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遠洋水研の成果検討会の雑感

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遠洋水産研究所の平成19年度研究成果検討会(混獲関連データのモデル解析)が昨日あった。
混獲のデータは非常に多くゼロを含むので、統計的な扱いが難しい。
混獲データを解析する際の統計的なテクニックに関する、マニアックなテーマだった。
この検討会でも、日本の漁業政策におけるグランドデザインの誤りを痛感した。


日本の漁業政策におけるグランドデザインは、国際漁場における縄張りの確保である。
(世界の漁場を支配する)=(漁業の勝者)という図式である。
日本の漁業政策の基本は、陣取りゲームであった。
漁業の世界で、太平洋戦争の続きをやっていたのである。
そして、太平洋戦争と同じ失敗を繰り返して、産業を滅ぼそうとしている。
硬直化した組織、上層部の自己保身、情報操作、など、
知れば知るほど大本営と水産庁は相似である。

自らの役割を世界漁場での日本の縄張りの拡大と捉えていた水産庁は、
優秀な人材を国際的な部署に配置した。
にもかかわらず、日本の遠洋漁業は縮小の一途を辿った。
沿岸国の権利の強化は世界的な時代の流れであり、幾ら人材をつぎ込んだところで、
縮小を遅らせるのが関の山であった。
一方、国内組は場当たり的な施策を繰り返し、無為無策に国内漁業を衰退させた。

EEZ時代以降、大切なのはむしろ国内の水産資源を有効利用することだったが、
そのことに気がつかず、公海の縄張り争いに明け暮れて、国内漁業を蔑ろにし続けた。
その結果、日本の漁業はすっかりガタガタになってしまった。
ローテーションが厳しい野球チームが、能力のある投手を敗戦処理に使うようなものであり、
勝ち目がない戦に戦力をまとめて投入すれば、勝てる戦にも負けてしまう。

このような人材の不均一は、研究の現場でも同じである。
遠洋水研はマグロなどの交渉で常に戦争が続いている状態だ。
とにかく数字に強い人間を、分野を問わずに集めてきて、実戦に送り出してきた。
遠洋水研の研究者は、たたき上げの実戦部隊である。
一方で、TAC制度が始まる以前の国内組は無風状態の中でまったり、ぬくぬくであった。

さて、TAC制度によって、国内組も資源評価をしないといけなくなった。
元遠洋水研の平松さんが、ハートマン軍曹のごとく国内組を鍛えた結果、
国内組の資源評価能力は、短期的にずいぶんと向上した。
しかし、100戦錬磨の遠洋水研との間には、未だに、超えられない壁がある。
遠洋水研の人的リソースは、日本の漁業政策の失敗の中から得られた貴重な財産だ。
その貴重な人的リソースを集中させるほど、マグロ漁業の混獲は重大な問題だろうか。
俺にはとてもそうは思えない。どう頑張っても、マグロの漁獲量は減る一方だろう。

何処も人手が足りていなくて、大変なのはわかるけど、
こんな時だからこそ、漁業政策のグランドデザインを考え直した上で、
少ない人的リソースの有効配置をはかるべきではないだろうか。

Comments:1

ある水産関係者 08-03-07 (金) 22:03

このエントリーを読まれた大本営や水研センターの国内組の皆さんは、さぞかしお気を悪くされたことでしょう(笑)。
 ただし、注意する必要があります。勝川さんの指摘する「優秀」とそうで無いのとの違いは何でしょう? せいぜい、語学力と頭の回転(計算能力)、記憶力?
 そして最も重要な判断力、しかも自分のためになる判断ではなく、国益を考えた判断ができるか否かの能力は「優秀」の中に含まれていませんね。もし含まれていたら、優秀な人材が集まっている筈のマグロや公海漁業の国際交渉で、研究者も行政官も自国の漁業を潰すような失態は犯さなかったでしょう。
 一方、本当に優秀な人が国内組に回ったらどうなるか? その答はKさんほかの例を見れば明らかでしょう。要は、幾らスタッフが優秀でも、フロントがアホやったらあかん!のですよ。だから国内組の人達も決して気を悪くする必要はないと思います(でも国内政策も失敗しているからやっぱりダメか…)。 

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