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自主管理2.0でロングテール漁業を狙え

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どうも俺は自主管理に否定的だと誤解されているようだが、そんなことはない。

今はあまり上手くいっていないけど、自主管理は大きな可能性を秘めていると思う。

ただ、それは短所と長所を理解した上で、適切な利用をすればの話だ。

ロングテールという概念をつかって、自主管理の適切な守備範囲について論じてみよう。

商品売り上げのグラフを、縦軸を販売数量、横軸を商品として販売数量順に並べるとこんな感じになる。少数のベストセラーが高い売り上げを上げる一方で、あまり売れない商品が恐竜の尻尾(テール)のように長く伸びる。

img08042311.png


従来のビジネスは恐竜の首の部分で利益を上げるのが基本である。 少数の稼ぎ頭がもうけの大部分をたたき出すので、上位20%の商品で80%の利益を出すような場合が多いだろう。一方、テールの部分は、陳列するコストに見合う利益が出ない。店にとっては扱うメリットがないのだ。ネックの部分で利益を出し、胴体の部分は多少赤字でも集客のために必要になる。テールの部分は、扱うほど利益が減るので、極力排除する。これが、従来のビジネスの常識だった。それを変えたのがインターネットだ。
アメリカの本のチェーン店は13万点の本を在庫している。それをさらに上回るのがアマゾンの230万点という圧倒的な商品数だ。アマゾンは、商品のページをウェブに作るだけなので、商品あたりのコストを極限まで切り詰めることができる。だから、ロングテールの先の先まで扱うことが可能なのだ。アマゾンは上位13万点に入っていない、しっぽの先から、売り上げの半分を上げているという記事がWiredに掲載されて、大きな話題になった。ちりも積もれば山となるのである。実際は売り上げの1/3らしいが、それでもロングテールというのが潜在的に大きな市場であることがわかる。

従来の書店では、在庫のコストがかかるので、ロングテールは採算がとれない。このロングテール部分から利益を出せるのがネットの強みであり、これらのネットの潜在的な可能性を総称してWeb2.0と言うらしい。 (以上、説明終わり)

日本の漁獲量を系群別に並べてみると次のようになる。実に典型的なロングテールだ。これは資源評価票に漁獲量の記述があったものを抜き出している。資源評価の対象になっているような主要な漁業でもすでにテールであり、日本全国津々浦々の漁業を並べればしっぽは無限に伸びていくだろう。
img08042310.png

首の漁業(広域分布種からなる大規模な漁業)

 大臣許可(中小企業)・複数の県にまたがる→合意形成の場がない

 顔が見えない、船の大きさ・漁具が違う→漁業者間の相互監視は期待できない

 漁業調整は難しいし、自主的な規制では実効性が低い



しっぽの漁業(沿岸の局所的な資源)

 少数の漁協が利用する沿岸漁業(家族経営)→漁村談合システムでの合意形成が可能

 顔が見える・船の大きさ漁具の多様性が少ない→漁業者間の相互監視が働く

 従来の資源管理型漁業でも実効性が確保できる

首の漁業はコストをかけて管理をしても、十分なリターンがあるので、しっかりとした枠組みで資源管理を行うべきだろう。一方、しっぽの漁業は、潜在的な利益が小さいので、下手をするとABCを計算するのに必要な調査費・人件費も出ない。資源管理をすると赤字になっては意味がないので、しっぽ漁業の管理にはコストが安い自主管理しかない。

この前の北洋シンポでは、俺がITQの話をして、松田さんは知床の自主管理の事例の話をした。松田さんに対するコメントで「勝川の話とは正反対だけど、自主管理が良いという松田さんに賛成」みたいなのがあった。それに対する松田さんのコメントは「自主管理はコストの面では有効だけど、万能ではないし、TACのオルタナティブではない」という感じだった。俺も全く同じ意見。トップダウンかボトムアップかという二元論で考えると俺と松田さんの講演は正反対に見えるかもしれないが、ネックの部分に着目するか、テールの部分に着目するかの違いにすぎない。松田さんと俺とは、「資源管理は適材適所」という点で一致していると思うし、その中身に対してもそれほど差がないんじゃないかな。



以上が、北洋さんのコメントへの俺の回答です。

この場を借りて、

私の「沿岸」と「沖合」の経営の性質の違いの理解を申し上げ、

階層毎に資源管理方法の設定が必要であるのではないか、という問題提起をさせて頂きます。

「沖合」用、「沿岸」用の資源管理を模索し、互いに「共存」できる環境を作っていく必要があると考えます。

http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2008/03/post_306.html

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