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乱獲

公的資金でまき網船を大型化する計画が進行中です

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読者からの投稿です。

大中型まき網漁船の大型化について
水産庁は、漁業構造改革プロジェクトにより大中型まき網漁船の大型代船建造に次々補助金をつぎ込んでおります。西日本の沖合で操業できる大中型まき網漁 船の網船を水産庁自身が135トンに制限しているにもかかわらず、境港の大中型まき網漁船について境港の関係者のみで合意が図られたとして250トンまで 大型化するのに補助金を入れようとしています。近隣の関係県、沿岸漁業者には一切相談なしです。この国の水産資源を回復するためには、実稼働している大中 型まき網漁船に対し補償金を出して減船した上でIQ制などアウトプットを規制する施策を導入すべきであるにもかかわらず、日水系など大資本の漁業に対し補 助金を出して大型代船の建造を支援し漁獲能力を増す愚策を行うことにやるせない思いです。これらの動きをなんとか止めることはできないでしょうか。

裏をとったところ、確かに、このような計画が進んでいます。

マイワシ、サバ、アジなど、西日本で大型のまき網で獲るような魚はことごとく枯渇しています。唯一の金づるの、クロマグロも今年はほとんど獲れなかったのだから、少しは反省していると思いきや、大きさが倍の新船を作るとは何を考えているのだか。

誤った経営判断で企業が傾くのは自業自得ですが、それによって、多額の税金が失われます。それ以上に深刻なことは、資源枯渇によって、日本海の離島での生活が成り立たなくなることです。対馬、壱岐、見島、隠岐といった日本海の離島の主要産業は漁業です。クロマグロをはじめとする水産資源を枯渇させて、数少ない産業を破壊すれば、離島に人が住めなくなる。そこで生活している人がいる限り、そうそう韓国人は入ってこれません。日本海の離島が無人島になれば、竹島のように実効占拠されるのは時間の問題でしょう。

離島に人が住んで、生計を立てていけることが、国防の要なのです。戦闘機やイージス艦が幾らあっても、竹島の実効支配は防げませんでした。日本海の国境を守るには、防衛費よりも、漁業管理が重要なのです。この境港漁業構造改革プロジェクトは、単なる税金の無駄遣いにとどまらず、離島の生活を破壊し、将来の領土問題を引き起こす可能性が高いです。このような補助金は納税者にとって百害あって一利なしといえるでしょう。

この手の計画は、内輪で固めた評価委員会をアリバイ的に開き、形式的な検討した後に、すぐに実行に移されるケースが多いです。波崎地区のような問題が多い計画であっても、評価委員は素通しです。すでにレールは引かれているはずなので、時間的にも、これを止めるのは、難しいですね。

資源管理は何も進んでいないのに、構造改革と称して漁船を大きくするのは、国益を損なう、誤った判断です。この計画の最終的な権限をもっている水産庁長官には、なんとしても、思いとどまって欲しいと思います。

水産分野の事業仕分けについて、専門家の視点から分析してみる

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事業仕分けが盛り上がっているね。国民の見える場所で議論をするのは大事だと思うよ。水産分野もびしびし削られている。実に、めでたい話でございます 😛

たとえば、漁船構造改革が全額返納になった。俺は全面的に支持する。現在、日本の漁船は明らかに過剰な状態。魚もいないのに漁船ばかりある。結果として漁業が儲からずに、船の固定費すら払えないので、漁船の老朽化が進んでいる。こういう状態で税金で大型船を増やすのは愚の骨頂である。こんな馬鹿な国は日本ぐらいだよ。ノルウェーを筆頭に、まともな漁業国は、適正規模まで漁船を減らすために税金を使っている。

たとえば、波崎地区の取り組みを見てみよう。事業計画はここにある。

http://www.suisankai.or.jp/gyogyou/hasaki-keikaku.pdf

中身を見ていこう。

Image200911183

巻き網の乱獲によって、日本近海からはイワシもサバも消えてしまったわけだ。100船団あった物が現在27船団まで減ったのだが、まだ船が多すぎる。資源が少し回復するとよってたかって、たたいては回復の芽を摘んできた。すでに経営が成り立っていない漁業に対して、「資源回復計画」と称して、乱獲資金を提供しているのが実情だ。マサバ太平洋系群は資源回復計画の予算の7割だかを入れているんだけどいっこうに回復しない。

Image200911188

↑これのどこが回復基調なんだよ 👿
水産庁は、マサバ回復計画を成功例として祭り上げているのだが、他の回復計画はもっとひどいのだ。資源回復計画も数えるのも面倒くさいぐらい数を増やしているのに、まともに回復した事例はゼロ。何もしなくても、偶然回復する資源が1個ぐらいありそうなものだが、「下手な鉄砲数打っても当たらない」状態だ。

マサバは、92年、96年と卵の生き残りが良かったけど、乱獲で回復の芽を摘んだ。最近は、04年、07年と、卵の生き残りが良かったが、同じように資源をつぶしつつある。今年度は、毎月前年割れで、前年の6割しか獲れていない。まだまだ、漁獲圧が過剰なのだ。で、業界は二言目には「経営も考慮して、漁獲枠を増やせ」と主張してきた。現状では、船が多すぎるから、乱獲をしないと経営が成り立たない(まあ、どっちみち成り立ってないけど)。船が多すぎるのは自明だろう。で、なんで、税金で船を増やさないといけないの???

まず、この計画は現在4隻で操業している巻き網船団を3隻に減らすということ。ここでのポイントは探索船を減らして、網船を大型化するということだ。一般人のために、巻き網漁業について説明しよう(くわしくはここでもみてください)。日本の巻き網は4~5隻で船団を組む場合が多い。魚群を探す探索船、網で魚を巻く網船、魚を積んで港に水揚げをする運搬船の3種からなる。現在はソナーなどの探魚技術が進歩して、すべての船が探索船の機能を持っているので、純粋な探索船はぶっちゃけ無くても良い。漁獲能力は運搬船の容量に比例するのだが、この計画では運搬船は同じトン数なので、漁獲を減らす気はさらさら無いことがわかる。この企画書に書かれているように、資源は回復基調で、水揚げ量を減らすなら、普通に考えて網船を2.5倍に大型化する必要は無いはずだ。戦闘能力の高い最新の大型網船を税金でゲットして、残り少ないサバとイワシを独り占めする腹づもりなのだろう。

Image200911186

「儲かる漁業創設支援事業」と言うより、「自分だけ儲かればよいと思っている漁業者支援事業」ではないか。省エネとか、適当に見栄えのするお題目を唱えておけば、何でも通ってきたのである。

収益の見通しもおかしい。

Image200911187

水揚げ量と水揚げ高から、水揚げの単価が計算できる。現状でKg単価が54.6円だから、養殖のえさにしかならないような小魚ばかりを獲っている船だと言うことがわかる。人間が食べるサイズになる前に乱獲をしているような船は、食料安定供給の面からはマイナスでしかない。計画後の単価は、54.8円。高付加価値とかいいながら、現在の操業を変えるつもりはないのだ。日本人が食べるサイズの魚を捕れば、どうやったって100円にはなるはず。高付加価値とか言うなら、150円ぐらい書けばよいのに。

普通に考えて、あり得ない計画なのですが、運営者は元水産庁次官ですね。

Image200911182

漁業にとって害のある予算が止まって本当によかった。漁船構造改革も、中にはまともな計画もあった。たとえば、石巻の計画は同じ巻き網ながら、トン数を大幅に減らし、漁獲をへらしながら、収益を確保するようになっている。こっちは残しても良いと思う。玉石混淆で石が多すぎるから、まとめて削った上で、時間をかけて玉の敗者復活をはかってほしい。あと、資源回復計画も、名前だけで、内容は乱獲資金をばらまいているだけだから、早く削ってください。水産庁の予算なんて、省エネや食料安定供給を口実にしたお土産や無駄な土木事業がほとんどだから、まとめて削ったうえで、本当に必要な予算を後からつければ良いと思います。

乱暴でも良い、たくましく削ってほしい

未成魚の漁獲による損失は、売り上げの4倍

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さて、未成熟のブリ(イナダ、ツバス、ハマチ)の乱獲が漁業にどのような損害を与えているかを試算してみよう。

ブリの資源評価はここにある。
http://abchan.job.affrc.go.jp/digests20/details/2041.pdf
情報が少ないね。平成16年までは年齢別の漁獲量の数値が記載されていたんだけど、平成17年以降は表記が無くなった。年齢別の漁獲データは、外部の人間が内容を検証するのに必須な情報である。1ページあれば事足りるのだから、掲載してほしい物です。

図から数字を出すのは面倒なので、文中の数値つかって、わかる範囲で計算をしよう。

基本的な計算をするには、年齢別の体重、単価、生残率が必要になる。
年齢別の体重は評価票から、10月の体重を引用する。自然死亡係数M=0.3なので、漁獲がなければ、個体数は1年間に、exp(-0.3)=0.74倍に減少する。単価は市場統計から、だいたいの値を計算する。2~3Kgのイナダが250-300円という記述がある。ブリは単価が750円程度。で、これらを表にまとめると次のようになる。

重量 単価 生残率 RPR 1尾損失
0 743 150 1 111 -2912
1 2890 275 0.740818 589 -2435
2 5354 500 0.548812 1469 -1555
3 10625 700 0.40657 3024 0

今、0歳で漁獲可能な魚がいるとする。この魚を何歳で獲るべきかを考えてみよう。

0歳魚で今すぐ獲ると、0.743*150=111円の利益になる。

1年待って、1歳で獲ると、単価は、2.89*275円なる。自然死亡が26%あるので、1歳まで生き残る確率が74%になる。1歳まで待ってとると、0.74*2.89*275=589円の利益が期待できる。

同じように計算をすると2歳でとると1469円、3歳で獲ると3024円の利益が期待できる。ブリは成長による価値の上昇が、自然死亡率を上回るので、3歳まで待って獲った方が得になるのである。

「豊漁だ!! 豊漁だ!!」といって、1歳魚を獲りまくっている。1歳魚を獲れば589円の目先の収益がもたらされるが、漁業全体の長期的利益は2435円減るという計算だ。

20年度の太平洋の年齢別漁獲尾数は、それぞれ917, 452, 97, 37万尾となる。年齢別の長期的な損失は次のようになる。

漁獲(万尾) 漁業損失(万円)
0 917 -2670682
1 452 -1100664
2 97 -150805
3 37 0
漁獲(万尾) 漁業損失(万円)
0 917 ########
1 452 ########
2 97 -150805
3 37 0


漁獲尾数に単価をかけて計算した生産金額は、100億円。それに対して損失は400億円近い金額になる。1歳魚の漁獲が今年は4倍ということは、長期的な損失も4倍ということだ。また、1歳で獲れば卵は埋めないけど、3歳で獲れば、卵が埋めるわけだから、大きくしてから獲る方が資源の再生産の観点からも良い。

これは、豊漁ではなく、乱獲なんだよ。こんなのをグッドニュースとして報道するメディアも、未成魚を買いたたいて喜んでいる消費者も、意識が低すぎ。あと、こんな獲り方をしていたら、漁業は儲からなくて当たり前の話。こういう乱獲を公的資金で支えてきたんだら、日本の水産政策は愚の骨頂だよ。

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from 18 Mar. 2009

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