- 2007-10-17 (水) 15:45
- 日記
読者のコメントより
以前「資源の減少は自然の法則」的な漁業者サイドの発言に対し、
「自分に都合のいいトコだけをとっている」と氏は批判しましたが、
「いいトコ取り」をする程度には、彼らも勉強(?)しているわけです。
では、何故、誰が、彼らの「信仰」を培ったのでしょう?きつい言い方をすれば、「無知」が根本原因なのであって、
それを放置してきた者にも責任の一端はあるのではないでしょうか?
漁師の武器は、経験と漁獲技術です。
でも、資源管理論を学び、自らの物にしている漁師は
国内にどのくらいいるのでしょうか?
「学ばないのが悪い」「やる気があれば学べたはずだ」と突き放すのは簡単です。
なぜ、漁業者が資源に対して無知なのかを考えたことがありますか?
学ぼうにも情報が無いからです。
では、なぜ、資源に関する情報がないのでしょう・・・
ご存じの通り、水産業界に言論の自由はありません。
漁業者に都合が悪いことを言えば、よってたかって揚げ足をとられます。
先日、マイワシの減少に対する漁獲の影響について水産学会誌に記事を書いたところ、
水産庁から天下りした某組合の元理事がいろいろと動いているようです。
こういう人が出てきた段階で、内容が正しかろうがどうだろうが、
発言を撤回し、謝罪しないといけない立場の人も多いでしょう。
用心棒をつかって、言論封殺をしているのは業界自身です。
漁業者が水産資源に関して無知なのは、勉強不足ではなく、
その前の段階で「言論封殺」をしていることが根本原因なのです。
自分が情報を発信する立場になると、言論封殺の構図は実感できます。
発言の自由を奪えば、業界の自浄効果が失われます。
問題点を指摘する人間を排除して、
茶坊主だけを残していけば、組織は必ず滅びます。
組織をヨイショする発言しか許されていないのは、
ワンマン企業で良くあるパターンですし、戦時中の日本も同じでしょう。
どちらも、イケイケの時は良いですが、傾き出せば脆いものです。
メディアは、この圧力の影響を受けています。
例えば、水産経済の記事をこのブログでとりあげました。
ニューファンドランドのコッドは世界で最も有名な乱獲事例です。
これを自然環境が原因だと書くのは非常識です。
元論文と全く違う内容なので、飛ばし記事と呼んでも良いでしょう。
なぜ、こんな記事がでるかというと、漁業者が喜ぶからです。
逆の情報(乱獲の証拠)は幾らでもありますが、
漁業者が喜ばないから取り上げられません。
この手の記事は、読んだ読者は喜ぶし、
たとえ間違えていてもクレームはこないので、
書く方にとっては、利益がある安全な記事です。
もし、漁業を批判する記事を書いて、少しでも不正確な記述があれば、
鬼の首を取ったように叩かれるでしょう。
君子危うきに近寄らずというわけです。
漁業に都合が良いことなら、どんな嘘でもかまわない。
漁業に都合が悪いことなら、アラ探しをして徹底的に叩く。
こういうダブルスタンダードで、言論を封殺してきたのです。
「やる気があれば学べたはずだ」と漁業者を突き放すつもりは毛頭ありません。
情報を発信しようという人間を端からつぶしているのだから、
学ぼうにも、学べるはずがないのです。
ただ、そういう状況を造ったのは他ならぬ一部の漁業者ですから、
突き放すどころか、言論を封殺してきた責任を追及したいですね。
この閉塞的な状況を打破するために、俺は言うべきことを言ってきました。
これは、税金で研究をさせてもらっている者として、自分に課した義務です。
業界を批判する連載を業界紙に執筆し、テレビで北巻の乱獲を非難しました。
俺が関わったクロ現が、NHKで漁業の現状を批判した最初の番組らしいです。
業界紙で正面から漁業の現状を批判したのも、あの連載が最初でしょう。
どちらも、相当にインパクトがあったようで、
おかげで、いろんな場所で陰口をたたかれています。
それと同時にいろいろと応援してくれる人も出てきました。
漁業を立て直すためには、まず、言論の自由を取り戻さないといけない。
今後も、批判を恐れずに、言うべきことを言い続けます。
- Newer: スケトウダラ北部日本海系群のおもひ出
- Older: シェフの味、生徒「もの足りない」 英で給食離れ
Comments:2
- 匿名甘えヒト 07-10-18 (木) 0:05
-
>漁業に都合が良いことなら、どんな嘘でもかまわない。
>漁業に都合が悪いことなら、アラ探しをして徹底的に叩く。
>こういうダブルスタンダードで、言論を封殺してきたのです。・・・沿岸以上に沖合いは『エグイ』・・・
ただ、『漁業に・・・云々』は、その前に、『目先の』という言葉が入るでしょう。
だって、先細るのは目に見えてますから・・・年寄りが偉い組織で、近視眼的な集まりになると、そーなるのかな・・・子供や孫のことは考えないのかな???情報操作に関しては、鈴木ムネオ著の本に、「自分に都合の良いところだけをだして、情報操作してる」と書いてあるらしいです・・・東洋大の松原先生のHPに紹介してありました。状況は全く同じなんだなぁ・・・買って読む気はしないので、図書館にでも行って見よう・・・
>おかげで、いろんな場所で陰口をたたかれています。
これは仕方のないコトですね。
だって、氏は黙っていても、ぶっ飛ばしたくなるような雰囲気もってますから(笑)まぁ、笑えない状況です。
できることしかできないんだから、やれることをやるしかないですね。前にも話したと思いますが、中堅や若手の中には、ちゃんと話を聞いて、受け止めようと努力してくれる人たちもいます。今、彼らに権限はないけど・・・
即効性はないけど、私は、そーぃう人たちを大切に育てて生きたいと思います。 - 勝川 07-10-26 (金) 20:27
-
>だって、先細るのは目に見えてますから・・・
>年寄りが偉い組織で、近視眼的な集まりになると、そーなるのかな・・・
>子供や孫のことは考えないのかな???経営が傾いてしまえば、何はなくとも今日の生活ですよ。
本当はそうなる前に資源管理をしないといけないんだけど、
本当にまずくならないと、誰も動こうとしない。
ここを変えていきたいですね。
Trackbacks:0
- Trackback URL for this entry
- http://katukawa.com/wp-trackback.php?p=398
- Listed below are links to weblogs that reference
- 誰が言論の自由を殺したのか? from 勝川俊雄公式サイト