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予定通り、北海道日本海側のスケトウダラ資源が減少し、漁業が消滅の危機

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北海道日本海側のスケトウダラが激減しています

スケトウダラは、北海道で重要な水産資源の一つであり、ニシンがほぼ消滅した現在は、スケトウダラに依存した漁村も多い。同じスケトウダラでも、産卵場や生育場所が異なる複数の群れが存在し、それを「系群」と呼びます。日本周辺には、

  • 太平洋系群
  • 日本海北部系群
  • 根室海峡系群
  • オホーツク海南部系群

の4つのスケトウダラの系群があります。このうち日本海北部系群の資源が極度に悪化しているのです。

資源量が減って、漁獲割合が上がる?

漁業資源の状態は、独立行政法人 水産総合研究センターによって、まとめられています。

http://abchan.job.affrc.go.jp/digests24/html/2410.html

1990年代後半から資源が直線的に減少し、底引き網、延縄ともに撤退が相次いでいます。1997年から、国によって漁獲枠が設定されて、漁業者がそれを守ってきたにも関わらず、「北海道の日本海側に漁業者がいなくなるかもしれない(漁業者談)」というような事態になっているのだ。

ここで、着目して欲しいのは上の図の漁獲割合(赤丸線)です。1997年から、2007年まで、漁獲割合が増加している。普通に考えれば、漁獲にブレーキをかければ漁獲割合は下がるはずなのに、スケトウダラの場合は、資源が減少するのと並行して、漁獲割合が上がっていったわけです。資源が減ってもブレーキをかけるどころか、アクセルを踏んでいたことになります。

科学者の勧告

詳細な資源評価(アセスメント)はここにあります。このPDFの2ページ目の管理シナリオの一覧を見てください。

重要なポイントは、下から二行目です。親魚量の維持が0.44Fcurrentとあります。これは、現在の親魚水準を維持するには、漁獲圧を現在の44%の水準まで落とす必要があることを意味します。いまだに、資源量を維持できる水準の倍以上の漁獲圧をかけているのだから、資源が減るのは当然でしょう。ちなみに、この年の科学者の勧告した漁獲量は下から3番目の7.7千トンでした。現在の資源量はあまりにも低水準なので、回復の必要がある。かといって、急激な漁獲の削減は現実的に難しい。そういうことで、(わずかでも親魚量を増大)というシナリオを選んだものと思われます。

持続性を無視する漁獲枠設定

これに対して、水産庁がどのような漁獲枠を設定したかという資料がこれ( 水産政策審議会に水産庁が提出した資料) → 24年漁期TAC(漁獲可能量)設定の考え方(PDF:101KB)

科学者が勧告したABC(生物学的許容漁獲量)0.77万トンのところを、水産庁が提案した漁獲枠は1.3万トンですよ。毎年、大勢の研究者が集まって、時間をかけて資源評価をしているのに、まるで無視。

水産庁が示した漁獲枠の根拠は次の通り。

【日本海北部系群】 資源回復計画(努力量削減、小型魚保護等)と組み合わせた資源管理を実施。資源が低位で横ばい傾向にあり、漁業経営におけるスケトウダラへの依存度が高いことを踏まえつつ、TAC(案)は23年漁期と同量の13,000トンとする。(北海道知事管理分の一部(1,000トン)については留保)

「資源が低位で、漁業経営における依存度が高いから、持続性を無視して良い」というロジックが私には理解不能です。審議会に出席している有識者のどなたかに突っ込みを入れてほしいところですが、鰈にスルーされています(第55回資源管理分科会議事録)。唯一、佐藤委員が「前年同期と同じ1万 3,000 トンというような書き方なのですが、基本的には、歯止めをかけるのであれば、もっと少ない方がいいかなとは思うのですけれども、経営のことがございますので、やむなしと思っているのです」と、水産庁の決定に理解を示したのみでした。今年のTACを決める会議は、平成25年2月22日に開催されましたが、ABCが7.6千トンで、TACが1.3万トンでした。状況は何ら変わっていないのです。

平成18年から、平成25年までの科学者の勧告(ABC)と日本政府が設定した漁獲枠(TAC)をグラフに示すとこうなります。本来は、科学者が勧告した漁獲量(青い棒)の範囲で、漁獲枠(赤い棒)を設定しないといけないのですが、そうなっていません。みごとに、資源の持続性を無視してきたことが、よくわかります。日本では、資源管理の名の下に、このようなことが行われているのです。

日本では国が漁獲枠を設定しているのはたったの7魚種しかありません。そのうちの一つがこのスケトウダラです。数少ない資源管理対象であっても、国が持続性を無視した漁獲枠を設定したせいで、残念ながら、資源を守ることができませんでした。

魚が減るとわかっている漁獲枠を設定し続けた結果、順調に魚が減ったのだから、「予定通り」です。「漁業経営のため」といって、乱獲を放置して、漁業自体をつぶして、いったい誰の得になるのでしょうか。水産庁という組織が、日本の漁業をどうしたいのか、私には全く理解不能です。

Comments:2

U生 13-04-02 (火) 7:30

青森イカナゴの話同様、とても興味深く読みました。
気になるのが、北海道日本海側のホッケ資源の水準と動向です。

沖底漁業者は主にスケソウダラとホッケを獲って生計を立てておりまして、仮にホッケ資源が低位減少ということになりますと、まさに地域の漁業が崩壊しかねません。わずかに残った地域のすり身メーカーも、むろん影響を受けます。
また、スケソウダラの漁獲減少をホッケの漁獲を増やすことで補おうとしているのであれば、ホッケに過剰な漁獲圧力がかかっているのではないかという懸念も生じます。

以下、少し長い「補足」です。

ご存知のように、北海道日本海で漁獲されるスケソウダラは、道産陸上二級と呼ばれる比較的低グレードなすり身の原料になります。ホッケすり身の品質的評価も道産スケソウすり身と同等かそれ以下です。より供給量が多く、品質的評価の高い米国産洋上すり身FAクラスなどが日本国内相場の指標となり、道産すり身の需給動向が価格に反映されにくい、という悩ましい問題を抱えています。
仮に、今後、リーマンショック直後のように米国産すり身の市況が低迷すれば、北海道日本海の沖合底引網漁業者は、魚価安を補うために漁獲量を増やしたいと望むでしょう。

山口 正士 13-04-08 (月) 11:45

> 「資源が低位で、漁業経営における依存度が高いから、持続性を無視して良い」というロジック

これが日本の水産行政の基本理念みたいですね。
省益ではなくて目先の業益優先ということでしょう。

千葉県のチョウセンハマグリ漁業で、より小型の貝(未成体)を漁獲できるように「改正」している文章を読んで噴出しそうになりました。

2.改正の理由
近年、小型貝の需要もあることから、資源保護培養に影響のない範囲で規
則を改正して、効果的な放流方法の検討を継続しつつ、はまぐり漁業の振興
を図る。
http://www.pref.chiba.lg.jp/suisan/iken/documents/kaiseigaiyou.pdf

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