- 2009-04-05 (日) 16:00
- 日記
水産海洋シンポジウムというので話をしてきた。どうでも良いけど、講演が清野さんとやけにかぶる。NGOのシンポと水産学会は、清野さんが俺の後だったし、今回のシンポは俺が清野さんの後だった。清野さんもいろいろ苦労が多そうですなぁ。現場に出るのは大変だ。
順応的管理の話をしてほしいと言われたんだけど、正直、テンションは低い。今の日本漁業に、順応的管理など10年早いのである。順応的管理というのは、不確実な情報でリスクを抑えるための管理手法であり、水産資源の持続的利用を考える上で、重要なテーマだ。しかし、今の日本では、確実な乱獲すら野放しの状態だ。そもそも漁獲枠がごく一部にしかない上に、それすら資源量を上回る漁獲枠や、持続性を無視した漁獲枠が設定され続けている。不確実性以前の問題である。今の日本漁業に必要なのは、順応的管理ではなく、漁業改革である。漁獲量を持続性の枠内に納めて、その中で経営が成り立つように、構造改革を進めなくてはならない。
また、シンポジウムのテーマの生態系アプローチも、今、取り組むべき課題だとは思わない。漁業は漁獲対象種以外にも影響を与えており、それを考慮すべきということに異論はない。でも、漁獲対象種すら破壊的な取り方をしている状況で、非漁獲対象種の管理などできるはずが無いじゃないか。非持続的な漁業政策を容認しながら、「これからは生態系アプローチです」とかいっても説得力がない。
生態系アプローチは重要な視点であることは間違いないし、将来の課題として、今から進めておくのは悪いことではない。こういった試みには価値があるし、応援をしたい。ただ、漁業を取り巻く情勢を変えない限り、いくら研究をしたって、実際に使われる可能性はゼロだ。まずは漁業対象種の漁獲を持続的な水準に抑えるように、世の中に働きかけるのが、先だろう。すべてはそこからだぁっ。
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