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クロマグロ騒動の問題点は… 元凶は日本人の異常な食欲

  • 2010-05-10 (月) 6:54
  • 日記
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http://sankei.jp.msn.com/life/lifestyle/100502/sty1005020700000-n1.htm
【現場発 ニュースを見に行く】クロマグロ騒動の問題点は… 元凶は日本人の異常な食欲

東大の大気海洋研の木村先生の記事だね。木村先生は稚魚の輸送などの専門家で、ウナギの輸送メカニズムの研究で有名な方だが、稚魚の飼育実験もされているので、養殖種苗の生産に関しても造詣は深い。木村先生のマグロ畜養に関する指摘はまったく正しい。よくぞ言ってくださった。

日本近海のクロマグロは、巻き網で捕らないなどの暗黙のルールが守られてきたが、最近は日本海でクロマグロの巻き網漁を行い、畜養する業者が出現。木村教授は、「これを続ければ、日本近海のクロマグロが大西洋・地中海産クロマグロ同様に国際会議の議題に上がる日も近い」と警鐘を鳴らす。

畜養向けのヨコワの漁獲はほとんどが曳き縄(釣りの一種)です。日本海の産卵場で成魚をまき網で巻いていますが、畜養をしているのは極一部であり、ほとんどが境港→築地ルートで食用として消費されます。また、近年、巻き網のヨコワの漁獲が増えています。これもほとんどが食用です。畜養は伸びていますので、気がかりな要因ではありますが、やはり未成魚(ヨコワ)の消費にメスを入れる必要があるでしょう。

日本近海は、大西洋よりも無秩序だから、へたをすると、国際会議の議題になる前に、クロマグロはいなくなる。国際会議ではなく、資源枯渇の心配をすべきだろう。最近、韓国での漁獲が急増しているので、むしろ資源枯渇を防ぐために国際会議や国際条約を利用していく必要があるでしょう。

そこで期待されるのが、クロマグロを卵から育てる完全養殖。国内でも成功例はあるが、「とても効率が悪く、実用は現実的ではありません」と木村教授。

これは、正しい指摘。専門家の間では、常識なんだが、声に出して指摘する人は少ない。木村先生、GJ。クロマグロ養殖とウナギ養殖は、技術的に一歩進んだと言うだけで、実用化には、あと数百歩必要。「養殖技術があるから、もう天然魚はいなくても大丈夫だよね」という勘違いを誘うような報道はどうかと思うよ。

木村教授は、「資源量の枯渇の一番の責任は、消費者である日本人にあるのは明白です。地中海の乱獲をあおったのも、日本人の異常な食欲です。今回の騒動を機に、もう一度クロマグロの食べ方を日本人一人ひとりが考え直すべきでしょう」と話す。

後半部分は全面的に同意だが、前半部分は少し意見が違う。安く、安定供給できれば、消費が伸びるのは当たり前。いくら安くなったとはいえ、クロマグロは、それなりの値段で消費をされていたわけだし、「異常な食欲」と言われるほど、日常的に食べていたわけではない。

もちろん、資源量からすると、異常な量を消費しているので、それ自体は褒められたモノではない。ただ、これは消費者ばかりを責める訳にはいかない。つい最近まで、一般の人は、資源が枯渇していることも知らなかったし、不正漁獲が蔓延していることも知らなかった。日本人消費者には、自分たちの乱食が、地球の反対側のクロマグロ資源を枯渇させているという自覚は無かったし、未来の食卓からマグロを奪っているという自覚もなかったのだ。消費者に、この自覚を持たせるような情報を流すのが、研究者やメディアの社会的役割である。研究者とメディアは、この責任を果たしてきたとは、私には到底思えない。その責任を棚に上げて「消費者の異常な食欲」と非難するのはどうだろうか。

後半部分の食べ方を考えなおすべき、という指摘は全面的に賛成だ。「刺身といえばマグロ」というような風潮は、コレを機会に是正しなくてはならない。消費者は、持続性に対しても関心と責任感を持つ必要がある。そうしないと、未来の食卓は守れないと言うことです。

結論もふくめて、全体として、良い記事だったと思います。

Comments:4

T.K 10-05-13 (木) 21:10

管理が不十分な漁業(言い換えれば無秩序漁業)が資源に与えるとんでもない圧力、魚もたまったものではないです。
それも、高度な電子技術(損得勘定なし&軍事技術を応用したものもあるとか)を駆使した漁業の圧力は考えられないほど効率的に魚を狙います。

しかし、漁業の損得勘定なしの先取り競争の脅威については、一般の人にはわかり難いですね。「なぜ、損得勘定なしまでして競争してしまうの?」という程度だと思います。行きつくところまで競争してしまう日本の漁業制度の欠点は、分かりずらいですよね。また、マスコミも分かり難いからなかなか記事にしてくれない。

一方、水産業界は、資源管理に関する規制を拒否してしまうので、規制強化がなかなか進まないのも現実です。効果的な資源管理は、機動力の小さい沿岸漁業を助けることになると思うのですが、一様に規制を嫌ってしまいます。

水産業界が自主的に資源管理をして欲しいというのがきっかけになるのが理想でしょうが、まず無理でしょうね。

だから、一般の人たちの水産資源管理に関する声が大きくならないと日本近海の水産資源は大変なことになりますね。日本近海の水産資源を将来にわたり有効に活用できる漁業に生まれ変わるには、外圧が必要だと思います。

沿岸漁業の一漁師 10-05-14 (金) 19:16

>漁業の損得勘定なしの先取り競争の脅威については、一般の人にはわかり難いですね。「なぜ、損得勘定なしまでして競争してしまうの?」という程度だと思います。

『あいつばかり儲けて腹が立つ』というのが根底にあるんですよね~。
例えば、個人Aが相対取引でその日の注文分(50本と仮定)1本3000円でコツコツと出荷していれば、Bが話を聞きつけ、200kgとか300kgをドカンと出荷。マーケットが機能不全になれば、Bは利益にはならないものの、『Aの事業をぶち壊してやったぞ。ざまーみろw』という感覚。

養殖をしたらしたで、『あそこより2割安い、3割安い』のダンピングと手抜きしまくりなのに『同じ地域で同じ商品です』の売り場荒らしw。酷いのは部会で税金を活用して『イベント』と称して売り場荒らしをするからなw。
組合事業での飲食事業でも建築法だか消防法違反とか当たり前w。『地域振興』『地域活性化』ということで県ぐるみでそれを支援w。それで『農林中央金庫長官賞』を受賞出来るんだからw。

『助け合い』の精神で成り立っていると思ったら大間違いだw。
『叩き合い』『潰し合い』の精神で成り立っていると思って下さい。

deresuke 10-05-18 (火) 9:10

>『助け合い』の精神で成り立っていると思ったら大間違いだw。
>『叩き合い』『潰し合い』の精神で成り立っていると思って下さい。

同じ第一次産業でも、農民と漁民じゃ全くメンタリティーが違うんですよね。

勝川 10-05-24 (月) 17:13

T.Kさん
全く同感です。
反対を和らげるために、漁業者の教育が必要です。
その上で、管理せざるを得ない状況を作るために消費者教育も重要。

どちらも、なかなかハードルが高いです。

沿岸漁業の一漁師さん、deresukeさん

半農半漁などさまざまな形態がありますが、
やはり、農地を私有した上で、水などの生産手段を共有している農業と、
漁船などの生産手段を私有した上で、資源を競争している漁業では、
メンタリティーは違いますね。もう、顔つきから、全然違う。
なんだかんだ言って、私は、農民より漁民が好きですね。

競争精神がプラスに働くように、規制が必要ですね。
個別漁獲枠制度を導入した国では、漁業者が、
相場を作るために競争をするようになります。

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