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日本の捕鯨が海外から非難をされる仕組み

  • 2010-06-18 (金) 6:22
  • 日記

The Coveは、日本への宣戦布告です。好きか嫌いかはべつにして、こういうメッセージを突きつけられているという現実を、日本人は自覚しなくてはならない。The Coveの意味を理解するための資料として、日本が置かれている状況と、我々が取り得る選択肢を簡単にまとめておきます。できるだけ多くの人に、The Coveを見たうえで、今後の対応について冷静に考えてもらいたいものです。これは、太地町だけの問題ではなく、日本全体の問題ですよ。

これまでの捕鯨論争

今までの捕鯨論争は、良くも悪くも、閉じた世界での喧嘩でした。一般の関心はそれほど高くはない。閉じた世界で、捕鯨推進派と保護団体が、平行線の議論をしておりました。

The Coveという映画は、何を狙っているか

今回、保護団体は、The Coveという映画を作成しました。反捕鯨のプロパガンダ映画です。エンターテーメントとしても、良くできています。不可能に思われるミッションを、世界から集まったスペシャリストが協力して成し遂げるという王道ストーリー。血の海でのたうつイルカ、怒鳴る漁師という、インパクトのある画像を効果的につかって、見るものの感情に巧みに訴えかけます。日本をのぞく世界各国で上映され、おおむね好評を得ており、アカデミー賞をはじめとする、いくつかの賞もとりました。

The Coveのすごさは、明確でシンプルなメッセージと、エンターテーメントが、高いレベルで同居している点です。この2つの要素が両立するからこそ、信者を増やしながら、集金ができるのです。捕鯨推進派は、「この映画は、プロパガンダだ」とか、「保護団体の金儲けだ」と批判しているけれど、これらの批判は的外れも良いところでしょう。プロパガンダと、金儲けを両立させているところが、Coveのすごさなのです。映画という、一般受けするフォーマットで、商業ベースに乗せながら、布教活動をすることの影響力は計り知れない。

この映画を無視することの危険性

保護団体が映画を使って、世界中に、多数の信者を獲得しつつあるのですが、それに対する国内の対応はどうだったか。日本でも、若者を中心に、捕鯨に関心のない無党派層が増えており、この映画を日本に入れると、国内にも反捕鯨世論が飛び火する危険性があります。その危険性に気づいた一部の活動家は、活発に抗議行動をして、日本での上映を食い止めています。しかし、このインターネット時代に、情報を規制するのは極めて難しく、アマゾンでDVDを買えるし、YouTubeでも見られるのが現状です。抗議行動では、情報を規制できないどころか、見れないとなると、見たくなるのが大衆心理ということで、逆に注目を高めているような状況になっています。かくいう私も、抗議行動で関心を持って、アマゾンでThe CoveのDVDを買った一人です。今回、ニコニコ動画での配信がきまったのも、それも抗議行動の結果でしょう。

日本での抗議行動は、すでに海外メディアが大々的に報じています。
http://www.cbc.ca/arts/film/story/2010/06/17/cove-japan-protests.html
これらの報道は、日本は言論の自由のない野蛮な国という印象を植え付けると同時に、The Coveに対する関心を引き寄せる格好のネタになるので、保護団体の思うつぼですね。保護団体にしてみれば、自分たちが対話を訴えたのを、日本人が拒否したという形になるので、幾重にも好都合でしょう。こうして、日本人が鎖国・現実逃避をしている間に、反捕鯨の世論が世界中で固まっていく可能性が高いです。

我々はThe Coveに対抗できるのか?

捕鯨を存続させるために、我々はなにをすべきか。The Coveを研究して、これと逆のことをやる必要があります。世界の無党派層に対して、捕鯨の正当性を訴えるのです。

ただ、これは大変に困難なミッションです。伝統やら食文化やらを持ち出しても、海外の無党派層の共感がそれほど得られません。いくら美味しそうにイルカを食べても、血の海に勝るインパクトを持ちうるでしょうか。また、水産庁や日鯨研のような公的機関が、映画のような大衆娯楽的フォーマットで、広報活動を展開するのは難しいでしょう。日本の公的機関の広報力のお粗末さは、地下鉄の駅に張られている、公的機関のポスターを見ればわかります。

The Coveを見るならここがポイント

まず最初のポイントは、The Coveが無党派層に与えるインパクトです。The Coveを見た無党派層(国籍不定・捕鯨に何ら関心がない人間)が捕鯨にどのような印象をもつかを想像してください。それほどインパクトがないなら、無視してOK。逆に、無党派層が反捕鯨に強く傾くなら、対策を練らないといけない。(すでに世界で好意的に受け入れられているので、無視はできないと思われます)。

次のポイントは、この映画の印象を中和・逆転するような広報活動を、日本が展開できるかどうかです。海外の中立な立場の人間に、日本の捕鯨に好感をもってもらうような広報が出来るかどうかが勝負の分かれ目になります。「伝統」、「食文化」、「人種差別」と、日本国内で大声で叫んだところで、The Coveには対抗できません。すでに捕鯨に好意的な人間が集まって、内輪でThe Cove批判をして盛り上がっても、単なる自己満足です。

もし、このまま、情報規制をして、映画を無視し続ければ、反捕鯨の波は広がり、日本は孤立していくでしょう。1国が、世界の世論に反対した行動をとり続けるのは極めて困難です。そのことは、南アフリカのアパルトヘイト政策の末路をみれば、わかります。世界の一定割合以上を敵に回すのであれば、経済制裁その他の袋だたきに遭うことも、想定しておくべきです。我々日本人は、地域捕鯨と心中する覚悟があるのか。その覚悟がないなら、どのタイミングで、どうやって、撤退するかを考えないといけない。

まとめ

The Coveという映画を見た上で、ここで提示した2つの分岐点について、自分の頭で判断して欲しい。The Coveという映画を好きか、嫌いかではなく、このようなメッセージを突きつけられている国の人間として、どのように対応すべきかを冷静に考えてください。重要なポイントは、我々がどう思うかではなく、世界の人たちを説得できるかどうかです。ここであげた2つの分岐点について、The Coveを視聴した印象を、このページのコメント欄に書いてもらえると、議論の肥やしになるので、うれしいです。

保護団体の戦略については、前日のエントリーに私見を書きました。

Comments:14

坂東太郎 10-06-18 (金) 11:53

The Coveを視聴した感想ではありませんが、昨日の(現地時間16日)CNNの報道です。
http://edition.cnn.com/video/#/video/showbiz/2010/06/16/lah.japan.cove.blocked.cnn?iref=allsearch
こういった海外での報道のされかたも頭にいれて考える必要がありそうですね。
もちろん、外国人に理解されないから止めるべきだと言うつもりはありません。

勝川 10-06-18 (金) 13:15

情報をありがとうございます。
制作者からも、「これって中国?北朝鮮?」と言われてますね。
なんか、すごい勢いで墓穴を掘っているような感じがします。

>もちろん、外国人に理解されないから止めるべきだと言うつもりはありません。
海外の声にも耳を傾けながら、批判されづらい、突っ込みを入れられづらいような形で、
継続するのがベストだとおもいます。

大は小をのみ込む 10-06-21 (月) 8:51

映画観ました。内容(および非民主的な製作過程)に文句をつけるのは簡単だけど、真実もかなり含まれていると思いました。いっそのこと、日本はイルカ漁さらには捕鯨もやめてしまったほうがスッキリするんじゃないでしょうか。少なくとも、消費者は困らない。供給者には転職支援をしっかりやればいい。その財源は、御用学者や役人の研究費や、IWCの工作費用を充当しればいいじゃないですか。炭鉱を閉鎖したときの社会混乱よりも、はるかにインパクトは小さいでしょう。これ以上、「文化だ、産業だ、白人云々だ」と騒ぎ立てて、御用学者や役人に屁理屈をこねさせても、時間・資源・税金の無駄。彼らの肥やしになるだけで、漁師だって結局は迷惑するでしょう。原子力など、国の政策の根幹に関わる話とは、まったく別次元。

Shimajo 10-06-23 (水) 1:35

昨日のマリアナバラエティの記事で、パラオが日本の調査捕鯨不支持を公式に表明した、とありました。パラオは長年、捕鯨問題で日本の強力な支持国でした。

Palau officially conveys position on whaling to Japan
MONDAY, 21 JUNE 2010 14:30 BY BERNADETTE H. CARREON – FOR VARIETY
http://www.mvariety.com/2010062127658/local-news/palau-officially-conveys-position-on-whaling-to-japan.php

勝川 10-06-29 (火) 16:59

大は小をのみ込むさん
>映画観ました。内容(および非民主的な製作過程)に文句をつけるのは
>簡単だけど、真実もかなり含まれていると思いました。

耳を傾けるべき部分もあると思います。
無視すればよい、隠せばよい、追い出せばよいということで、
すべて無視してた結果ですね。
話を聞いた上で、落としどころを探っていく姿勢があれば、
だいぶん違ったことになっていたと思います。

Shimajo さん
情報をありがとうございます。
パラオの離脱については、国内メディアでは見かけません。
相変わらず、反捕鯨国非難で終わってしまうのかな。

therapist 10-07-22 (木) 10:25

私は伊豆でも行なわれているイルカ漁により捕獲されたイルカを
10年以上も前に伊豆の某湾内で見たことがあります。
一部のイルカは湾内へとダイブした水族館の方が好みのイルカを選び
生きたまま水族館まで輸送され、その後、殺戮の現場は耐え難いのでいなくなりましたが、
真っ赤に染まった湾内を見ました。
その時も写真撮影禁止のような。。ピリピリムードだったのを覚えています。

夕食のために入った近所のお店ではイルカの切り身がありましたが
イルカは癒しの存在だと思っているので、食べようとは思いませんでした。

昔から行なわれている漁業に対してよそ者の私が物を申す立場にはないと思っていましたし
マグロはいいのにイルカはダメというのも腑に落ちないという想いもありました。
魚のいない海の本を読み、日本の漁業の現状を知ってしまったら
日本が今後どうしていくのかを考えるためにもこの映画を観る必要があると感じました。
(現場を見ている私としては、映画は観ようとは思っていませんでした。。)
水産資源を守り、自然と人類が共生していくためにも。。。

PS:
微力ながら近い将来、珊瑚を回復させるお手伝いをしたく
「魚のいない海」のシンポジウムに参加しこちらのサイトの存在も知りました。
いろいろと参考になる事ばかりなのでまたお邪魔させて頂きます。

anonymous 10-07-22 (木) 23:42

在米の方が、昨年有料映画と抱き合わせで無料公開していたこの映画を見ました。その感想は・・・あの映像を撮られてしまったら、あとでどのような説明や改善を示してもイメージ回復は無理だろうと。したがいましてここから先はひかれ者の小唄に近いものがありますが・・・

1999年に伊豆のいるか操業で、出刃包丁持って頚部を切る漁師の姿が環境NGOに撮影され、大きな反響を呼びました。太地ではこれを他山の石として、食用処理方法の改善に取り組みました。その結果、一部の種類を除いて極めて洗練された方法が2000年から2001年にかけて定着しました。脊髄と脊椎周囲の血管を同時に破壊する方法です。生命中枢である脊髄の破壊と大出血は家畜の処理と同じ理屈です。実は伊豆の方法は当たらずとも遠からずだったのです。一般の方は食用動物がどう処理されるかなんて知りません。比較の対象を持ちません。ですから映画もきわめて情緒的な反応をすることでしょう。各種動物の処理法を見比べていただきたい。まあ、そんな方はあまりおられないでしょうが。余計なことですが昔から食肉処理する人たちは差別されていました。そのため、食肉センターの見学にはかなりの障壁がありました。立ち入り自由ではありません。

映画の画像が撮影されたのはおそらく2007年頃でしょうが、これは適用できなかった一部の種類で、アキレス腱でした。撮影クルーは改善された処理の画像も撮っていたはずですが、ボツにしたはずです。なお、現在は当初適用できなかった種類にも改善された方法が適用されています。この映画ではいるか、いるかというだけで種名にも触れません。後半の一般に衝撃を与える映像はスジイルカです。水族館で飼育しても2週間しか生存しないのでRicが憐れむハンドウイルカとは別種です。この映画は、生物としての鯨類に関心がない人たちが製作した映画だということがよくわかると思います。

なお、映画では年間2万3千頭の鯨類が殺されていると言っていますがかなり古い統計を意図的に挙げています。現在では1万前後です。

勝負あった・・・ということなのかもしれませんが、虚しさを禁じえません。鯨類を資源として利用することを否定する立場のああした人たちと、漁業サイドでは話がかみ合うことはありませんので。処理方法を改善したとしても鯨類の利用を認めない人には何の効果も与えないかもしれません。

社会全体として鯨類との付き合い方を考え、決めるのであれば、法令やら科学やらはその実現に寄与できると思います。

映画には意図的あるいは意図せずの誤りが溢れていますが、ご覧になる方は眉につばをつけて検証することをお勧めします。下らぬことばかり述べましたが、あの漁業に近いところにいる者として声を上げたかっただけです。失礼しました。

therapist 10-07-23 (金) 9:18

anonymousさん

あの漁業に近いanonymousさんの情報を知ることができ、またお勉強になりました。
一般の人が何も知らずに映画を観ればイルカ漁に対する答えは。。。決まってしまうと思います。
だから私も映画を観なかったのかもしれません。
それは無意識にイルカ漁をしている方の背景も何か感じたからなのかもしれません。

ダイバーの私としてはイルカは大好きでかわいい存在ですが
だからといってイルカ漁をしている方を責める気にもなれないです。
どちらが良い悪いという話でもないと思うので。

イルカも含めた水産資源を絶滅させないように
私達がこれからどうしていけば良いのかを考え
その枠の範囲内で生命を頂きながら、共生していけるといいのですが。。。

anonymousさん、ありがとうございました。

勝川 10-08-10 (火) 14:41

anonymousさん

いろいろとご苦労をされたことと思います。

>鯨類を資源として利用することを否定する立場のああした人たちと、
>漁業サイドでは話がかみ合うことはありませんので。

イルカ原理主義者を説得するのは無理だし、その必要も無いでしょう。
節度を持って、持続的に利用することに理解がある人が大半でしょう。
利害に絡んでいない人たちに、どちらの陣営が強くアピールできるか、
ということだとおもうのです。

中立な人間へのインパクトという面では、今回の映画は技ありでした。

>処理方法を改善したとしても鯨類の利用を認めない人には
>何の効果も与えないかもしれません。

牛や豚と同じように苦痛を与えていないということは、
大勢の人間にとっては大きな意味を持ちます。
問題は、その情報が外部に全く知られていない点でしょう。

>映画には意図的あるいは意図せずの誤りが溢れていますが、
>ご覧になる方は眉につばをつけて検証することをお勧めします。

そういう部分は、ちゃんと指摘した方が良いと思います。
公的な立場にあるところがとりまとめて、
インターネットに公開をすると、良いと思います。
また、英語版もあると、海外の人間と論争をする際の
手助けになると思います。

therapistさん

>ダイバーの私としてはイルカは大好きでかわいい存在ですが
>だからといってイルカ漁をしている方を責める気にもなれないです。
>どちらが良い悪いという話でもないと思うので。

白黒つける必要はありません。
むしろ、異なる価値観の人間が共存できる道を考えましょう。

それには、両者の視点を持った人間が必要です。
ダイバーの視点から、どのように改善すれば、
イルカ漁がより受け入れやすくなるかを教えていただけると、
今後の参考になると思います。

匿名甘えヒト 10-08-16 (月) 0:59

イマイチ見る気のない映画でしたが、このコメントの多さ。
興味を覚えました。入手しょっ♪

イルカ肉は、学生の頃に食したことがあります。
スーパーでぶつ切りを売っていたので、初めて見た好奇心から
買って、炒めて食べました。
正直、旨くなかったですね。
臭かったな。
伝統的な調理方法でもあるのでしょうか?
食品としてはイマイチな印象を持っています。

命をいただかなければ生きていけないのだから、
イルカだろうが、鯨だろうが、牛だろうが、犬だろうが、
魚でも、米でも、大豆でも、
ありがたくちょうだいすることに、躊躇を覚えることはありません。
むしろ、これは可愛いからダメ、あれは食べるためのだからOK
とする心情には理解しがたいものを感じます。
デビッド・ブリンの知性化シリーズでも、
いち早く知性化されたのがイルカだから、
思い入れは、全く違うのは分かりますがね。。。
・・・でも、遊びで動物を殺すのはアリなのかな?
   ディアハントなんか、そんな感じでしょ?
   これって、私の勘違い?・・・

ところで、
環境保護団体のもっとも大きな収入源は、現在は、鯨類系なのだと思いますが、
もし、
どなたかのカキコのように「イルカも鯨も獲るの止めちゃえばいいじゃん」
となったとき、次の標的はドコに向かうのでしょうか?
外交下手は、幕末からずっと変わらない日本だから、
良い標的になり続ける気がするのは、私だけでしょうか?

自然の恵みをそのまま享受している産業の一つとしての漁業が、
それを「適当」に利用している状況って、超ヤバイって、思います。
イルカのように感情的ではないだけ(ちゃんと管理してないじゃん、ってトコロで)
言い訳もきかないしね。

勝川 10-08-16 (月) 14:49

匿名甘えヒトさん

是非見てください。できれば、感想もお願いします。

私もクジラは食べ物で良いと思うのですが、
そうは思わない人達への配慮も必要でしょう。
出来る部分では妥協をして、保護団体と折り合いを付けていかないと、
今後も厳しい状況に追い込まれます。

>環境保護団体のもっとも大きな収入源は、現在は、鯨類系なのだと思いますが、

自分の懐を痛めてでも、捕鯨を止めて欲しいと思っている人が、
世界中にいるということですから、メッセージを真摯に受け止める必要があるでしょう。
日本鯨類研究所の大きな収入源は、補助金ですから、そっちの方が非民主的かと。

>外交下手は、幕末からずっと変わらない日本だから、
>良い標的になり続ける気がするのは、私だけでしょうか?

日本は、外交下手ではなく、むしろしたたかだと思います。
クジラを隠れ蓑にしながら、大西洋クロマグロを、
ほぼ壊滅まで食べ尽くした政治力は大したものです。

日本が叩かれているのは、
したたかに、無責任漁業を続けているからだと思います。

>自然の恵みをそのまま享受している産業の一つとしての漁業が、
>それを「適当」に利用している状況って、超ヤバイって、思います。

そう、そこなのですよ。
日本漁業は、持続性に対する責任を果たしていない。
それどころか、漁業者は乱獲を当然の権利だと思っていることが大問題。

匿名甘えヒト 10-08-25 (水) 1:39

The COVE を見てきました,映画館で。
パンフも買っちゃったw

映画の背景が,「スパイ物」か「戦争アクション・特殊部隊編」みたいな感じでした。太地は,「悪の巣窟」「敵ゲリラ基地」。町全体が悪意に満ちた犯罪行為を行っている。警察もやくざも仲間,一般人も敵。見つかればただではすまない・・・しかし,危険を犯してまでも潜入するのは正義のため!!!
あるいは,アウシュビッツ的な印象をなのか???
いずれにせよ,ドキュメンタリーとしては,その偏見に満ちた背景作りに,違和感を覚えました。それとも,三文映画にはありがちな「意図的」な設定か?。
・・・彼らは「偏見」を意図していない可能性の方がむしろ高いのではないか,と考えると,その方が空恐ろしくなります。・・・

それは,それとして,映画としてはよくできていたと思います。
主人公のおっさんは,「フリッパー」を育て上げ,イルカを「商品」にした先駆者。それが,イルカと接しているうちにイルカの知性を感じるようになり,そのイルカの死(自らの腕の中で息を引き取り,沈んでいく)のをきっかけに(おっさんは,ストレスによるイルカの自殺と感じた),自らの冒した罪に気付き,イルカを守ろうと決意し,実行するようになる。
そして,太地で行われている「悪行」,イルカに対する「非人道的な犯罪」を世界し知らしめる事によって,世界中のイルカ達を救おうとする,,,自らの危険を顧みず。。。
ヒューマニティー溢れる内容です。
入り江で行われた「イルカの惨殺」。ショッキングに写されてます。
それを撮られまいとする太地の住人は明らかに「悪」として感じられます。

「私は彼(住人)を殴りたくなった。しかし,それでは,彼らの思うつぼだ。彼らは我々が逮捕されるきっかけが欲しいのだ」「日本における拘留期間は28日。その間には合法的に拷問ができる」「平和的な抗議行動(サーフボードに乗って,網の周りでデモ)を強制排除された人々は二度と太地には来られない」「イルカに対する残虐行為は一般の日本人にさえ知らされていない」「イルカの水銀問題も隠されている(水銀問題とイルカ惨殺問題は別物だと思うけど)」「マスコミ操作によって」「(国家が?)組織的に隠蔽している」・・・等々・・・
隠蔽と嘘。金でIWCを操作する日本(日本だけかな?っと,ツッコミを入れたくなるw)。IWCは機能していないとの怒り(これは別の意味でアリかな)。
・・・ってか,日本って,どんな国なの???・・・

太地で行われている「密室の惨殺」に対して,これでもか,これでもか,と迫り(独善的だけれども,「映画」としてなら見てられるのが妙に上手い),最後に見せられるのが,真っ赤に染まった入り江です。
これは,インパクト,あります。

それから,日本のIWC担当官や取材に応じた研究者は,なにやら怪しげな(真実を隠している)人物のように映されていると感じたのは私だけでしょうか?
「惨殺」の映像を見せられた研究者が,「いつ,ドコで撮ったのですか?」と尋ねたとたんに映像が切られるし・・・ヒトの話は最期まで聴きましょうって習わなかったのね・・・

パンフに書かれている監督のインタビューの一節です。
「前略・・・一見イルカやクジラへの敬意と愛に満ちあふれているように見えるが,秘密の入り江で起こっていることがそれは偽りだと教えてくれる。・・・攻略」
太地町には,いたる所にイルカやクジラをモチーフにした絵や看板,像などがありました。鎮魂碑も。彼はそれを「偽り」と断定しています。
・・・ここらへんに,日本人と彼らとの間隔のズレを感じさせられます。
日本では,多くの漁港に鎮魂碑(魚魂碑)があり,祭られています。
太地も同じでしょう。
太地の人達はイルカやクジラに「生かされている」と感じ,
素直に感謝しているのだと,私は思います。
しかし,彼はそれを「偽り」と断定します。・・・

私自身は,「イルカの惨殺」を見ても,何の痛痒も感じませんでした。だって,それは,「漁」だから。漁師は真面目に漁業を行っているのです。遊び半分でしているわけではないのですから。

しかし,生き物の死を見たことがなく,マックやケンタで飽食している人達が見たらどう感じるでしょうか? 食品としての肉や切り身の魚,それしか知らないヒト達です。
おそらく,小中学校の道徳の時間にこれを子供達に見せることができたら,「彼らの勝利」はより確実なものになる,という印象を強く受けました。
そういう意味で,危険な映画だと感じました。
一方的なメッセージですが,強力です。

この映画に対して,どのように接したら良いのでしょう?
無視をする?
しかし,「純真無垢」な子供や大人が見たら,どんな心証をもつでしょうか?
やはり,日本の関係者は,真正面から当たっていくしかないでしょうね。
イルカ漁を何故するのか,何故必要なのか。
クジラ漁を何故するのか,何故必要なのか。
データを示し,論理的に。
・・・その前に,鯨類以外の,ずさんな資源管理の部分をクリヤしないと説得力を持たないかも(汗)・・・

彼らに対して,日本人の理屈は通用しません。彼らには彼らの正義があって,それは誰にも犯すことのできない(ゆるされない)彼らの全てだからです。
・・・だから,戦争がなくなんないんだょな,他人を理解しようとしないから・・・

それでも,日本人の「正論」を主張すべきでしょう。
特に,国内に対して。
でないと,子供達からNGを突きつけられるようになります。

<余談>

このスタッフが冷静に,「食される生命」について真剣に取り組んでくれたら,どうでしょう?
屠殺場で殺される牛や豚。工場生産物のように肉にされていくブロイラー。ミルクが出なくなった乳牛や走れなくなったサラブレッドの行く末。
「命をいただく」ことを考えるには,そんな事実も知らしめて欲しいものです。

しかし,彼らは,それをしない,ってか,思いもよらないでしょうね(ココは私の偏見かな?)。
なぜならば,イルカやクジラは知性のある可愛い,特別な生き物だから。
他の「家畜」なんかとは違うのです。
・・・こうやって,人種差別もされるんだろうな・・・

もうひとつ。
個体数が少なくなっているにもかかわらず,認められている生存捕鯨,イヌイットの北極クジラの取材も,このチームでしないのかな???
これは,彼らにとって許容されるのか? されないのか?
それを判断した理由は?
興味深いところです。

長文になって申し訳ありまあせん。
それでも書き足りない気がするのは,やはり,印象強かったせいでしょう。

元:無関心よりの肯定派衝撃的・目を覚まさせられる作品 14-10-13 (月) 23:52

公開されてからだいぶ時間はたっていますが、
THE COVEのDVDを見ました。

図書館でDVDを見つけたので、
最近になって表明されていた
ケネディ大使のイルカ漁批判のコメントもあり、
事実を知らなかったこともあったので、
これは日本人として、
環境やオーガニック製品に携わる仕事をしている者として
見るべきだ、と思い、視聴しました。

●見る前:無関心よりの肯定派
イルカ漁に反対する意見を聞いたり、シーシェパードに対する
ニュースを聞いても、「なぜ他国の食文化に対する批判をするのか」
「牛や豚はいいのに?なぜイルカは特別なのか?」
どうして人の生命に関わる戦争でビジネスをしているような国々が
イルカ漁のことをそんなに大きく捉えるのか

と、イルカ漁に関しては、
「無関心よりの肯定派」だったと思います。

これは・・・
とても衝撃的で、見る前と見た後では、
イルカ漁に対する考え方が全く変わりました。

ただ、とてもよくできた映画で、
イルカのとても美しい映像が映され、
日本をターゲットとした批判には感じません。

目的のメッセージがとても明確で、
純粋に、「多くのイルカを救いたい」という
一心で動いていることなのだと思います。

日本人として、「これは日本を標的にした映画だ」と
構えて見るのではなく、どちらの意見も受け入れるような気持ちで、
一つのドキュメンタリーとして、
海外からどのように見られているのか、
日本の魚の乱獲の状況や、食卓について論理的に考えながら
見て、考えて、行動すべき映画だと思い、
これは「日本人として必聴の映画」だと思います。

確かに、はじめに見ているときは、
「なぜイルカ漁を批判し、ひどい環境で
育てられ、ホルモン注射をされて育てられている牛などに
ついては何も言わないのか」「戦争ビジネスのほうがやばいよ」など、
題目をすりかえたくなり、隣で一緒に
見ていたアメリカ人の夫に、文句を言ったり、
アメリカ的視点の、
「イルカ」は知性もあり、特別で、
人間にも近い動物であり、その特別な動物を
残虐な方法で殺すのは間違っている
という欧米人の感覚とは理解できず、
口論になりそうになりましたが、
ストップして見続けていたところ、

その漁の方法や、イルカ肉も食べていないのに、
殺し続けることに何の意味があるのだろうと思いました。
せめて、水族館に売られるイルカ以外は、放してあげても
いいのではないでしょうか。

イルカが特別な動物だから、ということではなく、
「必要のない殺生」に対しての憤りを感じました。

「いただきます」と命をいただくことに感謝をする、
日本の食文化ですが、その漁の仕方などにも、
まったく、「命」に対する「感謝」や「敬意」は
みることができず、これを「日本の伝統の食文化だ」というのは、
誤解を招くことになり、無形世界遺産に登録された
「和食」自体のイメージも下げることになりかねません。

夫も私も、日本の食文化も大好きで、
夫も日本が大好きですが、
だからこそ、そんな国がイメージを損ない、
一部の人の利益のためだけに行われるイルカ漁に対して
とても悲しく、虚しい気持ちと、強い憤りの気持ちを持ちました。

日本ではあまり理解しがたいことですが、
海外の反応をきちんと受け止め、
その必要性については再度検討する必要があり、
そうでなければ私たち日本人は
海に囲まれた島国にいる私たちは乱獲により、
魚がいなくなった海で、生態系は崩れ、異常気象は頻発し、
自らの首をしめていくことになりえないのではないかと、
とても不安に思います。

単なる「標的とされた批判」のように受け止めるにではなく、
もう一度、本当に必要なのか。今後の海洋性の生態系や、
日本の将来の食料事情も見据えた上で、この「害獣駆除」は
必要なのでしょうか・・・・
漁師の方々はこれを仕事にされているといっても、
自らの首を占めてしまえば、今後仕事を失い、
今後の日本全体の食生活すら
危うくなってしまいます。。。

これらは映画を見た一市民の意見ですが、
確かにイルカを食べるのと、牛や豚、鳥を食べることに
何の違いがあるのか?人様の食料事情に口をつっこむな!というような
はじめから否定的な視点で事実を知ることを拒むことでは、
ただこの生態系を破壊している状況を黙って見ているだけで、
むしろ拍車をかけていることになっているのでしょう。

批判をしている人でも、まずは「意見を聞く」聞いてみて、
それでどう考えるのか、どう動くのかが問題だと思います。

また、海外からは、「非人道的」と思われ、
イルカの「ジェノサイド」と呼ばれているようなイメージを
与えていることは事実で、そのことについては
真摯に受け止め、この食料供給過多の時代、
何をすべきで、何を変えるべきかを今一度考えるべきだと思いました。

また、
こんな事実を隠蔽しているメディアに対しても
とても衝撃を受け、イルカ漁ですらこのような映像は絶対に
流さないのに、福島や原発事故の事実は、とんでもないことが、
想像を絶する秘密が保持されているのではないかと、
とても恐ろしくなりました。

2010年の映画ですが、「秘密保護法」や、
「原発事故」の後に隠されてる秘密の大きさについては
想像しがたく、また今一度見る必要のある映画で、
日本の限定されたメディアの姿勢に危機感をおぼえ、
自ら必要な情報を得て、家族や自分、周りの人の身を
守るために行動するために、「目を覚まさせる」映画であり、

イルカ漁のことだけでなく、
現在日本が抱えている闇の部分について
深く考えさせられる映画でした。

めんどり 15-03-14 (土) 23:56

>元:無関心よりの肯定派衝撃的・目を覚まさせられる作品

自分で害獣駆除だと言っているのになぜ水族館に送る分以外を放すだとか、必要性のない殺生などと言うのでしょうか・・・
放置すれば魚を食べられ網を破られるから駆除して、食べられるところは食べる。それだけです。
生態系を破壊している!と言っていますが、魚だけを獲ってイルカを獲らなかったらそれこそ捕食者の数だけが増えて生態系が破壊されることになるでしょう

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映画「ザ・コーブ(The Cove)」について

和歌山県太地でのイルカ猟を一方的に批判するドキュメンタリー映画「ザ・コーブ(The Cove)」が一部で物議を醸している。

Home > 日記 > 日本の捕鯨が海外から非難をされる仕組み

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from 18 Mar. 2009

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