえず一番大きな所=指定漁業から手をつけてみるのはいかがでしょうか。
そうすれば我々の関係する小さい所へも(知事許可漁業や自由漁業)物がいいやすくなるんですけど。
どうでしょうか,水産庁様。この場を借りて。
(あっ東シナ海系群のマアジは資源回復計画策定中でしたね。他の魚種も資源回復計画でやっているか。 まあ一般論として,地方自治体関係者にはそういった意見が多いと思います。)

ある水産関係者 07-06-20 (水) 22:46

水産物に関するお役所の輸出振興は場当たり的で、場合によっては「百害あって一利なし」になりかねません。最近の小型サバの輸出振興は、北海道の秋サケやスケトウダラの成功例にならった「3匹目(?)のドジョウ」を狙った感があり、同じ水産物の輸出でも歴史の長い干ホタテ貝柱のように戦略的なものではありません。

指摘されるように、小型サバの輸出振興は、単に過剰漁獲能力(生産能力)がもたらす生産のはけ口に利用されているのに過ぎず、もっと言えば、お役所が乱獲(過剰な漁獲能力)を正当化し自らの無策を覆い隠すために力を入れているとしか思えません。

スケトウダラは、元々韓国に消費の下地が出来上がっていたため、輸出品の殆どは現地で消費されますが、秋サケの場合は殆ど現地で消費されることなく、加工処理された後に欧米に再輸出され、一部は「サケフレーク」として日本にも再輸出されます。小型サバの場合は、白書等を眺める限り、あたかもお役所の努力の甲斐あって、現地での消費拡大が成功しているように宣伝されていますが、私は輸出量とその大幅な増加率、さらにCIFでキロ100円を超える価格水準、さらに現地の食習慣などから考えて、お役所の宣伝を疑問視しています。つまり、多くの部分が加工原料に仕向けられ、中食向けの調整品として日本などに再輸出されている部分が多いのではないでしょうか。実際、大手小売店の冷凍食品売り場では、それらしき商品を見かけます。仮にそうだとすれば、小型サバの輸出は乱獲による資源への悪影響だけではなく、国内水産加工業の空洞化にもつながり、お役所が安易な発想で場当たり的に勧める話ではないでしょう。

サンマの輸出構想、夢があっていいですね。せっかくですから原料のまんまの輸出ではなく、IQFやONE FROZENの加工品として、高鮮度・高品質を売りにして外国に市場開拓を仕掛ければきっと道も開けることと思います。でも、短絡的に輸出ありきは考えものですね。サンマ資源は、以前に勝川さんが指摘されたように、寿命が短く、資源の予測が立てにくいうえ、サバやマイワシ以上に資源変動が激しい魚種です。さらに、高度回遊性魚類であることから、日本のみで資源管理できる魚種でもありません。従って、資源管理体制の作り方を間違えれば、サバやマイワシの二の舞になることが十分懸念されます。お役所が場当たり的な輸出振興をした結果、乱獲に陥って資源が潰れたけど、社会保険庁よろしく誰も責任をとらなかった、と言うのだけはやめていただきたいですね。

勝川 07-06-22 (金) 13:51

業界の一拗ね者さん
マサバ太平洋系群については、ほとんどが2004年生まれです。
その上の年齢も下の年齢もほとんどいません。
ということで、今3歳の年級群を取り尽くすと、
マサバ太平洋系群は超低水準に逆戻りです。
ゴマサバが全国で20万トン、マサバの対馬暖流系群が8万程度は、
しばらくは期待できます。
それも、0歳での取り尽くしが強化されるとどうなることやら。

県職員さん
沖合漁業の先取り問題をクリアしない限り、沿岸で出来ることは限られています。
経済的な価値が出るサイズになってから、獲るというルールを徹底した上で、
沿岸沖合で公平に配分していく必要があるでしょう。
実際にやっているのは、沖合漁業の先取り奨励政策なのだがら、
まるで救いようがないです。

ある水産関係者さん

>つまり、多くの部分が加工原料に仕向けられ、
>中食向けの調整品として日本などに再輸出されている
>部分が多いのではないでしょうか。
なるほど、その視点はありませんでした。
輸出された鰹や鮭も日本に戻ってきている現状をかんがえるとあり得る話です。
そうなると、小サバの輸出は、漁業ばかりでなく加工業への被害も甚大ですね。
日本人が食べる大きさまで育ててから国内消費をすれば、
加工業の再建にも繋がりますね。

>サンマの輸出構想、夢があっていいですね。
>せっかくですから原料のまんまの輸出ではなく、IQFやONE FROZENの加工品として、
>高鮮度・高品質を売りにして外国に市場開拓を仕掛ければ
>きっと道も開けることと思います。

実際、Frozenでヨーロッパあたりに売り込めないかと模索している人もいます。
いろいろと大変そうですが、出来る範囲でサポートをしたいところです。
原価償却とうの問題もありますが、今のサンマで儲かる輸出が出来なければ、
多の魚種では無理だと思います。
あと、サンマ一種に依存するサンマ漁業というような形態だと、
サンマが低水準になってもサンマを捕らざるを得ないという問題があります。
資源減少時に他の魚種にスイッチできるような漁業形態に移行する必要があるでしょう。

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