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改革のゴールについて

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漁業先進国の政策は、明確な戦略に基づいている。
EEZ時代の漁業戦略を単純化すると次の2点である。
1)資源の持続性を最優先し、生産力を維持する
2)個別割当によって、早どり競争を抑制して、単価を上げる
ノルウェーもニュージーランドも上の2点を高いレベルで実現しているが、
実装のディテールをみると、方法論には大きな差があることがわかる。
他国の制度は、その国の漁業・政治価値観と不可分に結びついている。
ノルウェーのやり方をニュージーランドにもっていってもうまくいかないだろうし、
逆もまたしかりである。
日本にも、日本漁業に適したスタイルで、上の2点を実装する政策設計が必要だ。
EEZ時代に入って、30年以上、何もしてこなかった日本の漁業関係者が、
零から制作設計をできるとは思えない。
他国の政策を参考にする必要があるだろう。
新自由主義のニュージーランドよりも、
既得権重視の社会的価値観をもつノルウェーの方が、まだ日本に近い。
ノルウェーの漁業政策をたたき台に、日本独自の方法論を模索すべきである。

俺の頭の中には、ノルウェーの資源管理を日本向けにカスタマイズしたものの青写真がある。
そう遠くない将来に、この青写真と近い制度が日本にも導入されると思う。
ただ、それは改革のゴールではない。むしろスタート地点である。

EEZ時代に適応した漁業国のシステムを輸入することで、日本漁業は当面延命できる。
しかし、それでは一時しのぎに過ぎない。
世界の漁業を取り巻く状況は日進月歩である。
ノルウェーやニュージーランドは、今日も漁業制度についての議論を重ねている。
来年はよりよいシステムに改善するだろう。
現在のノルウェーやニュージーランドのスナップショットに追いついたところで、
彼らは常に先に進んでいるのである。
日本漁業が再び沈没するのは時間の問題だろう。

日本の漁業改革の最終目的は、日本の漁業を自己改革できる組織にすることだ。

Comments:5

ある水産関係者 09-02-05 (木) 21:57

鳴り物入りで始まったマリンエコラベル(MELジャパン)のHPにこんなお知らせがありました。↓↓↓
http://www.melj.jp/sub12.html

 認証第1号からしてこのザマは、もはや「お笑い」の世界を通り越して日本の社会システムに危機感すら感じてしまいます。仲良しクラブのナアナア体質の結末がこれである。さすがに余りにもみっともなかったのか、これを記事にしたマスコミは見なかった。
 もちろん当事者は違反をしていなかったという。だが、それをまともに信用するのも困難だろう。真冬の日本海のど真ん中で、間違って入ってしまった場所付近で、偶然取締船と遭遇したなどあり得るだろうか。ロシア側もそれなりの証拠を握っているはずだ。報道写真に写っていたロシア水域の操業許可書を有する旨を意味する船体表示も気になる(漁船登録番号の下に付されたヒゲマーク)。さらに本日釈放が決まったようですが、特段の理由も告げず、保釈金の金額が公表されない点も不自然です。そこに国民が知らないところで税金が使われていることも疑ってしまう。
 何れにしても、これからの大本営やMELジャパンの対応ぶりが見ものです。大本営ほかの自己保身のために、これ以上、真面目な漁業者の信用まで傷つけることだけはやめてもらいたいものです。

勝川 09-02-09 (月) 9:57

うやむやのまま保釈になったのですか。ミナミマグロの時と同じで、都合が悪いことはもみ消せばよいというかんじでしょうか。我が国の領海にロシアの取締船が進入して、漁船を拿捕したというなら、それこそ大問題ですから、事実関係を明らかにしてもらいたいものです。

ある水産関係者 09-02-09 (月) 21:23

560万ルーブル(約1,500万円)以上の保証金を支払って解放されたこと、漁船から日本に電話連絡した時点でロシア水域(EEZ)への入域を認めていたこと、から違法行為があったことは間違いないでしょう(違法操業かどうか別にして)。
 仮に日本水域(EEZ)にて拿捕されたとしても、ロシア側には日本の領海(12浬内)に入るまでの間、追跡権がありますから国際法上も問題なしです。
 事件が発生したときには「操業などしていない、濡れ衣を着せられた」との口調の船主サイドのコメントが、ここにきて「ノーコメント」に変わったのも気になります。
 何れにせよ、大本営に真相究明を期待するのは、麻生内閣に景気対策を期待する以上に困難でしょう。
 それよりも消費者が「泥棒が付けたマル適マーク」に騙されて、如何わしい「防犯グッズ」を買わないように、そっちの方の対策をしっかりやってもらいたいものです。

和田一彦 09-02-15 (日) 0:00

日本海新聞の2月2日に社説が出ています
http://www.nnn.co.jp/column/syasetu/090202.html

マリンエコラベルジャパンが認証漁船が拿捕されたことを認めたとは、偉いです。

日本の他紙は、エコラベルと拿捕の関連性にまったく気がついていないと私は考えます。

日本の一般消費者にとって、エコラベルは環境に対するやさしさを示す、「心意気」。外国による日本漁船の拿捕は「かわいそう」。

エコラベルに第三者認証による客観性や科学的根拠が必要だとは、日本の消費者はまだ気づいてていません。あるいは、エコラベルの客観的な証明は人を疑うようでいやなので気づかないふりをしているのでしょうか。
大事なのは、ロハスな雰囲気です。

水産資源の枯渇は、ある魚の産地が変わったり、天然から養殖になったりすること。または、かわりに別の魚を食べることでしかないと思っています。

カナダニューファンドランド島のたら資源枯渇が地域社会を揺るがし、社会的財政的負担を強いるものだとは、誰も考えようとはしてません。

いつまで、ごまかし通せるのかあやしいものですが。

勝川 09-02-24 (火) 22:20

ある水産関係者さん

やはり、これも闇から闇ですか・・・

>それよりも消費者が「泥棒が付けたマル適マーク」に騙されて、
>如何わしい「防犯グッズ」を買わないように、そっちの方の対策
>をしっかりやってもらいたいものです。

「防犯グッズ」は、某団体の「お仕事」になりそうな雰囲気ですね。
悪い噂通りに、金額もMSCと同じぐらいになったみたいだし。
MSCと違って、輸出価格には全く貢献しそうにないですが・・・
漁業者にも、消費者にも、デメリットしかない制度になりそうですね。

和田一彦さん

先日はお世話になりました。
また、いろいろと教えてください。

>エコラベルに第三者認証による客観性や科学的根拠が必要だとは、
>日本の消費者はまだ気づいてていません。
>あるいは、エコラベルの客観的な証明は人を疑うようでいやなので
>気づかないふりをしているのでしょうか。
>大事なのは、ロハスな雰囲気です。

日本の消費者の意識が低いのは、仕方がない側面もあります。
日本の漁業・水産資源がいかに破滅的な状況にあるか、
また、世界の水産物需給がいかにタイトであるか、
そして、資源管理をすることで、漁業がいかに将来性のある産業に生まれ変わるか。
そういう情報が一切流れていないからです。
消費者の意識が低いのは、我々専門家の責任です。

漁業の惨状を、一般人に伝える必要があるのですが、
業界にとって都合が悪いことを言うと、風当たりが強いですね。
「苦しんでいる漁業者の傷口に塩を塗るような行為は
けしからん」とか言う人もいます。
税金で生活している研究者が、
業界に都合が悪いことをもみ消すというのは、
納税者に対する背信行為であり、薬害エイズと同じですよ。
まあ、人は死なないかもしれないけれど、
国の食料安全保障が脅かされるわけです。
非持続的な漁業を擁護したところで、
長い目でみて漁業者のためにもならないし、
結局は、その付けは次世代が払うことになります。

今後は、一般人に漁業の問題を広く訴えて行くつもりです。
今後もいろいろとお世話になると思いますが、
よろしくお願いします。

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