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【書評】道の駅「萩しーまーと」が繁盛しているわけ

  • 2012-12-18 (火) 16:49
  • 書評
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先日訪問した萩しーまーとの中澤さかな店長が成功の秘訣をまとめた本を出版されました。とても良い本なので、紹介します。

魚ビジネスは、あまり景気が良い話がありません。『売れない→仕方がないから値段を下げる→売り上げが落ちる』というのが、ほとんどの魚売り場の共通する悩みではないでしょうか。量販店では、質と品質(サイズ)の安定供給が重視されるので、多種多様な四季折々の地魚は売りづらい状態です。「本当は美味しいのに、扱ってもらえない」という声が、全国の漁港できかれます。

地魚が売れる道の駅が、山口県にあるときいて、取材に行きました。

ブログ記事はこちら。

店長インタビューはこちら

実際に、萩しーまーとを訪問し、中澤店長の話をうかがって痛感したのは、「セオリーに忠実に、ちゃんとした売り方をすれば、ちゃんと魚は売れる」ということ。しーまーとの店舗は昔懐かしの魚屋スタイル。生きの良い多種多様な地魚がならんでいる。店内にはレジが17個もあり、それぞれの売り場を熟知した店員が対面販売を行っている。おすすめは何か、食べ方はどうすればよいのか、といったことも親切丁寧に教えてくれる。「そういえば、昔は、魚屋さんが、魚の食べ方を教えてくれていたよなぁ。スーパーではだれも魚の食べ方を教えてくれないから、魚食のハードルが高くなったよなぁ」と実感。水産庁のファストフィッシュのように、何も知らなくても、何も考えなくても、魚を消費できるようにするというのも一つのやり方かもしれないけど、俺として、萩しーまーとのようにきっちりと消費者教育ができるような売り場を応援したい。

魚屋自体が全国的に淘汰される中で、ただ、先祖返りをしても明るい未来は無い。そこは、元リクルートの中澤店長の腕の見せ所というわけだ。NHKテレビ山口放送局、FM萩、萩ケーブルネットワークなど、多様なメディアに毎週5分間、お魚情報を流すレギュラー番組を持ち、週刊誌、月刊誌でも連載をする。こういう露出を行うことで、消費者の関心を旬の地魚に引きつけ、ちゃんと対面販売をすることで、顧客満足度を高める。結果として、地元のリピーターの獲得に結びついた。さかなさんご本人が「奇抜なアイデアなどなにもない。当たり前のことを、やっただけです」と言われるように、本当に基本に忠実。「当たり前に考えれば、そうなるなるよなぁ」と思うようなことを、一つ一つカタチにしていったのが萩しーまーとだ。マーケティングとマーチャンダイジングをきちんとやることで、道の駅は、水産業活性化の多機能拠点施設になり得るということです。

最初、萩では、観光客目当ての道の駅ビジネスを予定していた。しかし、中澤店長は、全国100店舗以上の道の駅を視察して、観光客相手の商売は不安定でリスクが大きいことを実感。当初の予定通りの出店をすれば、数年後には店をたたむことになると危機感をもち、地元客に魚を売るという方針を180度方向転換。「近き者悦び、遠き者来る」、つまり、地元客を呼び込むことが、結果として、観光客も呼び寄せることに成功しました。

これまでの魚ビジネスは、業界の慣習に忠実であった。業界全体が沈没しているときに前例踏襲では先が無い。これからの魚ビジネスは、モノを売ることの基本に忠実になり、消費者に価値を届けることを使命とすべきである。消費者が価値を感じれば、必ずリピーターになり、長期的な売り上げは確保できる。そう確信させてくれる一冊です。

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