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資源管理が出来ないのは漁業者の責任か?

  • 2006-11-12 (日) 2:32
  • 研究
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以上、見てきたように、日本では乱獲を助長するような政策が実施されている。
そんな状況で「資源管理は漁業者が自主的にやれ」というのは無理だろう。
両手両足を縛ったままで、「さあ泳げ」といって海にたたき込むようなものだ。
資源管理は、漁業者個人の負担でできるようなものではない。
行政が最低限の道筋を作る必要がある。

確かに、自主管理を行っている漁業も存在するが、
これらは例外と見なした方がよいだろう。
自主管理が機能している漁業は、恵まれた条件がそろっているのだ。
いまのままだと、自主管理の輪は広がっていかないだろう。

現状で罰則を含む厳しい管理を実施しても、漁業者が不正をするだけだろう。
その気になれば、抜け道はいくらでもある。
厳しい規制の前に、資源管理が出来るような状況をつくることが先決だ。
そのためには、それぞれの漁業に資源管理の必要条件の何が足りないかを精査し、
足りない条件を補うような政策を実施する必要がある。
努力量の拡大につながるような補助金のばらまきを止めるとか、
休漁補償を謹呈して非効率的な漁業を延命させるのを止めるとか、
現状でもできることはいくらでもあるはずだ。

水産庁は資源管理を出来ない状況を作っておきながら、
「漁業者が反対するから資源管理は無理できない」と言う。
では、漁業者の賛同を得るためにどんな努力をしたのか?

Comments:2

beachmollusc 06-11-19 (日) 8:00

勝川さん、

もしまだ読んでおられないなら、下に示した本はぜひ読んでおいていただきたいものの一つです。
資源管理政策が現場の状況と不整合を起こしている場面を取材したルポとして、優れた報告であると思います。海外先進国での漁業管理政策とその監視体制が作り出した、漁業者の絶滅危惧状態を記録しています。
Vanishing Species: Saving the Fish, Sacrificing the Fishermen
Susan R. Playfair (著)
The story of the ongoing debate between the New England communities of fishermen, federal regulators, scientists and environmentalists.
256ページ 出版社: Univ Pr of New England (2003)

勝川 06-11-24 (金) 12:34

興味深い本を紹介頂き、ありがとうございます。
まだ読んでいませんので、早速アマゾンで注文しました。

資源も漁業も絶滅危惧種ですから、
両者を生き残らせるために、何が出来るかを考えていく必要があります。
1)資源の持続性を考慮した漁獲に抑えること。
2)その上で、漁業が生き残っていけるように社会的コストを投じること。
以上の2点が重要だと思います。
2)をやったのがノルウェーであり、
2)をやらなかったのが日本のミナミマグロ漁業です。

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