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ABCを議論する際のルール

  • 2006-08-08 (火) 16:06
  • 研究
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今回は匿名でもいいですか?のヒトへのレス 第2段

さて,その『モデラー』の一人であるであろう,氏のブログで,二つの逸話がありました。それは,スケソの『数値』に対する,試験場職員の発言です。一人は,「それじゃ,漁師が生活できない」と言ったのに対して,氏は「漁業者に飼われている研究者」と酷評。もう一人は,自らとったデータを元に異見を言ったのか,意見を述べたか・・・ちょっと,ど忘れ・・・これに対しては,「このように,ポジティブな論議ができるのは良い」と,好評価。なるほどなぁ・・・ぅんぅん

自分としては、モデラーであるつもりは無いんだけど・・
まあ、それは置いておいて、最初の発言は、去年のブロック会議のころですね。
ABCの会議で、漁師の生活を持ち出すのはNGです。
あまりにもそのルールがないがしろにされていたので、かなり厳しいことを言いました。

現在のTAC制度はこんな感じになっています。

Image1.png

資源の持続性を配慮する機会はABCだけです。
ABCを決めるときに、生物の持続性を無視したら、この管理システムは死にます。
漁業者の都合は、ABCではなく、TACを決める場に持っていくべきです。
漁業者のためにABCを上げたいという気持ちはわかりますが、
「漁業者が困るからABCを上げよう」というのは筋が通らない。
「ABCを上げても生物の持続性に問題がない」ということを科学的に示す必要がある。
真の動機は「漁業者の都合」でもぜんぜん構わないんだけど、
建前上は生物の持続性に問題がない、という理由付けが必要になる。
ここをないがしろにしては、管理の意味が無くなるのです。


次の発言は、
俺が「CPUEが一定でも、資源量は下がっている可能性がある」と脅かしたら、
現場のデータをつかってその可能性は低いから大丈夫という反論があった時ですね。

我々が指摘したリスクを、現場で検証をしてもらい、不確実性を減らしてもらう。
それを繰り返していくのが、望ましい関係です。

我々は、別に漁業者に意地悪をしたいわけではありません。
資源の持続性が保証できれば、ABCを上げることに異論はないです。
漁業者と水試が一致団結して、不確実性を減らしてくれれば、
安心してABCを上げていくことが出来る。
漁業者と水試で現場を押さえているんだから、圧倒的に有利な立場にあるわけで、
ちゃんと闘えば、そちらが負けるはずがない。
そうやって筋を通した上で、ABCを上げていきたいと思ってます。

Comments:1

お言葉に甘えまして,今後も匿名のヒトで♪ 06-08-09 (水) 0:33

「漁業者が困るからABCを上げよう」というのは筋が通らない。

この氏の意見には,大賛成です。ABCを出すときは,あくまで,今入手できるBESTなデータを基に行うべきであり,そこに反論の余地はありません。出されたABCに問題(疑問)があるのであれば,その根拠となるデータを基に反論・・・訂正するだけの話で,そこに,感情の入り込む余地,必要などは全くありません。

漁業者は,生活がかかっているので,極めてシビアに・・・というか,敏感に反応します。
沿岸の漁業者であれば,示された数値(この場合は地先資源ですけど)を基にして,ソロバン勘定をします。

TAC対象魚種を漁獲しているヒトたちは・・・私自信,あまり,お付き合いがないので,何ともいえませんが・・・,シンポ等々で彼らの発言を聞く限り,もしかして,ABC自体を信頼していないのではないか?と思ったことがあります。

沿岸漁師の場合は,資源量推定をどのように行っているか,見ているし,自ら調査に参加していたりして,内容をちゃんと(?)把握しています。

しかし,ABCの場合はどーなんでしょうか? 
先のコメントで『素人の悲しさからか・・・理解できない』と書き込みましたが,それ以上に,ABCを算出する過程・・・使用するデータから,解析方法,それに基づいて決定される話し合いの内容・・・が分からないまま,『これがABCぢゃ!』と,ご老公様の印籠みたいに出されても,説得力ないかも・・・後ろ盾に国家権力があるから,そういう意味では印籠チックかしらん・・・???

やはり,できうる限り,情報公開は必要だと思います。また,氏は難しいと言っていましたが,ABCが算出されてくる理屈については,噛み砕いて,理解できるような努力が,きっともって,もっともっと必要なんでしょうね。

ボクらは漁師に信用されて,はじめてホントの仕事ができるようになります。

信用されないABCはただの数字です。だから,目先の利潤のために,お役人さまに圧力をかけてでも,TACを『適当』に決めさせていくのだと思います。いわゆる『行政的配慮』ってヤツですか・・・

マジ,こんな話がありました・・・「あんまり,強く上限にこだわらないで下さい,月夜の晩ばかりじゃないんですから」と言われちゃった研究職員・・・で,彼が科学的データを基に算出した漁獲許容量の1.5倍位を漁獲枠にしちゃった『行政的配慮』・・・身近で見ちゃいました・・・とても虚しい仕事ですよね・・・TAC魚種の話ではありませんけど・・・資源が乏しくなって,漁獲制限が厳しくなって,でも,お金になる魚種って,かなり,人間のエゴがむき出しになりますよぉ・・・怖いのぢゃ・・・

相手は生活のかかっている人間です。だからこそ,理解してもらって,納得してもらうことこそが,大事かと思います。そーすれば,ABCよりもTACが大きくなるよーなこともなくなるのでは・・・でも『獲ったモン勝ち』の世界では,それも厳しいのかな・・・

ボクが最も憎むのは・・・

話が長くなりすぎたよーですね。
今晩はこのへんで・・・オヤスミなさい(ρ.-)

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