漁業全体の長期的な利益を増やすという観点からは、
小さい魚を多く獲って安く売る漁業より、
大きな魚を少なく獲って高く売る漁業の方が望ましい。
現在の日本漁業は早い者勝ちの自由競争であり、
他の漁業者よりも早く、根こそぎ獲る漁業しか生き残れない。
資源管理をしないということは、
不合理漁獲をする漁業を優遇することに他ならないのだ。
大分県の例でも、状態を放置しておけば、巻き網の乱獲が進行し、
関サバ漁業は消滅する可能性が高い。
1尾5000円で十分に卵を産んだ大型個体を獲る漁業が淘汰され、
1尾10円で未成熟魚を中国に売る漁業が生き残る。
それが、現在の日本の漁業システムの当然の帰着なのだ。
関サバ漁業が淘汰されるような制度では、日本漁業に明日はない。
日本人が高い金を出してでも食べたいと思うような良質な魚を
安定供給できるようなシステムに作り替える必要がある。
まず、TACをABCまで下げるのは、資源管理として当然だ。
でも、それだけでは関サバ漁業は生き残れない。
オリンピック制度では、スタートダッシュで獲りまくれる巻き網が漁獲枠を独り占めするだけだろう。
漁業者間の競争によって、漁期が短縮し、漁業の利益は限りなく減少していく。
漁獲枠を厳格にしたところで、オリンピック制度では資源は守れても漁業は守れない。
このことは、米国、カナダの失敗から明らかだろう。
過剰な早獲り競争を抑制するには、個別割当方式(IQ・ITQ)しかないだろう。
IQは、予め漁獲枠を個々の漁業者・漁船に割り振っておく制度である。
関サバ漁業者と巻き網漁業者にそれぞれ漁獲枠を予め配分しておくことで、
双方の漁獲量を保証することが出来る。
それぞれの漁業者は与えられた枠内での、利益の最大化を目指すことが出来る。
まとめ
漁業から持続的に利益を得るためには、
資源の再生産への影響を少なくしつつ高い利益を上げるのが望ましい。
関サバ漁業は、極めて理想的な漁業と言える。
しかし、現在の無管理状態では、不合理漁獲に淘汰されてしまう。
持続的に利益を上げられる漁業を守り、育てるためには、
IQやITQのような権利ベースの漁獲枠配分システムの導入が必要である。
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