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燃油補填が漁業を滅ぼす

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今の漁業は完全に過剰漁獲の状態にある。
漁業者間の魚の奪い合いで、エネルギーを浪費しながら、資源を食いつぶしている。
大型魚を取り尽くし、小さな未成魚からなりふり構わず獲っている漁業も多い。
こういう漁業は、単価も安いし、利益も出ないので、燃油が上がると真っ先に行き詰まる。

今回、これらの赤字漁業が採算のとれない操業を続けるために、税金を投入する。
すでに非持続的な漁獲圧を維持しても、資源の枯渇が早まるだけであり、
将来の食糧供給に対して、利益がないどころか、害でしかない。
資源が枯渇すれば、ますます漁業の収益は悪化して、
今後も補助金を要求され続けるだろう。
今回の補助金は、漁業の将来にとっても、国民にとっても、最悪の選択だ。

img08073002.png

また、補助金の条件である10%の燃油消費削減も、全く本質的ではない。
資源管理もしないで、魚を獲りたいだけ獲っていたら、
燃費が10%良くなったところで、経営が行き詰まるのは、時間の問題である。  


よく引き合いに出されるEUの補助金は、構造改善のためである。 
EUは問題の本質は過剰漁獲であると明確にした上で、
休漁・減船を行い、自然の生産力とバランスがとれた大きさまで、漁業を縮小させるのが狙いだ。

休漁・減船による資源の回復こそ、今の日本漁業に必要である。
漁業者の痛みを和らつつ、減船・休漁ができるように、補助金を使うべきだ。
また、休漁・減船だけでなく、資源管理をしっかりとすることが肝要だ。
資源管理をしなければ、過剰努力量に陥るのは時間の問題だからだ。

補助金をつかうならば、次の3点を柱にすべきである。

  1. 休漁による資源回復
  2. 非効率経営体の減船
  3. 資源管理の導入


これらの方向に進んでいけば、適切なコストで安定供給ができるようになるので、
長い目で見て納税者にも利益がある。

img08073001.png

ただ、構造改善のための補助金に対しても、EUでは非難の声が上がっている。
漁業以外の業種では、自らの投資で構造改善を行うのが当たり前である。
漁業だけが、補助金で助けてもらえるのは、おかしな話だ。
補助金を出した結果、漁業がどう改善されるのか、
それによって国民にどのような利益があるかを明確にした上で、
国民の審判を仰ぐ必要があるだろう。


燃油の差額補てんには基本的に反対である。
100歩譲って補てんをするにしても、資源状態が良い漁業に限定すべきである。
資源が枯渇している漁業に、税金で船を出させても、
乱獲が進行するだけで、国民には良いことなど一つもないのだ。

俺は、乱獲されている魚は食べたくないから、買わないことにしている。
しかし、税金で有無を言わさずに、これらの漁業に金をむしられ、
漁業の未来が奪われようとしている。
こんな馬鹿な話はない。

Comments:6

匿名甘えヒト 08-07-31 (木) 1:11

なんと言うか・・・切羽詰って、携帯金融に手を出しちゃったってトコロですかねぇ・・・

沿岸の漁師には、何もないし、、、って言うか、これほど不様な政策が出されるってのは、どぉーいうコト???

漁業団体では、おおむね好評みたいだけれど、当事者である漁業者は、むしろ冷ややかみたいだしね・・・かえって、その方が正常か?・・・

漁業に限らず、一次産業については、抜本的な「改革」が必要なのに、無駄な税金を使って、なんなのさ???
そんなお金があるのなら、うちのミクロトームとオートアナを老朽更新してょ!

先日の報道で、魚の値段が上がったら買わないっていう消費者の声があったけど、この補填で漁業者も消費者も恩恵をこうむるのかしらん???
「焼け石に水」ってより、「火に油」なのかなぁ・・・

なんか、職場での日々の節約(電気をマメに消せ、とか、クールビズとか、経済走行とか・・・)、バカみたいに思えちゃうょな。。。

コスト意識は、政府首脳と国会から!
いくら車が売れたって、お金が稼げたって、それって、直接食えないじゃん・・・「いつまでも出来ると思うな、輸入と食料生産」・・・ってか(怒)・・・

beachmollusc 08-07-31 (木) 13:17

http://nrife.fra.affrc.go.jp/reprint/technical/report30/c57(9-15).pdf
上のURLのレポートを見て、1980年代のA重油のお値段が最近高騰しているレベルよりも高かったので驚きました。オイルショックの時代でしたか。その頃の日本の漁業は高い燃費でどのような影響を受けていたのでしょうか。

kato 08-07-31 (木) 16:56

今はいくら石油が高くても、供給が止まることを心配する人はいないですよね。当時は価格云々よりも、石油の供給ストップを危惧していたフシがあります。確か上の団体も漁業用原油の「確保」に奔走している歴史があるはずです。また社会情勢も右肩上がりで、魚価も漁獲も高水準だった背景もあるようです(確かこのときは魚価もインフレだったのでは?)。

勝川 08-08-02 (土) 0:27

匿名甘えヒトさん

>沿岸の漁師には、何もないし、、、って言うか、
>これほど不様な政策が出されるってのは、どぉーいうコト???

真水の補償は80億だし、それ以外はよく読むとハードルが高いらしい。
要するに見せ金だ。
額をふくらませて、選挙対策にアピールしようとしたら、
漁業者からも、納税者からも非難囂々というかんじかな。

>漁業団体では、おおむね好評みたいだけれど、当事者である漁業者は、
>むしろ冷ややかみたいだしね・・・かえって、その方が正常か?・・・

団体は、うはうはでしょうね。

コスト意識は、政府首脳と国会から!
>いくら車が売れたって、お金が稼げたって、それって、直接食えないじゃん・・・
>「いつまでも出来ると思うな、輸入と食料生産」・・・ってか(怒)・・・
まあ、こういう人が選挙で選ばれているのだから、国民にも責任はあります。
次の選挙が楽しみです。

beachmolluscさん:
そのPFDファイルで注目して欲しいのは、一般商系と全漁連系統の価格差です。
18年当初で約2万円の差ですよ。
経費(5-10千円)が含まれてないとか書いてある。
この経費自体、かなりふっかけ価格だと思うが、
一般商系と全漁連系統の価格差はそんなもんじゃない。
全漁連は右から左に重油を転売するだけで莫大な利益を得ているのだろう。
直接補てんによって、高い重油を漁業者がばんばん使ってくれれば、
全漁連はぼろもうけだ。
全漁連がストに熱心だった理由もよくわかる。
くわしくは、ここをどうぞ。
http://www.h5.dion.ne.jp/~chosyu/sekiyunoijyoukoutougaseisannnidageki.htm

kato 08-08-02 (土) 15:11

こちらもどうぞ。
http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0805jo3.pdf
回収に苦労している所は多いようで…。

ところで長周新聞ですが、かなりバイアスがかかっているので読むのに注意が必要です。かの県が持つ固有のお国事情もありますので。

勝川 08-08-12 (火) 20:55

長周新聞がどのようなメディアかは存じませんが、この記事に関しては正しい報道だと思います。重油価格に上乗せをして、漁連が利益を得ているという構図は全国共通でしょう。商社系よりも、漁連系の方が安い県があるなら、教えて欲しいです。この問題に関しては、この構図を隠して、漁業者への同情をあおる他のメディアの方が、よほど偏っていると思います。

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