- 2008-02-05 (火) 12:41
- マイワシ
こんどは、マイワシがTACを超過しましたね。こんどは、知事許可(沿岸)が枠をオーバーということです。では、どの県がどうやってオーバーしたかを見ていきましょう。TAC魚種の漁獲実績はここにあります。
http://www.jafic.or.jp/tac/index.html
まず、去年の4月にTACと漁獲量の推移を見ていこう。6月に期中改定で、TACが35千トンから、60千トンに増枠された。最終的な配分は、大臣許可43千トン、 知事許可17千トンである。大臣許可は、最後までTACに達しなかった。一方、知事許可は8月の段階で、配分枠を使い切っていたのである。その後も順調に漁獲を続けて、10月に7千トン獲ったのが大きかった。12月の値は暫定値であり、ここから2~3千トンは増えるだろう。 最終的には、200%近くなるだろう。
TACと漁獲量
TAC
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7月
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8月
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9月
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10月
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11月
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12月
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合計 | 60000 | 45172 | 51308 | 53568 | 61914 | 65710 | 66361 |
大臣 | 43000 | 30747 | 33662 | 34227 | 35801 | 36005 | 36658 |
知事 | 17000 | 14425 | 17646 | 19341 | 26113 | 29705 | 29703 |
TACの消化率
7月
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8月
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9月
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10月
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11月
|
12月
|
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大臣
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72%
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78%
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80%
|
83%
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84%
|
85%
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知事
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85%
|
104%
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114%
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154%
|
175%
|
175%
|
では、県ごとに見ていこう。県別漁獲量の上位は西の県が占めている。これは例年通りである。
19年度漁獲量
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1 | 高知県 | 5414 |
2 | 宮崎県 | 5135 |
3 | 長崎県 | 5042 |
4 | 島根県 | 3446 |
5 | 三重県 | 2327 |
6 | 鹿児島県 | 1984 |
7 | 和歌山県 | 935 |
8 | 神奈川県 | 776 |
9 | 石川県 | 690 |
10 | 愛知県 | 660 |
知事許可としてはTAC枠に達した9月以降の漁獲量をみると、こんな感じ。高知、島根は殆どが9月以降ということになる。
TAC超過後の漁獲量(t)
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1 | 高知県 | 4485.1 |
2 | 島根県 | 2122.9 |
3 | 長崎県 | 1713.5 |
4 | 鹿児島県 | 1011 |
5 | 三重県 | 968 |
平成19年12月と平成18年12月の報告漁獲量を比較してみよう。漁獲量の差が大きいのは九州・四国であった。長崎、鹿児島が突出していることがわかる。去年は殆ど獲れていなかった長崎での高い漁獲量は、対馬暖流系群の卓越年級群の発生を示唆する。漁獲量としては上位の三重県は、前年比でみると減少している。
前年の漁獲量と比較(12月報告)
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差(t) | 比 | ||
1 | 長崎県 | 4855 | 27.0 |
2 | 鹿児島県 | 1914 | 28.4 |
3 | 島根県 | 1907 | 2.2 |
4 | 宮崎県 | 1860 | 1.6 |
5 | 高知県 | 1373 | 1.3 |
34 | 三重県 | -248 | 0.9 |
TAC魚種のうちマイワシとスルメイカ以外は、大臣許可と知事許可に配分された後、知事許可分はさらに県に配分される。マイワシは、漁場形成が偏るので漁獲枠をそれぞれの県には配分していない。沿岸漁業全体の枠しかないのである。各都道府県が、前年度実績を目安に漁獲をするという通達しかない。9月以降の漁獲が多かった高知は、前年度実績をそれほど超えていない。三重に至っては、前年度実績を下回っている。目安は守っているのである。前年と比べて漁獲量が急増した長崎・鹿児島は漁獲の中心が8月以前であった。この2県と島根は9月以降の漁獲をもう少し抑えるべきだった。この前年度実績というのはあくまで目安であって、実行力は何もない。これでは、漁獲枠など無いも同然である。マイワシは資源が減少中なので、前年度実績通り獲ってたら、どんどん減る。また、今年のように少しでも資源が増えれば、枠など守られるはずがない。現在のTAC制度は、管理をしていますというポーズだけで、過剰漁獲を取り締まる気など無いのである。今回の知事許可分の超過に関しては、管理としての枠組み作りを放棄している水産庁の責任が重いだろう。
水産庁は「ウルメやカタクチを獲る中で、(マイワシが)混じる量が多かったようだ。混獲と専獲を分けるのは難しい」といつものように開き直っている。混獲だろうと専獲だろうと、資源に与える影響に代わりはないのだから、全体の漁獲量を抑えるのは当然のことである。混獲だから良いという問題ではないだろうに。こんな理屈をこねるのは、世界広しといえども、日本の水産庁と日本の漁業経済学者ぐらいだ。南アフリカは、カタクチ漁業が混獲するマイワシに対して、混獲漁獲枠を設けて資源の保全に努めている。まじめに資源管理をしている国を少しは見習って欲しいものである。混獲・専獲が問題であるならば、なおのこと地域に漁獲枠を配分しておく必要がある。予め枠が決まっていれば、混獲を含めて漁獲枠に収まるように工夫して操業をできる。混獲でどうしても獲れてしまう分を引いた残りを専獲すればよいのである。それでも混獲で獲りすぎてしまったなら、超過分は翌年のその地域の漁獲枠を減らすことで対応できる。TACを超過したマイワシの混獲をゼロには出来ないが、減らす方法は幾らでもある。日本はそういった努力をなにもしていない。管理をする側の人間が、資源管理ができない理由を並べれば、それで良いと思っているかぎり、今後も乱獲に歯止めはかからないだろう。
漁獲量の県ごとの内訳を見ると、去年とは資源の構造が変わっていることが示唆される。去年と比較して漁獲量が増えた県を黄色、減った県を青で示すと下のようになる。
今年の10月以降の漁獲増は、産卵場の周辺で0歳魚の漁獲が増えたためだ。太平洋系群、対馬暖流系群ともに卓越が発生したようである。ただ、卓越といっても現在の低水準では簡単に獲り切れてしまう水準である。この年級群を確実に産卵につなげていくことが、マイワシ資源にとって死活問題だ。07年級群は、この後、東に摂餌回遊を行い、来年、産卵場に戻ってくる。どうせ、北巻は獲って、獲って、獲りまくるだろう。水産庁は北巻の乱獲を抑制するどころか、少しでも多く獲れるように最大限の援護射撃をするだろう。この年級群が再生産に結びつくかどうかは、東への回遊しだいということになる。07年級群は今のところ、西に止まっている。このまま西に止まってくれれば、資源回復の芽はあるのだが、東に行けばそれで終わりだ。
05年、07年と親が少ないながらも、順調な加入が観察されている。これらに確実に産卵をさせれば、資源を緩やかに回復させながら、漁獲を安定させることもできるだろう。獲るなとは言わないから、せめて1年だけでも我慢して欲しい。
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Comments:2
- 業界紙速報 08-02-05 (火) 16:30
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マイワシのTAC超過に対する素早い反応、畏れ入りました。漁業情報サービスセンターのH/Pに探していたDATAがあるとは知りませんでした。小子は、市況の「本日の主要魚種の水揚げ」しか見たことがありませんでした(しかも、この表は翌日になると更新されてしまって、過去の数字を見たくても見れないんですけど)。
ついでといってはなんですが、きょうの北海道新聞にスケソウTACの記事があります。昨日、水産政策審議会が開催されたのですが、業界紙は載って明日になるんでしょうか?これについては、水産庁H/Pにアップされており、諮問第136号として数量の確認はできます。しかし、増減は07年の数字を持ってこなくては比較できません。
その点、北海道新聞の記事では、2008年スケソウTACは6千トン増の22万5千トン、全国が対象の沖合底引き網漁業に6千トン増の13万6千トン、道内分は増減なしの8万6千トン、残り3千トンは青森や岩手など五県への配分としたことがわかります。国の配分決定を受け、道は三月中に漁業の種類ごとの漁獲枠を決めることとし、刺し網漁は道南太平洋を約5千トン、道東太平洋を約9百トン増やす一方、根室・日本海を減らす見込み。増枠を受けて、道南太平洋海域スケトウダラTAC協定運営委員会は《1》漁期の開始を遅らせる《2》網数を減らす-などの管理計画を策定、漁獲量の平準化に取り組む、とのこと。 - 勝川 08-02-06 (水) 15:50
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日本海系群は魚が居ないので、減枠は当然です。漁獲量を絞る必要がある太平洋系群の枠を増やしたということですね。枠はゆるゆるだし、不正も出てくるしで、太平洋系群も日本海北部系群と同じ運命を辿りそうですね。そうなると、北海道漁業は、サケとホタテなどのローカルな養殖のみになるのかな。
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