マイワシの生活史はこんな感じになっている。
3つ前の記事で、卵から漁獲開始までの生残率は改善されたことをしめした。
上の図で赤の矢印の部分は1992年以降、順調に回復したのだ。
一つ前の記事で、青の矢印の漁獲死亡の部分が90年以降跳ね上がっていることを示した。
次に、青の矢印の部分の漁業以外の要素がどう変化したかをまとめてみよう。
1)成長は早くなった
下の図は、マイワシの年齢別の平均体重の経年変化を示したものである。
青線が増加期、赤線が高水準期、オレンジが低水準期、緑が超低水準期に相当する。
資源が高水準になると、餌を巡る競争がおこるために成長が鈍る。
そして、資源が低水準になると餌が余るので、成長速度が速くなる。
特に近年は、高水準期を上回る早い成長速度が観察されている。
2)成熟年齢は早くなった
マイワシは、2歳以上はほぼ全ての個体が成熟する。
70年代・80年代は、1歳魚はほぼ未成熟で、その成熟率は10%に過ぎなかった。
90年代にはいると1歳魚の成熟率が上昇し、1996年以降は50%が成熟している。
生物は餌から得たエネルギーを、自らの成長や成熟に配分する。
もし、餌環境が一定であれば、成長速度と成熟速度はトレードオフになるはずである。
最近のマイワシは、成長と成熟が同時に早まっていることから、
90年代以降のマイワシの餌環境は良くなっていることが示唆される。
3)自然死亡の変化は不明
自然死亡率の推定は、技術的に困難であり、その推定精度も低い。
多少の変化があったとしても、我々人間が把握できない可能性が高い。
自然死亡の主な原因は、捕食と考えられている。
小型の個体は遊泳力が低いため、捕食されやすい。
近年、個体の平均的な成長速度が上がっているため、
自然死亡は減っていると思われる。
ただし、自然死亡がどの程度減るかは定かではないし、
実際に自然死亡が減っているという知見は得られていないので、
資源評価票で以前と同じ自然死亡係数を使うのは妥当だろう。
ちなみに、自然死亡係数は一定で、毎年33%の個体が自然死亡すると仮定されている。
まとめ
- 成長は明らかに早くなっている。
- 成熟年齢も目に見えて下がっている。
- 自然死亡率は恐らく下がったと思われる。
以上のことを考慮すると、マイワシの生物学的な生産力が落ちたとは考えづらい。
むしろ、70年代や80年代よりも最近の方が生産力が上がった可能性が高い。
生活史のどこの段階を見ても、
現在の海洋環境がマイワシに不適だという要素は見あたらないのだ。
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Comments:1
- 匿名 07-02-18 (日) 22:25
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