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日本の資源管理の特徴をまとめてみよう。

  • 2008-04-15 (火) 23:41
  • 研究
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TAC制度

日本のTAC制度は、米国の資源管理を手本にしている。

どうせ手本にするなら、管理が上手くいっている国を手本にすればよいのに。

水産庁の米国好きに付ける薬が無いですな。

日本のTAC制度と米国のTAC管理の最大の違いは、TACの設定根拠があるか、無いかだろう。

米国は科学的なアセスメントをかなり厳格にまもっている。
一方、日本のTAC設定は役人の胸先三寸であり、説明責任が完全に放棄されている。

日本のTAC制度には合理性がまるでない。

大本営の中の人には、中の人なりの言い分もあるだろうが、

説明責任を果たしていない以上、何を言われても自業自得だろう。
「理由は言えないけど信用して」と言われても、説得力がないのですよ。

資源管理型漁業(沿岸漁業の自主管理)

一方、日本の資源管理型漁業はどうだろうか。

こちらは基本的にはボトムアップである。

漁業者があつまって、「とにかく出来ることをやろう」ということで話し合いをする。

「資源をどのような状態にするか」ではなく、「人間がどれだけ我慢できるか」で、管理の内容が決まる。
資源管理と言うよりは漁業調整と呼んだ方が現実に近いだろう。
(漁業調整だからって、駄目だと言いたいわけではない。漁業に役立てばそれでよいのです。)

管理の内容を決めるのは、資源ではなく、漁業者なのである。

もし、漁業者が資源の維持に必要な我慢を出来る状況にあるなら、管理は成功するだろう。

逆に、そうでないなら、管理は機能しないだろう。



実効力を高める必要条件は、ここにまとめたとおりである。

自主管理の必要条件

1)生産力が高い資源を自分たちだけで囲い込める

2)コミュニティーに個人の利益よりも全体の長期的利益を重んじるリーダーがいる

3)長期的な視点から、漁業者にものが言える現場系研究者がいる

4)資源の壊滅的な減少を経験

1,2,4は自主管理の実効性を高めるために必要であり、

3は自主管理に合理性を与えるために必要である。

上手くいっている自主管理の陰には、熱心な水試職員が必要だ。

漁業者コミュニティーの話し合いに参加して、影響を与えていくためには、

人間的にも空間的にも浜との距離がちかくなくてはならないので、大学では難しいだろう。



上の4つの条件は、かなりハードルが高い。
4つの条件がすべてそろう確率はかなり低いのである。
自主管理の合理性は、漁業によって大きく異なるが、総じてあまり高くはない。


俺の考えをまとめると下のような図がかける。

Image200804152.png

まあ、こういうのは個人の考えを図示しただけで、これが正解って言うものは無いと思う。
自分の意見をまとめたり、他人に伝えるのに役立つから、使っているだけだ。
別の人が別の視点から見れば違う図になるだろうし、それでよいのだ。

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