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だから、自主管理は機能しないのだ

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法的な強制力がない中で、漁業者が自主的に管理をするのはとても難しい。
最大の難所は、資源管理に消極的な漁業者の説得作業だろう。
資源管理に消極的な漁業者がどこにだって居る。
というか、日本の漁業者の大半は消極的だ。
全員の合意を取り付けようと思うと、管理のハードルを下げるしかない。
そのグループの有力な漁業者が管理に消極的だったりすると、
「やってもやらなくても同じ」レベルのことしかできない。
本当に漁獲圧の削減に繋がるような措置をとろうとすると、
確実に短期的な収益減を我慢できるごく一部の合意しか得られない。

自主管理では、「参加率」と「管理措置の実効的」はトレードオフの関係にあり、
どちらかを犠牲にせざるを得ないのが実情である。

①全員参加で形式的な資源管理ごっこをやる。
②一部の漁業者が手弁当で厳しい措置をとる。

①に効果が無いのは自明だが、実は②にも効果はない。
現在の漁船の漁獲能力を持ってすれば、
少数の漁業者が違反をするだけで、管理効果はほとんど無くなる。
有志が獲り残しても、他の漁業者が獲ってしまうのだ。
「やらないよりはマシ」という程度の効果しか期待できない。
後に残るのは、不公平感のみだろう。

資源管理は交通ルールのようなものである。
意識の高いドライバーのみが自主的に制限速度を守っても事故は減らない。
全てのドライバーが強制的に守るべき交通ルールが必要である。
「法定速度300Km」のような無意味なルールでも駄目だし、
ルールを守りたい人だけ守ればよいという自由参加でも駄目なのだ。

自主管理が機能しない原因は、実効性と強制力の欠如である。

Comments:12

K 07-10-06 (土) 11:36

勝川さんは漁業管理は法的拘束力を持って厳罰にすることで守らせようということなのです。

私は勝川さんの仰る日本の現状のABCが機能していないことも、ダービーよりはITQのほうがマシなことも分かっているつもりですが、どのようにしてそれを実現させるのかが、一番疑問だったわけです。

北欧の場合、漁業者相互の監視がうまく行っています。日本の村意識のはびこる中ではそれもあまり期待できません。

(質問1)総漁獲量制限が遵守されているか?のチェック方法に関してはどのような仕組みを想定されているのでしょうか?

また、日本の沿岸漁業対象種はスルメイカにしてもマサバにしても、ズワイガニにしても韓国や中国、ロシアと共同利用している資源です。
(質問2)そういった他国側での管理においても、法制度によって管理方策を遵守させられるとお考えでしょうか?

そのあたりのご意見も聞かせていただけたら幸いです。

私は、漁業者に監視がなくても(またはきわめて少なくとも)漁業者自らが資源管理に参加する動機の薄い手法はどれだけ優れていても実効性がないと思います。
総漁獲量制限はそういう意味で監視に穴があり、実効性は薄いと思います。
努力量制限、特に出漁日数制限は、漁港の監視による管理がしやすいため、管理がよりしやすいであろうと思います。
それでも、動機付けは強いとはいえません。
投棄を禁じた総漁獲数制限は動機付けの点ではすぐれているでしょう。しかし、これも監視にかかるコスト、特に投棄を行わせないための仕組みがありません。

当然のことながら、ここでこのように申していても仕方がありませんよね。ただ、実験的な管理に協力してもらえる漁協も少ないですし、他魚種・他地方で比較しても管理手法の影響のみをクリアに示せないでしょう。
具体的に比較する手法を考慮中です。日本の漁業が潰れる前に示すつもりです。

匿名で甘えさせてもらっているヒト 07-10-06 (土) 23:15

K氏へ

>漁業者自らが資源管理に参加する動機
>村意識のはびこる

少し、現場の感覚というか、認識がずれてはいませんか?
動機云々なんて・・・
それから、村意識が管理の弊害になっているわけでは無いと思いますけどねぇ・・・マイナスの場合は村意識はとことんマイナスに働きますが、プラスに働くと、それはもぅ♪

漁師の本質とは、狩人なのです。
同じ収入を得るにしても、2000円/kgで50トン獲るよりも、1000円/kgで100トン獲るほうを選ぶのです。
したがって、
基本的には、「資源管理」をする気はありません・・・管理=我慢の場合は。
動機もへったくれも、ないっスょ。

氏が前にこのブログで示していた管理成功例の条件が、「1.資源の壊滅を経験している。2.漁業者の中に強力なリーダーシップをとれるヒトがいる。3.直言できる地元研究者がいる。」だったかに記憶しています。
もうひとつあるとすれば、豊かな資源に恵まれている。。。ですね。

失うべき豊かさがあり、一人でも「裏切り者」が出るとそれを失う怖さを知っていて、そのために目を光らせるリーダーがいる。
信頼できる研究者の言葉に耳を傾けるのは、最も効率の良い方法(儲け方)を知りたいがためです。
でも、
そのような条件を持った浜は極めて少ないと思います・・・私は1例(1魚種)しか知らないなぁ・・・。
だから、浜に行ったときには、少しずつでも、若手や中堅の意識が変わるように、話をしているわけです。

氏は法律等で厳罰化すれば・・・とは、「まだ」言っていないと思いますけれど・・・もっとも、厳罰化したところで、状況は変わらないですょ。

>実験的な管理に協力してもらえる漁協も少ないですし、

すごいっすね・・・少ないってコトは、知っている組合の中には協力してくれるところがあるんですね!・・・コレをアゲアシ取りというのかな?・・・
たとえ、協力してくれる漁協がひとつでもいいじゃないですか、実験してみてください。
結果、楽しみにしています♪

しまったなぁ・・・K氏の話は「見物」しているつもりだったのに・・・酔っ払いの戯言でした(乙)。

勝川 07-10-06 (土) 23:30

Kさん:
http://kaiseki.ori.u-tokyo.ac.jp/~katukawa/blog/2007/09/tac.html
は無視ですか?
あなたのコメントに、わざわざ反論を書いたのだから、ちゃんと答えてください。
まともな反論ができないんだったら、「生半可な知識で、いい加減なつっこみを入れてしまいました。ごめんなさい」と認めるべきです。
それが議論をする上での最低限のマナーですよ。
風向きが悪くなったからといって、
別のエントリーで新しく質問をして話を逸らそうとしないでくださいね。

確認のため、論点を箇条書きしておきます。

1)
K:漁業者がTACを信用せずに自己制限を加え、自己管理をしている事例がたくさんある。
勝:沢山って、具体的にどれ?
K:ズワイ(北海道日本海、太平洋)サンマ、するめ
勝:ズワイは規模が小さいので漁業者間の協定はあるだろうが、
  それが管理として機能するかは疑問
  サンマは単なる出荷調整で、少なくなったらABCを越えて獲るだろう
  値段が付かないからスルメを獲らないのは管理ではない。

  あ)「たくさんの事例=2つのローカルなズワイ資源」という理解でよいか
  い)これらの漁業は、自然変動などで資源状態が悪化したら漁獲量を削減できるのか?

2)
K:TAC自体が必要ない種にTACを当てはめて居るケースがあり、
  それでもってTACではうまく行かないと言われても、説得力が少ない
勝:
  あ)俺が例外をとりあげてTAC制度を非難しているだけで、
    TAC制度は全体として上手くいっているという理解でよいか?
  い)だとすると、前後の発言内容と矛盾はしないか?
  う)TAC自体が必要ない種を具体的に示してください
  え)俺がその種を取り上げて、
    TAC制度を非難している箇所を具体的に示してください
  お)本ブログで良く取り上げるマイワシやサバは、
    tacがそもそも本来不要だから、管理が上手くいっていないのでしょうか

3)
K:ノルウェーの成功例も、ノルウェーの漁業の中の極一部の例ですよね?
勝:日本の国内資源管理の話をしているのだから、
  国際漁業の例を出すのは、論旨のすり替えである。
  ノルウェーの国内漁業で、日本のマサバのような乱獲をしているものはない。

  あ)ノルウェーの国内漁業で、管理の失敗例を示してください。

追加で4)
日本の地域管理は上手くいっている事例があるから良いと言い、
ノルウェーの資源管理は失敗している事例があるから駄目だと言う。
それって、ダブルスタンダードじゃないですか?

しかし、前のコメントで、
>勝川さんがおっしゃるノルウェーの成功例も、ノルウェーの漁業の中の極一部の例ですよね?
と書いておいて、こんどは、
>北欧の場合、漁業者相互の監視がうまく行っています。
は無いだろうに・・・
発言内容に一貫性というものがまるでない。

ちなみに、ノルウェーは、漁業者相互の監視ではなく、
性悪説に基づいて管理組織が厳格に監視をしていますよ。
なんでこんないい加減なことを書くのかな。
網走にだってインターネットが通じているんだから、
ちょっと調べればわかるでしょう。

ユウラ 07-10-08 (月) 14:01

ご無沙汰しておりました。
ちょくちょく覗かせてもらってはいたのですが、なかなか意見を出せずに記事を読むだけになっていましたが、久しぶりに意見を書いてみたいと思います。

>全てのドライバーが強制的に守るべき交通ルールが必要である。
「法定速度300Km」のような無意味なルールでも駄目だし、
ルールを守りたい人だけ守ればよいという自由参加でも駄目なのだ。

僕も合意形成を潤滑に行える方法はないかを模索しています。今調査している中で、兵庫県と大阪のイカナゴ(播磨灘と大阪湾)の事例は特徴的ながらも参考になる面が多いですね。

・解禁日を決めることによりイカナゴのサイズを統一し、箱詰めする際の仕分けを簡単にしている。結果、流通させる側が解禁日より先にイカナゴをあげてきても引き取らないという先取りの防止ができている面。
・大阪と兵庫で解禁日の希望の違いが出ても、水面下での代表の話し合いがあるために妥協点ができている点。(実際には大阪の漁師が兵庫県に水揚げしている場合があるので大阪が折れることが多いらしい)
・サイズが小さかったらお金にならないことが漁師がわかっているので、無理やり漁に出ることがない。

など、かなりよくできている仕組みになっていると思います。
やはり単一の魚種で囲い込みができているという特殊な条件ですが、流通側が魚を受け取らないというのはすごく話を聞いていておもしろかったです。

漁業者だけでなく、地域ぐるみで管理を行える環境作りを行えれば、有効な結果が出てくるかもしれないです。このような事例をもっともっと探していきたいです。

K 07-10-09 (火) 17:47

一つ一つ返答せず失礼をいたしました。
1)種苗放流は資源管理には入らないのですか?
そのつもりでサケとホタテの例を挙げたのです。種苗放流は当初は都道府県や国が主体でありましたが現在はそれぞれの地域で種苗放流量を決定して行っています。
もちろん、種苗放流に全く問題が無いといっているわけではないですよ?しかしながら、安定した漁業を数十年間維持している自主管理の一例でしょう。
2)TACが日本で実働していないことは同意です。ですが、TACが実働していないからといって日本の資源管理は、スタート地点にすら立てていないとは言えないといっているわけです。
その一例として自主管理をあげたわけです。自主管理の成功例があるのに、スタート地点に立っていないのであるならば、あれはなんなんですか?

3)日本のTAC対象種で、国内漁業でしかない魚種のほうが少ないのではないですか?
成功例を挙げるのであるならば、同様の魚種で比較しないと意味が無い故に北海の失敗例を挙げたのです。

4)少なくとも日本の政府主導の管理はほぼ全て失敗しているわけです。それに対し自主管理はその成功事例が少なく、成功条件が厳しくとも成功している例があるわけです。
成功例の無い日本国主導の管理のほうが成功例が(例え少なくとも)ある自主管理より実現度が少ないと思うということです。

>北欧の場合、漁業者相互の監視がうまく行っています。
は無いだろうに・・・
発言内容に一貫性というものがまるでない。
ノルウェーのITQの成功例の場合と書くべきでしたね。失礼いたしました。資料探してます。監視団体の大規模な出資者は漁業者であったと記憶していますが、間違っていたらすみません。

資源管理の成功条件は管理手法の管理性効率×実行可能性で出されるわけです。
ITQがダービーよりも理論的に優れていることにも反論はありません。しかし、日本の現行の漁業法ではITQが(少なくとも自由譲渡のものは)出来ないのも事実でしょう。
漁業者が現在握っている既得権益である廃船への補助金も、恐らくしばらくは手放させるのは無理でしょう。そのなると、いかにうまい手法であっても漁業者に利益のない手法は実行可能性が0になります。
自主管理に重要な点は勝川さんの仰る条件の中で最も効いているのは4番目だと思います。もう、何をやっても駄目になり、藁にもすがる思いでやったことが、うまく行き信頼に繋がる。
資源管理が今すぐ必要な魚種は幸いと言ってはいけませんが4)の条件を満たしています。
そして、その成功三例を目指して自主管理を行おうと漁業者の支持をとろうと説得している管理者の(卵含む)もいるわけです。
日本が資源管理のスタート地点にすら立っていないのであるならば、その人たちの行動は何なのでしょうか?
何年後に法改正が行われ、腰の重い政治家が動き出し、頭の固い水産庁が真っ当な管理方策を決め、それを施行されるのかは分かりません。
しかし、私にはそれが少なくともそれほど近い未来には思えません。
で、あるならば少しでも今の法制化の中で出来る自主管理を増やす努力をしたほうが、将来に残せる魚種は多くなると思います。

K 07-10-09 (火) 18:13

>匿名で甘えさせてもらっているヒト様
協力していただけている漁協は三つあります。
しかしながら組合は賛同してくれても実際の漁業者の交渉は難航することが多く、道は遠いのかもしれません。
とりあえず、漁業中のオブザーバー乗船について何とかなりそう・・・・・というまだまだ非常に心もとない状況です。
幸い管理者側は協力的ですので、非商業操業による調査は現在も行えています。
しかし、対象種が国際資源なもので、得られうるデータにかなり制限があり、その結果現状推定がどの程度資源全体を現しているかすら、怪しい部分があります。
囲い込みが出来ていて、単一の漁協だけで管理している魚種で実験的なことが出来ればベストなのでしょうが、そういう例は現状では私は知りません。
出来るところからやるしかないと、私は思っています。

K 07-10-09 (火) 20:36

2)は前述のとおりTACの失敗を持って日本の資源管理の失敗としないで欲しいという意図でした。文章推敲少なく誤解を生んで申し訳ありませんでした。
しかし、これにも答えておきます。
>TAC自体が必要ない種を具体的に示してください
ズワイガニやTAC対象種では無いですが資源評価表に載るニギスを想定していましたが、スルメイカやブリもTAC自体必要無いと考えています。ただし、それはズワイガニとは全く異なる理由です。
スルメイカが特にそう思うのですが、スルメイカの産卵場所は韓国EEZに極めて近く、日本の漁船はほとんど操業の出来ない場所です。ABCを算定するためには毎年水研の研究者が多大な労力と時間を使って計算と作文をしています。例えスルメイカでITQなり、IQなりが実現したとしても、国際資源ゆえに勝川さんがいつも仰ってらっしゃるような「とらなかった魚は後から取れる」が守られない可能性があります。
現在の韓国の漁業管理を見るにその可能性は低くないでしょう。で、あるならばそんなものに労力をつぎ込むよりも、日中韓の漁業共同管理機構をつくることにもっと労力を使ったほうが、ずっと実質的な管理には役に立つと思います。
私自身は国際資源に関しては既存の国際機関の対象種を増やす形で資源管理を行う道を考えたほうが早道だと思っています。故にそういった所にも顔を出す機会を作り、そこでの決定がどのような形で漁業管理に結び付けられるのかを、勉強しています。
沿岸漁業に関しては、国の管理ではなく自主管理の方向性で行うのが早道だと思い、これも地元漁協と市町村の会合で具体的な方策提言も行っています。もちろん、それら全てが必ずしもうまく行っているわけではありませんが、資源管理は走り出しているし、それに乗り遅れた魚種が滅ぶのは、必然だと思います。
全ての魚種を救えれば、それは誠に結構です。ですが、事態の悪化はそれを許すとは思えません。
ただ、私はそういう道が近道だと思いますが、勝川さんが国としての方策を考えるのは誠に結構だと思いますし、いつも勉強になっています。
イチローに憧れて野球をやりだす人もいるのですから、イチローは特別。凡人には無理。と、切り捨てられては目指してがんばっている者の立つ瀬がございません。

勝川 07-10-10 (水) 12:23

ユウラさん
ご無沙汰しています。
興味深い事例を紹介していただき、ありがとうございます。
資源管理に流通を取り込むのは重要な視点だと思います。

漁業でもサプライチェーンという考え方が広まりつつありますね。
その辺は、私よりもユウラさんの方が、詳しいのかな。
魚を捕るだけが漁業ではなく、
人間の口にはいるまでのプロセスを最適化する必要があります。
一般的な漁業国は、魚を獲る前に、どこに幾らで売るかを考えています。
日本の漁業もそうなって欲しいものです。

勝川 07-10-10 (水) 14:34

>一つ一つ返答せず失礼をいたしました。
と、言いつつ、未だに質問に全然答えていないですね。
スルーできないように、わざわざ箇条書きしたのに無視ですか。
サケとか、ホタテとか、TACとは関係ない資源を持ち出して話を逸らそうとしないでください。

>>>北欧の場合、漁業者相互の監視がうまく行っています。
>>は無いだろうに・・・
>>発言内容に一貫性というものがまるでない。
>ノルウェーのITQの成功例の場合と書くべきでしたね。
>失礼いたしました。資料探してます。
>監視団体の大規模な出資者は漁業者であったと記憶していますが、
>間違っていたらすみません。

そもそも、漁業者の相互監視が上手くいっているなら、監視団体は不要です。
漁業者の相互監視には限界があるから、わざわざ金を出して、監視団体がつくったのですよ。
資料を探す前に、少し考えればわかると思うのですが・・・

>イチローに憧れて野球をやりだす人もいるのですから、イチローは特別。凡人には無理。
>と、切り捨てられては目指してがんばっている者の立つ瀬がございません。

国内で資源管理を推進するために頑張っている人間のブログに、
「そもそも日本では資源管理は無理なんじゃないかと悲観もします」とか書いておいて、
良くこんなことが言えるものですね。
自分のことは棚に上げるにもほどがあるでしょう。
たった数個のコメントで、ここまで墓穴を掘れるK岩さんはある意味天才だと思いますが、
その才能はこのブログ以外の場所で発揮してください。

今までのやりとりから、
k岩さんとは議論が成り立たないことはよくわかりました。
今後の書き込みはスルーさせてもらいます。

K岩 07-10-13 (土) 9:52

文意が取られていないようですので、フォローはいれておきます。

1)
  あ)「たくさんの事例=2つのローカルなズワイ資源」という理解でよいか
さんまの出荷調整も自主的な調整である以上、自主管理だと思います。
TAC対象種8種のうち2種ならばたくさんと言えませんか?言えないようでしたらたくさんは言いすぎでした。失礼しました。

  い)これらの漁業は、自然変動などで資源状態が悪化したら漁獲量を削減できるのか?
ズワイに関してはできると思います。恐らく今以上に資源が減少したら漁業として成り立たないでしょうから。それは管理と呼べるものでは無いでしょうが、資源を守るための仕組みがあることは確かでしょう(そもそも管理が必要ない)。値段が上がると別のルールが必要になるでしょう。条件が変わった場合にルールを変えなくていけないのは当然ですね?
さんまに関してはこのままでは削減できない可能性もありますね。ですが、TACでうまく行くとも思えません。

2)
  あ)俺が例外をとりあげてTAC制度を非難しているだけで、
    TAC制度は全体として上手くいっているという理解でよいか?
TAC制度は日本ではほぼ機能していないという認識です。また、これからも政府主導の資源管理には極めて悲観的だという認識です。政府主導でうまくいった管理例が日本にはほぼ無いからです。他国の例を持ち出すならば、最低限日本よりも漁獲量も漁獲種も多い例を持ち出さなければならないとも思っています。中国もペルーもうまく行っているとは思えません。

  い)だとすると、前後の発言内容と矛盾はしないか?
上記が違うので返答不要

  う)TAC自体が必要ない種を具体的に示してください
京都のズワイガニは勝川さん的な考えでもいらないと思います。

  え)俺がその種を取り上げて、
    TAC制度を非難している箇所を具体的に示してください
あ)の認識が違うので返答不要

  お)本ブログで良く取り上げるマイワシやサバは、
    tacがそもそも本来不要だから、管理が上手くいっていないのでしょうか
違いますね。

TACが失敗しているから、日本の資源管理はスタートラインにすら立っていないと言う、勝川さんの主張に賛同できないというだけです。

3)
勝:日本の国内資源管理の話をしているのだから、
  国際漁業の例を出すのは、論旨のすり替えである。
  ノルウェーの国内漁業で、日本のマサバのような乱獲をしているものはない。
  あ)ノルウェーの国内漁業で、管理の失敗例を示してください。
TAC対象種であるマサバもスルメイカもズワイガニも複数国が利用している国際資源です。
その管理手法の話しに国際資源の例を持ってこないほうがおかしいと思います。

追加質問に関しては既に返答しているとおり、TAC制度が日本でうまくいっていない以上、うまく行っている事例のある自主管理と外圧に弱い日本の政治機構の特徴を使った管理運用のほうがTACを使用した日本政府主導の管理運用よりも実現可能性が高いであろう。ということです。

私が勝川さんの主張に合点できない点は一点だけです。「日本で政府主導の資源管理が実行可能であるとしている根拠が納得できない。」

以上、スルーして頂いて結構です。

ある水産関係者 07-10-13 (土) 16:14

“Don’t trust anybody!”

 これまで米国で漁業管理にあたっている関係者から耳が痛くなるほど聞かされてきたフレーズです。
 このフレーズを初対面の人から聞くと、大概の日本人は漁業者であろうとなかろうと気を悪くするのが普通でしょう。
 でも振り返って考えたら、振り込め詐欺にしろ、円天にせよ、日本人が普段「人間は本来善人」という性善説に支配されて生活しているが故に発生する事件です。
 そもそも村社会などの小さな集団の中で生活してきた日本人は「人を疑うこと」よりも「人を信じて集団の和を保つ」ことの方が生きていく上で重要だったと言うことで、このことが資源管理を含む現在の日本社会の色々な場面に根を残しているのだと思います。

 もちろん、厳しく監視体制を敷いた資源管理でも失敗することもあります。それは管理の元になる資源評価が正しくなかった場合である。要は、まっとうな資源管理には、正確な資源評価と厳格に機能する監視体制が不可欠、ということです。

 翻って日本の資源管理はどうか? 資源評価については、正確かどうか別にして、研究者の原案段階では少なくともconservativeな評価がなされていると思います。そこで監視体制だけ、ちゃんと機能していれば、少なくとも人為的要因による資源管理のミスは防げると思います。
 ところが、問題は資源評価については、行政官の目に止まった段階でしょう。恐らく、そこで「そんな厳しいことを言わなくても、漁業者も大変なのだから(実際は自分たちが政治家に文句を言われるなど、“大変”だから)」とか何とか言って、性善説ともいい加減とも言えないような理由で改ざんされるのが実態でしょう(TACのみならずABCも)。
 監視体制については言うまでもありませんね。性善説に忠実に従って、ザルの如く、最初から抜け道だらけですから。

 資源管理の現場では、研究者は自らの資源評価に様々な責任を背負わされるため、かなり真面目に仕事をせざるを得ない立場にあります。
 一方、行政官は、失敗しても、全てを他人のせい(特に研究者)にしてしまうので、管理が成功するしないよりも、如何に管理方策が自分(行政官)のためになるか、を考えて決定します。
 漁業者は性善説に立脚した素晴らしい(?)監視体制の下、少なくとも表面的には役所が決めた管理方策に従い、管理が成功すれば「もう資源管理(監視体制?)なんか必要ないんじゃない!」
と、また失敗しても「役所の言う通りやったのに(?)失敗するのだったら、最初からやらない方がよい」と。

 要は、日本の性善説に立脚した資源管理システムは、行政サイドが「行政官は本来悪い事をしない」という世の中(性善説)の原則を最大限活(悪)用し、管理の失敗に対する結果責任を曖昧にするシステムにしてしまったことが最大の不幸だと思います。

 もちろん勝川さんらが紹介されたような成功事例もあります。それは関係者全員が、成功=自らの利益、として管理への取り組みに情熱を注ぎ、関係者が結果論だけではなくプロセスを含めて成功を確認・実感出来たからだと思います。 

 国民も、資源管理が成功しようがしまいが通り魔事件のように自らの生命に危険が及ぶものではない、国産魚がなくなっても、肉や輸入魚を食べればよい、と言った具合に資源管理の成否にそれほど関心をもっていない、いや行政サイドの情報操作によって、そう思わされているというのが実態でしょう。
 多くの失敗事例について、それを成功に導く上で、まずは当然のことながら管理の必要性について国民世論の賛同を勝ち取ることが最重要と考えます。ただし、依然として性善説に支配されて集団主義の中で生きて行かざるを得ない日本社会の実態、これから漁業者も含め個人の生活が益々厳しくなりそうな経済情勢から考えて、日本人にとって真に良いか悪いか別にして、日本の社会制度(性善説、集団主義)が早期に転換するのは、間違いなく悲観的でしょう。
 (k岩さんと勝川さんの議論を見ていて食い違いの原因がこんなところ(特に最初のフレーズが理解出来るかどうか?)にあるのかな、と考えつつ書き込みました)

勝川 07-10-16 (火) 17:35

性善説で上手くいっているなら、それでよいと思いますが、
上手くいっていないんだから、変える必要はあるでしょう。
潔白であれば、別に疑われても良いはずなんです。
疑われることにヒステリックに対応するのは、やましいからでしょう。
性善説の弊害は、食の安全にも共通すると思います。
「消費者に安全だと思わせればそれで良い」というのが見え見えですね。
安全宣言を出した側から、ボロがでたりするから、
目も当てられません。

>国産魚がなくなっても、肉や輸入魚を食べればよい、
>と言った具合に資源管理の成否にそれほど関心をもっていない、
>いや行政サイドの情報操作によって、
>そう思わされているというのが実態でしょう。

乱獲ネタに関しては、メディアの食いつきは良いし、
潜在的な関心は高いと思います。
ご指摘の通り、正確な情報が流れていないので、
一般人は大本営に印象操作されまくりですね。
自給率ナイナイ詐欺で、無知な人々の危機感をあおって、
予算確保の追い風にするのが常套手段です。

>漁業者は性善説に立脚した素晴らしい(?)監視体制の下
不正を見つけるためのシステムではなく、
不正が蔓延しているのを、外から取り繕うためのシステムですね。
だから、ミナミマグロのようなことになるわけです。

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