- 2010-03-27 (土) 8:15
- 日記
2004年以降、日本海のマグロ産卵群は急激に減少している。壱岐や対馬など、朝鮮半島と日本の間の離島には、一本釣りで生計を立てている漁業者がたくさんいる。2003年までは、漁獲が安定しており、30代の若者もかなりの割合を占める。世代交代ができている日本では数少ない優良漁業だったのだ。マグロの一本釣りで有名な日本海離島の某組合のマグロの売り上げは近年激減している(下図)。一本釣りの2009年の漁獲はほぼゼロ。巻き網が産卵場で操業を始めてから、大型個体がみるみる減っているのだ。この組合は、若い漁業者も多い。30代中頃で、小さな子供を抱えている。借金をし て、船を買っているので、このままマグロがいなくなったら、どうなるかは容易に想像ができる。彼らの生活を守らなければならない。日本人が離島で生活をしているというのは、領土問題を考えても重要なことだ。壱岐や対馬の産業が無くなれば、竹島みたいになるのは時間の問題でだ。離島 で、自立して生活している人たちの生活を守るのは、国防上も非常に重要である。国として、取り組むべき課題である。
2009年には、巻き網の漁獲量も激減した。今年も、巻網船はクロマグロ産卵群の通り道で待機をしていたが、クロマグロが産卵場に帰ってこなかったのだ。クロマグロの泳ぐ水温帯は狭いので、複数の船団が横に並んでソナーで探せば必ず見つかるはずだ。にもかかわらず、獲れなかったと言うことは、産卵群が激減したと考えるのが妥当だろう。大型個体の減少は顕著であり、境港に水揚げされる魚の体重は小型化傾向がみられる。1980年代には、漁獲の平均体重が110-160kgであったものが、現在は50kg前後。08年から、境港市は「むやみに捕っている との誤解を招きたくない」として詳細なデータを隠すようになった。トン数は出すけど、本数は隠すようになったので、平均サイズを計算できないのである。ここでも、「くさいものには蓋」である。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/econpolicy/314718/
境港がいくら隠したところで、探すところを探せばデータは出てくる。境港で水揚げされたマグロはほぼすべて築地にいくので、市場統計を漁ればどんな魚を捕っているかは大体わかる。08年は50kg、09年も似たようなものだった。クロマグロは4歳で50%成熟する。そのときの体重がだいたい50kg(下図はhttp://kokushi.job.affrc.go.jp/H20/H20_04.pdfよ り引用)。その上のサイズがほとんど獲れないということは、ようやく成熟して産卵場に初めてやってきた親を、一網打尽で、ほぼ獲り切っているのであろう。これでは資源が潰れるのは時間の問題だ。
さて、このような現状に対して、日本の研究機関はどのような情報を発信してきたか。境港を擁する鳥取県の水産試験所は、一貫して、巻網漁業を擁護してきた。近年、漁獲が増えたのは、資源が増えたからで、持続性には問題が無いと主張してきた。去年は産卵群がなかなか戻ってこなかったのだが、7月には「境港近辺の水温がいつもより低いから、産卵が遅れている」と主張していた。結局、最後まで、魚がこなかったら、「今度は魚は北朝鮮に行っているに違いない」と言い出した。本当にマグロがいなくなるまで、あれこれ言い訳をつけて、資源が減ったことを認めず、最後は「マグロがいなくなったのは、地球温暖化にちがいない」と主張するのだろう。日本の公的研究機関では、良くある話。
日本海のクロマグロの分布が、ここ数年変化しているのは事実である。これまで少なかった韓国沿岸での漁獲が増えているので、探餌分布が北に移動しているようである。ただ、漁獲はほとんどが35kgぐらいで、漁期も産卵期前の3月なので、境港で獲っているマグロとは生活し段階が違う。韓国はすでに主要な漁業をIQで管理していて、資源が回復しつつあるという(現在、確認中)。マグロも餌が豊富な韓国にどんどん移動するかもしれない。摂餌期の魚が餌を追って分布を変えるのは良くある話なんだけど、どんな生物でも産卵場はそれほど移動しないことが知られている。クロマグロの産卵場が大幅に北に移動したという鳥取県水産試験所の主張は、可能性として低いと思います。
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Comments:2
- 県職員 10-03-29 (月) 19:30
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韓国の資源管理は急速に進んできているそうですね。
中国はともかく,中韓があるから資源管理には限界があるとの言い訳がだんだん通じなくなってきました。
日韓でやればいいーんです! by Jカビラ「どんな生物でも産卵場はそれほど移動しないことが知られている。」ということは恥ずかしながら初めて聞きました。具体的な魚種など教えていただければ幸いです。
- kaku q 10-03-29 (月) 23:13
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今晩はマグロ関係の記事まとめて読みました
ワシントン条約に付属書ⅠとⅡがある事も初めて知り
その違いも理解出来ました(メディアは取り上げていませんでしたね)
言われる通りだと思います○×で表現したMATRIX表も判りやすかったです
TVにこの表で説明するコメンテーターでもいれば
直接マグロに利害を持っていない多くの方が
すんなりと実情を理解出来たと思うのに・・・残念ですね結局「農業、林業、漁業」になると高い見識を持つ
政治家やジャーナリストが少なすぎるんじゃないかと思います
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- 日本近海のクロマグロ漁業の現状 その3 from 勝川俊雄公式サイト