- 2008-08-01 (金) 7:18
- その他
この前のテレビで驚いたのは、関サバの漁師。
この半年1尾も釣れてないにもかかわらず、毎日300隻も船が出しているという。
交代で1隻か2隻ぐらいを出漁させて、
魚がいることがわかってから皆で出るぐらいのことがなぜできないのか。
「燃油が高い、高い」と文句を言う割に、コストへの配慮が欠如している。
真っ先に、「月夜」に一斉休漁をしたイカつり漁船も同様である。
少ないイカを漁業者間で奪い合うから、規制違反の明かりを炊くことになる。
宇宙を煌々と照らしながら、ストをする前に、業界内でルールを徹底するのが先ではないか。
関サバやイカつりばかりでなく、たいていの漁業は魚の奪い合いだ。
他の漁業者よりも早く漁場に行くために、
小さい船に不釣り合いな大馬力のエンジンを積んで、
規定の時間になると一斉にスタートする。
先を争って、値段がつかないような小魚まで必死に獲って、
未来の収益をどぶに捨てているのだ。
早い者勝ちの日本では、無駄に早いエンジンも、
漁場に急ぐために使われる燃油も、すべて必要経費である。
この経費をけちったら最後、何も獲れないのだから。
他の部分は極限まで削っても、
早取り競争のための投資は削ることができない。
無駄なコストの削減に関してはノルウェーは徹底している。
ノルウェーのサバは、日本人には脂がのりすぎている。
成熟が進むにつれて、体の栄養が卵に移り、徐々に脂が抜けている。
毎日、調査漁獲で脂の具合をモニターし、
最も良いタイミングで皆で獲りに行く。
業界全体で協力することで、コストを抑えて、利益を最大化できるのである。
ノルウェーの漁船漁業は常に最新の設備を使っているが、
より早く獲るためではなく、漁獲物の質の向上のために設備投資をおこなっている。
今回の燃油高騰は、無駄が多い日本漁業のあり方を見直す契機になったはずだ。
無駄な競争を続ければ共倒れになるのは明らかだから、
漁業者同士で協力をして無駄な競争をやめる以外に道はないのだ。
過剰競争を緩和する手段としては、個別漁獲枠、ローテーション出漁、
プール制など、やり方ならいくらでもある。
ローテーション出漁なら、1回の漁でより多くの魚をもち帰るために、
過剰に獲るだろうし、プール制だと良質の魚を生産しても、リターンがない。
最も操業の自由度が高く、合理的なのは個別漁獲枠だろう。
ただ、ローテーション出漁も、プール制も、問題はあるものの、
導入は、個別漁獲枠よりも容易であり、その気になればすぐにできる。
何もやらないよりは100倍マシだ。
ピンチとチャンスは表裏一体である。
人間というのは、必要性があって、初めて変化ができる。
無駄な競争をやめて、ほどほどに獲って、ばっちり儲ける。
俺が常々唱えている「持続的に儲かる漁業」への一歩を踏み出すチャンスだったのだ。
その芽を摘んだのが、今回の直接補償だ。
(政府は直接補償ではないと言っているようだが、どうみても直接補償だろ)
漁業者はこれからも、安心して過剰競争をつづけることができる。
価値の低い小魚を水揚げしておきながら、
魚価が安いのは、消費者がわるいと、愚痴り続けるだろう。
この無責任きわまりないばらまきののツケは、
すべて未来の世代が返していくのだ。
国産魚は食べられず、国の借金だけが残る。
かつて漁業を補助金漬けにして、乱獲に苦しんだノルウェーでは、
みなが口を揃えて、補助金の害悪とそれを断ち切ることの必要性を強調した。
「補助金は、必要な変化を遅らせるだけで、漁業にとってマイナスでしかない」と。
いまの日本の状況が、まさにそれだ。
安易な直接補償ではなく、持続的に儲かる漁業への転換を手助けするべきだった。
漁業者に、いくつかの資源管理のオプションを提示する、
話し合いの場所を設ける、専門家を派遣して方策を検討する。
そいうったことを、もっと積極的に行って欲しい。
政府や漁業団体は、EUの漁業補助金を見習えと言う論調が多かったが
EUの補助金は、休漁支援、生活保障、構造改革であり、直接補償ではない。
これらの漁業の変化を助ける補助金ですら、世界的には非難に曝されている。
俺個人としては、変化のための補助金は必ずしも悪いものではないと思うし、
こういう方向を目指すのであれば、目くじらを立てるつもりはない。
しかし、日本の745億円の補助金は、すでに破綻している現在の漁業を
そのまま延命するためのものである。
必要な変化を遅らせても、漁業がますます衰退するのは明白だ。
政治家は、目先の票のために、漁業の未来を破壊している。
次の選挙に頭がいっぱいで、漁業を破壊しているという自覚すらないかもしれない。
「他人のふんどしで、問題先送り」というのは、
漁業独自の問題ではなく、日本という国家全体の問題でもある。
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