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お金がかかるからIQは導入しません

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11月10日のみなと新聞

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11月10日付のみなと新聞によると、水産庁のお手盛り懇談会が、
「個別漁獲枠制度(IQ制度)は導入困難」と、きっぱり明言をしたようだ。
(この記事は事実に反するという指摘をいただいたので、
最終判断は議事録を見てからにしたいと思います。
でも、主な意見のPDFを見る限り、記事の内容はそれほど外れてはいないと思います。
http://www.jfa.maff.go.jp/suisin/yuusiki/dai5kai/siryo_19.pdf)
IQを導入できない理由を並べているのだが、理論武装がまるでなってない。
1年間、税金使って考えて、出た結論がこれでは、脱力してしまう。
やる気がないのは最初からわかっていたが、
もうちょっとマシな言い訳は準備できなかったのだろうか。

IQ制度の前提条件からして、お粗末だ。
「関係者の不満のない漁獲枠配分」なんて無理に決まっているだろう。
魚を獲りたい人間に対して、魚があまりに少ないために、
早い者勝ちの、無秩序な魚の奪い合いによって、生産性が低下している。
早どり競争を抑制するために、個別配分が必要なのだ。
「関係者の不満のない漁獲枠配分」が無理だから、
IQ制度は導入しないと言うのは本末転倒である。

また、「漁獲量などの迅速かつ的確な把握が可能であること」とあるが、
ノルウェーをはじめとする多くの漁業国は、リアルタイムで漁獲量を正確に把握している。
日本で漁獲量の把握ができていないのは、水産庁の怠慢である。
これを資源管理をやらない口実に使うのではなく、
水産庁に対して「漁獲量の把握に向けた取り組みをまじめにやれ」と言うべきだろう。
水産庁には、漁獲量の把握すら荷が重いということであれば、
資源管理をするための独立した政府組織をつくるべきだ。

漁獲隻数や水揚げ漁港の多さとか言っているが、
漁船数が多いと言っても、大臣許可はたいした数がないし、
知事許可(沿岸)は、自称・資源管理に積極的な漁業組合に業務委託をすればよい。
港にしても、数は多いが、実際にまとまった水揚げがある港はごくわずか。
そのごくわずかをしっかりと抑えた上で、他の漁港にも報告義務をつければよい。
普通に出来ることだし、そもそも、やらないといけないことばかりである。
ただ、漁港の数が多すぎるというのはその通り。
バス停ごとに、コンクリートでガチガチに固めた豪華な漁港がある国なんて、日本ぐらいだよ。
漁業が行われていない廃船係留所みたいなの漁港だって、いくらでもある。
漁港を減らせば、水産土木予算も浮くことになるし、一石二鳥だね。
で、空いた漁港はヨットハーバーにでもすれば良いだろう。
漁業よりも、環境負荷が少なくて、経済効果も大きいので、村おこしにはもってこいだ。

436億円もかかるから出来ませんと言っているのだが、算出根拠はどこにあるんだろう?
ちなみに、97魚種、629系群をITQで厳密に管理をしているニュージーランドは、
漁業者から徴収した資源回復税(Cost recovery levies)の35m$で全てをまかなっている。
1NZ$=55YENとしてたったの19億円だ。
436億円も必要になるのは、組織として非効率ではないか。

仮に、436億円が必要だとしても、がんばって捻出すべきだろう。
だいたい、年間予算が4000億円もあって、
未来の食糧供給に必要な資源管理の費用をケチる理由がわからない。
利用者もいないような漁港建設を控えれば、400億円なんてなんとでもなるだろうに。
漁業者が騒げば、ぽんと600億くれてやるくせに、
あ、追加で600億だから、全部で1200億円か。

(つづく)

Comments:4

豊川博圭 08-11-14 (金) 23:44

 「できない理由」を一生懸命並べ立てる人ってどの世界にも居ますが、「あなた、何のために生きているのですか」と問いたくなりますよね。この決定をした農水省の事務局の人間は、自分の仕事を天皇陛下に説明できるのでしょうか…

 こちらのタクシーでも、国土交通大臣が責任を負う減車を導入しなければ二進も三進も行かなくなっているのに、国土交通省の官僚は、その責任を積極的に負おうとしません。仕事をする気がないなら辞めろと言いたくなります。

 ちなみに「その仕事を天皇陛下に説明できるのか」というフレーズがマイブームです(笑)。現実に問われることはないですけれど、その時に胸を張って説明できる仕事をしていきたいと思います。

勝川 08-11-21 (金) 14:06

出来ない理由を出してるなら、まだマシです。
重箱の隅をつつくような議論を延々として、
「前向きに検討しています」という人もいます。
改革派にも、抵抗勢力にも、いい顔をしようという、
日和見な「迎合勢力」が一番こまります。

ある水産関係者 08-11-24 (月) 0:04

「議事録は読んだけど、新聞記事との違いがわからない」のエントリーが途中で消えたのでこちらにコメントを書きます。

議事録を読んだ限り、新聞記事よりも詳しい議論(・というかIQ・ITQに対する詳しい批判)が書かれてありましたが、内容は記事とあまりズレていないと思います。

 IQ・ITQに対する大本営の基本的スタンスは、
 ・漁獲量を迅速かつ正確に測るために多数の管理要員が必要となり、それには440億円かかる。
 ・漁業団体の管理が無くなるので市場が混乱し魚価が乱高下する。
 ・ITQを認めると許可に関係なく自由に割当て移譲を認めることになり各種規制(トン数、操業区域)の見直し、撤廃が必要になり操業秩序が混乱する。
 ・生産性が高く資本力のある生産者に割当てが集中し、漁村地区が崩壊する。
 ・IQ・ITQでは割当てが権利化し、失敗しても一度導入するとやり直しがきかない。
 ・日本の漁業者の数、漁港の数を考えると配分された割当量をちゃんと管理する必要のあるIQ制度を一般的な漁業に導入するのは難しい。
  といったところで、議事録では、「元事務次官殺害犯」以上に”不可解”な犯行動機(やりたくない理由)が克明に記されていたと思います。

 審議会では、元々殆どがIQ・ITQに後ろ向きな人達ばかりなので、基本的に大本営のスタンスに諸手を挙げて相乗りするだけで、導入の是非を巡っては決して公平に”審議”されたとは言えないと思います。

 また議事録では面白い業界の本音意見も”紹介”されています。19頁では川本委員が、概要「反対の理由は、漁船隻数の過剰がオリンピック方式では表に出ないけどIQでは非常にはっきり出る。そうなれば減船、操業の効率化、漁獲物の付加価値向上対策が必要となるが、現状では非常に困難である」とある。つまり、現行のオリンピック方式では、過剰漁獲能力といった業界のタブーを隠すのに好都合だが、IQではそれが出来なくなる、と・・。

 あまり知られていません(公表されていない)が、実は、日本漁船も既に約30年間の長きにわたり、大臣許可漁船数百隻(一時は数千隻)を中心にIQ(実質的にITQ)制度を厳正(?)に実施しています。それはロシア水域で操業する全ての日本漁船、イカ釣り、サンマ棒受け、沖底、北転、北部まき網のほか、底刺し延縄といった沿岸漁船、もちろん、サケマス流し網漁船等々です。ロシア水域でのIQ制度については、毎年、日本の漁業者は不満をタラタラ言ってきたものの、最終的には”厳しい”漁獲量管理のための報告義務、VMSの搭載、オブザーバーの乗船及びそのための旅費・日当等の負担を全面的に受け入れ、相互入漁協定にも拘わらず一方的に資源保護協力金まで支払っています。当然、日本のEEZで操業するロシア漁船にもIQが適用されています。果たして、ロシア水域における日本漁船のIQ制度を振り返った限りにおいて、大本営が審議会で述べた超高額の管理経費、魚価の乱高下、操業秩序の混乱が発生しているだろうか? 今年の日ロ交渉も今週の火曜日から始まるらしいけど、「日本漁船は虚偽の報告や選択投棄をするからIQ制度は困難ですよ」と主張するのだろうか。もう既に30年の長きにわたって大々的にIQ・ITQを経験したにも拘わらず、今さら「小泉容疑者」顔負けの不可解な言い訳が堂々と述べられるのは、審議会の委員さんが実質的に身内で固まっているからでしょう。

 全く余談ですが、最近、「水産界の3K」を良く耳にします。勝川、小松、??を指すのでしょうが、本者の3Kはこの審議会の出席者だったりして・・・。

勝川 08-11-26 (水) 11:29

>つまり、現行のオリンピック方式では、過剰漁獲能力といった
>業界のタブーを隠すのに好都合だが、IQではそれが出来なくなる、と・・。

川本氏は、他の委員と違って、IQの必要性をちゃんと理解していますね。
あまりに正直なので、私も驚きました。
過剰努力量に抜本的な対策をとりたくないから、
過剰漁獲が明らかになるIQの導入は反対ということですよね。
IQを導入すると、過剰努力量の削減が必要になり、
結果として、漁業の構造改革が否応なく進むと言うなら、
どんどん導入すべきでしょう。

>果たして、ロシア水域における日本漁船のIQ制度を振り返った限りにおいて、
>大本営が審議会で述べた超高額の管理経費、魚価の乱高下、
>操業秩序の混乱が発生しているだろうか? 

なるほど、これは調べてみる価値がありますね。

しかし、ITQやIVQを導入している国は、魚価を高めに安定させながら、
業界が資源管理コストを負担し、利益を伸ばしています。
IQだと価格が乱高下するなど、言いがかりもよいところでしょう。
日本の魚価は低迷続きですから、乱高下の方がましかもしれませんが・・・

効果の薄い入口管理のみで、漁業が破綻した例は数知れずありますが、
IQを入れて、漁業が破綻した事例など、私はしりません。

それにしても、おかしな反対理由をならべてきたもので、
これにつっこみ一つはいらないというのが、驚きです。

>顔負けの不可解な言い訳が堂々と述べられるのは、
>審議会の委員さんが実質的に身内で固まっているからでしょう。

IQ,ITQについて議論をするなら、推進派も入れないと駄目でしょう。

> 全く余談ですが、最近、「水産界の3K」を良く耳にします。
>勝川、小松、??を指すのでしょうが、本者の3Kはこの審議会の
>出席者だったりして・・・。

水産界の3Kは初めて聞きました。そんなものがあるんですね(笑
ABCをまもれとか、オリンピック制度は駄目とかいうのは、
わざわざ言う必要がないぐらい、世界では当たり前のこと。
これを主張しただけで、異端扱いされるのが、日本の特殊性ですね。

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