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ITQ(譲渡可能個別割り当て)方式

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ITQは、IQ同様に個別に配分した漁獲枠を金銭による譲渡可能にした方式である。
この譲渡可能性が経済的な最適化、特に過剰漁獲能力の削減に大きな役割を果たす。

個々の漁業者で、経済性は大きく異なる。
船を出しても赤字の漁業者もいれば、確実に利益を出す漁業者もいる。
同じ量の漁獲枠であっても、得られる利益は漁業者によって大きく異なるのだ。
例えば、1トンの漁獲枠から100万円の利益を出せる漁業者Aと、
同じ漁獲枠から10万円利益しか出せない漁業者Bが居るとしよう。
漁獲枠が譲渡不可能であれば、漁業全体で2トンの漁獲量から110万円の利益となる。
もし、漁獲枠が譲渡可能であったらどうなるだろうか?
1トンの漁獲枠は漁業者Aには100万円の価値がある。
一方、漁業者Bには10万円の価値しかないので、
漁業者Aは、漁業者Bの漁獲枠を10~100万円の価格で買い取るだろう。
例えば、50万円でBの漁獲枠をAに売却したとしよう。
この譲渡によってAが得た利益は、売り上げ増から漁獲枠購入費用を引いた50万円
この譲渡によってBが得た利益は、漁獲枠売却益から、本来の売り上げを引いた40万円
漁業全体の利益が110万円から200万円に増えるのである。

ITQでは、漁獲枠当たりに利益が高い経営体に漁獲枠を集めることで、
資源の経済的有効利用をはかることができる。

さて、漁業者Bの立場になってみよう。
漁獲枠を漁業者Aに売った方が、自分が獲るよりも利益が出る。
ということは、船をもっていても無駄になるわけだ。
船の維持費はバカにならない。現に船の維持費を稼げない経営体も多数存在する。
漁獲枠を譲渡した方が利益になるような経済的に劣った経営体は、
漁獲枠を永久に譲渡して、船を処分するだろう。
こうして、利益率の高い経営体に漁獲枠が集まる一方で、
利益率の低い経営体は撤退をすることが可能である。
儲かる部分を残して、漁獲能力の削減が可能なのだ。

image07091001.png

 

ITQのまとめ
1) 漁獲枠を個別に配分することで早捕り競争を緩和する(IQと共通)
2) 利益率が異なる経営体の間で漁獲枠の譲渡が発生する
   i)   譲渡によって、双方が利益を得る
   ii)  譲渡によって、漁業全体の利益が増える
3) 利益率の低い経営体は、漁獲枠を譲渡して漁業から撤退する
   i)  過剰な漁獲能力が自動的に削減される
   ii) 利益率の高い経営体のみ残るので、合理化が進む

書いてて、思ったけど、やっぱりITQは良い。
過剰な漁獲能力と枯渇した資源の日本漁業が生き残るためには、
消去法的にコレしかないんじゃないかな。
オリンピック方式(笑)は論外として、IQでも漁業全体が共倒れになる可能性が高い。
ということで、今後もITQのすばらしさを伝導していこうと思う。

さあ、みなさん、ご一緒に

ITQ!! ITQ!!
ITQ!! ITQ!!

Comments:4

kato 07-09-10 (月) 13:37

これは利権になりますね。
漁獲でなく枠目的のブローカーが出現し問題化しそうな予感。

勝川 07-09-10 (月) 15:26

そこで、ノルウェーの漁業制度が参考になるのです。
ノルウェーでは漁獲枠の譲渡に制限をすることで、
過剰漁獲能力の削減をしつつ、投機目的の取引を抑制しています。

一方、アイスランドとニュージーランドは、
漁獲枠の譲渡の制約を緩めて、投機を促すことで、経済最適化を図っています。
その代償として、漁業の寡占化、企業化が進んでいます。

日本としてはノルウェー型の制限付きの譲渡可能なIQが良いと思います。

それぞれの漁業制度が、漁業をどのような方向に導いていくかを整理した上で、
日本は何を選ぶかを議論していく必要があるでしょう。
このあたりをちゃんと理解している専門家が日本には殆どいない。
「ITQ=欧米かぶれ」といったレッテル張り的な反論ばかりで嫌になります。

県職員 07-09-11 (火) 9:10

上記のkatoさんのコメントと重複するのかも知れません。疑問点があります。
ITQを譲渡したあるいは,一部譲渡した漁業者のITQは,いつまで割り当ててもらえるものなのですか。
実績に応じて,漸減されていったりするものなのですか。
何年もITQを遙かに下回る漁獲を続けたり,あるいは休漁状態で,ITQ譲渡による利権をむさぼる輩が出てきそうです。
ITQを採用している諸外国ではどのように対応しているのでしょうか。
そういう輩は「今はあまり儲からないからあまりその魚を獲りに行かないだけで,儲かるようになればまた獲りに行くからうちのITQ減らさんとって」とか言いそうです。

勝川 07-09-12 (水) 16:14

ITQはTACに対する割合で設定されます。
ITQを消化しなかったからと言って、割り当てが減ることはありません。
残したければ残せばよい。その方が資源のためになりますから。
ただ、漁獲枠をみすみす眠らせておく人は少数でしょうね。

ニュージーランドでは、漁獲枠一杯まで獲らなかった漁業者は、
最大で10%まで翌年に持ち越せます。
逆に漁獲枠を超過したら、その分、翌年の漁獲枠が減らされます。
10%までは、年をまたいだ調整も可能と言うことです。

もし、自分で取り切れないぐらいの漁獲枠があれば、
寝かしておくよりは、売りに出すでしょうね。
漁獲枠は高く売れますから。

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