- 2006-10-06 (金) 6:40
- 研究
俺は一貫して、非現場主義を貫いてきた。
船には乗らないし、海にも港にも行かない。
その代わり、ネットで情報を収集して、
コンピュータの上で分析をして結果を出す。
研究室の中で全てが完結するので、
サッカーをするときぐらいしか自分の部屋を出ない。
生活リズムとしては、ネット引きこもりと全く大差がないだろう。
こういう研究スタイルだと、
「現場を知らない人間に何がわかる!」とよく言われる。
でも、俺は逆に訊きたい。
「現場しか知らない人間に、どんなビジョンがもてるのか?」と。
世の中には、現場にいるだけでは見えてこないものがある。
その現場の基礎となっているシステムが、
現場からは見えていないことが往々にしてある。
灯台もと暗しというやつだ。
現場至上主義の落とし穴を理解するために、
「中国のことを知りたければ、中国に住むべきだろうか?」
という命題を考えてみよう。
- Newer: 漁業システム論 (2) 乱獲スパイラルと共有地の悲劇
- Older: なぜ順応的管理なのか?
Comments:5
- kato 06-10-06 (金) 10:29
-
数年前、新婚旅行で初めてヨーロッパへ行きました。わずか10日ほどの旅程でしたが、それでも私の欧州を見る目は変化しました。それは「理解した」ということでなく、文書や映像で得る情報の吸収度が明らかに違うのです。何というか頭のチャンネルが1つ開いたような感じでしょうか。
確かに「現場を知りすぎると何も出来なくなる」とは私も昔サラリーマン時代によく言われたことでした。ただ非現場主義を否定はしませんが、百聞は~というのもまた真実のような気がします。
>その代わり、ネットで情報を収集して、
うーん、個人的にこの部分はちょっと危険な感じもします。私も割と長いことネット情報を収集していますが何でも在るわけではないですし、リアルとの温度差も結構ありますので。 - 匿名で甘えさせてもらっているヒト 06-10-06 (金) 22:43
-
氏は,以前,漁業者に飼われている現場研究者と,自らのデータを基に論理的に反論する現場研究者の紹介をし,後者のような人たちとキャッチボールをしながら,精度を上げて(不確実性を減らして)行ければ良いとの話を書いていました(私的は前者に対しても好意的な感情を持っていますが・・・)。また,その後のブログを読んでいても,現場研究者に対して否定的見解を持ってはいないと,私は感じています(最も,今回のテーマは現場至上主義ですが)。
その前提に立ったうえで,テーマの方向性は・・・今回の場合は副題かな・・・(今のところ)正鵠を得ていると思います。これからが,また,楽しみ楽しみ♪我々現場の者は,時として近視眼的に陥る場合があります。また,データ取りの忙しさに負けて(言い訳に),新しい知識・情報の収集に怠り勝ちになることもあるかと思います。
だから,私は,意識して,学会誌やネット等で勉強をする他,積極的に(って言うか,ちょこちょこお金を貯めて・・・ここ数年は自腹参加なのです。。。(〃_ _))学会や大学等で主催するシンポジウム等に参加し,第一線の科学者達の生の声を聴くようにしています。
そこでは,二次元だけでは得られない科学者の方々の考え方や誤解等々をも肌で感じる事が出来ます。特に,総合討論なんぞは,とても面白く,勉強になります。言い合いなんかあった日にゃぁ,「やったぁ!」って得した気分になりますもんね♪
そーいう所で知り得た知識や感じたことは現場での茶飲み話にしたりもしてますょ。おぉぉスゲェ。。。とか,ばっかじゃない。。。みたいな話になってます。私はこのブログにカキコするようになって・・・氏のように,全く現場を見ないヒトがいた方が,時として良いのかなって,ちょっとだけ思うようになりました。
あるモノの形を知るためには,多方面から見た方が,より正確な「形」が把握できるのではないでしょうか? もし,それぞれが出した結果が異なっていたとしても,データを持ち寄って修正していけば良いわけで,そーぃうやり方,何も問題ないでしょ・・・前述のキャッチボールですね。ただし,ボールは相手の胸元へ♪・・・・。
できれば,氏には,とことん,秋葉系を目指してもらいたいものです・・・そういう意味では,氏が,屋外で,生身で,サッカーをするのはいただけませんね(笑)・・・。それでも私は現場主義者ですので,悪しからず o(^^)V
- 匿名で甘えさせてもらっているヒト 06-10-07 (土) 22:14
-
氏へ
>でも、俺は逆に訊きたい。
>「現場しか知らない人間に、どんなビジョンがもてるのか?」と。何かしらのビジョンはもてると思います・・・生活実感ありますから・・・
本当は明確なビジョンを示さなければいけないのに,実は,なんの将来展望も描かないor描けないヒトって,政治家の先生や霞ヶ関の雲上人たちなのではないですか?
総理大臣だって,いくら長くても6年(自民党総裁の最長任期),その他の大臣はコロコロ変わるし,先生たちは選挙に落ちればただのヒト。
雲上人たちだって,そこに登りつめるまでに,同じ部署に長くはいてないだろうし,偉くなれば,『自分』のビジョン造りにお忙しくあらっしゃるのでは・・・(*_*)??? - 勝川 06-10-08 (日) 21:39
-
katoさん
現場の知識を得ること自体は重要だと思います。
旅行感覚で、行って、帰って、それで終わりなら良いですが、
たぶん、そうはならない。
研究者が現場に入ると、しがらみができるみたいです。
ギブアンドテークが基本ですから。
マル暴刑事のような感じですかね。
このあたりは、匿名さんがくわしいかと。ネットの情報に関しては、使っている情報の種類が違うと思います。
私が使うのは、学術論文、および、国内の加工前のデータです。
漁獲量などの元データは、政治的意図で加工されていないので、
そこから自分で計算をした結果はかなり信頼できます。
表やグラフに加工された2次情報や文章は、
自分たちに都合良く加工されまくりなので信用しません。
むしろ、加工済みデータの危険性については、
警鐘をならしていきたいと思ってます。匿名さん
現場の人はその現場の漁業を守ることが仕事で、それでよい。
ただ、現在のスタンスで、今後も漁業を守れるかは微妙。
定量的な理論武装をしていかないと、厳しいだろう。今年は、2万トンとらないと漁業が成り立たないという状況で、
「漁業者が2万トン獲らないと困るんです」と言われても、
言われた方だって困る。
それを通したらABCじゃなくなっちゃうから。
ということをそのまま伝えるのではなく、
「2万トンという漁獲が、生物学的に許容できる」ということを示すべき。
漁業者の希望を、しっかり理論武装してあげないと、
漁業は守れない。漁業者が困っているから何とかしたいというのは、理解できる。
ただ、その先はどうなのか?
漁業者の現在の困難を取り除くことも大切だけど、
それと同時に漁業を長期的に生き残らせる戦略も必要だろう。
長期的に漁業を守っていくためのビジョンを持たないといけない。
転ぶたびにバンドエードを貼るだけではなく、
転びづらい漁業システムを構築する必要がある。ただ、現場の人にそこまで要求するのは無理だと思う。
現場の人は、限られた数の現場しか知らず、
その中には機能する漁業システムが含まれていない可能性が高いから。俺は資源管理先進国の試行錯誤の歴史を勉強してきたから、
現在の日本の漁業システムよりは、良い代替案を提供できる。
そういう方向で、自分の知識をつかってもらえると良いかなと。
で、一般論として提供されたシステムを、
個々の漁業にローカライズするのが現場の役目。
そんな風に棲み分けをしていけば良いのでは?ということをこれから書く予定だったのに、
せっかちな人だ(笑 - 匿名で甘えさせてもらっているヒト 06-10-11 (水) 0:03
-
>漁業者の希望を、しっかり理論武装してあげないと、
>漁業は守れない。ホント,そうですね・・・漁業者を守るということは,消費者の利益にもつながると,ボクは信じています。で,とりあえず,どうしたいか・・・こんなご時世ですので,とにかく漁業者に無駄な負担を強いることなく,漁場を良い塩梅に使えるよう,算段してあげたい・・・漁業者の数は減っていくことでしょうが,たとえ一人になったとしても「乱獲」の危険性は潜んでいる訳で,だから,もっと話をしていきたいです。社会教育的なコトが必要だと,考える今日この頃・・・
>せっかちな人だ(笑
待つの苦手です♪ 生まれ付いた性分だから,しかたねぃやい!
さて,
「しがらみ」ですか・・・何が良い例なんだろう?大昔,学生の頃,資源学の講義で,「魚種あるいは系群が混在している資源管理の基本単位は,最も少ない種あるいは系群で,それを守るように設定する」みたいなコトを教わった気がしますが,現実には,生活基盤となる魚種が中心となります。今,自分の担当魚種の中に,今までの半分くらいに漁獲圧を下げれば,その魚種としては,「最もお金になり,その上,再生産にも良い」のが分かっているのがあります。しかし,小定置とかだと,基本的には混獲漁業なので,それを守るためには総量規制しか無いわけですけれど,それは,漁協に対しても,行政に対しても強く提言はできませんね。何故ならば,全体に占める漁獲量の割合がものすごく少ないからです。したがって,生活基盤を犠牲にしてまで「守れ!」とは言えません。たとえ,その魚種が栽培対象種で,補助金使って種苗放流していてもです。・・・あぁ無力感・・・。。。(〃_ _)
さて,その栽培対象種ですが(あと,増殖場なんかでも),国や自治体の施策で,「行け行けバンバン」に乗せられちゃって施設を造っちゃった・・・地元では期待もし,やる気もあるんだけど,でも,採算性が・・・と言う時,私は行政サイドに対して『嘘』をつきます。「ウチが入っていれば結果はまだまだ向上させられる」みたいなコトを言って,補助金の延命に努めます。これは,採算性が取れるようになるまで(かなりキビシイ),あるいは,漁業者が納得できるようになるまで,続ける努力をします。放流事業や増殖場造成事業って,国や自治体の責任がすっごく大きいと思うんですよ,マジ・・・だって,ホントに採算が合うっていう条件を確認しないまま,バシバシ推進しちゃいますからね。で,何年かたったら,「自己責任でなんとかせい」じゃ,なんか,「かけた梯子をあっさり外す」みたいで,私的には納得できないんです。だから,少しでも可能性のある限り,1円でも多くの収入に結びつくように,あれこれと,がんばっちゃいます。でも,どーにもならなくなった時(どんな事をしてもダメなコトが完全に明らかになった時)は,厳しい話を,『我々』が説明をしなければなりません(まだ,そのような状況になったことはないけど,かなりビビっている現在進行形)。
・・・代替案が出せれば良いのですけどね・・・そのような努力はしてますが,予算的裏付けは?・・・ない・・・だから,行政サイドはもっと,試験研究機関の言う事を真摯に受け止めて欲しいのですよ!
施設を造るのを決める前に意見を聞いて欲しいのですよ!
施設の建設が決まってから,「後はよろしく」「数年後は受益者(漁業者)負担ね」じゃ,お話にならんです!こんなご時世だから,無駄金は使わせたくないじゃないですか,漁師にも,税金的にも・・・なんか,最近は,「コスト意識を持つ」ためにも,地方自治体の試験研究機関をも独法化しようと強力に推進してたりするみたいですけど,コスト意識の無いのって,誰!!!(怒)って感じ。
退陣前に政府専用機で外遊するなよ,いくらかかってんだよぉ!・・・その予算の1%でも,こちらに回してもらえると,もの凄く助かるんですけどぉ。。。(ノ-o-)ノ なぁんてね,へっ!(¬_¬)全然,例示になってませんでしたね。
「しがらみ」「ぎぶあんどてーく」ってより,「情」なのかなぁ・・・
でも,
日本の海は,すでに「手付かずの自然」じゃ,ないわけで,手をかけなければ,保護も管理も獲ることもできないわけで,漁業を存続させることは,消費者のためにもなるはずであって,そんなトコ,サポートができればなぁ・・・と,一番良い方法は常に模索中・・・あたまわるいか・・・ただ,戦後60年・・・行政機構が疲弊しきっていて,まともに機能していないばかりか,錆びきってしまって,何が国民の利益につながるのかが,分からなくなっているみたいで,それは,国も都道府県も同じで,違うのは,生まれ育った町で働く,役場の人たちだけだったりしたりして・・・なんか,ヤバイっすょ
Trackbacks:0
- Trackback URL for this entry
- http://katukawa.com/wp-trackback.php?p=118
- Listed below are links to weblogs that reference
- 漁業システム論 (1) 現場を知らない人間に何がわかる? from 勝川俊雄公式サイト