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先生、どこから先がシッポですか?

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1つ前の記事で首の漁業とシッポの漁業で、適している管理の方法が違うという話をしたので、
今日は「どこから、先がシッポなの?」という問題をつらつらと考えてみよう。

img08042310.png
上の図は1つ前のエントリーでも紹介したものだ。この図からわかるように、大規模な漁業はすでにTAC制度の対象となっている。TAC魚種の選定は実に妥当なのだ。まずは、TAC制度を厳格化した上で、IQ制度に移行する。それだけで、首の部分は基本的には押さえられるはずだ。その後に、TAC非対象魚種の中から重要なものを順次管理対象にしていけばよい。最初の候補は、カタクチ、ホッケ、ブリ、マダラ、イトヒキあたりだろうか。

上の図は漁獲量ベースだが、重要なのは漁獲量よりむしろ漁獲金額だ。本来であれば、「資源管理のコスト」と「資源管理による収益増加」をそれぞれの漁業に対して見積もったうえで、管理の適用範囲を決めるべきだ。ちゃんと計算すれば、かなり広い範囲の漁業が管理できる可能性が高い。たとえば、ニュージーランドは、受益者負担と言うことで、漁業者から資源管理を費用を徴収している。資源管理に税金をつかわないのだ。にもかかわらず、現在漁獲枠ベースで管理されているのが97魚種もある。それでも漁業は利益を出している。ニュージーランドに限らず、多くの国は、受益者負担で資源管理をして、漁業で利益を出している。一方、日本のTAC制度は全部税金であり、国民全体に負担を強いている。そして、TAC制度の対象はたったの8魚種。しかも、そのうち実効性があるのはサンマとスケトウダラの2種だけ。しかもサンマは出荷調整。これでは、資源管理の範囲が十分ではないのは明らかだろう。日本の公務員は優秀らしいので、本気を出せばNZに負けるようなことはないだろう。期待してますよ。

最終的には、現状で資源評価票を作成している魚種については、漁獲枠ベースの厳密な管理の対象と考えている。ただ、優先順位から行けば、守備範囲を増やすよりも、現行のTAC制度の厳密化・IQへの以降が先だ。また、国内で資源評価をできる人材は限られており、現在はほぼフル稼働状態である。人的リソースの問題で、資源評価票が作成されていない魚種に関しては、当面は無理。そこの部分は自主管理に任せるのが妥当だろう。

今日の記事は、規制改革会議の宿題にも大いに関連する。

資源管理の在り方の見直しについて
(イ)TAC(漁獲可能量)設定魚種の拡大【平成20 年中措置】
(エ)IQ(個別漁獲割当)制度の導入対象魚種の拡大及びITQ(譲渡可能個別漁獲割当)制度の検討【平成20 年中措置】

中の人も、いろいろ忙しいとは思いますが、このエントリーを参考にじっくりと検討してください。

Comments:2

匿名 08-04-24 (木) 18:36

また、国内で資源評価をできる人材は限られており、現在はほぼフル稼働状態である。

→「複合的資源管理?!」で,資源管理をすることによって短期的に収入が減ることを補完するために,売り方を工夫して漁家収入を少しでも高めましょうという,活動が推進されました。この考え方は非常にすばらしかったのですが,特に漁業の現場では売り方ばかりに目がいきすぎて,痛みを伴う資源管理への意識が薄くなってきている気が致します。上記のように資源評価が出来る人は我が県では非常に限られているうえ,上層部の理解もこの事業以降低くなってきているような気がして仕方ありません。
漁家経営の改善,適正化には「資源管理」と「付加価値向上」は表裏一体だと言うことを再認識して欲しいものです。

「自分が正しいと思うことをやりたいならば,偉くなるしかないですね,和久さん。」

勝川 08-05-12 (月) 15:54

>漁家経営の改善,適正化には「資源管理」と「付加価値向上」は
>表裏一体だと言うことを再認識して欲しいものです。

本当にその通りですね。
IQを導入することで、より多く獲ることではなく、
より高く売ることの方に、
漁業者が関心をもってくれることを期待しています。
ただ、単価を上げるのも資源管理がないと無理でしょう。
付加価値をつけても、持続的に獲らなければ、すぐに無くなります。

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