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ウナギを食べ続けたいなら、ワシントン条約を歓迎すべきである


ニホンウナギがIUCNの絶滅危惧種に指定されて、ワシントン条約で規制される可能性が高まってきた。日本のメディアは、「ウナギの値段が高くなる」と危機感を煽っているのだが、本当にそうだろうか。そもそもウナギが高くなったのは、十分な規制が無いまま漁獲が拡大し、日本人が食べ尽くしてしまったからである。つまり、無規制の結果なのだ。無規制の状態が今後も続けば、漁獲は更に減少し、値段は高くなるだろう。もし、ウナギ資源・食文化の存続には、何らかの規制が必要なのは明白である。

ワシントン条約でウナギが食べられなくなるのか?

ワシントン条約には、付属書I、II、IIIがある。
付属書Iは本当に危機的な状況にある種(ジャイアントパンダやゴリラなど)を守るための枠組みで、学術目的以外の輸出入は原則禁止。ということで、ここにカテゴライズされると、輸入ウナギは食べられなくなるだろう。しかし、ニホンウナギがいきなり付属書Iに掲載されるとは考えづらい。ニホンウナギが掲載されるとしたら付属書IIだろう。ヨーロッパウナギも付属書IIだ。ワシントン条約の付属書IIに掲載されると、輸出には輸出国の許可書が必要になる。逆に言うと、輸出国政府の許可書があれば、自由に貿易できるのだ。

(参考)貿易手続きに対する詳しい情報
http://www.jetro.go.jp/world/japan/qa/import_11/04A-010911

(参考)付属書に掲載されている動物の一覧表はこちら
http://www.trafficj.org/aboutcites/appendix_animals.pdf

付属書IIに掲載されても、輸出国政府が、正当に捕獲されたと認定して、輸出許可書を発行すれば輸出できる。フランスはシラスウナギの捕獲を行っているし、今でも輸出している。それらが中国を経由して、日本に大量に入ってきている。ワシントン条約で規制されると、ヨーロッパウナギが食べられなくなると煽ったメディアの報道は不正確だったのだ。

(参考)中国経由で日本が輸入するヨーロッパウナギ
http://togetter.com/li/536088

付属書IIの効果は、政府が許可しない密漁品の貿易を抑制することである。河口に集まるシラスウナギは、素人でも捕獲ができる。その上、単価が高いので、ブラックマーケットが形成されやすい。付属書IIに掲載されたら、違法に漁獲されたシラスウナギは出荷しづらくなる。つまり、各国政府が連携をして、密漁を予防しやすくなるのである。ワシントン条約付属書IIに掲載されれば、日本に入ってくる違法漁獲ウナギは大幅に減るだろう。それによって、一時的に価格は上がるかもしれない。違法操業が減ることで、ウナギ資源の保全が大きく前進するなら、長い目で見ればそっちの方が良いに決まっている。「値段が高くなるからワシントン条約付属書IIに反対」という主張は、「違法漁獲されたウナギを安く食べられればそれで良い」といっているようなものである。

ワシントン条約付属書IIに効果はあるか

ニホンウナギ資源の存続にとって、付属書IIの規制は無いよりはあった方がよいのだけど、その実効性は漁獲国の政府が十分な規制をするかどうかにかかっている。輸出国政府がバンバン輸出許可書を発行した場合、ワシントン条約付属書IIは意味が無くなる。日本・中国・台湾は、「余所がやらないなら、うちもやらない」といって、単独で実効性のある厳しい規制を導入することはないだろう。現状では付属書IIの影響は極めて限定的だろう。ワシントン条約付属書IIが意味を持つには、日中台で連携してウナギ資源を管理するための枠組みが必要である。

今後、国際的な資源管理の枠組みをつくらなければならないのだが、仮に枠組みが出来たとしても、漁獲規制に強制力が伴わなければ、単なる努力目標で終わる。現状では、強制力をもった貿易規制の枠組みは、ワシントン条約ぐらいしかないので、これを活用しない手は無い。

ワシントン条約付属書IIへの掲載がきっかけとなり、日中台で資源管理の枠組み作りが進めば良いと思う。そして、ワシントン条約を利用して、違法漁獲を押さえ込み、持続的な漁業を実現していくのが、ウナギ資源・食文化が存続するためのわずかな希望である。逆に、今回、ワシントン条約に掲載されずに、各国が問題の先送りを選択したばあい、ニホンウナギは取り返しの付かない事態になりかねない。

ワシントン条約で規制の網がかけられるかどうかは、ウナギ資源の未来に重大な意味をもつ。我々日本人が、今考えるべきことは、今年の土用の丑にウナギの値段が上がるか下がるかでは無く、鰻丼というすばらしい食文化を支えてきたウナギ資源をどうやって救うことが出来るかである。日本のマスメディアには、ワシントン条約の意味を理解した上で、ウナギ資源・食文化の持続性に対して責任のある記事を書いて欲しいと切に願う。

ウナギに関する日本メディアの報道


つい最近まで、「ウナギ豊漁→安くなる」と楽観的な報道を繰り返していた日本メディアなのですが、IUCNの日本ウナギをレッドリストに掲載するかもしれないという情報で、「規制されると値段が高くなる」という論調に逆転しました。目先の価格以外に考えることは無いのでしょうか。

朝日新聞デジタル 2014年6月10日08時01分 神田明美
ニホンウナギ、絶滅危惧種指定へ 国際取引制限の恐れ
http://www.asahi.com/articles/ASG695FDYG69ULBJ01C.html

かば焼きで日本人になじみ深いニホンウナギについて、国際自然保護連合(IUCN)は、12日に発表する、生物の絶滅危機に関する情報を紹介する「レッドリスト」改訂版に掲載する方針を固めた。絶滅危惧種として指定する見通し。売買や食べることの禁止に直結するわけではないが今後、国際取引の制限などにつながる可能性が高まる。

下図のようなウナギ漁獲量が激減しているグラフを掲載しながら、資源の枯渇ではなく、国際取引制限を心配しているのが不思議な感じですね。

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日本経済新聞 電子版 2014/6/6 23:38
ニホンウナギが絶滅危惧種に? 指定なら価格上昇も
 国際自然保護連合、12日公表

 ニホンウナギが絶滅の恐れがある野生生物に指定される可能性が出てきた。世界の科学者らで組織する国際自然保護連合(IUCN)が12日に公表するレッドリストの最新版で、ニホンウナギが絶滅危惧種として追加されそうだからだ。指定されれば国際的な輸出入の規制につながる可能性もあり、ウナギの卸業者からは取引価格の上昇を懸念する声も出ている。

時事通信
ウナギ稚魚、養殖量回復=「丑の日」値下げは不透明

ニホンウナギの稚魚シラスウナギの養殖量が回復している。日本をはじめ、中国、韓国など周辺国・地域も好漁で、輸入分も含めた養殖池への「池入れ量」は前年の約1.8倍。取引価格も大幅に下落した。ただ、消費がピークを迎える7月29日の「土用の丑(うし)の日」に、ウナギが値下がりするかどうかは不透明だ。
また、水産庁は「直ちに資源量が回復したと判断するべきではない」として資源管理を徹底する構え。うなぎ料理店でも「(値段の判断は)もう1年様子を見てから」との声も上がる。

漁獲が激減しているのに、取り上げるのは目先の価格のことばかり。これでは、ウナギが無くなるのは仕方が無いことだと思います。

ノルウェーの小規模漁村の高齢化の話


先週、19歳の若者から、手紙が届いた。漁村で生まれ育った彼は、子供の頃から祖父・父の後を継いで漁業をするのが夢だったという。高校を出たら漁業を継ぐつもりだったが、「漁業には先が無いから」と両親に反対され、大学に通っているそうだ。漁業の夢を捨てきれずに、自分でいろいろ調べた結果、俺の本に出会い、「資源管理をすれば、自分も漁業で生活できるようになるかを知りたい」という手紙を書いたのである。この手紙を読んで、俺は申し訳ない気持ちで一杯になった。我々日本の大人たちが、構造的な問題から逃避してきた結果として、若者の夢が奪われているのである。もし、彼がノルウェーに生まれていたら、何も悩むこと無く、漁業を継いで豊かな生活を送ることができたはずだ。日本とノルウェーで、なぜこのような差が生じるのだろうか。

ノルウェーの小規模漁村の現状

先週、ノルウェーの漁業副大臣が来日したのに併せて、日本・ノルウェーマリンセミナー2014というイベントが開催された。ノルウェー大使館から「ノルウェーの研究者が俺とディスカッションしたがっているので、セミナーに参加して欲しい」という依頼があって、参加した。俺と話をしたがっていたのは、ノルウェー北部のロフォーテンに本拠地をおくSALTという研究機関のKjerstiさん。こちらのサイトのセンターポジションの女性です。午前中の全体のセッションでの彼女の講演がとてもおもしろかった。

ノルウェーの北部には無数のフィヨルドがあり、そこには小規模な沿岸コミュニティーが多数存在する。

基幹産業は漁業。6人ぐらいの小さな漁船でタラを獲る漁業が主流。養殖業も大切なビジネスであり、観光業も伸びている。

漁業生産は延びているが、漁師の数は減っている。高齢化が進んでいる。その原因は、高等教育がひろまったことである。大学で学んだ専門的な知識を活かせる職場が、漁村には無い。そこで、研究者や政策決定に関わりたい若者は、都市に移動してしまう。「漁村から都市へ」というの人の流れを逆転したい。若くて教育を受けた人たちに魅力がある職を漁村につくりたい。ということで、ノルウェー政府は、国の多くの機関を都市の外に出した。補助金では無く、仕事を造るためである。

彼女がつとめている(というか創立者みたいだけど)SALTという機関では、海洋資源の価値を産むような利用法を作り出して、沿岸コミュニティーの活性化を目指しているそうだ。

「日本と共通する話題かもしれない」と途中まで思っていたのだけど、Kjerstiさんが出した図をみて、ずっこけてしまった。

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この図はノルウェーの小規模漁村の漁業者の年齢組成だそうだ。10代から70代まで10歳ごとに棒グラフで示してある。1990年代には20代、30代が一番多かったけど、最近は40代が一番多くなっているんだって。これで高齢化ですか・・・

日本の漁業全体の年齢組成はこんな感じ(漁業センサス2008)。

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ノルウェーよ!!これが本当の高齢化だ(ドヤ!

ノルウェー政府は、現状を打開するために、沿岸地域に若者にとって魅力的な職業を作るべく努力をしているそうだ。ノルウェーの小規模漁業の人たちの収入はどれぐらいなのか、Kjerstiさんに直接聞いてみた。そうしたら、「小規模漁業者の収入を調べてみたら、私たち研究者よりも高かった」だって。漁業を継げば生活は十分に成り立つんだけど、それでも都会を目指す若者がいるから、徐々に若者が減っているということだ。

一方、日本は新規就業者が無い状態を何十年も放置した結果、高齢化も行き着くところまでいってしまった。「50代が若手」というのが日本の漁村の現状だ。漁村には跡継ぎがいない高齢者ばかりになって、限界集落化が進行している。日本の場合は、ノルウェーと違って、沿岸漁業の生産性が低すぎて、生計が成り立たないという根本的な問題がある。沿岸漁業が補助金で支えられている状況では、新規就業者が増えるはずが無い。

日本とノルウェーの小規模漁村の違い

日本とノルウェーの小規模漁村の現状を整理すると次のようになる。

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まず、漁業で生活が出来るかどうかが大きな違い。ノルウェーでは漁業で生活できるので、漁業への新規加入がある。ノルウェー政府は、都市部にある必要が無い政府機関をどんどん地方に移転しているそうである。問題が顕在化する前に、対策を講じているのだ。一方、日本の漁村には、漁業で生計が成り立たないし、漁業以外の雇用がない。漁村は縮小再生産どころか、限界集落化→消滅へとむかっている。日本の置かれている状況はノルウェーとは根本的に違う。

両国の政府の対応の違いも興味深い。ノルウェーでも、今の状態が何十年か続けば、漁村の活力が失われていくだろう。ノルウェー政府は、高齢化の悪影響が顕在化する前に、魅力的な雇用の創出という根本的な対策を打ち出した。雇用政策は一朝一夕で結果がでるものではないので、取り組むなら早いほうが良い。一方、日本は何十年も漁村に雇用が無い状態を放置したままだ。高齢化が進むのは、「厳しい仕事を嫌がる軟弱な若者が悪い」と責任転嫁をして、補助金で高齢漁業者を保護する対処療法を続けてきた。当然の結果として、超高齢化が進み、方向転換をする体力も残っていない。日本という国は、どうして構造的な問題に取り組むのがこうも苦手なのだろうか。

日本の小規模漁村が存続するには、普通に生活できるような水準まで、小規模漁業の生産性を改善するのが急務である。そうすれば、小規模漁業にも新しい人が参入できる。「漁業の生産性を上げるには、資源管理以外の選択肢は無い」というのがノルウェー人の共通認識である。日本も、ノルウェーを手本にして、資源管理を導入すべきである。漁業以外に魅力的な雇用をどう作るかを考えるのは、そこから先の課題だろう。「早くノルウェーに追いついて、共通する問題に対して,一緒に取り組めるようになると良いな」と思ったよ。

Kjerstiさんから、北部の小規模漁村地域のロフォーテンに来るようにお誘いを受けた。ノルウェーの小規模漁村をじっくりと見てこようと思う。タラの資源はものすごい豊富で、港から200mぐらい行った湾の中が漁場なんだって。でもって、釣り糸を垂らすと2秒ぐらいで、40cmぐらいのタラが入れ食いで獲れるそうだ。そりゃ、利益も出るだろう。いやはや、日本では信じられないような話なのだけど、実際にこの目で見てこようとおもう。

ノルウェー水産業の成長


ノルウェー漁業の成長に関する記事です。日本もやり方次第で水産業を成長産業にすることは可能です。

http://www.noraregiontrends.org/marineresources/marinenews/article/growth-in-norways-fishing-industry/87/

要約すると

  • ノルウェーの漁業は経済的に成長し、国のGDPを押し上げた
  • ノルウェー国内で漁業以上に成長している産業は無い
  • 漁業の生産金額は2004年の27bil.Nokから47bil.Nokに増加した
  • 漁業も養殖業も同じ割合で増加している
  • 2004年から、漁業の雇用は10%増えた
  • ノルウェーのGDPの増加の42.5%は、水産によるものである

この記事の元レポートはこれらしいが、ノルウェー語なので読めない(笑

http://www.fhf.no/nyheter/2014/may/0705-/ringvirkningsanalysen/

この記事の著者は、長いこと日本で活動されていたHans Petter Naesさんだ!

米国の持続的水産物普及の取り組み(環境NGOとスーパーマーケット)


前回は、政治主導の政策の変化が、米国漁業の成長をもたらしたことを紹介した。今回は、米国の消費者の側で起きている変化について紹介しよう。米国では、環境NGOが力をもっている。環境NGOは乱獲漁業を批判して、資源管理のスタンダードを高めてきた。日本の漁業も良くも悪くもその余波をかぶってきた。米国の海洋の環境NGOの中でも、消費者活動で成果をあげているのが、モントレーベイ水族館のSeafood Watchだ。

Seafood watchの歴史

カリフォルニア州のモントレーは、かつてはイワシの缶詰工場で栄えた町である。スタインベックの小説「缶詰横町」の舞台でもある。イワシの激減により、漁業が成り立たなくなったことで、観光都市へと変貌を遂げた。缶詰工場を改装し、当時の雰囲気を残しつつも、おしゃれなホテルやレストランが立ち並んでいる。環境観光都市モントレーの中心的な存在がモントレーベイ水族館だ。モントレーベイ水族館が行っている、持続的な水産物促進プログラムがSeafood Watchである。
モントレーベイ水族館では、入場者への教育の一環として、持続性の観点から食べて良い魚と、避けるべき魚のリストをつくり、レストランのテーブルに展示した。持続的な水産物のリストを持ち帰る客が多かったことから、潜在的な需要があると考えて、ポケットに入れられるような持続的な水産物のリストをつくって、1999年から無料で配布している。

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Seafood watchでは8人の研究者が、1)漁獲対象種の資源状態、2)混獲種の資源状態、3)資源管理の実効性、4)生態系・環境への影響の4つの観点から漁業の持続性を評価し、お勧め(緑)、悪くない(黄色)、避けるべき(赤)の3段階に分類している。漁業の持続性の評価は、専門的で、複雑なプロセスなのだけど、消費者にわかりやすく伝えるために、シンプルに表現を心がけているのだ。

最近は、iphoneアプリもあって、無料でダウンロードできます。
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こんな風にいろんな魚の持続性が一目瞭然です。
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現在は、102魚種がリストされている。一つの魚種でも米国の国内漁業だけで無く、輸入されてくる主要な魚種の評価も行っている。
日本の養殖ハマチは残念ながら、Avoidでした。非持続的な天然魚を餌に使っているのが問題なんだって。

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スーパーマーケットとの連携

Seafood Watchはリストを消費者に配布するだけでなく、レストランやスーパーマーケットと提携をして、持続的な水産物を消費者が選べるように工夫をしているらしい。実際に、スーパーマーケット(whole foods market)に視察に行きました。

ありました!! 鮮魚コーナーの下の方に、ちゃんと表示されていますよ!!

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鮮魚コーナーでは各製品には、エコラベルの有無が表示されていました。天然魚は、Seafood Watchの評価とMSCのエコラベルの有無が一目でわかります。養殖は持続的な養殖認証の有無が表示されています。

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より詳しく知りたいひとのために、情報冊子が棚の脇に並べられていました。でも、店員さんは余り詳しくないみたい。

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「欧米では持続性認証の無い魚は売りづらい」と聞いていたのですが、鮮魚コーナーには何の認証も無い魚もありました。「持続性に関心がある消費者はそういう製品を選べるし、そうで無い消費者は好きなものを買ってね」というスタンスのようです。これぐらいだったら、日本でもすぐに出来るんじゃ無いかな。こういう展示をすることで、「水産物にも持続的な物とそうでないものがあり、消費者は持続的な水産物を選ぶことで持続的漁業を応援できる」というメッセージが日々の買い物を通じて、消費者に伝わるのが良いと思いました。

消費者を巻き込んだ持続的水産物を応援する動きは、欧米では、1990年代から徐々に広まってきた。米国人の一人あたりの水産物消費量は日本の半分ぐらい。食事に占める水産物のウェイトはそれほど大きくない米国でこれだけの取り組みが出来ている。魚食民族と言いつつ、日本の小売りで水産物の持続性に関する情報を目にする機会は皆無と言って良い。魚をたくさん食べている日本人こそ、水産資源の持続性についてしっかりと考えて、責任ある行動をとる必要があります。この分野でも世界をリードしたいものです。

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政策の転換で、米国漁業は復活した。で、日本はどうするの?


青い空!! 青い海!!

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今年も、米国カリフォルニア州のモントレーで行われる持続的な水産物消費促進のためのイベント Cooking for solutionsに参加してきました。

持続的な水産物消費を力強く応援している米国のモントレー水族館では、毎年、Cooking for solutionsというイベントを開いている。消費者が持続的な水産物を選んで食べることで問題解決をしようというイベントだ。去年に引き続き、今年も、イベントに参加してきた。

日本で、「持続性」とか「消費者運動」とかいうと、気の滅入る話を勉強したうえで、「あれ駄目、これ駄目」とお説教されるような印象なんだけど、Cooking for Solutionsは、「持続的なシーフードを食べて、盛り上がろうぜ!」というノリで、カリフォルニアの日差しのごとく、明るく、楽しいお祭りなのです。詳しくはリンク先を見てください。

Cooking For Solutions

米国の漁業の現状

米国の漁業の現状について、整理してみよう。World Bankのレポートでは、「漁業は世界では成長産業なのに、日本漁業は一人負け」という結果になったのだが、米国漁業は今も成長をしている。リンク先は、米国の漁業の経済レポートだ。

Fisheries Economics of The U.S. 2012

2009年から、2012年までの商業漁業の経済動向をまとめたのがリンク先のこの図である。

commercial_impact_trends_2012

雇用、収入、売り上げ、利益のすべてにおいて着実に成長していることが見てとれる。これらすべての指標は日本では右肩下がりであり、日本の漁業とは対照的な状況にあるのだ。日本国内の御用学者が、どれだけ言葉でごまかそうとしても数字はごまかせない(だから彼らは数字を出さない)。

米国漁業も平坦な道で会ったわけでは無い。1960年代から、日本漁船によって米国周辺漁場が強度に利用されだした。1970年代に、EEZを設定して、日本船を追い出すことには成功した。それによって、1980年代に漁業が急成長した。しかし、自国の漁船の規制に失敗して、漁業は衰退を続けた。1991年に、北米屈指の好漁場のグランドバンクのタラ資源が乱獲によりほぼ消滅し、非持続的な漁獲が大きな社会問題になった。その後も米国の漁業は苦戦を続ける。早獲り競争を容認していたからだ。

ノルウェーやニュージーランドと違って、米国は漁業者の早獲り競争の抑制に消極的だった。米国は自由競争の国。既得権を特定の人間に与えるのでは無く、自由競争の勝者が権利をえるのが彼らの流儀である。だから、漁獲枠を既得権として、予め配分しておく個別漁獲枠制度に対しては心理的な抵抗があったのだ。アラスカの一部の漁業で、個別漁獲枠制度が導入されだすと、米国政府はITQモラトリアム宣言をして、ITQの広がりに政治的に歯止めをかけた。その結果、米国漁業はなかなか利益が出せずに苦戦が続いていた。

米国漁業は個別漁獲枠制度で生まれ変わった

2002年に、米国政府は失敗を認めて、ITQモラトリアムを撤回し、Catch Shareプログラム(ITQに近い漁獲制度)を主要な漁業に導入した。その後は、漁獲量はほぼ横ばいながら、付加価値が付く漁業に転換し、順調に生産金額を伸ばしている。

こちらのサイトから、米国の漁業に関する基礎的な統計を検索できる。1980-2012までの漁獲重量(青線)と漁獲金額(赤線)をグラフにすると次のようになる。1990年以降、米国の漁獲規制は年々強化されており、水産資源は回復傾向にあるのだが、厳しい規制によって、漁獲重量はやや減少している。魚がいなくなって漁獲量が減っている日本とは大きく違うのである。注目すべきは1990年代にはじり貧であった漁業生産金額が、ITQモラトリアムを撤廃した2002年以降に急上昇している点である。

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米国漁業の成長は、「早い者勝ちで魚を奪い合う漁業」から、「高品質な魚を安定供給して価値で勝負する漁業」へと転換したことによって実現した。この転換を可能にしたのが、米国政府による個別漁獲枠制度の導入なのだ。2002年以降、魚価(USD/metric ton)が上昇していることからも明らかである。

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漁業再生における政府の役割

米国で2002年以降に起こったことは、ノルウェーやニュージーランドで1980年代に起こったことと全く同じである。「公的機関による適切な規制が、漁業を成長産業にする」ということだ。適切な規制としては、次の2点が上げられる。

1)控えめの漁獲枠 → 水産資源を持続的に利用
2)早獲り競争の抑制 → 魚質の改善、コストの削減

米国は、もともと1)は出来ていたから、2)をやればすぐに利益が出たのである。日本の場合は、過剰な漁獲圧をどうするかというところから、取り組まないといけないので、ちょっと大変。だから、日本の関係者は「問題は無い」と言い張って、適切な処置をとらず、漁業を衰退させ続けている。

米国漁業の再生に果たした政府の役割について、経済学者のクルーグマンは次のように述べている。

ポール・クルーグマン「漁場再生:政府介入が役に立ちましてよ」

「気候変動と戦うのだって,漁場を救うのとそれほどかけはなれたことじゃない.やるべきとわかりきってることをちゃんとやりさえすれば,いまどんな人が予想してるのよりも,首尾よくかんたんにやれるんだ」というクルーグマン氏の指摘は正しいだろう。気候変動と乱獲に対する政策に違いがあるとすれば、気候変動を抑制するための政策はまだ確立されていないが、乱獲を抑制するための政策はとっくの昔に確立されて、多くの国ですでに実績を残している点であろう。

日本は変われるのか?

自由競争が大好きな米国ですら、漁獲枠の個別配分に踏み切らざるを得なかった。にもかかわらず、日本では、「親の仇と魚は見たらとれ」といったような、魚の奪い合いが今でも盛んである。日本の漁業関係者は、米国よりも自由競争が大好きなのだ。その結果、漁業が利益が出ない状況に陥ってしまっている。政府は、政策の誤りをただすこと無く、場当たり的に補助金を配ってごまかしてきた。

日本政府がイニシアチブをとって、漁業政策を転換すれば、漁業を成長産業に変えることは可能である。逆に、「漁師さんが困っているから、補助金を配りましょう」というこれまでの政策を続けるならば、日本の漁業は確実に衰退を続けるだろう。現在、日本政府は「日本再興戦略 Japan Is Back」をとりまとめている最中である。日本再興戦略に、「個別漁獲枠制度を導入し、漁業を成長戦略に転換する」という方針を盛り込むように、あらゆるルートを使って働きかけている。厳しい状況ではあるが、ここを逃すとさらに5年ぐらい先延ばしになってしまいそうなので、ベストをつくしている。初夏に出るといわれている日本再興戦略に、漁業管理が盛り込まれているかどうかに注目して欲しい。

資源管理ごっこと本物の資源管理の違い


資源管理ごっこ(日本のスケトウダラ漁業の場合)

スケトウダラにはいくつかの独立した産卵群(系群)があり、そのうちのひとつが日本海北部系群だ。この系群は北海道の日本海側に分布しており、沿岸漁業の延縄や、沖合底引き網によって利用されている。下の図は、青い線が資源量。赤い線が漁獲割合である。1997年から、国が漁獲枠を設定して資源管理していたのだが、1997年以降も資源が直線的に減少するに従って、漁獲割合はむしろ上がっている。ブレーキをかけるどころかアクセルを踏んでいるような状態だったのだ。この資源は過去には韓国が漁獲をしていたこともあるのだが、1999年以降は日本の漁獲のみ。つまり、国内漁業の規制に失敗して、自国の貴重な資源を潰してしまったのである。

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漁獲圧にブレーキがかからなかったのは、2つの理由がある。ひとつは、資源の減少に応じて管理目標が下方修正されたこと。二つ目は科学者の提言を無視した漁獲枠設定である。

日本のTAC制度の枠組みとしては、まず、科学者が資源評価をして、資源の持続性の観点から漁獲枠(Acceptable Biological Catch)を提言することになっている。そのABCを踏まえて、行政が実際の漁獲枠(Total Allowable Catch)を設定するのである。ABCを設定する際の管理目標は毎年のように下方修正されてきた。2008年には緩やかな回復を目指すと言うことで、どこまで減ってもその時点を基準に、漁獲枠が設定できるようになった。これでは資源の減少が下げ止まらないのも当然だろう。

2004 親魚量をBlimit 20.7万㌧へ回復
2005 親魚量をBlimit 14.0万㌧に維持(Blimit変更は資源評価の修正によるもの)
2006 親魚量をBlimit 18.1万㌧に10年で回復
2007 親魚量をBlimit 18.4万㌧に15年で回復
2008 親魚量の緩やかな回復(減った水準を基準に漁獲枠を設定)

ABC(科学者の勧告)よりもさらに問題が大きいのがTAC(国が設定した漁獲枠)である。ABCを遙かに上回るTACが設定され続けているのだ。持続性を無視した漁獲枠を設定し続けたのだから、資源の減少にブレーキがかかるはずが無いのである。2006年ぐらいまでは、多くの魚種でTACがABCを上回っていた。そのことをマスメディアを通じて徹底的に非難し続けたところ、スケトウダラ日本海北部系群以外はABCと等しいTACが設定されるようになった。

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では、この資源に未来が無いかというと、そうでは無い。下の図は、様々な管理シナリオの元での資源の動態だ。たとえば、緑の線(Frec10yr)は、かなり厳しい漁獲圧の削減をすると、10年で目標水準(Blimit)まで回復する可能性があることを示している。現状は赤の線(Fcurrent)である。資源が再生産できないような強い漁獲圧を、今もかけ続けているのである。つまり、乱獲を止めれば、資源は回復するのである。

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 資源管理(ニュージーランドのホキ漁業)

このような悲劇を二度と繰り返さないために、「資源が減ったときにどうやってブレーキをかけるのか?」について議論をすべきだろう。その前提として、他国の成功事例について学んでおく必要があるだろう。同じように卵の生き残りが悪くて、水産資源が減ったときにニュージーランド政府がどのような対応をしたかを紹介しよう。

ホキは、 タラに似た白身魚であり、ニュージーランドの主力漁業。フィレオフィッシュの原料として、世界中で利用されている。

この資源のレポートはここにある。1990年代後半から、卵の生き残りが悪く、資源が減少した。NZ政府はB0(漁獲が無い場合の資源量)の40%前後を管理目標(Target Zone)、20%B0をソフトリミット(回復措置発動の閾値)、10%B0をハードリミット(強い回復措置の閾値)としている。資源状態が良かった時期を基準に、目標水準とそれ以下には減らさないという閾値が事前に設定されているのである。

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1990年代は、資源量がターゲットを大きく上回っていたことから、25万㌧という多めの漁獲枠が設定されていた。2000年に資源量がターゲットゾーンに入ると、NZ政府は徐々に漁獲枠を削減した。ちょうどこのタイミングで卵の生き残りが悪い年が数年続いたために、資源は目標水準を下回って、減少を続けた。漁獲枠の削減を続けた。2007年には、資源回復の兆しが見えてきたことから、政府が12万㌧の漁獲枠を提示したが、業界は資源を素早く回復させるために更なる漁獲枠の削減を要求し、漁獲枠は9万㌧まで削減された。その後は、資源の回復を確認しながら、徐々に漁獲枠を増やしており、現在の漁獲枠は15万㌧まで回復している。 

ニュージーランド政府が設定したホキの漁獲枠(≒漁獲量) 単位㌧

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本物の資源管理と資源管理ごっこの見分け方

資源管理ごっこと本物の資源管理を見分けるには、資源量が減少したときに、漁獲にブレーキがかかったかどうかに着目すれば良い。スケトウダラ日本海北部系群とニュージーランドのホキは、同じように卵の生き残りが悪くなって資源が減少した。日本は産官学が連携して、過剰な漁獲枠を設定し続けて、資源を潰してしまった。どれだけ立派なことを言おうとも、資源が直線的に減少していく中で、漁獲圧にブレーキがかけられなかったという事実が、日本の漁業管理システムの破綻を物語っているのである。それとは対照的に、ニュージーランドでは資源の減少に応じて漁獲圧を大幅に削減して資源回復に結びつけた。

車にたとえると、ニュージーランド漁業は、ちゃんとしたブレーキがついている車。いざというときにはきちんと止まることができる。日本はブレーキっぽい物はついているけど、本物のブレーキがついていない車。いざというときに減速ないのだから、事故が起こるのもやむを得ないだろう。

日本の漁業を守るために我々がやるべきことは、きちんと資源管理をしている諸外国から謙虚に学び、魚が減ったときに漁獲にブレーキがかけられるような仕組みを導入することである。それをやろうとせずに、ブレーキっぽい物を本物のブレーキだと言い張っているから、進歩が無いのである。

6年ぶりに「資源管理のあり方検討会」が開催されております。でもって、俺が委員です。


前回の記事で紹介した会議は平成20年なので6年も前の話です。「資源管理のあり方検討会」というのが、今年の3月から開かれています。何の風の吹き回しか解らないのですが、水産庁から委員になって欲しいという依頼がありました。「資源管理をやることを前提に、前向きに議論をしたい」という話だったので、委員を引き受けました。

資源管理のあり方検討会 概要
水産資源の適切な保存管理は、国民に対する水産物の安定供給の確保や水産業の健全な発展の基盤となる極めて重要なものです。
しかし、かつて1千万トンを超える水準にあった我が国の漁業生産は、現在は500万トンを下回る水準となっています。こうした状況の中で、水産日本の復活を果たすためには、世界三大漁場と言われる恵まれた漁場環境を活かしながら、水産資源の適切な管理を通じて、水産資源の回復と漁業生産量の維持増大を実現することが喫緊の課題となっています。
このため、現在の水産資源の状況を踏まえ、資源管理施策について検証するとともに、今後の資源管理のあり方について幅広い意見を聞くため、本検討会を開催するものです。
なお、今回の会議資料及び議事録は、後日、農林水産省のホームページで公開します。

http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kanri/140314.html

1)日本の水産資源に問題は無いという現状認識

会議の最初に確認をしたのですが、水産庁サイドは「日本の水産資源は総じて良好」という認識だそうです。他の委員も、それに追従。おとぎ話の世界の住人と、仮想の世界の話をしているような不思議な感じでした。どこに行っても漁業は末期的な状況で、多くの漁村が消滅の危機に瀕しているのに、霞ヶ関に集まった有識者たちは、「日本型漁業のすばらしさを海外に発信しよう」と意気投合しているのです。もちろん、日本の漁業には固有の長所がたくさんあることに異論はないのですが、多くの漁村が消滅の危機に瀕している現状で、上に立つ人間がやるべきことは、日本の漁業が抱えている問題点を特定して、解決するための方策を探すことのはずです。

「日本の漁業はまずます上手くいっていて、大きな問題は無い」というところがスタート地点なので、委員会の存在意義が不明です。水産庁の言うように「日本の資源管理が成功している」なら、検討することなど無いはずです。会議の進むべき道筋がまるで見えないので、複数の委員から「この会議では、何のために、何を議論するのか」という質問が投げかけられたのですが、水産庁からも、議長からも、明確な答えは得られませんでした。

2)あり得ない会期の短さ

年あけて2月ぐらいに委員の打診がありました。委員会では、3月末から初めて6月中旬には結果をとりまとめる予定だそうです。前回の検討会から6年も塩漬けにしておいて、いきなり「3ヶ月で結論」ですよ? たった3ヶ月で3魚種の資源管理に関する議論をして、とりまとめをするのは、どう見てもスケジュール的に無理があります。

他の委員からも「なぜ6月までに急いで結論を出すのか」という質問がでました。それに対する水産庁の返答は、「今年の予算要求に間に合わせるため」だって。議論の内容よりも、むしろ、予算請求をするために議論をした実績が重要なのでしょう。最初は、「6月からクロマグロの産卵期なので、それまでに産卵場を守る計画をきめたいのかな」と、好意的に考えていたので、がっかりしました。

3)社会的関心の高まり

6年前の会議と、委員の人選もほぼ同じ。危機感の無さも同じ。ということで、あまり前向きな議論は期待できないでしょう。にもかかわらず、今回の会議では、大きな希望を感じました。6年前の会議とは一転して、大勢の傍聴が集まったのです。

この手の会議には業界紙の記者など、ごく少数の傍聴しか集まらないのが普通です。この会議もはじめは水産庁内の小さな会議室で行うはずだったのですが、傍聴希望者があまりに多かったために、農水省の講堂に会場が変更されました。傍聴は120名も集まったという話です。テレビ、一般紙、東スポといったマスメディアも、多数取材にきました。 「やっぱり、日本人は魚が好きで、これからも魚を食べ続けたいと思っているんだ」ということを再確認しました。

クロマグロやウナギの激減によって、水産資源の持続性への関心は高まっています。「水産庁が水産資源の減少を認めるはずがない」というのが漁業村の常識であり、水産庁の会議では資源が減っていないことを前提に議論をするというのが暗黙のルールみたいです。でも、それが漁業村の外部の人間の目にはどう映るか。私の知人はこのように感じたそうです。

勝川委員の最初の問題提起「現状をどうとらえるかという共通認識を持つ必要がある」ということにしごくもっともだと思いました。それがないと話は平行線のままですからね。それにしても、「資源はおおむね安定している」という水産庁の見解には愕然としました。資源評価をしている魚種だけでも40%が「低位」なのに、よくも「おおむね安定」などと言えるものです。聞いていて恥ずかしくなりました。
漁業者の9割が「魚は減っている」と答えたというアンケート結果に対する八木委員の発言もひどかったですね。「アンケートのやり方が悪い」で一蹴してしまいました。景気についてのアンケートの例を出していましたが、もし仮に国民の9割が景気回復を感じておらず、景気回復を感じているのが0.6%だったとして、それでも日本の景気は回復していると言い張るならば、それは指標が間違っているのだと思います。

下半分の部分について説明をすると、「農水省の調査では、漁業者の9割が水産資源は減少していると回答している。増加していると答えたのは0.6%。資源は総じて良好という水産庁の見解は、漁業の現場の感覚と乖離しているのではないか」と、俺が指摘をしたのです。俺の経験から言うと、漁師は本当に魚がいなくなるまで、水産資源の減少を認めません。また、減少を認めたとしても、漁業の責任だとは認めたがりません。そういうバイアスがかかったうえで、この結果です。

キャプチャ

 

それに対して水産庁OBの八木委員が、「アンケートのやり方が悪かったから、おかしな結果になったのだろう」と言って、次の話題に移ってしまいました。ちなみに、アンケートの設問はこんな感じ。どこが悪いのかサッパリわかりません。

キャプチャ

水産資源の持続性は、魚を獲る人だけの問題では無く、消費者の日常生活とも密接に関わってくる問題。一人でも多くの国民に関心を持ってもらいたいです。社会の関心が高まれば、それだけ漁業村の身内の理論は通用しなくなります。その意味では、第一回目の会議は成功と言えるのではないでしょうか。ということで、第二回会議の傍聴のお知らせです。

「第2回 資源管理のあり方検討会」の開催及び一般傍聴について

開催日時及び場所

日時:平成26年4月18日(金曜日)13時30分~16時30分(予定)
会場:農林水産省 本館 7階 講堂
所在地:東京都 千代田区 霞が関1-2-1

議題

  • 第1回検討会の結果等について
  • IQ・ITQ*に関するフリートーキング
  • スケトウダラ、マサバの資源管理について
  • その他

http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/kanri/140408.html

平成26年4月15日(火曜日)18時00分必着なので、まだ間に合います。水産資源に関心のある方は、傍聴してみてはいかがでしょうか?

日本は、なぜ乱獲を放置し続けるのか?水産庁の言い分を検証


当ブログでは、漁獲規制の不備によって、日本の漁業が衰退していることを繰り返し指摘してきた。多くの読者から、「なんで水産庁は規制をしないのか?」という疑問の声が上がっている。その疑問に対する水産庁の言い分を紹介しよう。

水産庁が資源管理をしない理由をまとめた背景

2007年に安倍内閣によって設置された内閣府の規制改革会議では、経済重視の観点から様々な規制が議論された。水産分野においては、無駄な規制を取り除くというよりも、漁業が産業として成り立つために必要な漁獲規制を要請する内容であった。

規制改革推進のための第3次答申-規制の集中改革プログラム-(平成20年7月2日)

詳しい内容は上のPDFのP60から先に書いてある。

水産業分野についても、農業・林業分野と同様、就業者数の減少や高齢化が進んでいる状況にあるが、それ以前に、水産資源の状態が極めて悪化しており、それ故、生産、加工、流通、販売、消費などあらゆる面の指標から見て悪循環(負のスパイラル)にも陥っている。
これによると、水産資源の減少に何ら歯止めがかかっておらず、我が国の水産資源の状況は危機的状況であると言っても過言ではない。このような状況にまで陥った要因は、我が国の資源管理の在り方にある。

(中略)

他方、海外の漁業国においては、科学的根拠に基づく資源管理を徹底し、また、漁業者においても科学的根拠に基づく漁獲を行うことで、資源回復に成功し、水産業の活性化・自立を実現した国が複数存在している。 我が国の水産業に必要なことは、有効な管理手段として何ら機能しないばかりか、更なる乱獲を促進している我が国の現行の漁業・資源の管理の仕組みを抜本的に改正することである。そのためには、海外の漁業国の成功事例を取入れ、科学的根拠に基づく資源管理を徹底することが必要であり、次のとおり、従来の資源・漁業管理手法の抜本的に改正し、漁業経営の競争環境の整備などを早期に講じるべきである。

これは閣議決定なので、水産庁としても無視はできない。ということで、水産庁は、「科学的根拠に基づく資源管理」について、検討しなければいけなくなった。

水産庁の言い分

水産庁は、「TAC制度等の検討に係る有識者懇談会」という会議を招集し、この議題を検討した。その結論(平成20年12月15日)がこれ。(リンク切れの場合はこちら

とても読みづらい文章なのだけど、要約すると、こんな感じ。

  1. 日本と海外では漁業の事情が違う
  2. 海外は漁獲能力の規制に失敗したので、公的機関による漁獲枠規制が必要になった
  3. 日本の水産資源は自主管理で適切に利用されている

つまり、「日本の漁業は業界の自主規制で適切に管理されているので、海外のような魚を巡る競争状態にはなっておらず、公的機関による規制は不要」と言うことだ。以下は、水産庁木實谷管理課長の説明の抜粋。

日本と海外は事情が違う

我が国のTAC制度導入の状況と、それから諸外国、これは後述いたします諸外国の状況とは基本的に事情が異なるということを認識しておく必要があるわけでございまして、このことについては前回のこの場におきまして、外国と事情が異なるということを明確に書くべきだというふうな御意見があったことも踏まえまして、このように整理をさせていただいております。

海外は漁業管理に失敗

諸外国におきましては、参入制限やそのトン数規制といった能力の調整が十分に行われていない中で、当該漁業における能力が向上して、努力量の増加が顕著になった。このような中で、資源の管理を図るためにいわゆるインプット、テクニカルコントロールが実施されるわけでございますけれども、漁獲能力の上昇に歯止めがかからない、また資源が悪くなったということでTAC制度が導入されたという経緯があるわけでございます。
しかしながら、導入以降もTACと漁獲能力との著しいアンバランスが生じている結果、競争が激化して、過剰投資ですとか、漁期の短縮が発生したということがOECDではまとめられているという状況にございます。

日本は問題がない

一方、我が国の漁獲可能量管理の状況でございますけれども、先ほど申し上げましたように、我が国の資源管理と申しますのは、漁業法等に基づきます隻数、トン数規制、インプットコントロール、さらにはテクニカルコントロールといういわゆるきめ細かい操業規制をベースとして行われているわけでございます。また、漁獲可能量につきましては、漁業種類ごと、また地域ごとに分割し、管理するというやり方が取られているわけで、さらに漁業者の自主的な協定に基づきまして、漁業者団体による漁獲可能量管理が行われている。ですから、いわゆるオリンピック方式とは大きく異なっているわけでございます。
次に、個別割当方式の具体的な方向性についてでございます。先ほど御説明申し上げましたように、TAC管理におきましては、大幅な漁期の短縮をもたらすようないわゆる漁獲競争は発生していないということを踏まえますと、外国のように個別割当方式を導入しなければならないような状況には至っていないということでございます。

水産庁の言い分を検証する

海外は漁業管理に失敗したのか?

「日本は漁獲努力量の管理に成功したが,他国は失敗した」と水産庁は主張しているが、漁船のトン数制限では水産資源を守ることが出来ないのは世界の常識である。漁船の漁獲能力は日進月歩だからだ。一昔前の船と、今の船では、同じトン数であっても、魚を獲る能力は桁違いなのだ。

漁具漁法の規制や、トン数の規制では、資源を守る上で十分な効果が得られない。この構造上の問題に直面した漁業先進国は、漁獲量に上限を設ける方式に移行した。テクノロジーの進化に対応できるように、規制も進化させたのである。その結果として、資源を回復させて、漁業が持続的に利益を伸ばしているのだから、資源管理に失敗したとは言わない。

日本の漁業調整は成功しているのか?

水産庁の言うように、日本の漁業がそれなりに上手くやっているなら、改革のための改革など不要である。しかし、日本の漁業は一人負けで、底が抜けたバケツのごとく公的資金を吸い込みつつ、漁村の限界集落化が進んでいる。

世界銀行レポート FISH TO 2030:世界の漁業は成長し、日本漁業のみが縮小する
予定通り、北海道日本海側のスケトウダラ資源が減少し、漁業が消滅の危機
資源回復計画が予想通り破たんして、青森県のイカナゴが禁漁となった

水産庁が胸を張る「トン数制限などのきめ細かい操業規制」の実態

日本では、実際の届け出よりもトン数を水増しして漁船を作るのが当たり前のように行われている。これは漁業の現場では周知の事実である。漁船の大きさの規制はあまり意味が無いのだが、それすらも守られていないのだ。

 

国土交通省:船舶トン数の適正化の実施

国土交通省は平成24年度、船舶のトン数が適正に維持されていることを確認するため、1,067隻の船舶について地方運輸局等の船舶測度官による立入検査を実施しました。その結果、漁船では25%の47隻、漁船以外の船舶では6%の56隻について、トン数が適正でないことを確認したため、これを是正し、トン数の適正化を図りました。

公的な規則すら守れていない現状で、自主管理に多くは期待できない。ある浜では、「みんな生活のために海区違反の違法操業をしている。自分たちの漁場には魚がいないから。獲り過ぎてしまったんだ」という話を聞いた。これが放置国家・日本の漁業の現実である。

「世界中で機能しなかった努力量規制が日本でだけ成功している」という水産庁の主張は事実ではない。他国の政府は従来の規制の限界を認めて、より実行力のある規制に移行した。それに対して、日本では、失敗を認めずに、「成功していることにしている」のである。

日本と海外は事情が違う

水産庁は「日本は状況が違う」、「日本には問題が無い」と言い張って、漁業先進国では30年前に解決積みの問題を放置したまま、今日に至っている。日本と海外の漁業の違いは、産業構造よりも、むしろ、公的機関の姿勢の差に起因する。問題を明らかにして、その解決に取り組んだ諸外国と、「問題は無い」と言い張って何もしていない日本の差が広がるのは当然である。

「都合が悪い事実は無いことにして、出来ていることにすればそれで良い」という態度は、漁業に限ったはなしでは無い。今も、この国の至る所で、同じことが繰り返されている。華々しい報道とは裏腹に、破滅的な敗戦へと突き進んだ太平洋戦争の大本営発表と同じ構図である。この構図を打破していかない限り、閉塞状況は打ち破れないだろう。

戦わなきゃ、現実と

長期的なトレンドと短期的なゆらぎ


今年は、全国的に大雪に見舞われたので、「地球温暖化はどうなったの?」と思った人も多いのでは無いでしょうか。大雪の影響で、今年の冬は寒かった印象があるのですが、データをみるとそうではないようです。今年1月の地球全体の気温は過去4番目の暖かさだったそうです。

一月の全球平均気温は1880年の記録開始から数えて一月としては過去4番目に暖かく、20世紀平均気温よりも暖かい気温はこれで連続347回、あとひと月で29年連続という情報がNOAAから発表されています

リンク先のNOAA(米国海洋大気庁)のサイトに飛んでみると、毎年1月の表面温度(陸上・海洋)の推移を示す図がありました。

201401
http://www.ncdc.noaa.gov/sotc/service/global/glob/201401.gif

海洋も、陸上も同様に、平均温度が上昇しているのは一目瞭然です。この図では、20世紀の平均温度がゼロになるように基準化しているのですが、平均よりも寒かった年(青)は20世紀前半に偏っており、1980年代以降はほぼ真っ赤です。

このように長期的なデータからは、明瞭な増加傾向を見て取ることができるのですが、上昇率は100年で1℃程度の緩やかなものです。毎年の変動と比べると、微々たるものであり、我々が体感するのは難しいでしょう。時系列データを10年ぐらい切り取ってみると、毎年の変動に隠れて、長期的な増加トレンドは見えなくなります。

シラスウナギの漁獲量も同じような構図があります。シラスウナギの漁獲は、長期的には明瞭な減少傾向があるのですが、数年だけ取り出してみると短期的な揺らぎの影響が大きくて、ランダムに見えてしまうのです。

シラスウナギの漁獲量は、日本にどの程度のシラスウナギが流れてくるかに依存します。シラスウナギ来遊量は次のようにモデル化して考えることが可能です。

日本へのシラスウナギ来遊量
= 産卵量 × 卵の生き残り率 × 日本に流れつく確率

産卵量は親魚の資源量に依存し、長期的なトレンドを持って緩やかに推移します。一方、卵の生き残り率 と日本に流れつく確率は、海流の配置によって毎年大きく変動します。漁獲の動向について論じるには、「産卵親魚の減少による長期的な減少傾向」と「海流の変化による短期的な揺らぎ」の両者を分けて考える必要があるのです。

シラスウナギの漁獲データから、長期的なトレンドを抜き出すために、単回帰をしてみます。Rのソースは以下の通り。漁獲量は対数をとってから統計処理をします。

#データ
catch<-c(73,48,42,57,47,45,29,31,27,20,20,25,24,22,20,23,24,18,13,20,14,12,11,27,16,14,19,17,15,9,21,9,9,13,6,9.5,9,5.2)
year<-1976:2013

#単回帰
plot(year,log(catch))
model<-lm(log(catch)~year)
new<-data.frame(x=seq(min(year),max(year),1))
B<-predict(model,new,se.fit=T,interval=”prediction”) #推定データの95%推定区間
lines(as.matrix(new),A$fit[,1])
lines(as.matrix(new),B$fit[,2],col=”blue”)
lines(as.matrix(new),B$fit[,3],col=”blue”)

単回帰の結果は有意であり(R2が0.78、p値が9.85e-14)、毎年5%程度の減少傾向があることがわかりました。

単回帰の結果を図示してみるとこんな感じになりました。白丸が実測データ、黒い実線が回帰直線、青い線が95%の予測区間(20年のうち19年は青の線の中に収まる)です。2014年の予測値は95%の予測区間周辺となりました。

キャプチャ

ここから言えることは

  • 有意な減少傾向がみられた
  • 減少率は毎年5%程度だった
  • 2014年は当たり年だが、短期的揺らぎの範囲内であった。

2014年程度の当たり年は過去にも何回かあったけれども、その後も資源の減少傾向は続きました。今回の場合も、資源が回復するような要因は特にないので、「海流の状態が良くて、たまたま当たり年だった」と考えるのが妥当でしょう。長期的な減少トレンドを見直すような状況ではないのです。

資源的に厳しい状況で、運良く当たり年が発生しました。この当たり年のシラスウナギを、「豊漁だ!!安くなる!!」と獲れるだけ獲るべきなのか。それとも、未来の種籾として、せめて例年よりも増えた分ぐらいは未来に残すべきなのか。筆者としては、後者であって欲しいと切に思うのです。

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from 18 Mar. 2009

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