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豪州政府は燃油価格の高騰に対して、補助金ではなく、資源管理で対応するらしい

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燃油の価格が高騰しているのは、日本だけではありません。海外ではいったいどのようになっているのでしょうか?

オーストラリアは燃油高騰対策の補助金が不要だそうです。実際に業界からも要求がほとんど出てこないというから、驚きです。そして、その理由が資源管理をしているから、というので、またまたびっくり。

インタビューをしたのは、オーストラリアの資源管理機関AFMA(Australian Fisheries Management Authority )のExecutive ManagerのNick Rayns氏です。つまり、政府の漁業管理機関の責任者。このインタビューは実に興味深いです。

豪州では規模が大きい漁業からITQを導入している最中です。ITQを導入した漁業では、産業が変化に対して柔軟になるから、不満はでないそうです。豪州では、船ごとに獲れる漁獲量が決まっているので、漁師は毎日海に出る必要はありません。利益を出せない漁業者は、その年の漁獲の権利を他の漁業者に売って利益を得ることも可能です。
水揚げの効率化が進むことで、産業全体としては利益を確保できるので、魚を獲りに行く漁業者も、魚を獲らない漁業者も補助金が無くても問題はない。

ITQがまだ導入されておらず、網目規制や漁期規制のみで管理をしている漁業もあります。そういう漁業では、漁に出なければ収入はゼロです。みんなが漁に出ても、みんな赤字という状況になるので、漁業者からは不満の声が上がっているそうです。燃油価格が上がると採算がとれなくなる漁業に関しては、燃油の補助金を配るのではなく、ITQへの移行を進めるというのが、豪州政府の方針だそうです。

いやぁ、実に明快ではないですか。目から鱗でした。
詳しくは下のビデオを見てください。

Comments:4

ある水産関係者 08-07-12 (土) 9:21

大変興味深い情報有り難うございました。正に、GOOD JOB!
 大本営や日本の国会議員に豪州の爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい気分ですね(全漁連は飲ませてもダメ)。ちょうどNHKニュースで15日の一斉休漁が報じられていたところですが、こっちのビデオを報じる方が賢明でしょう。
 もっとも大本営も国会議員も本当に漁業者のことを考えて燃油対策を考えているわけではない。大本営は棚からぼた餅のように予算が倍増するわけです(天下り団体、ポストも獲得できる)し、国会議員は票が集められる。肝心の漁業者は強心剤を打って貰えても、糖尿病にむしばまれた患者のように身体がボロボロになるわけですから・・・。もちろん、国家のためでも国民のためでもない。要は全てが「自分たちのため」。
 韓国の補助金は、ベースラインを1800Wから1400Wに下げる要求が出されているようです。ただし、韓国の場合、低所得者や自営業者も対象にするらしいので、日本よりはよほど「民主的」と思います。
 引き続き「小松さん」とのGJを期待しています。

勝川 08-07-28 (月) 23:32

直接補償745億円というニュースを見て、
頭がくらくらしています。
こんな無茶をしていたら、
漁業どころか、国家の破綻が近そうだ。

水産学部生(本物) 09-01-31 (土) 17:36

IQ・ITQの導入上の問題点についてお聞きしたく…

突然の書き込み、失礼致します。
現在大学生として水産学を専攻しております。
勝川先生のブログ、楽しく読ませていただいております。
非常に勉強になる内容で、とても感銘を受けました。
ITQの導入により、勝川先生の仰るとおり日本全体での漁業経営効率の向上に繋がると感じました。

ここで以下のような質問があります。

日本の状況をかんがみますと、少ないTACを過剰な船(漁業経営者)で割ることになります。
そうなりますと、零細な経営体が集約する方向に進み、
結果として、大量の零細漁業者が就労機会を失い、また漁業における小作化が進むのではなかと思います。

また、零細漁業経営体に配分されるIQの売却益だけでは、
漁業からの退出に対する補償としては不十分な水準なのではないかとも思います。
そのような状況の中で、職を失った漁師の雇用補償が重要な問題になります。
雇用補償については現行の減船プログラムが有効であると感じておりますが、
職にあぶれた漁業者の雇用対策ついて先生のご意見をお伺いしてもよろしいでしょうか。

勝川 09-02-09 (月) 9:31

質問の意味が理解できないので、何点か確認させてください。
1)IQ/ITQを導入しなければ、零細の漁業者は維持できるのですか?
2)小作化とは何を指すのか。そして、それはどのように進行するのかを説明してください。

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