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日本近海のクロマグロ漁業の現状 その1

  • 2010-03-23 (火) 13:04
  • 日記
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タイセイヨウクロマグロは極度に減少しており、日本の輸入が減少するのは確実である。また、ミナミマグロもじつは、大西洋クロマグロよりさらに減っているので、ほぼアウト。日本の高級マグロ市場における、太平洋クロマグロ(本マグロ)の重要性は、今後、ますます高まるだろう。日本近海のクロマグロの持続的有効利用を図ることが急務である。日本近海のマグロの漁獲はどんな感じかというと、こんな感じ。(ソース

現在の漁獲の中心は、0歳、1歳のヨコワ(3kg未満)で、9割以上獲っているのだ。資源の有効利用の観点からも、産卵親魚維持の観点からも、問題アリだろう。現状がこれだけ非合理的なのだから、適切な規制によって漁獲量を増やす余地は大きい、ともいえる 😛

現在、日本近海のクロマグロ漁業には、2つの問題がある。それぞれを分析してみよう。

1)未成魚への強い漁獲圧
2)産卵場での無規制な巻網操業

1)未成魚の漁獲を止めるとどうなるか?

本マグロは、多くの段階で異なる漁業者によって利用されている。主な漁業としては、引き縄および巻き網によるヨコワ(未成魚)の漁獲、大型巻き網による日本海産卵群の漁獲、一本釣りによる大型魚の漁獲などを挙げることができる。ヨコワ漁をやめて、一本釣りで獲るとどうなるかを試算してみよう。

本マグロの生態はよくわかっていない。研究が進んだ近縁種大西洋クロマグロと自然死亡が同じだと仮定すると、ヨコワを獲り残した場合に、巻き網サイズまで生き残る確率は35%、一本釣りサイズまで生き残る確率は28%となる。ヨコワを1尾漁獲すると、漁業の長期的利益が13万円失われる計算になる。

年齢 体重(KG) 単価(\/Kg) 生残率 期待単価
ヨコワ 1歳 3 550 100% 1650
巻き網 5歳 52 1350 35% 24570
一本釣り 7歳 97 5000 28% 135800

漁業全体の損失を計算する

漁業全体の損失を計算するには、今、日本全体でヨコワをどれぐらい獲っているかのデータが必要になる。しかし、クロマグロの年齢別の漁獲統計はどこにもない。上の図はあるのだから、データ自体はあるはずだ。遠洋水産研究所の知り合いに問い合わせてみたら、「政治的にセンシティブだから出せません」とのこと。海外の自然保護団体への対策として、日本のマグロの漁獲統計は完全に非公開だそうです。日本の研究者が、日本の漁業を良くしようという意図であっても、まともな試算すらできないのが、日本の寂しい現状。窮余の索として市場統計を使 うことにします。

市場統計によると、日本の産地市場に水揚げされたヨコワは、2004-2008年の平均で年間4856トン、生産金額は平均で27億円であった。ヨコワを1歳魚と仮定すると、4年後に巻き網で獲れば408億円、6年後に一本釣りで獲れば2235億円の生産金額が期待できる。目先の小さな利益のために、将来の大きな利益の芽を摘んでいることがわかる。もちろん、大型個体の漁獲が増えれば、相場が下がる可能性はあるが、それでも桁違いの利益が期待できる。

ヨコワは九州地区で主に夏に消費される。マグロは夏に産卵をするので、夏のマグロは身が痩せて食えたものではない。ヨコワは未成魚なので、夏でも味が落ちない。成魚と比べるとタンパクで、うまみがないのだけど、マグロが枯れる夏には珍重されるのだ。値段も安いしね。ただ、その代償として、将来のマグロの漁獲が失われている。

日本のマグロ市場は、日本のマグロで支えられる

日本の高級マグロ市場は4万トンと言われている。もし仮に、大西洋クロマグロとミナミマグロの輸入が無くなっても、ヨコワを諦めれば、近海本マグロのみで国内消費を持続的に支えることができるのだ。

日本の政治が取り組むべき問題は、次の2つ。

1)ヨコワの漁獲規制
2)ヨコワを獲って生計を立てている漁業者への補償

本マグロの場合、規制をすると、生産額が大きく増加するので、27億円ぐらい、簡単に補償できるはずだ。非合理漁獲を抑制し、漁業全体の利益を大きくした上で、利益が公平に配分できるような枠組みをつくることが、国家の役割である。

日本政府は非合理的なヨコワ漁獲の存続のための外交努力を行い、大型巻網船のためにヨコワの漁獲枠3800トンを確保した。それ以外に、ひき縄、小型巻き網での漁獲は無規制である。近海の本マグロの大型個体は目に見えて減少している。現在の獲り方を続けて、いったい誰が得をするのだろうか 😕

Comments:6

県職員 10-03-24 (水) 10:33

対馬周辺で大中まき網がヨコワ(サイズ不明,ヨコワとは呼ばれています)を結構獲っているとの情報があります。地元沿岸漁業者が怒っているとの情報も聞きます。

勝川 10-03-27 (土) 9:20

それはどこに水揚げしているかわかりますか?福岡あたりですかね。

この前、水産庁の偉い人に、巻き網のヨコワを規制してほしいと嘆願したのですが、「すでに通達をだして、2kg以下のヨコワは1尾たりとも水揚げさせていない」とのことでした。末端までそのような通達は行き渡っていますか?

地方公務員 10-03-26 (金) 7:59

水産研究者の中には、「俺達の仕事は漁業者の利益に直接繋がることをするんだ。将来のことをのんびり議論している余裕は漁業者にない。今日、明日魚が盗れなくて漁業者が破産したら10年後20年後のことを考えても意味がない。」との意見を持つ人もいます。
クロマグロをみていると、ここまで切羽詰った様子はないのですが、サバといいマグロといい、はたしてこんなことで本当にいいのでしょうか?だいたい、漁業者の生活を考えたとしても、きちんと計画的?に漁獲している漁業者は日本では皆無でしょう。いれば根こそぎ他の人よりも多く獲らねば生活が・・・。でもそのおかげで将来に希望が持てず(多くの漁業者は一言目には「魚が減った」と言います)、後継者も育たない。魅力がないからだと思います。漁業者の意識改革も重要だと思います。ヨコワの漁獲は本当に無駄だと思いますよ。

沿岸漁業の一漁師 10-03-26 (金) 20:03

>水産研究者の中には、「俺達の仕事は漁業者の利益に直接繋がることをするんだ。将来のことをのんびり議論している余裕は漁業者にない。

日本の漁業、オワタ!

直売所をポコポコ建てて、直売所同士で値下げのデスマッチやったり、漁協の飲食部門が規則違反のサイズの漁獲物を船上加工して客に提供する時代だからな・・・・・・・・・・。

県職員 10-03-29 (月) 19:45

残念ながら,ヨコワを獲れるのは大中まき網のほうですしあまり注意して見たことがないのです。
通達ですが遠まきさんのほうには出しているのかもしれません。しかしながら昨年にもヨコワが福岡にたくさん水揚げされていたと聞いた気がします。

県職員 10-03-29 (月) 20:14

地方公務員様
私自身は,生産者の視点でものを考えるだけではなく,流通や販売の視点を生産者へフィードバックしてあげないといけない気がしています。
「こんな小さなサバ売れないよ。」とか,「魚種によっては,養殖のほうが供給が安定してるし処理もよいので,鮮度や味だって昔とは格段に良いし。」とか。
漁業生産の現場だけが時代遅れになっているような印象を受けます。上に書いたことなんて漁業者は知らなかったりしますし。
また,15年くらい前のほうが資源管理を一所懸命にやろうっていう風潮があったと思います。
複合的資源管理の発想はすごく良かったのですが,販売流通の方へにシフトしすぎた(逃げた!?)感があります。

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