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「自主管理があるからTACは不要」なわけはない

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「自主管理があるから、TAC制度は不要だ」という研究者・役人は多い。
漁業者主体の自主管理こそが、日本のお家芸、伝家の宝刀ということだが、
成功例はたったの3つ。どれも沿岸のローカルな資源。
その他は、ぜんぜん上手くいっていないというお寒い状況だ。

たしかに3つの成功例はどれも凄い。世界に誇っても良いと思う。
問題は打率の低さなのだ。
100打数、3ホームラン、3安打というバッターは普通に考えれば戦力外だろう。
本当に自主管理で日本漁業を立て直そうと思ったら、
全く機能していないその他大勢の自主管理をどうするかを考えないとダメだ。
そのためには考えるべきことは山ほどある。
● 機能した自主管理と、機能しないその他大勢の管理はどこが違うのか?
● 自主管理が機能するための条件を洗い出す。
● その条件を満たす自主管理を増やすための方策を考える。
俺が知っている範囲では、こういった問題に取り組んだ人間はいない。

自主管理が大好き人間は、自主管理の成功例しか見ない。
過去の3つの成功例を繰り返し調べて、その素晴らしさを賛美するだけである。
数多くある自主管理のほとんどが破綻しているという厳しい現実を無視して、
数少ない過去の栄光(しかも他人の)に酔っているだけである。

本気で自主管理を漁業政策の中心に置くつもりなら、
現状で機能していないその他大勢の自主管理を、
どうやって成功に導くかというビジョンを示すべきである。
そういうビジョンを示さずに、過去の成功例をマンセーしているだけの人間は、
資源管理をしない口実として、自主管理の成功例を使っているだけだろう。
本気で、自主管理によって日本の漁業を立て直そうとは思っていないのだ。

Comments:2

匿名であまえさせてもらっているヒト 07-10-06 (土) 0:03

K氏との「対話」面白いッスね♪
K氏の反論に期待したいところです。

あと、高木レポートに反対の立場で行われるシンポ(パネルディスかな)・・・見に行きたいですねぇ・・・ちょっと無理だけど・・・
でも、”のーりあくしょん”よりも、少しは建設的ではないでしょうか?
あげあし取りでもいい!、ワンパクに反論してもらいたいところです。

さて、「自主的管理」ですが、真の意味で行われている事例は、氏の言うとおり、極めて少ないのが実情です・・・少なくとも、私の守備範囲では・・・でも、有名な3例以外にもないこともない。

行政サイドで「模範的」と称されているところでも、ヤバイヤバイ・・・プチTAC選定状態チックな状況もあります。

資源が危機的にあるのは分かった。
でも、漁業者の生活が大切だ。
獲らなければ増えるっていうのは、言われなくっても分かっているんだょ!

今ひとつ、実感がないのかなぁ、と思いました。
たしかに、乱獲以外にも、資源が壊滅的になる場合があります。
でも、それでも、資源回復の特効薬なんてなくって、「忍」の一文字、なのに、「乱獲してないんだから」なんて、言い訳にならないのも知っているはずなのに・・・
「ダメだダメだって言っても、獲れば獲れるじゃん」みたいな・・・海は無限だ、って感じ???

ジリ貧になるの、分かっているような、分かってないような・・・

前にカキコしましたが、大学の偉い先生様が、どんなにすんばらしい数式・モデルを作っても、使うヒトが理解できなければ、絵に描いたモチ以下ですのょ・・・残念ながら、コレが現実。
ただし、中堅の一部や若手には、理解できるor努力をしているヒト達も増えて来ている気がします。
・・・現場でも偉くなりすぎちゃうと、余計なコトまで考えないといけなくなっちゃうのかな・・・
社会教育的なコトも必要なのかもしれません。

現場の素地はボクらが、少しずつではありますが、作って行きます。
氏らは、私達が収集しきれない情報の提供や、「良い」管理手法を提案してください・・・言われなくってもやるってか・・・♪

勝川 07-10-10 (水) 12:14

>K氏との「対話」面白いッスね♪
>K氏の反論に期待したいところです。

全然、面白くないし、対話になっていないです(>
いい加減な知識で揚げ足をとっておいて、こっちの反論にはスルー。
都合が悪くなると種苗放流とか中国韓国とかを持ちだして、話を逸らそうとする。
まあ、典型的な水産関係者と言えなくも無いですが・・・
K岩さんに関わっても、全く得るものがないです。

>あと、高木レポートに反対の立場で行われるシンポ(パネルディスかな)・・・
>見に行きたいですねぇ・・・ちょっと無理だけど・・・

まあ、内容は想像が付きますね。
たとえば、これを読みましたが、酷いものでした。

都市と農村を結ぶ 2007. 4月号  No.666
「参入自由化」で日本漁業は再生できるか
 -日本経済調査協議会・高木委員会報告を論評する- 加瀬 和俊
http://www.zennorin.jp/noson-to-toshi.html

中の人から感想を求められたときの俺の返事:
この文章の特徴は、高木委員提言のあら探しをするだけで、自らの対案を何一つ示していないことです。
高木委員の提案について批判をするなら、何らかの対案が必要です。
現状維持も一つの対案であり、高木委員提言は現状の改悪であると示すのでも良いでしょう。
加瀬教授は「我々も漁業の現状が今のままで良いと思っているわけではない」と言いつつ、
自らは何の対案も示さずに「現役の役人と漁業関係者からの率直な意見表明を強く期待している」では、ずっこけてしまいます。
産業の問題点を明確にして方向性を示していくのが、実学研究者の役目だと思うのですが、
これではお話にならないです。変化出来ない理由を探しているだけで、自分で動いたり、考えたりしない。
ある意味、現在の水産業界の体質を代表するような文章であり、反論をする価値もないと思います。
「文句があるなら、対案を示せ」の一言で充分でしょう。

>でも、”のーりあくしょん”よりも、少しは建設的ではないでしょうか?
>あげあし取りでもいい!、ワンパクに反論してもらいたいところです。

リアクションが必要というのは、確かにその通りなんだけど、高木委員として腕白な反論は難しい。
というのも、高木委員は、大きな組織のトップの集合です。
彼らにしても、自分たちの組織に不利益になることは言えない。
組織を背負っている全員の合意を得た上で、反論を作成するのは大変な労力です。
あれだけのメンツを集めたからこそ、大きなインパクトがあったけれど、
逆に言うと、まとめる作業はとても大変だということです。
そこが高木委員の強みでもあり、限界でもあったように思います。

ただ、高木委員提言が各所に多大なインパクトを与えたことは事実です。
今になってもその影響力には驚かされます。
例えば、高木院提言が、規制改革委員を動かす原動力にもなりました。
後に続く動きは、いろいろあります。
より身軽な専門家が集まって、議論を深めていくプロジェクトも進んでいます。
俺のところにも、いろいろな相談がくるので、出来る限り協力しています。
また、あるプロジェクトには主体的に関わるつもりです。
忙しくなりそうです。

>さて、「自主的管理」ですが、真の意味で行われている事例は、
>氏の言うとおり、極めて少ないのが実情です・・・
>少なくとも、私の守備範囲では・・・
>でも、有名な3例以外にもないこともない。

そういう知見を溜めていけると後に続きやすいと思うんだけどな。
「こうやったけど、上手くいかなかった」とか、「ここが限界だった」とか、
そういう失敗例も大切だと思う。
胡散臭い大本営の発表ではなく、
「ぶっちゃけどうなのよ?」というところがしりたいのだけど、
なんとかならないものですかね。

>今ひとつ、実感がないのかなぁ、と思いました。
>ジリ貧になるの、分かっているような、分かってないような・・・
それは実感として思いますね。
どうみても先が無いことは、頭では理屈としてわかっているんだけど、
心の底では何とかなると思っているようですね。
そして、誰の目から見ても本当にどうしようもなくなると、「もうどうにでもなれ」となる。
漁業者の行動パターンをみてると極端から、極端ですね。

資源が悪化しても、「根拠のない楽観論」で獲りまくる

資源がどうしようもなく悪化すると、「自暴自棄」で獲りまくる

>前にカキコしましたが、大学の偉い先生様が、どんなにすんばらしい数式・モデルを作っても、
役所も駄目だけど、研究も駄目駄目ですよ。
漁業者と一緒に資源管理できない理由を探しているような研究者もいます。
日本の漁業で、一番まともなのが現場だと思います。

>現場の素地はボクらが、少しずつではありますが、作って行きます。
>氏らは、私達が収集しきれない情報の提供や、「良い」管理手法を提案してください・・・
お互いにがんばりましょう。
最終的には、現場が実働部隊として動かなければ、何も進まない。
かといって、現場に丸投げでも、限界がある。
現場に動きやすい環境を整えることと、
現場が動かざるを得ないような状況に追い込むことが必要です。

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