- 2007-01-18 (木) 3:33
- 研究
「廃業」に関して、複数の人からつっこみをいただいたので、取材の経緯を整理してみた。
記者に確認したところ、俺が電話で最終確認したコメントは以下のとおり。
漁業資源の管理に詳しい勝川俊雄東京大助手は「90年代以降、太平洋のマイワシは適正な漁獲を守れば増える可能性が高かった」と指摘。その上で「減った以上、資源の現状に見合った規模に、漁業者数を減らさねばならない。国は、漁業者の生活も保障しながら、対策を進める必要がある」と話す。
この原稿に彼の上司が手直しをした結果、「漁業者の生活も保障しながら」が抜け落ちて、
後半部分が「漁業者の廃業を促す対策も検討すべきだと話している。」になったそうだ。
「漁業者を減らすことと、漁業者の廃業を促すこと自体は同義だし、
カギ括弧内の外に出したのだから問題ないだろう」というのが記者の言い分。
この変更に関しては、俺には事前に知らされていなかった。
そもそも、取材の申し込みがあった時点で、次のようなメールを送って、
相手もそれに同意している。
###様
私が取材をお受けするのは、漁業の将来をより良いものにしていくためには、
水産資源の現状を一般の人に理解してもらうことが重要だと考えているからです。
漁業が良い方向に向かうためには、正確な情報を伝えると同時に、
漁業者バッシングや、水産庁バッシングにはならないような配慮が必要です。
つきましては、私の名前を記事に出す場合は、事前に最終稿を確認することを
取材の条件にさせてください。よろしくお願いします。
勝川俊雄
たとえ意味が同じであっても、最終確認後のコメントをいじる資格はないだろう。
コメントをいじれば、それが最終稿になるわけだから、
新たに確認をとる義務があったはずだ。
しかも、変更前と後とでコメントの意味合いが根本的に変わっている。
俺が言いたいことは、「漁業者の生活も保障しながら、対策を進める」の部分であって、
要するに、収益が赤字でも船の借金があってやめられないような漁業者を
税金で整理すべきだということ。
予算の裏づけをしたうえでTAE制度をしっかりと運用してほしいということだ。
国による補助などの前提を抜きにして「廃業しろ」というのは、
「漁業者は勝手に野たれ死ね」といっているようなものだ。
マイワシ漁業など無くしてしまえという意味にしか取れない。
これでは、社会のサポートで漁業の合理化を進めるべきだという俺の主張は伝わらない。
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Comments:2
- 県職員 07-01-18 (木) 15:55
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標記と少しだけ関係はあるのですが,農林統計事務所の縮小,人員削減等々により水産関係の統計も非常に大雑把なものになってしまいそうです。
また,海洋環境モニタリング調査なども費用対効果の側面で財政には攻められ,厳しい状況になってきています。すぐに目に見える効果が出ない事柄には,国も県もお金がだせなくなってきていますね。モニタリングなので大切ですと言いながら,成果を積極的に出そうとしなかった研究者も悪いのでしょうが。
小さな政府にすると,マイワシの漁獲量なんかますますわからなくなってくるでしょうね。TAC報告の義務は,一部の大型漁業にしかありませんから。信用性は低いと言いながらも統計数値はよく使われていますしね。 - 勝川 07-01-18 (木) 21:51
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削れるものは全部削れと言う勢いですね。
ナホトカ号の事故の時に痛感したのですが、
何かあってからデータを集めても遅いのです。
対象となる平常時のデータが無ければ、
事故の影響評価は出来ません。水産庁も水研の資源評価が信用ならないと言うなら、
もっと調査予算を増やすべきだと思いますが、
実際には直接使われない調査の予算は削られる一方です。基礎調査やサンプリングの予算が削られまくっている現状を見ると、
近い将来、手痛いしっぺ返しを食らうと思います。ただ、データが有効利用されていないという現状はあります。
データはあっても、ある部署が抱え込んで別の部署は利用できないとか、
同じ組織でもそういう話があります。
もとをたどれば税金で調査しているわけだから、
結果を公開して最大限利用する義務があると思うのですが、、、
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